Japan

関連リンク

関連リンク

関連リンク

関連リンク

サイト内の現在位置を表示しています。

【寝ていても給料発生!?】「労働時間」を正しく理解できていますか?

公開日:2025年4月2日(当記事の内容は公開時点のものです)
new window監修:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄

「仮眠時間だから大丈夫」「自主的な残業だから問題ない」――そんな風に考えていませんか? 実は、労働時間の定義は一般感覚とズレていることがあり、思わぬ落とし穴が潜んでいるかもしれません。本記事では、12の具体的事例を通して、労働時間に関する「よくある誤解」を解消します。正しい知識を身につけて、賃金未払いリスクを回避し、健全な職場環境を築きましょう。

そもそも労働時間とは

まずは、労働時間の定義や把握の必要性、把握の方法などについて押さえましょう。

●労働時間の定義

労働時間とは「明示または黙示の指示によって、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」を指すとされています。労働契約や就業規則等で、ある特定の時間を「労働時間としない」と定めていても、その時間が使用者の指揮命令下にあると客観的に判断されれば、労働時間となり、賃金の支払い義務が生じます。
また、労働時間は実際に業務を行っている時間だけを指すものではありません。使用者の指示により待機しているような時間、いわゆる「手待ち時間」も労働時間に該当します。手待ち時間は、使用者の指揮命令から完全に解放されていないためです。

●労働時間把握の必要性

正しく労働時間を把握しなければ、正確な賃金支払いは困難です。労働時間が把握されずに正確な残業手当が支払われないような状態では、労働者のモチベーションが下がるだけでなく、未払い残業手当を巡って訴訟に発展する可能性もあるでしょう。
36協定を締結していたとしても、残業時間には上限となる時間が設けられています。上限を超過した場合には、罰則も予定されているため、正確な管理によって上限時間内に収めなければなりません。
また、長時間労働は労働者の心身を蝕み、最悪の場合には過労死という痛ましい結果を引き起こしかねません。長時間労働を抑制するためにも、正確な労働時間の把握が不可欠なのです。
2017年には、厚生労働省が「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を公開しています。労働時間の正確な把握は、近年において重要性をより増してきているといえるでしょう。

●把握は1分単位が原則

労働時間は、1分単位で把握することが必要です。「切り捨てによる丸め処理」は労働基準監督署の指導対象となります。
「切り捨てによる丸め処理」とは、例えば、「15分丸め」の場合、退勤打刻が18:13に行われたときに、18:00で退勤したものと扱う処理のことを指します。このとき切り捨てた13分の賃金は未払い状態です。
なお、通達によって「1か月における時間外労働、休日労働および深夜業それぞれの時間数の合計に、1時間未満の端数が生じた場合」は、30分未満を切り捨て、30分以上を1時間とする扱いは認められています。これ以外の「切り捨てによる丸め処理」は認められていないので注意しましょう。
丸め処理は、計算上の煩雑さを減らす目的で行われています。勤怠管理システムを導入すれば計算の手間はなくなるため、労働基準監督署から指導されるリスクや賃金未払いリスクを減らすためにも、システム導入によって丸め処理を廃止することをおすすめします。
なお、勤怠管理システムの中には、法令遵守の観点から「丸め」機能がデフォルトで使用できないよう制限を加えているものもあります。コンプライアンスを重視するのであれば、こうした観点から勤怠管理システムを選んでみるのもよいかもしれません。

●把握と集計の方法

労働時間の把握には、タイムカードが広く用いられています。しかし、紙のタイムカードは集計の手間があるうえに、代理打刻など不正打刻の原因ともなりかねないため、勤怠管理システムを用いることが推奨されます。
通常の労働時間制の場合であれば、労働時間の集計は比較的容易です。しかし、変形労働時間制やフレックスタイム制、みなし労働時間制などを適用している場合には、労働時間の把握が困難となるだけでなく、集計も複雑になってしまいます。このような点からも、自動集計機能を備えた勤怠管理システムの利用によって、業務の効率化を図るとよいでしょう。

労働時間か否か判断に迷う事例12選

労働時間とは「使用者の指揮命令下に置かれている時間」です。抽象的な表現であるために、判断に迷う事例も存在します。具体的な事例で労働時間についての理解を深めましょう。

●着替えの時間

飲食店等で着用を義務付けられた制服に着替える時間は、労働時間に該当するとされています。また、業務上必要とされる制服への着替えが労働時間の該当する関係上、着替えのための更衣室から作業場所への移動時間も労働時間になると解されます。
ただし、就業規則等で義務付けられた制服等への着替えではなく、業務後に遊びに行くための着替え時間などは労働時間に該当しません。

●始業時刻前の出社

公共交通機関の混雑回避のために始業時刻よりも前に出社する従業員もいることでしょう。このような場合は、会社からの指示ではなく、労働者の自発的な行動であるため、原則として労働時間とは扱われません。ただ、早く出社しないとこなせない業務量や締切を指示していると、「黙示の指示によって、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」とされるケースもあるので、実態をよく確認することが大切です。
なお、始業時刻前であっても参加が義務付けられる朝礼や体操の時間は、労働時間として扱われます。

●手待ち時間

業務に従事していなくても、指示があれば即業務に移れるように待機している時間は、手待ち時間となります。手待ち時間は労働から解放されているとはいえず、労働時間として扱うべき時間です。
たとえば、飲食店のスタッフが来客を待っているような状態が挙げられるでしょう。このような時間は、他に来店客がまったくいなくても、労働時間としなければなりません。

●休憩時間

通常、休憩時間は労働時間として扱われません。しかし、名目が休憩時間であっても、来客対応や電話対応を求められている場合には、その時間は労働時間として扱うことが必要となります。このような時間は、休憩時間であっても労働から完全には解放されておらず、使用者の指揮命令下にあると考えられるからです。
これは、結果として来客や電話がなかった場合でも変わりません。「休憩時間」だからといって、実態を見ずに労働時間から除外しないよう注意しましょう。

●トイレ休憩

1時間や2時間といったごく短い勤務時間の日を除けば、勤務時間中にトイレに行くことがあります。トイレに行くことは生理現象であり、通常はごく短時間で済むため、労働時間から除外されず賃金控除の対象とはされません。トイレ後は即業務に戻る必要があり、労働から解放されているとはいえないでしょう。業務に支障を来すような長時間の離席を除き、労働時間から除外することは現実的ではありません。
なお、生理現象ではありませんが、いわゆるタバコ休憩も同様の考え方ができると解されます。

●移動時間

自宅から出張先への移動時間は、移動中の自由が保障されているのであれば、労働時間とはなりません。これは、自宅と会社を往復する通勤時間が、通常自由な利用が認められているため、労働時間に当たらないとされていることと同じ考え方です。一方で、移動中に資料の作成を命じられているなど場合には、移動中も労働から解放されているとはいえず、労働時間として扱わなくてはなりません。
また、所定労働時間内の移動時間は、会社から連絡があれば対応することが必要であるため、労働時間になると解されます。

●未申請の残業時間

残業を行うために上長への申請が必要となる会社もあります。しかし、残業申請が必要な会社であっても、手続きを経ずに、従業員が残業を行うケースもあるでしょう。このような場合は、原則としてその残業時間は労働時間とはなりません。
しかし、通常の所定労働時間内では処理しきれない業務を担当させられていたような事情も考えられます。このような場合、会社から黙示の残業指示があったと解され、未申請の残業であっても労働時間として扱うことが必要です。

●終業後の清掃

終業後に清掃や日報の作成を行うこともあるでしょう。このような場合には、清掃や日報の作成が会社から義務付けられていたかどうかで扱いが変わります。
清掃や日報の作成が会社から義務付けられていたのであれば、終業後であっても労働時間として扱うことが必要です。一方で、終業後自発的に会社の周りの清掃を行ったり、個人的な振り返りのために、義務付けられていない日報を作成したりした場合は、労働時間として扱わなくても差し支えありません。

●仮眠時間

泊まり勤務などでは会社施設内の仮眠室等で仮眠を取ることも珍しくありません。仮眠時間は、実際に作業を行っていないため、一般的な感覚でいうと労働時間にならなそうです。しかし、仮眠中であっても緊急事態等があれば、直ちに対応する義務が会社から課せられている場合には、手待ち時間と同様に労働時間として扱われます。このような不活動仮眠時間であっても、労働から完全に解放されているとはいえないことが理由です。

●忘年会等のイベント

社員同士の親睦を深めることを目的に、忘年会や運動会など、業務時間外で会社主催によるイベントが行われることも珍しくありません。
このようなイベントは、参加が任意であれば、労働時間とはなりませんが、参加が強制されていれば、労働時間となります。そのため、イベント等の参加によって法定労働時間を超過したのであれば、割増賃金の支払いも必要です。自社のイベントだけでなく、取引先との会食など接待における時間でも、同様の考え方が可能となります。ただし、個人的に親睦を深めるため、取引先と会食を行ったなどの事情があれば、労働時間とはなりません。
仮にイベントへの参加が任意であったとしても、不参加によって人事考課に影響を及ぼすような場合には、実質的には強制参加と考えられます。名目上、任意参加だからといって、労働時間から除外しないように注意しましょう。

●研修やセミナーへの参加

研修やセミナーへの参加も会社からの強制がなく、従業員の自由意思に基づくものであれば、労働時間とはなりません。ただし、研修やセミナーへの参加が、業務を遂行するために不可欠な知識や技術を得るためのものであれば、自由参加であっても、実質的には強制と異なりません。このような場合には、参加が自由であっても、その時間は労働時間として扱うことが必要です。

●健康診断

一般健康診断は、業務の遂行と直接関係がないため、検診に要した時間は労働時間とはならないものと解されます。ただし、健康の確保は事業の運営に不可欠であるため、その時間は労働時間として賃金を支払うことが望ましいでしょう。
一方で、高気圧業務や放射線業務、石綿業務など一定の有害業務に従事する場合に必要となる特殊健康診断は、業務遂行上必要なものであるため、検診に要した時間は労働時間となり、賃金支払いの対象となります。

おわりに

労務管理上、労働時間の正確な把握は不可欠です。しかし、働き方改革を受けて働き方の多様化が進む昨今では、採用する制度に応じた複雑な労働時間の管理が必要となっています。
勤怠管理システムを適切に導入すれば、適用される労働時間制に応じた労働時間の集計を行ってくれます。企業として行うべきことは、どんな時間が「労働時間」に該当するのかを正確に理解し、従業員にもれなく打刻してもらうよう働きかけることになります。

▼Pickup 勤革時 情報

クラウド型勤怠管理システム「勤革時(きんかくじ)」の中で、今回取り上げた労働時間管理に関係のある機能「残業申請機能」「勤怠確認機能」についてご案内します。

●残業申請機能

スケジュール外の労働時間について、従業員が開始・終了時刻を申請し、承認された後に計上されるようにする機能です。
詳細は以下のヘルプをご覧ください。

●勤怠確認機能

従業員が自分の1ヶ月の勤怠を確認する機能です。労働時間として計上されていない時間がないかを従業員がチェックする機会になり、未払いの防止やトラブル予防の効果が期待できます。
詳細は以下のヘルプをご覧ください。

お問い合わせ・無料トライアル

Escキーで閉じる 閉じる