勤怠管理システム導入の“前と後”(後編)
社会保険労務士レポート第2回

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直接的な業績への貢献度が一見低そうな勤怠管理。実は手を入れれば目に見える経営への改善効果が得られることをご存じでしょうか?日ごろから、様々な会社の勤怠管理に関わっている社会保険労務士が、「勤怠管理システム」導入の前後で業務がどのように改善されていくのか、その効果をレポートします。

3.IDカードで導入に悩むお客様

手書きの勤怠管理をしている会社に対し、出勤簿をExcelファイルにしてもらえないか依頼したことがあります。
Excelファイルにすれば、日数カウントや残業時間について手計算の手間を省くことができるためです。

しかし、その会社はサービス業であり、従業員さんは外出していることも多く、一人1台PCがないため、Excelに置き換えることはできませんでした。
クラウドを利用した勤怠システムの導入には、PCが一人1台でないことは問題とはなりません。

イメージ:指紋認証

前回、ご紹介した生体認証を使ったハイブリッド認証であれば、指紋認証をするタイムレコーダーとPC1台を準備するだけで導入できます。
より低コストで導入したい場合には、ICカードの利用も可能です。専用のカードをつくらずとも、通勤に使うSuicaや、ほとんど誰もが持っているスマートフォンを利用することもできます。

4.本業に専念できるメリット

減らしたいコスト・手間=勤怠管理

勤怠管理は、労働基準法などの法令の改正をつねに反映して行わなければなりません。また、勤怠と連動して行われる給与計算は、多くの個人情報を含んでおり、社内で行うとすれば誰にでも任せられるものではありません。

一方で、勤怠管理や給与計算は、日数や時間数を数えるという単純業務の面も持っており、時間単価の高い人にすべてを任せるのもコスト高です。
このような本業の持つ特異性と関係がない定型的な業務は、IT化や外注によって効率化とコスト削減ができます。

勤怠管理の2つの面

勤怠管理は、守りと攻めの2つの面を持っています。
守りの勤怠とは、やらねばならない「対策」の勤怠管理です。
法律の義務として記録を取り、保管すること、正しい給与を払うことなどです。
長時間労働をしている従業員を見つけ出すことも、会社のリスク対策であり、守りの一つです。

攻めの勤怠管理

一方、攻めの勤怠とは、やるべきである「戦略」の勤怠管理です。
経営資源の選択と集中を考えれば、必ずしも自社の従業員が行わなくてもよい業務については、信頼できて、コストが折り合う外注先を見つけるべきでしょう。そして従業員をより本業に集中させるべきです。

勤怠管理でいえば、データの収集や表の作成は外注して、そのデータの羅列から意味を見つける分析に時間を割くべきです。

勤怠管理データは、給与計算や業務の偏重を見つけるためだけにあるのではありません。
日ごとや月ごとの人件費を売上と比較することはもちろん、誰が働いているときに売上があがっているのか、業績がよくて労働時間が短い人はどんなふうに働いているのか知ることもできます。見本となる従業員を見つけることで、よい行動の展開もできます。

勤怠情報をトレンドや周辺状況の変化など他の情報と掛け合わせることで、「この時間帯は従業員が若い男性だと売り上げがあがる」、「この店舗は、落ち着いた年代の人をスタッフにした方が集客できる」など、誰を配置するのがよいか、予測、実験、確認していくことでビジネス上のヒントを見つけられる可能性もあります。

ビジネスは、選択と集中です。固定費の多くを占める人件費をどこに充てるかは重要です。正確な勤怠管理から出力される情報は人材戦略に役立ちます。勤怠管理は守りだけではなく、攻めに活かしましょう。

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