サイト内の現在位置を表示しています。

【法定休日のよくある誤解5選】正しい知識でトラブル回避!

公開日:2025年6月2日(当記事の内容は公開時点のものです)
new window監修:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄

「日曜日は法定休日」。こうした些細な誤解が、法令違反や労務トラブルを招く恐れがあります。意図せぬ抵触は、罰金や未払い賃金の問題、さらには信頼失墜に至る可能性も否定できません。今回は「休日労働は可能?」「振替休日と代休の違いは?」といった、法定休日にまつわる代表的な誤解を5つ取り上げ、法的根拠に基づき解説します。本記事を読み、自社の運用が問題ないのかを確認してみましょう。

法定休日とは何か?

法定休日は、その名のとおり労働基準法で定められた休日です。労働基準法第35条では「使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも1回の休日を与えなければならない」と定めています。同条では「この規定は、4週間を通じ4日以上の休日を与える使用者については適用しない」ともしています。つまり、使用者である企業は、労働者に対して少なくとも、1週間に1日または4週間に4日の休日を与えることが求められているわけです。この法で定められた最低限の休日が「法定休日」となります。
一方、法定労働時間は、1日8時間、週40時間と定められているため、1日の所定労働時間が8時間の会社であれば、必然的に週5日勤務が上限となり、週休2日制を採用している場合が多いでしょう。
週休2日制のように1週間に1日の法定休日を上回る休日を付与した場合、法定休日以外の休日は「法定外休日」や「所定休日」などと呼ばれます。なお、法定休日が確保できなかった場合には、労働基準法第119条により6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる恐れもあるため、注意してください。

法定休日と法定外休日の違い

36協定を締結することで、法定休日に労働させることも可能ですが、35%以上の割増賃金の支払いが必要となります。他方、法定外休日に労働させた場合は法定労働時間を超えない限り、割増賃金の支払い義務はありません。もちろん、休日に労働をさせた代償として、法定外休日労働に対しても、任意で割増賃金を支払うこと自体は問題ありません。
しかし、法定休日と法定外休日を混同している場合には、知らず知らずのうちに割増賃金の支払いを誤ってしまったり、休日労働ではなく時間外労働としてカウントしなければならない労働時間を取り違えたりすることで、労働時間の上限規制に違反することも考えられるため、両者はしっかりと区別しなければなりません。

●4週4休の問題点

すでに述べたとおり、法定休日は1週1日ではなく、4週4日の付与でも問題ありません。しかし、この4週4休制には問題点があり、見直しが検討されています。
4週4休制とは、起算日を特定したうえで、その起算日から4週間ごとに区切り、その中で4日間の休日を与える制度です。このため、4週間の最初に4連休を付与し、続く4週間の最後に4連休を付与することで、48連勤が可能となります。もちろん、これは理論上の上限であり、このような連勤を行わせれば、労働者に健康上の問題が生じる恐れが大きいことはいうまでもありません。
疲労の蓄積による業務パフォーマンス低下や、労災発生のリスク向上、ワークライフバランス崩壊によるエンゲージメントの低下などを考慮しても、過剰な連勤は行わせるべきではないでしょう。こうした背景から、厚生労働省では14日以上の連勤を禁止する方向で制度の見直しを進めています。
現時点では規制されていませんが、4週4休を採用している企業は業務体制の見直しなどを通じて、休み方を変えていくことが推奨されます。

法定休日にまつわる誤解5選

労働者にとって重要な制度である法定休日ですが、その運用については誤解が多いことも事実です。以下では法定休日に関してよくある誤解について解説します。

誤解1:法定休日は「日曜日」である

多くの企業では、日曜日を休日としていますが、法定休日は日曜日に限定されるものではありません。法律では、週に1日または4週に4日の休日を法定休日として与えることを義務付けているのみです。つまり、法律上は特定の曜日を法定休日とすることまでは求められていないことになります。そのため、土曜日や金曜日を法定休日として定めることも可能です。
休日というと、どうしても日曜日を想像する場合が多く、「法定休日=日曜日」であるとの誤解も見られます。自社における法定休日の規定を説明し、誤解の発生を防ぎましょう。

誤解2:法定休日は特定しなければならない

就業規則などで特定の曜日を法定休日として定めることも可能ですが、定めないことも企業の自由となります。特定の曜日を法定休日として定めず、1週に1日の休日のみを付与する企業であれば、自動的にその休日が法定休日です。
週休2日制など1週間に2日以上の休日を付与する企業であれば、以下のように週に1日の法定休日が決まります。

  • 特定の曜日を法定休日として定める :指定された曜日が法定休日
  • 特定の曜日を法定休日として定めない:週で後ろに来る曜日が法定休日

特定の曜日を法定休日と定めない場合、たとえば、週の起算日を月曜と定める土日の週休2日制を採用する企業であれば、後順に当たる日曜日が法定休日です。なお、週の起算日を定めない場合には日曜から週が始まることに注意してください。
法定休日の特定は、法律上の要請ではありませんが、厚生労働省の通達では特定が望ましいとされています。特定した方が、労働者にとっても分かりやすく、また給与計算上のミスも減るため、労使双方の観点からも特定した方が良いといえるでしょう。また、休日や割増賃金に関することは、労働者の重要な関心毎であるため、休日労働に関する項目は、労働者がいつでも見やすい環境を整備しておくことが肝要です。

誤解3:法定休日には必ず休ませなければならない

法定休日は、労働基準法が定める最低限の休日であり、違反には罰則も予定されています。しかし、法定休日労働が必ず違法となるわけではありません。
法定休日労働が労働基準法違反となるのは、36協定が未締結の場合です。法違反にならないためには、労働者の過半数代表もしくは過半数労働組合との間で36協定を締結し、労働基準監督署長に届け出る必要があります。なお、過半数代表者の選出方法について適正な方法が取られているか、労働基準監督署のチェックが厳しくなっている傾向がありますので、あわせて注意が必要です。
36協定を締結し、届け出ていたとしても、法定休日労働に対して35%以上の割増賃金を支払わなければ、労働基準法第37条違反となります。

誤解4:法定休日は24時間連続で与えればよい

「1日は24時間なので、24時間連続で休ませれば、法定休日を与えたことになる」。このような誤解は、労使双方においてよく発生します。しかし、労働基準法上の法定休日とするためには、原則として0時から24時までの暦日単位としての休日でなければなりません。
暦日単位でなければならない点を誤解し、夜勤明けの休息日、いわゆる「明け休」を法定休日として扱うようなケースはよく見られます。
しかし、法定休日を暦日単位で与えることを要求している以上、明け休がどれだけ長い時間であっても、法定休日を与えたことにはなりません。
たとえば、次のようなケースでは、法定休日を与えたことにはなりません。

1日目 18:00~翌5:00
2日目 明け休(暦日0~24時で休めていない)
3日目 9:00~18:00
4日目 9:00~18:00
5日目 9:00~18:00
6日目 18:00~翌5:00
7日目 明け休(暦日0~24時で休めていない)

8時間3交替制勤務や、旅館業、自動車運転業務などの一部例外を除いて、法定休日は必ず0時から24時の暦日単位でなければなりません。誤解を招かないためには、就業規則などに法定休日は暦日単位である旨を明記することが推奨されます。

誤解5:法定休日労働には必ず振替休日を与えなければならない

法定休日労働に対して、必ず振替休日を与えなければならないわけではありません。振替休日は、法定休日をあらかじめ特定の曜日と入れ替える制度であり、法定休日労働を行った後に振り替えるものではないからです。たとえば、法定休日を日曜と定める企業において、あらかじめ木曜を振替休日として日曜と振り替えておけば、木曜が法定休日として扱われ、日曜の出勤は法定休日労働とはなりません。
振替休日と似ている制度として、「代休」が存在します。振替休日も代休も本来の休日の代わりとなる点では異なりませんが、代休は休日労働を行った後に与える点が振替休日とは異なります。代休では、法定休日労働を行った事実は消えないため、法定休日労働に対する割増賃金の支払いを免れないことに注意しましょう。
また、代休に似た言葉として「代替休暇」があります。こちらは時間外労働が月60時間超となった場合における50%以上の割増賃金の支払いに代えて与える有給の休暇であり、代休とは根本的に異なる制度です。
振替休日と代休も混同されやすく、誤解の多い制度です。制度としてもやや複雑であり、理解が難しいかもしれませんが、給与計算に大きく関わる部分であるため、担当者の教育を行うだけでなく、資料を配布するなどして、誤解を防ぎましょう。

さいごに

法定休日の適切な運用は、勤怠管理において極めて重要です。法定休日に関して誤解があったままでは、正しい給与計算もままならず、労使トラブルの発生にもつながりかねません。勤怠管理システムは、法定休日の正しい運用の助けとなるため、積極的に活用し、トラブルの発生を未然に防ぎましょう。

▼Pickup 勤革時 情報

クラウド型勤怠管理システム「勤革時(きんかくじ)」の中で、法定休日の設定・運用に役立つ機能をご紹介します。

「勤務日種別」の役割 / 設定方法

「勤務日種別」は、その日の勤務時間を平日勤務として集計するか、休日勤務(法定休日勤務または法定外休日勤務)として集計するかを設定するステータスです。

「休日出勤日数」や「休日労働時間」の集計方法

対象日の「勤務日種別」を「法定休日」または「法定外休日」とすることで、その日の勤務を休日出勤日数や休日労働時間として集計できます。

休日労働時間を「法定休日」と「法定外休日」に分けて表示する方法

月別データ画面やタイムカード画面などで、休日労働時間を「法定休日」と「法定外休日」に分けて表示するための設定を解説します。

「振休」と「代休」の違い

「振休(振替休日)」と「代休」の法令的な違いと、勤革時での設定方法を解説します。

休日出勤を申請制にする方法

休日に打刻がなされた場合にエラーが出るようにするための「公休の割り当て方法」などの設定を解説します。

お問い合わせ・無料トライアル