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【令和8年分 年末調整】「178万円」だけでは判断できない!代表的な4つのケースと実務の流れ

公開日:2026年9月28日(当記事の内容は公開時点のものです)
new window監修:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄

令和8年度税制改正では、基礎控除や給与所得控除の控除額の見直しが行われています。これに伴い、所得税の課税最低限は178万円に引き上げられることになりました。しかし、178万円にのみ着目していては課税や控除、扶養の適用を正しく判断することはできません。また、改正の適用時期により取り扱いが異なる従業員も存在します。

当記事では、4つの従業員像を通じて制度上の境界線を整理するとともに、事前準備から給与反映までの実務を解説しています。ぜひ令和8年分年末調整の参考にしてください。

令和8年分の年末調整は何が変わるのか

令和8年分の年末調整では、控除額や控除の所得要件など、複数の変更が行われています。いずれも実務上重要であり、変更点を正しく理解することが必要です。

●年末調整とは

年末調整とは、毎月の給与等から概算で源泉徴収した所得税等と、1年間に納めるべき所得税等の差額を精算する手続きとなります。年末調整を行うことで、納めるべき所得税等の額が確定します。

●令和8年分の主な変更点

令和8年分の年末調整では、主に以下のような変更が行われます。

  • 基礎控除・給与所得控除
    令和8年分では、合計所得金額に応じて基礎控除額が引き上げられます。令和8年分の基礎控除額は、次のとおりです。
合計所得金額 基礎控除額
489万円以下 104万円
489万円超 655万円以下 67万円
655万円超 2,350万円以下 62万円

給与所得控除の最低保障額は、65万円から69万円へ引き上げられます。ただし、令和8年・9年分については特例により、74万円となります。

区分 令和8年・9年分
(特例適用後)
改正前
給与所得控除の最低保障額 74万円 65万円
  • 扶養親族等の所得要件
    令和8年分からは、扶養親族や同一生計配偶者等の所得要件が引き上げられます。給与収入のみの場合の収入基準を含め、改正前後を比較すると以下のようになります。
扶養親族等の区分 所得要件
(収入が給与だけの場合の収入金額)
改正後 改正前
扶養親族
同一生計配偶者
ひとり親の生計を一にする子
62万円以下
(136万円以下)
58万円以下
(123万円以下)
配偶者特別控除の対象となる配偶者 62万円超 133万円以下
(136万円超 207万円以下)
58万円超 133万円以下
(123万円超 201万5,999円以下)
  • 生命保険料控除の特例
    令和8年分から、23歳未満の扶養親族を有する場合、新生命保険料に係る一般生命保険料控除の特例が適用されます。
項目 特例適用時 通常
新生命保険料に係る一般生命保険料控除の適用限度額 6万円 4万円
生命保険料控除全体の適用限度額 12万円 12万円

なお、この特例は、令和8年分および令和9年分に限り適用されます。

参考)源泉所得税の改正のあらまし 令和8年4月
PDFhttps://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/2026kaisei.pdf

改正は、原則として令和8年12月1日に施行されるため、令和8年11月までの給与の源泉徴収事務には変更がなく、12月1日以後に行う年末調整で改正後の控除等を反映することになります。また、令和9年1月以後に支払う給与等からは、新しい源泉徴収税額表を使用することが必要です。

本人の給与収入が一定範囲にある人:「本人への課税」と「家族に関する控除」を分ける

令和8年分では、給与収入のみの場合、178万円が課税最低限となります。これは、基礎控除額104万円と給与所得控除額74万円の合算ですが、控除額は所得に応じて変動するため、従業員全員に178万円の控除が設けられるわけではありません。

本人に所得税が発生する基準と、配偶者等の扶養に入る基準は同一ではありません。「年収」や「給与収入」「合計所得金額」を混同せず、その金額が誰に関するもので、どの制度の適用要件に使われるのかを明確にし、本人への課税と家族に関する控除を分けて考えることが重要です。

基礎控除額は本人の合計所得金額によって異なるため、副業など給与以外の所得がある場合、その所得見込みも含めて考えることが必要です。人事・給与担当者が副業所得を調査するのではなく、従業員が申告書に適切な見積額を記載できるよう案内しましょう。

配偶者や親族がパート・アルバイトで働いている人:「税法上の扶養」と「社会保険上の扶養」を分ける

令和8年分では、扶養親族等の所得要件の引き上げが行われます。この引き上げによって、前年は対象外だった家族が新たに対象となる可能性があります。

所得税の基準が変わっても、被扶養者認定や社会保険加入基準まで同じ金額に変わるわけではありません。本人への課税や配偶者控除・扶養控除等の適用と、社会保険上の扶養は、それぞれ異なる基準で判断されます。これは、会社独自の配偶者手当・家族手当に関しても同様であり、基準の混同は避けなくてはなりません。

社会保険上の扶養や加入基準は税法上の基準とは異なり、収入だけでなく、本人の働き方や勤務先の規模などに応じて判断されます。そのため、個別の被扶養者認定や社会保険加入の要否、手取り額を一律に判断することは不可能です。断定は避け、必要に応じて管轄税務署や加入先の健康保険の保険者(協会けんぽ等)、年金事務所、配偶者等の勤務先などへの確認を案内しましょう。

23歳未満の扶養親族がいる人:特例対象の家族かどうかで分ける

令和8年分では、23歳未満の扶養親族がいる従業員の場合、特例として新生命保険料に係る一般生命保険料控除の適用限度額が4万円から6万円へ引き上げられます。この特例の適用を受けるためには、単に23歳未満の家族がいるだけでは足りず、その家族が税法上の扶養親族に該当することが必要です。正しく適用するためには、年齢だけでなく、生計維持関係や所得要件の確認が必要となります。

令和8年分の保険料控除申告書には、特例に対応する記載欄が追加されています。前年度の様式を流用することは記載漏れにつながるため、最新の様式を使用しましょう。

一般生命保険料控除の適用限度額が6万円に引き上げられても、生命保険料控除全体の限度額は12万円のままです。特例の適用は令和8年・9年に限った措置である点と併せて注意が必要となります。

12月に給与支給がない人:「11月30日まで」と「12月1日以後」を分ける

死亡退職、海外転勤、休業・休職などにより、11月30日以前に令和8年最後の給与を受ける従業員には注意が必要となります。これは、令和8年分の最終給与を11月30日以前に支払い、その際に年末調整を行った場合には、改正後の基礎控除等が適用されないためです。

12月に給与支給のない従業員が、改正後の基礎控除等の適用を受けるためには、確定申告が必要となります。そのため、対象者には、改正後の控除等が年末調整に反映されないことを伝え、そのうえで個別の確定申告の要否や方法については、国税庁の案内を確認するか、管轄税務署等へ問い合わせるよう案内しましょう。

令和8年分の年末調整に向けて確認したい実務の流れ

多くの変更が行われる令和8年分の年末調整では、事前の準備が大切となります。確認しておきたい実務の流れを解説します。

●事前準備と従業員への案内

事前準備として、最新様式、給与計算システムの対応状況、申告書の配布・回収方法、社内期限、担当者間の役割分担を確認することが必要です。また、前年度の計算表や社内資料、申告書などをそのまま流用しないように注意しましょう。

案内の際には、全従業員への共通案内と、4つの従業員像に該当する従業員への個別案内を分けておきましょう。対象者に対する正しいアナウンスが可能となり、提出漏れや誤った控除額の適用などを防げます。

本人と家族の収入見込みは、前年の申告内容からそのまま転記せず、令和8年分の見込み額を改めて確認してもらいましょう。個別案内では、対象者ごとに必要となる申告欄や提出書類、社外への確認事項を具体的に伝えることが大切です。

●申告書の回収と個別確認

紙や電子といった提出方法ごとに分類することで、提出済みや未提出、不足書類あり、確認中などの状況を管理しやすくなります。期限前にリマインドし、不備や追加確認がある従業員へは個別の連絡を行い、回収を進めていきましょう。進捗状況の見える化を行うと、より回収がスムーズに進みます。

控除や扶養の適用を判断するために、本人や家族の所得見込み、扶養親族の年齢と所得を確認します。また、中途入社、休職、退職、海外転勤など、年末調整の取り扱いに影響する事項も併せて確認しておくことが必要です。

申告方法や社内手続きと、税務署や健康保険の保険者、年金事務所、配偶者の勤務先などへの確認が必要な個別判断は切り分けておきましょう。また、担当者によって案内が異ならないよう、確認先をまとめた社内資料や回答例を用意しておきます。

●年間給与額の確定と給与への反映

賞与や残業代、欠勤控除、変動手当などを含め、その年中に支払う年間給与額を確認します。中途入社者については、前職分の給与等を含めて年末調整できるよう、前職の源泉徴収票を回収します。また、年末調整に先立ち、打刻漏れや勤怠エラー、未承認の残業・休暇申請など、給与額に影響する勤怠情報を確定しておくことも必要です。

令和8年中に適用された通勤手当、食事の現物支給、深夜勤務の夜食代など、非課税限度額の変更が、給与の課税・非課税区分に正しく反映されているか確認することも必要です。これら非課税限度額の変更は、令和8年4月以降の適用など、年末調整とは適用時期が異なります。混同しないように注意しましょう。

年末調整の計算後は、還付額または追加徴収額が給与へ正しく反映されているか確認します。前年から金額が大きく変わった従業員や、扶養情報を変更した従業員、年の途中で勤務状況が変わった従業員などを重点的に確認しましょう。

●対応後の確認と翌年への引き継ぎ

年末調整結果の給与への反映後、源泉徴収票を交付し、従業員からの問い合わせに対応します。また、従業員の勤務希望や就業調整の状況が、シフトの充足や残業の偏り、人員配置に与えた影響を確認し、人事・給与担当者と現場管理者で共有しておくことが必要です。

不備や問い合わせが多かった項目や社内案内で分かりにくかった部分、システム設定やデータ連携の問題があった場合には、それらを整理し翌年度の年末調整につなげます。必要に応じて、申告手続きの電子化や外部サービス・専門家の活用を検討しましょう。

さいごに

令和8年分の年末調整では、178万円などひとつの金額だけで従業員の状況を判断することはできません。本人への課税や家族に関する控除、社会保険上の扶養、会社独自の手当について、適用される金額や要件、時期を個別に整理することが重要です。

年末調整においては、4つの従業員像を踏まえた対象者の把握と案内が必要です。また、年間給与額の確定にあっては、人事・給与担当者と現場の連携が大事です。給与額に影響する残業や欠勤などの勤怠情報を事前に確定し、確認漏れや給与反映の遅れを防ぐことが、正確で従業員にも説明しやすい年末調整につながります。

▼Pickup 勤革時 情報

クラウド型勤怠管理システム「勤革時(きんかくじ)」の中で、年末調整前の年間給与額の確定や勤怠データの確認に役立つ機能をご紹介します。

給与データ出力前のエラー・未確定申請チェック(月別データCSV出力)

給与計算システムへ取り込む月別勤怠データの出力時に、対象期間内の「エラー勤務数」と「未確定申請数」を確認できます。打刻漏れや未承認の残業・休暇申請が残っている場合は、修正・承認を済ませてからデータを出力できます。
残業代や欠勤控除などを含む年間給与額の確定前チェックに活用できます。

異動前後の雇用形態で勤怠を集計(従業員の履歴管理機能)

年の途中で雇用形態を変更した従業員について、対象日・対象月時点の雇用区分設定に基づいて過去の勤怠データを集計する機能です。
正社員からパート勤務へ変更した場合などに、現在の設定で過去の勤怠が再集計されることを防ぎ、変更前後の勤務条件を区別して給与計算用データを確認できます。

給与計算後の勤怠変更を防止(勤怠締め機能)

確認が完了した期間の勤怠を締めることで、従業員による申請・編集をできない状態にします。締めた期間は勤怠データの再計算も制限されるため、給与計算に使用した勤怠と、その後の勤務データに差が生じることを防ぎます。

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