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気候変動への対応

NECは、2018年にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言(以下、TCFD提言)への賛同を表明しており、本ページではTCFDフレームワークに沿った情報開示を行っています。

ガバナンス

気候変動対策推進体制

環境経営推進体制で記載している体制のもと、気候変動についても同様に対策を推進しています。
NECグループの気候変動に関する環境方針・目標は、各ビジネスユニットの環境推進責任者で構成される環境経営推進会議において審議・策定しています。環境担当役員はその内容を確認し、上位組織にあたる事業戦略会議に報告しています。また、気候変動に関するリスクについても環境経営推進会議において共有し、事業に与える影響が大きい場合には、環境担当役員が確認のうえ、必要に応じてリスク管理プロセスに則ってリスク・コンプライアンス委員会で討議します。特に、事業に大きな影響を及ぼす気候リスクや機会については、必要に応じて取締役会へ報告します。取締役会では、審議を通じて適宜対策指示を行い、NECの気候変動対策が適切に推進されるよう監督します。気候変動対策のうち、自社のCO2排出量削減についてはテーマ別専門部会を設けてグループ全体で対策を推進しています。各部会から環境経営推進会議に対して報告・提案を行うことにより、グループ全体で省エネルギーに努めています。環境経営推進会議での決定事項は、各ビジネスユニットおよび各事業場の委員会などで指示・報告し、全従業員へ周知・徹底しています。

気候変動に関するイニシアチブへの参画

NECは自社のサステナブルな経営基盤の構築と共創によるサステナブル社会の実現を推進するために、環境に関わるイニシアティブに参加しています。

重要会議体での環境関連報告

気候変動は重要なマテリアリティであることから、経営層が出席する会議体において気候変動を含めた環境の取り組みやリスクなどについて、審議・監督・報告を行っています。また、2021年度は、社外有識者と経営層との対話を拡充すべく、従来のステークホルダーダイアログに加えて、サステナビリティ・アドバイザリ・コミッティを新たに設置しました。

主な審議・監督・報告内容

会議体 年度 頻度 主な審議・監督・報告事項
取締役会 2020年度 4回 6月:サステナビリティ推進活動報告
12月:次期中期経営計画に含める環境視点
2月:サステナビリティ推進活動報告
3月:NECエコ・アクションプラン2025(含む投資費用計画)
2021年度 4回 5月:サステナビリティ推進活動報告
12月:BA1.5℃加盟、ESG説明会実施報告
1月:NECのカーボンニュートラルへの取り組みについて
2月:環境リスクについて(全社リスク対策検討の一部)
2022年度 4回 5月:「カーボンニュートラル」への取り組み
7月:サステナビリティ・リンク・ボンドの発行について
10月:「気候変動サミット」について
2月:NECの環境取り組みについて
~今後のカーボンニュートラル対策強化~
2023年度 2回 5月:ESG/サステナビリティ推進報告
12月:COP28への参加についての報告
2024年度 2回 7月:TIME誌「世界で最もサステナブルな企業2024」 第2位ランクイン報告
適応ファイナンス事業に関する取り組み報告
1月:ダボス会議/世界経済フォーラム(社長 環境汚染テーマ議論)
社外有識者と経営層の対話 ステークホルダーダイアログ 2020年度 1回 “環境貢献事業の創出”に向けて、今NECが取り組むべきことは何か
2023年度 2回 9月:気候変動を含むサステナビリティにどう向き合うか
3月:ESG-Day
サステナビリティ・アドバイザリ・コミッティ 2021年度 1回 気候変動におけるグローバル潮流の理解とNECのリスクと機会
2022年度 2回 5月:NECのサステナビリティ推進の考え方と主な取り組み
2月:自然資本分野における事業リスクと機会について
2023年度 1回 2月:「気候変動対応とNEC事業戦略の融合を加速するために必要なこと ~サステナビリティ情報開示要請の高まりを受けて~」

戦略

気候変動対策方針

NECは「気候変動(脱炭素)を核とした環境課題への対応」をESG視点の経営優先テーマ「マテリアリティ」の1つとして位置づけ、自社の製品・サービスそのものの環境負荷を減らすと同時に、ICTを活用して、お客さまや社会の脱炭素トランジション(移行)を支えていきます。この考えをもとに、長期的な環境目標として「2050年を見据えた気候変動対策指針」を掲げました。現在は、The Climate Pledgeへの署名によりカーボンニュートラル目標を2040年に前倒ししたため、気候変動対策指針のカーボンニュートラル目標達成年度を2040年に前倒しして読み替え、活動を推進しています。

サプライチェーンからのCO2排出量ゼロに向けた削減については、2040年を達成年として、2024年4月にSBTNet-Zero認定を取得し活動を強化しています。世界が目指す低炭素社会の実現においては、カーボンニュートラルビジネス推進PMOを設置し、ICTインフラの省電力化、CO2排出量の見える化ソリューション、リソースアグリゲーション事業、環境コンサルティングなどにグループ横断で取り組んでいます。

事業を通じた貢献

お客さまの環境経営課題への貢献

環境戦略の章で、NECとしての環境領域での経営課題への取り組みと目指す姿を紹介しましたが、お客さまにおいても同様の課題を抱えられていると認識しています。NECの環境経営も道半ばですが、お客さまの経営課題への取り組み状況も、お客さまの要求や規制対応のために、コストミニマムの対応をしている「ステージ1」、炭素税やエネルギーコストの状況などをにらみ、環境負荷を削減し競争力を強化するとともに外部の高評価を獲得し企業価値を向上しようとされている「ステージ2」、コスト削減や企業価値向上だけでなく、環境対応を自社の成長戦略に組み込んでいる「ステージ3」、など、さまざまなのではないかと思います。NECは自社の経験も活かして、お客さまのステージに合わせたさまざまな貢献ができると考えています。
NECは、お客さまの経営課題を起点としてEnd-to-Endのビジネスモデルで価値創出を行うBluStellarを2024年に発表しました。NECは環境ビジネスにおいても、BluStellarのモデルで価値創造することは変わりません。センシング・AI・セキュリティなどのテクノロジーと、社外評価の高い専門人材・ナレッジを活用し、複雑な環境問題を見える化・分析することで、対処すべき課題を明確化します。自社をゼロ番目のクライアントとみなして価値検証を行うクライアントゼロや、お客さまとの共創で課題と効果の明確化を推進し、業界標準策定などにも貢献していきます。

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環境ビジネス市場のとらえ方
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BluStellarモデルによる環境経営課題の解決
カテゴリ ソリューション
(実証中のものを含む)
概要
コンサルティング SX/GXコンサルティングサービス 戦略ロードマップ策定、マネジメント、優先対策実施までを支援するコンサルティング
カーボンマネジメント/CO2見える化 環境パフォーマンス管理ソリューション(GreenGlobeX、KMDCarbonKey、 EnergyKey) CO2・水・廃棄物などの環境データ収集・管理・見える化(企業向け、自治体向け)
省エネルギー/GHG排出削減 グリーンデータセンター 100%実質再生可能エネルギーで運用するデータセンター
工場・建物の省エネ化支援 工場や事業所などの構築・設備の導入から全体最適のトータルエネルギーマネジメント
Net Zero Energy Building(ZEB)ソリューション 計画、設計、施工、運用管理までワンストップでZEB化を支援
最適化技術による物流効率改善 配送順序・配送ルートの効率化や共同輸配送支援
再生可能エネルギー/分散エネルギー 太陽光発電×蓄電池システム 平時の脱炭素化や長時間の停電対策を実現するシステム
EV充電インフラサービス EV利用者の認証や充電量管理、複数充電器の連携制御
気候変動適応 NECデジタル適応ファイナンス デジタル技術の応用により適応策導入の価値となる減災効果や環境効果を見える化
スマート街路灯 街路灯のスマート化による環境負荷や災害負荷を低減
資源循環 プラスチック情報流通基盤 プラスチックに含まれる素材情報などの流通プラットフォーム
再生プラスチック製造効率化 AIを用いて再生プラスチックの品質と流通量の安定化を実現
アルミ再生AI AIを用いたアルミのアップグレードリサイクル
自然資本(水など) 農業ICTソリューション CropScope 灌漑水や施肥量を最小化しながら収量を確保
金融 ESGポートフォリオ管理 (Avaloq) ESGに配慮した投資銘柄をポートフォリオとして管理するサービス

気候変動緩和(脱炭素):製品単位の環境情報管理

これまでは規制対応として企業単位のCO2排出量の可視化が進められてきましたが、今後は企業のCO2削減努力を製品競争力につなげるための製品単位のCO2可視化が重要となります。そのため、CO2排出量などの環境情報管理は、情報開示のための組織単位の管理から、製品競争力につながる製品単位の管理に拡大していきます。NECでは、前年度、クライアントゼロとしてNECグループの工場で製品単位CO2管理のトライアルを実施しました。このトライアルを通じて、管理ツールの導入だけでは解決できない、運用プロセスや調達取引先の課題を抽出することができ、現在、ソリューション開発を進めています。

気候変動適応:NECデジタル適応ファイナンス

気候変動対策は脱炭素だけでなく、防災・減災などの適応領域も重要です。適応領域の課題は、原因と被害の地域的・時間的な偏在性に起因する資金不足です。NECはデジタルで適応策の効果を定量化し、資金投入を活性化する「NECデジタル適応ファイナンス」を2023年のCOP28で提言しました。現在、「適応ファイナンスコンソーシアム」を設立し、さまざまな金融商品の組成を会員のみなさまやグローバルパートナーと推進中です。2024年のCOP29でも適応ファイナンスについて紹介し、世界各国の機関から多くのお問い合わせをいただきました。NECは古くから防災DXの知見を新事業の創出に活かしています。

シナリオ分析

自社のサステナブルな経営基盤の構築と共創によるサステナブル社会の実現を推進するために、環境に影響を与えるリスク・機会の分析を実施し、リスクの低減や機会の拡大に向けた対策を進めています。
2024年度は初めての取り組みとしてAIを活用し、全社リスクと事業リスクを再度確認しました。

シナリオ分析から見えたリスクと機会

リスク シナリオ(1.5℃or4.0℃)*2 内容 時間軸*3 財務影響/年 対策
移行*4 1.5℃ カーボンプライシングによるコスト増 中期 44億円 CO2排出量実質ゼロ(2040年)達成に向けた効率化の徹底と再生可能エネルギーの活用拡大
レピュテーションリスクによる売上減 短期 36億円 SBTイニシアティブ*5認定および再生可能エネルギーの活用拡大とグリーン電力の購入
物理*6 4.0℃ データセンターの気象災害(洪水、土砂崩れ、水不足など)の影響による事業停止に伴う売上減 短期 33億円 非常用電源設備などの発電設備の強化(5日間稼働分の燃料の備蓄など)
洪水に伴う生産拠点の稼働停止の影響による売上減 中期 82億円 フロアの嵩上げや浸水防止のための止水板、止水扉の設置、および土のうの備蓄など。
機会 シナリオ(1.5℃or4.0℃)*2 内容 時間軸*3 財務影響/年 機会創出と拡大
適応 4.0℃ 適応価値の透明化とそれによる資金導入の需要増加による売上増 中期 デジタル技術の応用により減災効果や環境効果の見える化を行う「NECデジタル適応ファイナンス」の提供
適応/緩和 4.0℃ 災害に強い、GHG効率の高いデータセンターへのニーズ拡大による売上増 中期 133億円 データセンターのエネルギー効率の改善(データセンターのグリーン化)
緩和 4.0℃ 製造業の過剰在庫削減ニーズ増加による売上増 中期 需要予測技術を用いた廃棄物の削減
  • *2
    1.5℃:脱炭素社会が実現し、2100年に気温が1.5℃上昇するシナリオ
    4.0℃:脱炭素社会が実現せず、2100年に気温が4℃上昇するシナリオ
  • *3
    短期=0〜3年、中期=4〜10年、長期=11〜20年
  • *4
    脱炭素社会への移行に伴って、政策・法務・技術革新・市場嗜好の変化などにより発生するリスク
  • *5
    企業に対し、科学的根拠に基づく二酸化炭素排出量削減目標を立てることを求めるため、カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(CDP)、国際連合グローバル・コンパクト(UNGC)、世界資源研究所(WRI)および世界自然保護基金(WWF)の4団体により設立されたイニシアティブ
  • *6
    異常気象から引き起こされる事象による急性リスク(洪水や土砂災害など)と長期間での気候パターンの変化による慢性リスク(海面上昇や熱波、耕作適地の変化など)

NECが描く2030年/2050年の世界 ~私たちの暮らし・自治体の未来~

NECは、気候変動を考慮したシナリオ分析なくして企業の存続や成長はないと考えます。最新のグローバルリスクでも気候変動に関連したリスクが多く挙げられ、企業の事業活動や収益のみならず、私たちの暮らしに非常に大きな影響を及ぼします。そのため、どのような未来になっても、NECが存続・成長し、安全・安心な社会を実現するために、複数のシナリオを用いて進むべき方向性を検討しています。2019年には、全社のシナリオ分析を実施し、2つの異なるシナリオにおいて、自社のリスクと機会がどのように変化するのか分析しました。

2022年の焦点は「気候変動x行政DX」

昨年度からは、NECのさまざまな事業分野ごとにとらえるべき気候変動のリスクと機会が異なることから、事業分野ごとにシナリオ分析を行っています。今年度は、中期経営計画の事業戦略の1つである「デジタルガバメント」の領域から国内行政DXと2030年の脱炭素社会への移行度合い(1.5℃と4℃)をシナリオを用いて分析し、そこでのNECの事業機会について検討しました。具体的には、「気候変動 × 行政DX」の2030年の姿を描き、自社のリスク・機会をふまえ、事業構想案を検討しました。さらに、ステークホルダーの声を反映することを目的に、外部ヒアリングを充実させました。

シナリオ分析の結果(2030年) NECが描く2030年/2050年の世界
~気候変動と行政DX~

地域・自治体(中核都市と小規模都市)の未来の姿を気候変動の影響をふまえて描くことを目的に、2030年・2050年のシナリオを作成しました。脱炭素社会への移行度合いである1.5℃と4℃を縦軸に、生活者と行政の関係や行政システムの在り方を強制と自発に分けて横軸に設定し、4つのシナリオを検討しました。なお、気候変動や脱炭素に関する事項は、以下の参照シナリオを2050年の前提条件とし、各シナリオではその一部を利用しています。

参照した公開シナリオ

1.5ºCシナリオ 4ºCシナリオ
  • IPCC AR6 WG1 SSP1-1.9
  • IPCC 1.5ºC特別報告書
  • IPCC AR5 RCP2.6
  • IEA World Energy Outlook2021
    Net Zero Emissions by 2050
    Scenario (NZE)
  • 国立環境研究所 日本版
    SSP+SSP1:持続可能、
    SSP5:化石燃料に依存した発展
  • IPCC AR6 WG1 SSP5-8.5
  • IPCC AR5 RCP8.5
  • IEA World Energy Outlook2021
    Stated Policies Scenario(STEPS)
  • 国立環境研究所 日本版
    SSP+SSP3:地域分断、
    SSP4:格差
第2象限:1.5℃×強制「環境効率至上シナリオ」zoom拡大する
第2象限:1.5℃×強制「環境効率至上シナリオ」
第1象限:1.5℃×自発「地域価値多様性シナリオ」zoom拡大する
第1象限:1.5℃×自発「地域価値多様性シナリオ」
第3象限:4℃×強制「災害対応奔走シナリオ」zoom拡大する
第3象限:4℃×強制「災害対応奔走シナリオ」
第4象限:4℃×自発「適応格差拡大シナリオ」zoom拡大する
第4象限:4℃×自発「適応格差拡大シナリオ」

「私たちの暮らし・自治体の未来」の4シナリオ

  • 縦軸:脱炭素社会の実現「1.5ºC」(2100年1.5ºC上昇)と失敗「4ºC」(2100年4ºC上昇)
    横軸: 生活者と行政の関係や行政システムの在り方として「強制」と「自発」

シナリオ分析によるNECの事業リスク・機会を反映した2030年の事業例

  2030年シナリオの概要 キーワード 機会 リスク 2030年の事業例
1.5℃
  • 国や自治体の政策および市民の関心は、wellbeingや環境に重点がおかれている。
  • 脱炭素政策は国・自治体において優先度が高く、2020年代の法規制や企業、自治体の努力も相まって脱炭素社会に移行しつつある。
  • 脱炭素先行地域では、再生可能エネルギー導入やエネルギーマネジメントが推進され民生部門のCO2排出量がゼロである。
  • マイナンバーカードは普及率100%となり、これを活用したインセンティブ制度や助成を行う行政サービスも増え、市民の行動変容を促している。
  • 再生可能エネルギーベースの分散型電源
  • EV化・インフラ構築
  • 環境活動に対するインセンティブ
  • 自然資本の見える化
  • well-being意識の向上
  • デジタルツインを活用した防災計画
  • マイナンバーカードを活用した災害後支援
  • 自治体業務の一部を請負、事業化
  • 再生可能エネルギーデータセンターの増加
  • 健康インセンティブが重要視され、ヘルスケア事業の拡大
  • 制度のシステム化(排出量算定、炭素税、排出権取引、カーボンフットプリント)
  • センシング、可視化、数値化市場の拡大(生態系、環境保全、損害&被害)
  • コンパクトシティ内における画像解析技術利用の増加
  • 行政DXとシステムの標準化・共通化が進むことによるこれまで築いてきたビジネスモデルの転換
  • 競合や新規参入者との競争激化
1.5℃・エネルギーマネジメント:住民の取り組み・行政施策効果の見える化による自治体の脱炭素支援サービス

4℃・防災:災害前(災害自分化シミュレーション)、災害中(止まらない通信、被災証明発行支援)、災害後:ボランティア支援促進システム

両方・ヘルスケア:来訪者向けのヘルスケアと環境価値に基づいた地域ブランディングを向上させるためのデータ利活用システム
4℃
  • 国内の多くの地域は人口急減と財政難に直面する。
  • 国や自治体は、すべての人々へのインフラやサービスを提供することが困難となる。
  • 広域連携、官民連携が進む。限られたリソース(行政職員・財源)から気候変動緩和に関する施策は優先度が下がる。
  • 災害の多発・大規模化を見据え危機管理能力の向上と行政機能の継続性が求められ、適応分野は重点的に取り組まれる。
  • 格差の拡大、コミュニティの階層化と分断が進み、あらゆる政策分野(経済・福祉・教育・都市計画・財政など)に影響を与え、社会課題となっている。
  • デジタルツインを活用した防災計画
  • マイナンバーカードを活用した災害後支援
  • 化石燃料ベースの集中型エネルギーシステム
  • エネルギー・食糧など物価の上昇
  • 自家用車中心
  • 自然資本の減少
  • 防災・減災対応・災害時・災害後ソリューションニーズの増加
  • パーソナルデータ・行政データを活用した行政ソリューションの創出
  • 気候変動に適した農産物への対応ニーズの増加
  • 再生可能エネルギー導入・地産地消エネルギー推進ソリューションの増加
  • 個別化医療・オンライン診療への市場算入
  • 産業間のサプライチェーンBCPの取りまとめ
  • セキュリティビジネスニーズの増加
  • 顧客の減少、システム統合による市場・パーク減少
  • 自由競争の激化
  • 個人情報・生体情報利用に対する抵抗感

リスク管理

気候シナリオの特定

NECでは、気候変動に関する事業影響を把握し、気候関連リスク・機会に対する戦略のレジリエンスを評価することを目的として、シナリオ分析を実施しています。パリ協定、ステークホルダーからの要請をふまえて低炭素経済に移行する1.5℃シナリオと、現状予想される以上に気候変動対策が実施されない4.0℃シナリオを中心に分析を行っています。そのときに参照したシナリオは以下のとおりです。

参照した公開シナリオ

1.5℃シナリオ 4.0℃シナリオ
  • IPCC AR6 WG1 SSP1-1.9
  • IPCC 1.5ºC特別報告書
  • IPCC AR5 RCP2.6
  • IEA World Energy Outlook 2021
    Net Zero Emissions by 2050 Scenario(NZE)
  • 国立環境研究所 日本版
    SSP+SSP1:持続可能
    SSP5:化石燃料に依存した発展
  • IPCC AR6 WG1 SSP5-8.5
  • IPCC AR5 RCP8.5
  • IEA World Energy Outlook 2021
    Stated Policies Scenario( STEPS)
  • 国立環境研究所 日本版
    SSP+SSP3:地域分断、
    SSP4:格差

時間軸

パリ協定、およびステークホルダーからの要請に対応するため、長期にわたる気候変動の影響を評価する必要性があると考え、2050年までを対象に分析しました。また、SBT目標設定に合わせて2030年を中間地点として設定しました。

検討のステップ

2024年度は初めての取り組みとしてAIを活用し、以下のステップで全社リスクと事業リスクを再度確認しました。

上記のステップにより、全社リスクとしてはカーボンプライシング、事業リスクとしてはデータセンター事業とテレコムサービス事業を特定しました。

種類 概要 時間軸
全社リスク カーボンプライシング導入によるコスト増加 短期・中期・長期
事業リスク テレコムサービス事業 お客さまからの再生可能エネルギー100%での生産要請への対応 短期・中期
データセンターサービス事業 データセンターの稼働停止による売上損失 短期

まとめ

2024年度は、NECの全事業を対象に、シナリオ分析によるリスク評価を行いました。今回初となるAI活用と、環境部門によるスクリーニングを経て、企業の見通しに影響を与えると合理的に見込みうる気候関連の全社リスクと事業リスクを特定しました。環境部門が中心となり、これらリスクに対する評価を行った結果、適切な対策を取ることでどのシナリオにおいてもNECが事業継続および成長できることが確認できました。ここで得られた気候変動へのリスク対策は、各事業部門の長期の事業戦略へ順次反映させていきます。
一方、気候変動の視点でお客さまの多様な未来シナリオを描くことは、NECの事業機会を洗い出すために必要なステップであることから、次年度以降では機会に関する分析を行っていきます。

指標および目標

気候変動対策目標

NECでは、2040年カーボンニュートラルの実現を目指し、2030年目標、2025年度目標を設定し活動を推進しています。

達成年 イニシアティブ 指標
2040年 The Climate Pledge/SBT Net-Zero/ RE100 Scope 1、2、3 ゼロ
グリーン電力 100%
2030年 SBT Net-Zero Scope 1、2 50%(2020年度比)
Scope 3 50%(2020年度比)
2025年度 The Climate Pledge/SBT Net-Zero/RE100 Scope 1、2 25%(2020年度比)
再生可能エネルギー電力量 114,000MWh

Scope 1、2、3排出量

(千t)
排出量
Scope 1 16
Scope 2(マーケットベース) 165
Scope 2(ロケーションベース) 218
Scope 3 5,234
カテゴリ1 購入した製品・サービス 3,946 カテゴリ9 輸送、配送(下流) 0.03
カテゴリ2 資本財 222 カテゴリ10 販売した製品の加工 0.0003
カテゴリ3 Scope 1、2に含まれない燃料およびエネルギー関連活動 41 カテゴリ11 販売した製品の使用 952
カテゴリ4 輸送、配送(上流) 49 カテゴリ12 販売した製品の廃棄 0.2
カテゴリ5 事業から出る廃棄物 3 カテゴリ13 リース資産(下流)
カテゴリ6 出張 14 カテゴリ14 フランチャイズ
カテゴリ7 雇用者の通勤 3 カテゴリ15 その他
カテゴリ8 リース資産(上流) 2    

温室効果ガス排出量実績(Scope 1、2、3) ※Scope2はマーケットベースの数字

算定方法

NECグループに関する温室効果ガス排出量の把握については、NECグループ財務連結範囲を対象にしています。
Scope2のマーケットベースは、地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)に基づき算出し、ロケーションベースは、国際エネルギー機関(IEA)EmissionsFactors2024の国別排出係数を参照し算出しています。
Scope3については、GHGプロトコルScope3スタンダードに基づいて算定しています。
なお、Scope1、2およびScope3の算定結果は、それぞれ第三者保証を受けています。

SBT Net-Zero目標の進捗

NECグループは、2040年カーボンニュートラル達成を目標に掲げ、SBTiからNet-Zero目標として認定されています。この目標を達成するために、2030年度までに2020年度比でScope1、Scope2および、Scope3のそれぞれ50%以上削減を目指します。
この達成のために、Scope2ではRE100の基準を満たす再生可能エネルギーの利用の拡大を進めています。また、Scope3では、最も排出量の多いカテゴリ1の削減に向け、調達取引先へのエンゲージメントを進めています。さらに、カテゴリ11の削減に向けて、製品エネルギー効率向上を進めているほか、お客さまに100%再生可能エネルギーを活用したグリーンデータセンターの利用を提案しています。なお、Scope3の排出量算定においては、上記施策の成果が反映されないため、Scope3は事業拡大に伴い増加する結果となっています。この課題を解決するため、一次データに基づく算定への見直しを進めています。

  2024年度排出実績 2020年度比
Scope1,2 181千t 44.7%削減
Scope3 5,234千t 15.0%削減

物理リスクに脆弱な資産と事業活動

NECは神戸、神奈川含め全国11ヵ所でデータセンターを運営しています。データセンターは政府機関や企業にクラウドサービスやハウジングサービスを提供しており、数多くの情報システムを運用する重要な施設です。データセンターの運用継続性は、中断することなくお客さまにサービスを提供するために非常に重要です。一方で近年、日本における自然災害は頻発しています。2019年、記録的な大雨をもたらした台風が日本の広い範囲に上陸しました。この雨により、停電や水道本管の破損などライフラインに大きな被害が発生。河川が氾濫し、被害は広範囲にわたりました。気候変動による異常気象で災害が増加する可能性があり、データセンターの継続稼働にリスクが生じる可能性があります。
そうした点をふまえ、NECのデータセンターは、水による施設への被害を避けるため、洪水や津波の影響を受けにくい地域に建設しています。データセンターは非常用電源を設置し、停電時でも情報システムの稼働を継続できるよう、72時間以上の発電機燃料を確保しています。緊急時に優先的に燃料供給を受けられるよう、燃料供給会社と優先燃料供給契約を締結しています。
また、将来の気候変動に積極的に対応できるよう、全データセンターの自然災害耐性の再評価と負荷試験(実際の停電を想定した非常用発電機の起動試験)を毎年実施することを決め、活動しています。

国内データセンターの実績と次年度目標

  年度
2021年度 2022年度 2023年度 2024年度 2025年度
目標
項目 平均PUE
(電力使用効率)
1.38 1.45 1.44 1.47 1.50
エネルギー総使用量
(MWh)
129,556 147,910 145,727 134,505 137,643
再生可能エネルギー利用率(%) 9.3 18.3 41.9 45.7 47.4
  • 数値は当社のデータセンターのみ
  • NECクラウドIaaSは、再生可能エネルギー100%で運用しています。

インターナルカーボンプライシングの導入

NECでは、エネルギー効率化と低炭素設備導入推進の視点から、インターナルカーボンプライシング(社内炭素価格)を設定して設備投資によるCO2排出削減量を金額換算し、投資判断の情報として活用しています。この仕組みは、将来の炭素税増額や排出権取引拡大の可能性を見据えた脱炭素社会によるリスクの低減と将来の脱炭素活動の推進にもつながっていると考えています。なお、NECのインターナルカーボンプライシングは3,000円/t-CO2と設定しています。

気候変動に関連する役員報酬への反映

当社では、2022年度に「気候変動(脱炭素)を核とした環境課題への対応」への取り組みが反映される重要な評価指標(KPIs)/サステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(SPTs)を設定し、発行年限を5年、7年、10年としたサステナビリティ・リンク・ボンドを発行しました。いずれのSPTも未達成の場合、本社債の償還までに、社債発行額の0.1%相当額の排出権(CO2削減価値をクレジット・証書化したもの)を購入することになり、収益に影響します。また、NECの評判に大きく影響するため、取締役を含む執行役員の評価に直結することになります。その影響の割合は5%未満です。
CSCOは、サプライチェーン全体に責任を負います。NECでは、2040年までの長期的な視点に立った気候変動対策ガイドラインを策定し、2030年までの中期目標、さらに毎年見直しを行う短期・中期目標を統合した目標を設定しています。また、CSCOはNECグループ全体の中長期目標の達成に責任を負い、環境経営の実践のために機能改革に取り組んでいます。
目標達成状況は年次業績評価で賞与査定の要素として組み込まれ、NECグループ全体の排出目標達成に向けた顕著な進捗が反映されます。その影響の割合は10%です。

炭素クレジット

現時点では、NECはCO2排出量の削減目的として炭素クレジットを活用していません。今後の炭素クレジットの活用については、2040年カーボンニュートラルの実現を見据え、残余排出量の中和の目的で使用する予定ですが、具体的な検討はこれから行う予定です。

省エネ相互診断

グループ会社と連携し、年に2回「省エネ相互診断」を実施しています。
この活動は、互いの事業所を相互に訪問し、エネルギーの使用状況や省エネ対策の実施状況について確認・評価するものです。
各事業所の省エネ活動においては、グループ共通で定めた「必須省エネ施策チェックリスト」を用いて、定期的に実施状況の確認を行っております。
診断は、このチェックリストをベースに重点項目を抽出し、現場の確認や関係者へのヒアリングを通じて行います。
本活動を通じて、省エネ対策の必須項目の順守状況を確認するとともに、改善余地がある箇所については、具体的な助言を得ることができます。
これらの取り組みを通じて、グループ全体のエネルギーパフォーマンスの向上および省エネ・節電活動のさらなる活性化を図っています。