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算定基礎は「勤怠」で決まる!働き方を可視化し経営戦略へつなげる秘訣

公開日:2026年6月3日(当記事の内容は公開時点のものです)
new window監修:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄

4月から6月までの報酬額を届け出ることで、一年間の健康保険と厚生年金保険の保険料が決定されます。この手続きを定時決定と呼び、4月から6月の給与を算定基礎届として提出することが必要です。

算定基礎届の提出は、保険料決定のために行われるその場限りの手続きではありません。前提として日々の勤怠が存在し、手続きの過程で得たデータは経営戦略の立案に活かすことも可能です。当記事を参考に、算定基礎を経営に活かすヒントを掴んでください。

算定基礎の概要と⽬的

算定基礎届の提出は、健康保険と厚生年金保険の保険料を決定する手続きであり、その対象となる期間は重要な意味を持ちます。算定基礎の概要と目的を解説します。

・算定基礎における「4⽉から6⽉」の重み

算定基礎の対象は、4月、5月、6月の3か月です。この3か月間の報酬の平均額を基に標準報酬月額と保険料が決定されます。そのため、算定基礎において4月から6月は非常に重要な意味を持つことになります。

算定基礎の対象となる報酬は、基本給だけでなく残業代や通勤手当も含まれます。そのため、4月から6月に残業が増えたり、今春の運賃改定で通勤手当が上昇したりすれば、その分1年間の保険料負担も重くなります。保険料の企業負担という観点からも、4月から6月の業務量の配分は重要です。

・将来の年⾦や各種給付の計算根拠

算定基礎を基に決定された標準報酬月額は、将来の老齢厚生年金の支給額に反映されます。また、傷病手当金や出産手当金も標準報酬月額を基に支給額が決定される仕組みです。正確な算定は、従業員の将来の安心や、万が一の備えを担保するという意味でも重要な業務といえるでしょう。

・法定福利費という「巨⼤な固定費」

保険料は、従業員と企業が折半して負担するため、算定の結果は、企業の社会保険料負担(法定福利費)の決定という意味を持ちます。法定福利費は企業にとって重い負担であり、4月から6月の働き方によっては、当年度もしくは翌年度の営業利益を圧迫する要因にもなりかねません。法定福利費の負担を減らしたいのであれば、対象期間中の業務量の削減などを検討する必要があるでしょう。

算定基礎の要となる勤怠データ

算定対象となる月の判断にあたっては、勤怠データが重要な意味を持ちます。算定基礎の要となる勤怠データについて解説します。

・算定対象可否をわける「⽀払基礎⽇数」という判定基準

支払基礎日数は、報酬の支払い対象となった日の数となります。また、支払基礎日数は、原則として17日以上必要であり、17日未満の月がある場合には、その月を除いて算定することが必要です。また、休職中で給与を受けないなどの理由によって、3か月間とも17日未満であれば従前の標準報酬月額がそのまま保険料の決定に用いられます。

時給制や日給制であれば、年休取得日を含めた出勤日数がそのまま支払基礎日数となります。時給制で働く従業員が16日出勤し、年休を1日取得した場合、支払基礎日数は16日ではなく、17日になるわけです。

月給制の場合には、暦日数が支払基礎日数となりますが、欠勤控除される場合には、所定労働日数から欠勤日数を控除した日数が支払基礎日数です。たとえば、暦日数31日の月(所定労働日数21日)に5日欠勤した場合、欠勤控除がなければ支払基礎日数は31日ですが、欠勤控除があれば16日となります。

算定の対象となるのは、4月から6月全ての月ではなく支払基礎日数を基準として対象月が決まる点に注意しましょう。

・⽇々の「打刻」の積み重ねが「算定基礎」を形づくる

定時決定のために算定基礎届を作成するという考え方では、その場しのぎの集計となりがちです。そのような集計では、ミスが起こりやすくなるだけでなく、データを経営戦略に活かすことも難しいでしょう。

算定基礎届は、日々の打刻に基づく勤怠管理の積み重ねが給与計算につながった結果、自然に出来上がるものです。打刻から勤怠管理、勤怠管理から給与計算、給与計算から算定基礎届、この流れを作っておくことが重要となるでしょう。この流れが出来上がっていれば、正確な算定基礎届の作成が可能となるだけでなく、定時決定の時期に届出作成のためのリソースを多く割く必要もなくなります。

・算定基礎の「正確性・効率化」における勤怠管理の重要性

将来の年金額や手当金の支給額にも関わる算定基礎は、ミスが許されません。算定基礎届の作成は、日々の打刻を含めた勤怠管理の積み重ねが前提として存在します。そのため、勤怠管理の精度を上げることは算定基礎の正確性を上げることにもつながります。正確な勤怠管理は、効率的な集計にもつながるため、その精度向上は業務全体にプラスの影響を及ぼすでしょう。

不透明な勤怠管理が招く算定基礎の落とし⽳

正確な勤怠管理は適正かつ効率的な算定基礎につながります。一方で不透明な勤怠管理は、算定基礎に大きな悪影響を及ぼします。

・アナログ管理に潜む「データ毀損」のリスク

勤怠管理システムを用いた勤怠管理は、正確かつ効率的です。しかし、手書きやExcelでの勤怠管理を行う企業も未だに一定数存在します。

手書きやExcelでの勤怠管理の場合、算定基礎届作成時にデータを転記したり、手入力したりする必要があります。このような作業は非効率であるだけでなく、情報の不整合など、ミスの発生にもつながるものです。また、紙ベースで物理的に勤怠データを保管していれば、どうしても破損や滅失のリスクが付いて回ります。正確な過去の勤怠データが存在しなければ、正確な算定基礎届の作成も不可能です。

・未払い残業代と算定漏れの連鎖リスク

アナログ管理など、不透明な勤怠管理を行っている場合、その企業は常に潜在的な残業代未払いのリスクを背負っているといえるでしょう。不透明な管理体制のもと、不正確な打刻や労働時間の集計がなされていれば、正確な給与計算も不可能であり、意図せずに不正確な算定基礎届を作成していることも考えられます。

算定の根拠となるデータが不正確であれば、不正確な保険料が決定されることになります。このような場合、修正が必要となりますが、修正後の保険料との差額は遡及して支払うことが必要です。行政からの指導によって、遡及支払いが発生した場合、思わぬ形で企業のキャッシュフローが圧迫されることになります。

・「季節的変動」への対応困難(保険者算定の壁)

定時決定は、その仕組み上、4月から6月だけ突出して残業が多くなるような業種の場合、実態が保険料に反映されているとはいえません。そのため、年平均の報酬額で算定する「保険者算定」と呼ばれる特例が存在します。しかし、保険者算定を利用するためには、4月から6月までの3か月間に受けた報酬の平均と、前年7月から当年6月までの報酬の平均との間に2等級以上の差が生じ、さらに当該差が業務の性質上例年発生することが見込まれなければなりません。

この差が例年発生すると証明するためには、過去の正確な勤怠データが必要不可欠です。エビデンスなく特例を利用することはできないため、不透明な勤怠管理を行っている場合には、実態を反映した適正な保険料に是正する機会を失うことになります。

勤怠データを「算定基礎」へつなげ経営を最適化するポイント

勤怠データを算定基礎につなげることは、経営の最適化にもつながります。最適化のポイントを解説します。

・デジタル打刻による「⽀払基礎⽇数」の⾃動精緻化

アナログな打刻や集計は、ミスの発生につながるだけでなく、手間も掛かってしまいます。しかし、アナログ打刻をシステムの利用などによるデジタル打刻に切り替えれば、自動で集計が可能となり、ミスと事務負担の軽減を同時に行うことも可能です。また、年休取得や⽋勤、休職期間を含む報酬⽀払いの根拠となる⽇数をシステム上で⾃動集計できるため、算定対象月の判断ミスもなくなるでしょう。デジタル打刻への切り替えによる自動精緻化は、転記ミスや判断ミスを排除し、保険料の誤徴収や遡及修正に伴う無駄な事務コストを根絶させます。

・算定プロセスを「組織の異常検知(健康診断)」に活⽤

算定基礎届の提出は、標準報酬月額と保険料額を決定することが主たる目的となります。しかし、算定基礎届を単なる提出書類に留めず、組織の異常を検知する「組織ドック」として活用することも可能です。

算定基礎届から読み取った標準報酬月額の分布状況から、特定部署の過重労働や報酬の歪みを可視化すれば、業務量や報酬の適正化が図れます。また、算定基礎届から⻑時間労働の常態化を検知し、離職防⽌やメンタルヘルス対策へのアラートとして機能させることも可能です。

・データに基づく「配置最適化」と「経営予測」の精度向上

算定基礎届の作成には、各月の支払基礎日数や詳細な報酬額の集計が不可欠です。この集計過程で得られる残業代や休日出勤手当等の支給データは、まさに労働実態を可視化したものと言えます。こうしたデータに基づいて現状を分析することで、⽣産性向上に向けた戦略的な⼈員配置を行うことも可能です。また、算定基礎届によって確定した法定福利費を正確に把握することは、次年度の営業利益予測や予算策定の精度を向上させることにもつながります。算定基礎届に基づく配置の適正化と精度の高い経営予測は、法定福利費を「管理不可能なブラックボックス」から「管理可能なコスト」へと変えることになるでしょう。

・コンプライアンス強化による企業価値の向上

正確な打刻を起点とした適正な算定は、コンプライアンスの強化につながり、従業員が将来受けるべき年金や、傷病時や出産時に受ける手当金の給付を担保します。適正な管理体制を敷き、コンプライアンスの強化を図る企業は、健全な労使関係の構築によるエンゲージメントの向上や、企業価値向上による採用力の強化も見込めるでしょう。採用競争の激化する昨今にあって、企業価値の向上は必要不可欠な施策です。

さいごに

日々の勤怠データに基づく算定基礎は、従業員の保険料や企業の福利厚⽣費へ反映されるだけでなく、経営予測や将来の給付へとつながっていきます。しかし、そのためには正確な算定が不可欠であり、算定の基盤となる勤怠管理を正確に行うことが前提条件となります。アナログではなくデジタル打刻へ切り替えるなど、正確かつ効率的な管理を行うことが必要となるでしょう。日々の打刻により蓄積された勤怠データは、経営最適化のためにも活用可能です。当記事を参考に是非活用を図ってください。

▼Pickup 勤革時 情報

クラウド型勤怠管理システム「勤革時(きんかくじ)」の中で、算定基礎に関係する勤怠管理の役立つ機能をご紹介します。

出勤および有給休暇取得日数の自動集計

算定基礎の土台となる「平日出勤日数」「休日出勤日数」「有給休暇取得日数」などを打刻に基づき自動集計できます。

集計されたデータはCSV形式で一括出力できるため、給与計算システムへのスムーズな連携も可能です。

支払基礎日数の表示

「出勤日数+有給休暇取得日数」など、算定基礎の手続きに必要な日数の合算値を設定して集計することができます。

残業時間等のアラート機能

残業時間や週の労働時間が設定値を超えた際、本人や管理者へメール通知する仕組みです。各基準の超過前に注意喚起することで、コンプライアンス違反を防止します。

時間外労働時間の可視化

蓄積された全社の労働時間データを自動でグラフ化し、組織全体の稼働バランスを確認できます。「組織の健康診断」として残業傾向を分析することで、人員配置の最適化や次年度の経営計画の資料としても活用できます。

人件費概算出力機能

従業員ごとの単価設定により、労働時間に基づいた日別・月別の人件費概算を自動で算出します。勤務状況やコスト推移を把握でき、算定基礎期間を含めた労務管理の判断材料として役立ちます。

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