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第1回 衛星からのデータが人々の食生活を支える

水と私たちの生活 第1回 衛星からのデータが人々の食生活を支える──漁業情報サービスセンター

地上700kmの上空から、海面の水温や降水量、水蒸気量などのデータ観測を続けている人工衛星「しずく」。そのデータをもとに、水温分布図を作成して洋上の漁船に提供しているのが、漁業情報サービスセンターだ。

「しずく」からのデータは、漁業にどのような影響を与えているのだろうか。1980年代から漁業における衛星活用に携わってきた同センターの専務理事、為石日出生さんに話を聞いた。


為石 日出生 氏
漁業情報サービスセンター

写真:漁業情報サービスセンター 為石 日出生 氏

海水温から魚の分布を把握する

──漁業情報サービスセンター(以下、JAFIC)とは、どのような活動を行う機関なのですか?


為石:
海水温や潮流といった海に関する情報を集め、漁場がどこに形成されているのかを把握し、それを漁師さんたちにお伝えする。それが、JAFICが行っている最も重要な仕事です。そのほかにも、漁獲量、卸価格、小売価格などの情報を収集してご提供しています。気象、海、漁場、市況、小売と、漁業に関するデータをトータルに扱う機関と考えていただければよいと思います。

──漁師さんの長年の勘と経験を頼りに、どこにいるかわからない魚の群を追う──。漁業にはそんなイメージがありますが、実際にはデータを活用して漁場を把握しているわけですね。


為石:
写真:船内のPCで漁場を確認する漁師さん
船内のPCで漁場を確認する漁師さん

ねじりはちまき姿で、船の上から遠くの海をじっとにらんでいるようなイメージでしょう(笑)。

近年の漁業では、コンピュータを駆使し、データを活用しながら効率的に漁場に向かうというスタイルが一般的になってきているんですよ。とくにこの2、3年の間に、パーソナルコンピュータ(PC)を搭載した船の数はぐっと増えました。

──人工衛星からのデータも漁業に使われているのですか?


為石:
衛星からのデータの活用は、1980年代からスタートしています。82年に試験的な情報活用が始まり、85年からは、無線ファックスなどを使った本格的な情報提供がスタートしました。この頃は、アメリカが打ち上げた気象衛星「NOAA」からデータをもらっていました。

漁業にとって最も重要なデータは、海水温なんです。海は温度に応じた赤外線を放射し、それを衛星のセンサーで受信します。波長の違いから水温を把握し、それをもとに水温の分布図をつくって、漁師さんたちに提供する。それが80年代からつい最近までのデータ活用法でした。

──なぜ、水温が重要なのですか?


為石:
写真:サンマ(秋刀魚) 適した水温13℃(9月)
サンマ(秋刀魚)
適した水温13℃(9月)
写真:カツオ(鰹)適した水温20℃(9月)
カツオ(鰹)
適した水温20℃(9月)

水温によって獲れる魚が異なるからです。
魚は変温動物なので、水温によって体温が変わります。どの水温なら最適な体温が保てるかは、魚の種類によって違います。カツオは20度くらい、サンマなら13度くらいです。
したがって、たとえば20度の水温帯があれば、そこにカツオの魚群がいる可能性が高いということになります。

昔は、船に装備している水温計で海水温を測りながら漁場を探していたのですが、衛星データの活用が実現してからは、より広い範囲の水温を把握できるようになりました。いわば、「水温の地図」をもとにして、最も近い漁場に短時間でアクセスできるようになったわけです。

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