NEC、量子アニーリングの組合せ最適化機能を大幅に向上する方式に目途、実用化に向けた取り組みを加速
2018年1月23日
日本電気株式会社
NECは、組合せ最適化問題を超高速に解くための量子アニーリングコンピューティングにおいて、性能向上に大きく関わる量子状態時間を大幅に向上可能な方式の実証を完了し、量子アニーリングマシンの研究開発を加速するため、研究体制を大幅に強化することといたしました。
AIを使った社会課題解決においては、機械学習によって導出された無数にある選択肢から最適な組合せを導出する「組合せ最適化」が極めて重要です。このため、組合せ最適化問題を超並列に高速演算可能である量子アニーリングマシンの研究開発が世界的に進められています。しかし、量子アニーリングマシンの実現に関しては、1)高速化のカギである量子状態を長時間保つことが難しく、2)大規模な問題を扱うための計算素子ネットワークの構築が難しい、という技術的課題がありました。
このたびNECは、1)量子状態を長く保つための新量子素子、2)新量子素子間を密に結合し、スケーラブルに拡張可能な量子素子間ネットワーク、の2つの技術の基本動作の検証に成功しました。本方式を用いれば、対象の問題のサイズが大規模な場合であっても、組合せ最適化問題を超高速に解くことができます。
NECはこの技術を採用した本格的量子アニーリングマシンを2023年までに実用化するため、研究者を増員して体制を拡大し、研究開発を大幅に加速いたします。NECは、社会ソリューション事業領域とシステムプラットフォーム事業領域の両面において顧客の価値創造に貢献してまいります。
背景
AI技術の進展により、解きたい社会課題の種類や規模が大きくなっています。社会課題解決の際に頻繁に登場する組合せ最適化問題は、規模が大きくなると組合せの数が爆発的に増加し、近似解法の活用では計算速度および解の精度に限界が来ると予想されています。
このため、従来技術をはるかに凌駕するスピードで組合せ最適化問題を計算できる量子アニーリングマシンが期待されています。しかし、十分な長さの時間で量子状態を活用した計算を実現する量子ビットの回路方式とそれらを十分なサイズで結合させるアーキテクチャが両立したものはありませんでした。
NECは1999年に超伝導固体素子を用いた量子ビットの動作実証に世界で初めて成功して以来、量子ビットや量子状態を制御するデバイス・回路の研究を継続してきました(注)。この蓄積をもとに、このたび、量子状態を長時間維持したまま計算に活用できる新しい量子アニーリングマシンの実現に向けて、理論解析とシミュレーションにより動作を確認し、有効性に目途をつけました。
新技術の特長
量子効果を活用して大規模な問題を高速に解く、世界初の全結合型量子アニーリングマシンの基本素子として以下の特長を持っています。
- 量子効果を計算に使える量子ビットで問題を高速に解ける。
考案された回路はノイズ耐性に優れ、量子状態を長く維持できます。計算時に量子効果を適切に使うことが出来ます。 - 解きたい問題をスケーラブルに表現できる。
量子ビット間の全ての相互作用をスケーラブルに実装できる全結合方式を用い、量子ビット間の配線の限界による規模拡大の制約を解決します。
以上、2つの技術を組み合わせた基本回路ユニットにおける動作の理論的な解析とシミュレーションにより、期待される動作がなされることを検証いたしました。今回の基本動作の検証により、今後NECはこの量子アニーリングマシンを2023年までに実用化するため、研究者を増員して体制を拡大し、研究開発を大幅に加速いたします。
NECグループは、安全・安心・効率・公平という社会価値を創造する「社会ソリューション事業」をグローバルに推進しています。当社は、本コンピューティング技術と他のAI技術を効果的に組み合わせ、人々がより明るく豊かに生きる、効率的で洗練された社会を実現していきます。
以上
- (注)2012年発表「量子ビットを高精度に読出すための新回路を作製し、その動作を実証」
http://jpn.nec.com/press/201211/20121106_04.html
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