Japan
サイト内の現在位置を表示しています。
生成AIによるイノベーションの実現とバリューチェーン一体となった「AIと人権」リスク対応
NECは、AIの利活用に伴う新たな課題への対応を強化するため、AIガバナンスの遂行責任者がNECグループにおける取り組みを、法制度や人権・プライバシー、倫理に関する専門的な知見を有する外部有識者(議員)に諮問し、議員との対話をとおして取り組みの高度化や改善につなげる機会としてデジタルトラスト諮問会議を開催しています。今回は生成AIをテーマに2023年7月に開催した会議の内容を紹介します。会議では生成AI利用者と生成AIプラットフォーマーの2つの立場を有するNECとして、生成AIの社会実装に向けて取り組むべきことや貢献できることなどについて諮問しました。
生成AIの登場と進化により、コンピュータが知識や情報の生成を担うようになりました。文章や画像、プログラムコードなどのコンテンツ生成で、従来のAIに比べて自然なアウトプットが可能になり、仕事の仕方が変化する可能性が生まれています。

一方で、機密情報の漏洩、個人情報の不適切な利用、偽情報の拡散による社会の混乱、著作権の侵害、犯罪の巧妙化など、生成AIの利用に関する様々な懸念やリスクが指摘されています。

NECでは、社内業務、研究開発、ビジネスで生成AIにおける大規模言語モデル(LLM: Large Language Model)を積極的に利用していく方針を掲げています。利用にあたっては、「社会情勢の変化を継続的に分析・評価しながら適正な利用の徹底」、「社員のリテラシー向上のための社内教育の実施」、「専門家による社内専門窓口の整備」、「NECグループ AIと人権に関するポリシーや関連する社内規程に沿ったガイドライン・ルールの整備」などを通じて積極的かつ責任ある利用を促進しています。
また、お客さま向けのサービスとして、高い日本語能力と軽量さを両立したNEC開発の生成AI(基盤モデル)を提供しています。サービス提供にあたっては、生成AIの専門家チーム「NEC Generative AI Hub」をCDO直下に設立し、お客さまと連携し、各種サービスを一気通貫で提供しています。
今後もこのような取り組みを通じて生成AIを活用するユースケースを拡大し、個人の業務改善にとどまらず、ビジネス変革も見据えたより本質的な生産性向上を目指しています。

そこで今回は、生成AI利用者と生成AIプラットフォーマーの2つの立場を有するNECとして、生成AIの社会実装に向けて取り組むべきことや貢献できることなどについて、主に以下の2点を諮問しました。
①生成AIによるイノベーションの実現に向けて
②バリューチェーン一体となった「AIと人権」リスク対応
①生成AIによるイノベーションの実現に向けて
新たな技術である生成AIは動向の変化が速く、現行の法規制では生成AIによるイノベーションの促進が妨げられる可能性が懸念されます。そこで、生成AIによるイノベーションを前提としたときに、現行の法規制をどのように捉え、規制の在り方について社会的に議論していく必要があるかについて、ご意見を伺いました。また、基盤モデルを持つNECだからこそ提起できることについても、ご意見を伺いました。
議員のみなさまからは、主に以下のご意見をいただきました。
- 法整備の動向や関連団体の発信をタイムリーに把握して、取り組みに反映していくことは今後も重要
- 著作権法や個人情報保護法などは、学習データや生成データの扱いなどは議論の余地があると考えられ、NECは欧州AI規則案にパブリックコメントを提出したように、現行法における各種論点について積極的に問題提起することが望ましい
- 法規制やルールの在り方を考えるためには生成AI活用の未来像が必要であり、未来像は一企業だけで決められるものではなく、社会全体で議論やコンセンサス形成が必要
- NECには自社の考える生成AI活用の未来像を明確にした上で議論をリードすることを期待したい
NECは、いただいたご意見を踏まえ、まずは自社での利用やサービス提供を通じて得られた知見やノウハウを活かし、NECの考える生成AI活用の未来像をより明確にし、社会的な議論やコンセンサスの形成につなげていきます。また、法整備を含めAI社会の仕組みづくりに向けて産業界、政府機関、国際機関、アカデミアなど国内外の多様なステークホルダーとも積極的に連携していきます。
②バリューチェーン一体となった「AIと人権」リスク対応
社会的な要請となっているバリューチェーン一体となったリスク対応のために、生成AIの利用者とプラットフォーマーの両方の立場で、何に留意しながら、どのような活動を行うことが必要であるかについて、ご意見を伺いました。
議員のみなさまからは、主に以下のご意見をいただきました。
- 生成AIを含める法整備に向けて様々な議論が行われているが、公平性や透明性、データの偏りによるバイアス、プライバシー保護など考慮が必要な観点はこれまで議論されてきたものと基本的には同じ
- 新しい法整備を待つのではなく、これまでの取り組みを活かしながら、最新動向や生成AI特有の観点も取り込みながら対応していくことが重要
- バリューチェーンの上流・下流の双方に対し、NECの基本姿勢や対応方針を明示し理解を得た上で、技術利用やサービス提供が必要
- リスクは経営ではなく影響を受ける可能性のある人々の視点で考え、ステークホルダーと共通の認識を持つことが重要
- AIの技術利用が社会から受容されるためには、企業としてのAI方針と利用目的を明確にすることが必要
NECは、いただいたご意見を踏まえ、これまでの生体認証を含むAI提供を通じて得られた知見やノウハウを生成AIにも活かし、NECのリスク認識とバリューチェーン上のステークホルダーとのリスク認識を合わせ、ステークホルダーが生成AIを適正に利用し、リスクを顕在化させないように、社内外の関係者と連携しながら対応していきます。
今回は生成AIをテーマに、イノベーションの実現とバリューチェーン一体となった「AIと人権」リスク対応について、NECとして取り組むべきことや貢献できることなどについての示唆をいただき、今後の取り組みに活かしていくことしました。
NECは今後もこの会議を通じて、社外の多様な意見を取り込み、AIの利活用において生じる新たな課題への対応を強化していきます。

(追記:2024年2月現在)
ご意見を踏まえ、主に下記の取り組みを進めています。
イノベーションの実現
生成AIを活用した未来像の社会的コンセンサス形成に向けて、関係部署と連携し、NECの生成AIビジョン策定に向けた検討を進めています。また法規制やガイドラインの改定の際に、NECの知見やノウハウを活かした提言ができるように、見解の整理を進めました。
バリューチェーン一体となった「AIと人権」リスク対応
お客さま企業に対して、NECが認識しているリスクを明示し、利用目的や扱う情報を明確化するとともに、リスクに対して適切な運用がされることを提供条件に設定しました。