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「106万円の壁」撤廃後は「週20時間管理」がカギに!扶養内シフトの調整と社会保険加入の判断ポイント
公開日:2026年7月30日(当記事の内容は公開時点のものです)
監修:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄

税制改正によって、所得税に関する壁が178万円になったことをはじめ、年収の壁は近年大きく変更されています。社会保険加入に関する「106万円の壁」も撤廃が予定されており、撤廃後を見据えた勤務時間管理が重要となっています。
本記事では、106万円の壁撤廃後における「週20時間管理」について、その重要性や課題への対応を解説しています。ぜひ参考として、これからの勤務時間管理に役立ててください。
「106万円の壁」撤廃後はなぜ「週20時間管理」が重要になるのか
従業員の社会保険加入の要否は、月額8.8万円(年収106万円)の賃金要件が重要な意味を持っています。しかし、この賃金要件は撤廃が予定されており、今後は「週20時間管理」が重要となります。
・賃金要件撤廃により、収入額だけを基準にした管理では不十分になる
従業員数51人以上の特定適用事業所における社会保険加入の要件である月額8.8万円の賃金要件は「106万円の壁」として知られています。しかし、この106万円の壁は2026年10月に撤廃予定であり、撤廃後の特定適用事業所における短時間労働者の加入要件は、主に「所定労働時間が週20時間以上」であるか否かで判断されることになります。
賃金要件撤廃後は「月額賃金8.8万円未満であれば加入不要」という従来の確認方法では不十分です。扶養内勤務を希望する短時間労働者の管理軸を「収入額」から「勤務時間の実態」へ移行させなければなりません。
・「週20時間以上」などの加入要件は引き続き確認が必要
現在は51人以上となっている企業規模要件も2027年10月より段階的撤廃が開始し、2035年10月には完全撤廃の見込みとなっています。このことにより、将来的には週20時間以上働く短時間労働者は原則社会保険に加入することが必要となります。
賃金要件が撤廃されても「週所定労働時間20時間以上」「学生でない」など、他の要件は引き続き確認が必要です。加入漏れがないように慎重に確認を行いましょう
・130万円未満等の被扶養者認定とは別軸で判断する必要がある
社会保険に関する壁としては「130万円の壁」も存在します。ただし、106万円の壁が本人の社会保険加入に関する壁であるのに対し、130万円の壁は被扶養者認定における壁となっています。
106万円と130万円の2つの壁は、別の判断軸であり、106万円の壁撤廃後も130万円の壁は残ります。また、2025年10月以降は19歳以上23歳未満の扶養対象者(被保険者の配偶者を除く)の場合、被扶養者認定の年間収入要件が150万円未満となっているため、別途確認が必要です。
週20時間を「超えそう」なときの現場課題と対応Q&A
週20時間を超えそうな場合、現場ではどのような課題が発生し、どのように対処すべきなのでしょうか。課題と対応について解説します。
Q1.従業員から「今の働き方で扶養内に収まっていますか?」と聞かれたら、どう回答すればよいですか?
このような質問には、年収見込みだけでなく、加入先健康保険の認定基準と週20時間以上勤務になっていないかを確認したうえで回答することが必要です。契約時間はもちろん、打刻実績やヘルプ勤務を含めた合計勤務時間を確認しましょう。また、扶養内勤務を続ける場合の働き方や、週20時間以上になる可能性がある場合の選択肢を本人へ説明することも必要となります。
2026年4月以降は、130万円の壁に関して将来の収入見込みだけでなく、労働契約時点における年収見込みでも被扶養者認定の判断が可能となっています。説明の際には、労働条件通知書等を確認しておくことも必要となるでしょう。
Q2.本人は扶養内勤務を希望しているのに、現場ではシフトを増やしたい場合、どう調整すべきですか?
まず、本人が扶養内勤務を希望していることを前提に、現場でシフトを増やす必要がある理由や期間を確認しましょう。シフトを増やしても扶養内に留まれる場合には、その旨を説明したうえで調整を行います。
シフト変更により社会保険に加入することが必要となる場合、本人に対し、扶養内維持の意向に変わりはないか、または社会保険加入を前提とした勤務時間増を検討できるかを再確認します。本人の扶養内勤務の意思が固い場合には、代替要員の確保が必要です。しかし、この場合代替要員の勤務時間が週20時間に近づいていないかを確認しなければなりません。
たとえば、Aの勤務時間を抑えるためにBへシフトを振り替えても、Bも週20時間に近づいている場合、単純なシフト差し替えでは解決できません。このような場合、AだけでなくBの勤務時間や社会保険加入要件への該当可能性も確認し、複数名による分散や追加採用を含めた調整が必要となります。
Q3.契約では週20時間未満なのに、予定外のシフト追加で勤務時間が増えている従業員にはどう対応すべきですか?
繁忙期などで一時的に週20時間以上となった場合、原則として社会保険への加入は不要です。ただし、このような場合、契約書では週20時間未満でも勤務実態が週20時間以上となっていないか確認することが必要です。
たとえば、契約上の勤務時間は週18時間であっても、人手不足や繁忙期などにより、実態として週20時間前後の勤務が続く場合、加入要件を満たす可能性があります。一時的な増加か、継続する見込みがあるのかを確認することが必要です。そのうえで、本人の希望も踏まえ、扶養内勤務を続ける場合はシフトを調整し、勤務時間を増やす場合は、契約内容の見直しや社会保険加入の要否確認につなげましょう。
Q4.複数店舗へのヘルプ勤務がある従業員は、どのように労働時間を確認すべきですか?
このような場合、ヘルプ先となる店舗単位ではなく、従業員単位で労働時間を考えることが必要です。勤務した店舗ごとに見た場合に週20時間未満であっても、ヘルプ勤務の時間を合算した結果として週20時間以上となるのであれば、社会保険加入の要件を満たす可能性があります。ヘルプ勤務の多い従業員は、このような点にも注意しなければなりません。
勤怠管理システムを活用して「週20時間管理」を後追いにしない
週20時間管理の対応に勤怠管理システムを活用することで、プラスαの効果を生み出すことも可能です。勤怠管理システムによる対策について解説します。
・「契約時間」と「打刻実績」のズレを確認する
勤怠管理システムでは、打刻実績を正確かつ客観的に確認することが可能です。そのため、契約上の所定労働時間と打刻実績を照らし合わせ、勤務時間が週20時間に近づいていないかを把握しやすくなります。また、契約時間や打刻実績などの客観的なデータを活用すれば、従業員からの問い合わせや本人説明にも対応しやすくなるでしょう。
・自動集計により勤務実績と傾向を把握する
勤怠管理システムによる勤務時間の自動集計により、勤務時間の増加傾向を継続的に追跡しやすくなるだけでなく、複数店舗へのヘルプ勤務がある場合でも、従業員単位の労働時間が正確に把握可能となります。システムの導入によって、店舗や担当者ごとの確認に頼らない勤務実績の一元管理体制を構築することが重要です。
・アラート設定で超過前に気づける仕組みをつくる
週20時間を超えてから気づくのでは、対応が後手に回り、意図せぬ社会保険加入が生じてしまう恐れがあります。アラートの設定などによって、超過前に対応できる体制を構築することが必要です。週18時間や19時間など社内の確認目安を設定し、該当者が出た段階で本人説明やシフト調整へ移れる体制を構築しましょう。
週20時間管理を「人件費予測」と「人員確保」に活かす
週20時間管理は、それだけでは「守りの制度対応」に留まります。週20時間管理を「人件費予測」や「人員確保」などに活かし、守りに留まらない「攻めの経営判断」につなげる方法を解説します。
・社会保険加入による人件費変動を見込む
週20時間以上となる従業員は社会保険に加入することになるため、企業はその分の社会保険料を負担しなければなりません。そのため、週20時間に近い従業員の把握は、企業側の社会保険料負担を含めた将来の人件費変動の把握にもつながります。週20時間管理は「誰が加入対象となりそうか」という加入対象の把握だけでなく「どの店舗や部門で人件費が増えそうか」という将来の人件費予測に活かすことも可能です。
・扶養内勤務を前提にした場合の人員不足を把握する
扶養内勤務継続を希望する従業員の勤務時間を抑える場合、超過を防ぐための週20時間管理が必要となります。この管理は、どの時間帯や業務で人手が不足するのかという人員不足の予測につなげることが可能です。週20時間管理によるデータをもとに、不足分を既存スタッフで補うのか、追加採用するのか、シフトを組み替えるのかを検討し、適切な配置・採用計画の立案につなげてください。
・社会保険加入を前提にした働き方を人員確保に活かす
社会保険料の本人負担が発生するため、扶養内勤務を想定していた従業員は、社会保険への加入に慎重になりがちです。そのため、企業は週20時間に近づいた従業員のシフト変更や、代替人員の配置を図ることが必要となり、安定した人員の確保が困難であることが多くなっています。
一方、従業員が社会保険加入を希望する場合であれば、勤務時間を増やすことで安定的な人員確保が可能となります。扶養内勤務を希望する従業員だけでなく、より長く働ける従業員を把握し、既存人材の活用につなげることが、戦略的な人員確保につながります。そのためには、社会保険加入によるメリットの丁寧な説明や、社会保険加入による手取り減少を抑える調整などが必要となるでしょう。
週20時間管理は、単なる制限管理ではありません。働き方の選択肢を整理し、戦略的な人員確保につなげるための情報としても活用可能です。
さいごに
これまでの短時間労働者の管理軸は、月額8.8万円という収入額でした。しかし、2026年10月以降の106万円の壁撤廃後は、管理軸が週20時間の勤務実態へと移行します。106万円の壁撤廃により、賃金要件のみの確認では加入漏れが生じる恐れもあります。また、管理軸が週20時間の勤務実態へ移行することにより、現場には多くの課題が生じ、従業員への説明も必要となります。
勤怠管理システムは、制度対応はもちろん、本人説明時の客観的資料や、現場課題である人員配置・シフト調整を支える基盤としても活用可能です。週20時間管理を後追いにしないためにも、勤務実態を早めに把握し、本人説明やシフト調整へつなげる体制を整えておきましょう。
▼Pickup 勤革時 情報
クラウド型勤怠管理システム「勤革時(きんかくじ)」の中で、週20時間管理に関係する勤怠管理の役立つ機能をご紹介します。
週20時間超過前の「時間アラート」
週の労働時間が社内で設定した目安(週18時間や19時間など)を超えた際、画面上で強調表示(色付け)する仕組みです。
確認漏れを防ぐ「アラート通知」
「時間アラート」の基準に該当した段階で、対象従業員や指定した管理者へメール通知することができます。
勤務予定と勤務実績の差異を確認できる「予実機能」
あらかじめ登録したシフト(予定時間)と、日々の打刻にもとづく実際の勤務時間を突き合わせ、その差分を自動で集計・比較確認できる機能です。
複数拠点勤務の労働時間集計
「午前はA店舗で3時間、午後はB店舗で4時間」など、同日中に複数の拠点を移動して勤務した場合でも、拠点ごとの労働時間を内訳として集計しつつ、従業員ごとの合計労働時間を確認できます。
労働時間の推移や傾向の見える化
蓄積された全社の労働時間データを自動でグラフ化し、従業員や組織ごとの労働時間の推移や傾向をひと目で把握できます。
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