5G向け無線ユニットの小型化を可能とするアンテナからの放熱技術を開発
~放熱性能を約2倍に改善し、サイズを約1/2に小型化~
2018年9月20日
日本電気株式会社
NECは、次世代無線通信規格5Gの実用化に向けて、多素子アンテナを搭載した無線ユニットの小型化を可能とする、アンテナからの放熱技術を開発しました。
従来のヒートシンクからの放熱に加え、アンテナも放熱に活用することで、従来比約2倍の放熱性能を達成しました。これは、無線ユニット体積を約1/2へ小型化を可能とします。
5Gでは、多素子アンテナを用いたビームフォーミングにより大容量通信が期待されています。しかし、アンテナ毎の無線回路の消費電力の増加に伴う、ユニット内の温度上昇のため、ヒートシンクとよばれる放熱機構の体積が大きくなり装置が大型化してしまいます。そのため、無線ユニットを設置する場所が限定されるという課題がありました。
今回開発したアンテナ放熱技術は、(1)従来、放熱機能を持たないアンテナへの放熱機能追加、(2)廃熱効率を高める空気流路設計を組み合わせて実現します。これにより、無線ユニットの小型・軽量化を可能とし、設置の自由度を向上できます。また、本ユニットは、放熱のためのファンが不要となり静音性を保つことから、空港やショッピングモールなどの屋内環境への提供も可能となります。
NECは、「社会ソリューション事業」に注力しており、5Gの実現に向けた研究開発を積極的に行っています。今後も無線ユニットの小型化の技術開発を推進し、5Gモバイルネットワークの早期構築と普及に貢献します。
背景
昨今、著しいモバイルトラフィックの増加に伴い、現在の4Gモバイルネットワークに比べて大容量・超高速・超低遅延などが見込まれる5Gモバイルネットワークの早期実現が期待されています。しかし、多素子アンテナを適用した5Gスモールセル向け無線ユニットでは、アナログデバイスの増加に伴う消費電力の増加により大量の熱が発生します。これをファンにより強制的に空冷していますが、ファンの音の課題や保守の必要性がありました。
一方、強制空冷が不要なファンレスの自然空冷方式では、ファンの音の問題がなく、可動部の保守などが不要でメンテナンスが容易である代わりに、放熱に必要なヒートシンクの体積が大きくなり、その分無線ユニットが大型化し、設置場所が限定されるという課題がありました。今回開発した放熱技術は、放熱性能を高めることにより、ヒートシンク体積の縮小を実現し、自然空冷方式における無線ユニットの小型化を可能とします。
新技術の特長
今回開発した新たな放熱技術の特長は以下の通りです。
- 従来放熱機能を持たないアンテナに放熱機能の追加
従来の無線ユニットでは、アンテナと放熱機能は個別設計となっており、アンテナ面からは放熱されておらず、アンテナの裏面にあるヒートシンクから放熱されていました。今回、アンテナ面においては、アンテナ素子の表面の金属形状を工夫した放熱フィンとして機能させると同時に、特定の電波を透過するFrequency-Selective Surface (FSS)構造を有する金属板を放熱機構として追加設計をすることにより、アンテナ面からも放熱を実現し、アンテナ・ヒートシンク面の両面から放熱を行うことが可能となります。 - 放熱効率を高める空気流路の確保
アンテナ面からの効率的な放熱のためには、回路からの熱を空気に伝える放熱フィンとして機能するアンテナ素子の間に、熱を含んだ空気の流路を形成することが必要です。従来のアンテナ素子はサイズが大きいため、空気の流路の確保が困難でした。
そこで、スプリットリング構造のアンテナ(注1)を活用して、アンテナサイズを一般的なパッチアンテナの半分程度としました。さらに、これを垂直に立てて縞板状に配置することで、熱を含んだ空気の流路を確保し、アンテナ面からの放熱を実現しました。また、FSS構造の金属板は流路を妨げないようにアンテナ面に配置し、放熱フィンの密度を増加させることで、アンテナの通信特性を維持し、放熱効率を高めました。
今回開発したアンテナ放熱技術を搭載した無線ユニット(注2)の放熱性能をシミュレーションしたところ、従来のアンテナ構成に比べて、ユニット体積当たり約2倍の放熱性能を確認できました(図2)。
なお、NECは本年9月25日にドイツ・ドレスデンで開催されるIEEE 5G Summit Dresdenにて本技術を含む5G向け無線技術を紹介します。
NECグループは、安全・安心・効率・公平という社会価値を創造する「社会ソリューション事業」をグローバルに推進しています。当社は、先進のICTや知見を融合し、人々がより明るく豊かに生きる、効率的で洗練された社会を実現していきます。
以上
- (注1)スプリットリング構造のアンテナ:
プレスリリース(2012年3月19日)
「NEC、メタマテリアルを応用し、無線モジュールの通信性を向上する世界最小クラスのアンテナを開発~ M2Mネットワークを構築するセンサへの活用に最適 ~」
URL:http://www.nec.co.jp/press/ja/1203/1902.html - (注2)無線ユニットのシミュレーションは、配線基板1枚、装置前面にアンテナアレイ、背面にヒートシンクを備える構成を想定。熱源として、配線基板背面側に35Wマルチチップモジュールを想定し、風速は1m/sとした。
本技術について
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