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【未払い賃金の発生リスクもアリ!】休日と休暇の違いを理解しておくべき理由とは?

公開日:2024年11月27日(当記事の内容は公開時点のものです)
new window監修:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄

会社が休みという意味では、休日と休暇に違いはありません。ただし、残業代の計算や、割増賃金の取扱いについては違いがあり、正しい理解をしていないと、未払いや過払いを発生させるリスクがあります。本稿では、知識の解説とともに、勤怠システムの活用方法や、休日と休暇をうまく活用した採用活動のポイントもご紹介します。

休日と休暇の違い

まず、労務管理上、休日と休暇がどのような意味を持つのかを確認しましょう。どちらも「仕事を休む」ことには変わりませんが、以下のような意味で使い分けられています。

  • 休日
    労働義務がない日。従業員が労働の義務を負う労働日ではない
  • 休暇
    労働義務があるが、それを免除された日。ベースは労働日となる

例えば、「8月13日から15日はお盆休み」というような会社があるとします。この期間が休暇であれば、13日から15日は、本来労働義務のある労働日になります。夏季休暇などと設定することで、労働義務を免除しているわけです。休日であれば、最初から労働義務のない日という扱いをしていることになります。

残業代計算への影響

「仕事を休む日」が、休暇なのか休日なのかで生じる違いは、残業代計算に表れます。その説明のために、改めて残業代計算の流れを確認しましょう。

①残業代 = 残業単価×残業時間
②残業単価 = 1時間あたりの基礎賃金×割増率
③1時間あたりの基礎賃金 = 月給÷月平均所定労働時間

③の式に出てくる「月平均所定労働時間」は以下の計算式で求めます。ここに「休日」が出てくるのです。

年間労働日数 = 365日-年間休日数
月平均所定労働時間 = 年間労働日数×1日の所定労働時間÷12

計算上、年間休日数が多ければ多いほど、月平均所定労働時間は少なくなります。月平均所定労働時間が少なければ少ないほど、基礎賃金は上がることになりますので、年間の休日数が多いほど、残業単価も上がることになるわけです。
「休暇」は、もともと労働義務がある日ですから労働日数に含まれるので、上記の計算式の「年間休日数」に含まれません。

両者を混同した場合のリスク

残業代の計算において考慮される休みが休日、考慮されない休みが休暇と整理することもできます。ということは、残業代計算の際に、休日と休暇を混同していると、正しい残業代を計算できないわけです。これは、残業代未払いのリスクをはらんだ状況と言えます。
最悪の場合、残業代をちゃんと払わない会社であるとして従業員から訴えられることも考えられます。そうした場合、イメージダウンは避けられないでしょう。また、単に未払いの残業代を支払えば足りるわけではなく、遅延利息を含めて請求されることになるので金銭的な負担も増えます。

休日と休暇が使い分けられているかチェック

休日と休暇は、就業規則等の記載によって定まりますので、残業代計算は就業規則等の定めとズレがないかをチェックする必要があります。
まずチェックしたいのが、就業規則や雇用契約書、求人票の3つでズレがないかです。そもそも休日や休暇の総日数がそれぞれの書類で異なるのは問題ですが、その内訳をどう表示しているかもズレがないかを確認しましょう。
仮に、就業規則と雇用契約書、求人票のそれぞれについて、以下のように年間休日数が記載されていたとします。

就業規則:休日130日
雇用契約書:休日110日、休暇20日
求人票:休日100日、休暇30日

この場合は、労働者にとって最も有利となる就業規則の規定が適用されます。就業規則の基準に満たない労働条件は、就業規則の基準に引き直して適用されるからです。

次に就業規則の中での表記方法にも注意が必要です。

休日:土日祝日、夏季休暇

このような定め方では、「休暇」と記載していても、すべてを休日として扱わなくてはならなくなります。
ただ、休暇と休日の違いを理解していて、すべてを休日として給与計算を行っていれば問題ありません。残業単価は高くなってしまいますが、未払いの問題は生じないからです。しかし、夏季休暇等を休暇として扱い、年間休日数に含めていない場合には、未払いが生じている恐れもあり、早急な見直しが必要です。

休日に関する注意点

休日と休暇の違いを押さえることができたら、次は休日についても正しい知識を身につけましょう。
まず押さえておきたいのが、休日には法定休日と法定外休日があるということです。この違いは、休日に働いたときの給与計算に大きな影響を与えます。

休日出勤が法定休日に行われた場合、35%以上の率で計算した割増賃金の支払いが必要です。
労働基準法では、1週に1日または4週を通じて4日の休日を与えなければならないと定めています。この休日が法定休日となり、それ以外の休日は「法定外休日」として扱われます。土日を休みとする週休二日制を採用する企業においては、いずれかが法定休日となり、もう一方が法定外休日です。たとえば、法定休日が日曜であれば、日曜に出勤した場合には割増賃金の支払いが必要となります。

法定外休日には、原則として割増賃金の支払いは不要となり、労働時間に対応した通常の賃金を支払えば足ります。しかし、法定外休日に出勤したことで、週の法定労働時間である40時間を超過した場合には、25%以上で計算した割増賃金の支払いが必要となります。
たとえば、土日を休みとする1日の所定労働時間が8時間の会社で、法定外休日である土曜に出勤した場合で考えてみましょう。この場合には、月曜から金曜ですでに40時間の労働を行っているため、土曜日の労働時間が何時間であっても40時間超の労働時間となってしまい割増賃金の支払いが必要です。

週途中に祝日がある場合には、土曜の出勤によって40時間を超過しないため、割増賃金の支払いは不要です。

週の所定労働時間が8時間よりも短い場合には、法定外休日出勤を行っても割増賃金の支払いが不要となる場合があります。たとえば、週の所定労働時間が6時間であれば、月曜から土曜まで各日6時間ずつ働いても36時間にしかならず、割増賃金の支払いは不要です。

一方で所定労働時間が7時間の場合には、土曜の労働時間によって扱いが異なります。他の日と同様に土曜も7時間の労働を行えば、総労働時間は42時間となり、2時間分について割増賃金の支払いが必要となります。しかし、土曜の労働時間が5時間以内であれば、週の総労働時間は40時間以内に収まるため、割増賃金の支払いは不要です。

休日の特定

労働基準法は、法定休日の特定を義務付けていません。そのため、特定しなくても法違反とはなりませんが、特定することが望ましいとされています。特定しない場合、行政解釈上は暦週の後ろに来る休日が法定休日になるとされています。
土日を休日としている会社で、週の起算日が日曜日である場合、土曜日が法定休日となります。なお、週の起算日は、就業規則で任意の曜日を定めることができますが、その定めのない場合は、日曜日が起算日になります。日曜日を法定休日にしたい場合には、週の起算日を月曜日と定めることが必要です。

最低日数

労働基準法では、週に1日または4週を通じて4日の休日を与える旨を定めていますが、1年間で何日以上の休日を与えるべきかは定められていません。
1年間は52週間なので、52日間与えればよいとも考えられますが、その会社の1日の所定労働時間によっては、この日数以上を与える必要があります。
例えば、所定労働時間が8時間で週1日の休日だと、週40時間とされている法定労働時間を超えることになります(8時間×6日間=48時間)。そのため、週休2日、年間105日の休日の確保が必要ということになります。1日の所定労働時間が8時間の会社が多いことから、「1年間の最低休日日数は105日」と言われることもあります。
もちろん、1日の所定労働時間が8時間よりも短い場合は、105日よりも少ない休日でも、法定労働時間を超える労働は発生しません。例えば、月曜から土曜の所定労働時間が6時間40分だと、1週間に1日の休日でも時間外労働は発生せず(6時間40分×6日間=40時間)、年間では52日間の休日でもよいという計算になります。

休みを増やせば会社の魅力がアップ

現在は、求職者が会社を選ぶポイントとして、年間休日数や特別休暇の有無なども重視されるようになっています。そのため、最低限の休日しか与えていない場合には、求職者を集めることも難しくなります。また、有給休暇を取得しやすい環境であるかどうかもポイントとなります。法定の年5日以上の取得を促進する環境づくりが大切です。
法の定める休日数を確保し、消化義務も果たしている場合には、会社独自の特別休暇を設けることも考えられます。慶弔休暇や夏季休暇だけでなく、リフレッシュ休暇やボランティア休暇などを設ければ、ワークライフバランス実現を支援する企業として、求職者にとってより魅力的に映ります。

おわりに

休日と休暇を混同して就業規則等に記載すれば、残業単価の上昇や残業代の未払いにつながってしまいます。
とはいえ、正しく使い分けて給与計算ができているか不安な担当者の方も多いでしょう。そのよう場合には、勤怠管理システムの導入をご検討ください。当記事で解説した注意点などを守った給与計算が可能となります。

Pickup 勤革時 情報

クラウド型勤怠管理システム「勤革時(きんかくじ)」の中で、休日や休暇に関連のある機能「スケジュールの設定・管理」「休暇区分設定」についてご案内します。

スケジュールの設定・管理

本システムでは「勤務日種別」を設定することにより、その日の勤務時間を平日勤務として集計するか、休日勤務(法定休日勤務または法定外休日勤務)として集計するかを決められます。
また、毎週同じ設定を適用することも可能ですが、例えば事前に休日を振り替えたい場合や、年数回だけ土曜出勤日があるという場合には、手動で設定することもできます。
詳しくは以下のヘルプをご覧ください。

休暇区分設定

本システムでは「休暇区分設定」で有給休暇や代休のほか、会社独自の休暇付与の設定ができます。休暇がうまく付与されないなどの問題が発生したときは、まずは設定内容を確認しなければなりません。
詳しくは以下のヘルプをご覧ください。

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