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インタビュー

2社統合でAIネイティブ時代をリードする知財組織へ ――
NEC 知財部門×NEC特許技術情報センター統合
2026年11月6日
2026年4月、NECは完全子会社である株式会社日本電気特許技術情報センター(以下、NEPAS:NEC Patent Service, Ltd.)を吸収合併しました。これにより、NEPASはNECの知財部門に統合され、知財に従事する組織は大きく改編されています。この統合はNECの知財活動において、どのような意味があるのか。また、2社が統合するにあたって、どのような取り組みで一つの組織になっていったのか。本組織統合を進めるプロジェクトを担った3名に詳しく話を聞きました。
Talk Member
知的財産&ルールメイキング部門
主席プロフェッショナル
兼
IPプロセストランスフォーメーション統括部
統括部長
井本 史生
1995年のNEC入社後からNECの知財業務に従事。2024年からは部門長を務め、現在は主席プロフェッショナルとして社内でのAI環境の構築と自社での先行活用(クライアントゼロ)を主導し、知財DXを力強く推進している。また、特許庁特許制度小委員会の委員や日本知的財産協会の副理事長等も務め、法改正の議論や関係機関への対応も精力的に行っている。NEPASからNECに統合された組織「IPプロセストランスフォーメーション統括部」の統括部長も兼務している。

知的財産&ルールメイキング部門
知的財産戦略統括部
プロフェッショナル
渋谷 麻利
1999年にNECへ入社後、生産部門や研究所で予算管理等の業務を担う。その後、2011年に知財本部へ異動し、予算管理や総務・管理業務全般を担当。現在では全社特許費用予算管理を主管し、適正な費用統制や運営効率化を実施している。また、部門全体の業務効率化や間接業務の集約・代行を進めることで部門の社員が本来業務に専念できる環境づくりにも取り組んでおり、生産性向上と業務負荷軽減への支援を続けている。

知的財産&ルールメイキング部門
IPプロセストランスフォーメーション統括部
プロフェッショナル
森岡 由紀子
1998年にNECへ入社し、研究所で有機材料デバイス等の研究に従事する。2009年に知財本部へ異動し、2014年からはNEPASへ出向。特許出願動向のマクロ調査や社内特許評価データベース開発等に取り組む。2018年からはNEPAS内の情報システムの構築・運営やITツール・生成AI関係の勉強会の企画・運営を実施。現在は生成AIやVBAを活用しながら、新しい知財システム利用者のニーズに応えられるような業務効率化ツールの開発を担当している。

生成AIで業務が変わるいま、ふさわしい組織も変わる
そもそもNECの知財部門とNEPASにはどのような役割分担があったのでしょうか?
井本: 時代によって少しずつ役割分担は変化し続けてきたのですが、大枠としてNEPASはNECの知財業務における特許権利化の支援や特許管理、競合他社の事業動向や知財動向の調査分析機能を担っていました。実態としては、機密性が高いものや社内の関係部門との連携が必要な新たな業務はNECで扱い、業務内容や仕様が明確または定型的な業務はNECからNEPASに依頼することが多かったと思います。
その2つの組織をなぜ、このタイミングで統合することにしたのでしょうか?
井本: 生成AIを前提としたAIネイティブな組織をつくるためです。NECもNEPASも、互いに連携をしながら積極的に知財業務への生成AI導入を進めて、一定の成果は得られていました。しかし、今後さらに高いレベルの活動を目指すには、業務内容そのものの変容や、業務プロセスの変革も求められます。それらを別々の組織で進めるのではなく、もっと全体を最適化して効果的・効率的に推進できる体制を整えることが重要だと考えました。
そこで、思い切ったリソースの最適化とダイナミックな業務改革をスピード感をもって実現するために、新しい中期経営計画をスタートするタイミングでNEC知財部門とNEPASの統合を決断しました。AIネイティブの時代に向けた新しい知財組織をつくることを目指した結果です。

知財DXのスピードがさらに加速
統合から半年ほど経ちますが、効果は感じ始めていますか?
井本: 生成AIの導入という点からいえば、両社に分かれていた専門人材を集結させたセンターオブエクセレンス(CoE)を構成し、効率的な体制を整えることができました。これまで2社間に分散していた細かい業務ノウハウに基づいた生成AI活用の知見を共有することで、AIの導入が加速しているのを実感しています。実際、発明者と議論をして発明を作るというプロセスにおいて新たな生成AI活用ツールを導入しようと試験的な運用を進めているところです。
また、これまでは異なる組織だったため、発注手続きが必要でしたが、事務手続きを介することなく仕事を行えるようになったのは、シンプルではありますが確実な効率化につながっています。組織統合によって、以前よりも迅速かつ柔軟な対応ができるようになり、連携が強化された点は大きな成果です。
渋谷: そうですね。会社間の発注手続きではなく、部内での手続きで済むようになったことは、想像以上に大きな効果が生まれたと感じているところです。これまで使用していた発注システムがこれから不要になる見込みです。こうしたシステムの最適化も考えれば、経費削減の効果も大きなものになります。
森岡: 業務においても、変化が生まれました。組織としての専門性が整理され、それぞれが得意な領域に集中できる体制になったことも、統合による大きな変化だと感じています。私自身も自分の専門性を活かせる仕事により多くの時間を使えるようになったと実感しているところです。これまでは情報システムグループの一員として裏方の業務に従事するという意識が強かったのですが、知財活動を支える業務に関われるようになったことで視野が広がり、NECの知財全体に貢献するという意識も生まれてきました。
井本: 一方で、これらの成果は、ただ組織を統合しただけで得られたものではありません。異なる文化をもつ2つの組織が1つになるのですから、一体感を持った新しい文化を作っていくことは非常に重要でした。生成AIによって業務内容やプロセスも変わっていくなかで、一体感をもった組織こそが重要な土台になります。その文化の醸成には、ここにいる2人をはじめとしたプロジェクトメンバーが本当に頑張ってくれたと思います。

2つの組織が『一体感』をつくり上げるまで
組織統合するうえで、意識したことは何でしょうか?
渋谷: まさに「一体感」がテーマでした。というのも、吸収合併という形式上、最初はどうしてもNECが「受け入れる側」で、NEPASが「移ってくる側」という意識があったことは事実だったと思います。
森岡: NEPAS側からは「疎外感を感じてしまうのではないか」と心配する声もありました。
渋谷: そうですね。ただ、新たな組織への検討を重ねるなかで「NEPASではこうしていた」「NECではこうする」という議論から「統合後の部門全体にとって何が最適か」という議論へ少しずつ変わっていったと感じています。社員からも「変わるのなら新しい組織に」という前向きな意見が多く聞かれるようになりました。
統合は、両社の違いをなくすことばかりに目がいきがちですが、今回の統合は互いの良いところを採り入れていく過程だったと思います。実際、このプロセスが互いの強みを改めて認識する良い契機になりました。

森岡: 一人ひとりの意識を変える取り組みとして、知財部門のポータルサイトを刷新する活動も効果的だったと思います。知財幹部のトップメッセージを明確に打ち出すほか、社員の自己紹介ページをつくるなどして、組織統合に備えました。また、NEPAS側のヒアリングでは、両社の歴史を知りたいという声があがりました。確かに2社の関係は長く続いていて、NEPASが担う役割が変化したり増えたりするなかで今回の統合につながっています。この経緯をポータルサイトに年表として整理したことも互いの理解を深めるものになったと思います。加えて、最も強く意識したのは、このサイトの公開を組織統合される4月1日に設定したことです。NEPAS側にとっては、新しい組織が始まる節目の日ですが、NEC側ではその実感が薄いまま過ぎてしまう可能性もありました。そのため、4月から作成を開始するのではなく、4月1日に公開するというタイミングにこだわりました。
渋谷: このほかにも、互いの既存のシステムをどう統合するか、アカウントをどうするかという大きな問題もありました。双方の業務を棚卸しして移管や申請が必要な事項を数十項目に整理し、優先順位をつけて影響の大きい課題から先手を打って対応していきました。アカウントについては、事前にシステム主管部門と調整を重ねた結果、NEPASのものを継続して利用できるようにしたことで、工数面で大きな効果を得ています。このように早い段階からリスクを想定した対応により、混乱なく組織統合を迎えられました。
森岡: 業務を止めることなく4月を迎えられたのは、NECのIT部門の皆さんの力も大きいです。皆さんには本当に助けていただきました。

業界最先端のAIネイティブな知財業務を目指して
これからの目標を教えてください。
井本: 現在は組織統合によってより距離が近くなり、お互いの理解が進んでいます。生成AI活用を進めるAIネイティブな組織を目指すにあたっては新たな組織の仕組みが必要でしたので、まずはそのための土台を築き上げることができました。今後は、さらに業務改革を加速し、業界最先端のAIネイティブな知財業務の実現を目指していきたいと思っています。もちろん、私たちとしてはそのためのサポートを続けていきます。組織の一体化によって、サポートも進めやすくなりました。
渋谷: 私たちとしても、NEPASだった社員の皆さんが遠慮しないように、待つだけではなく、積極的にお声がけすることを心がけています。引き続き、組織としての一体感をつくり上げながら、今後は新たな試みも考えていきたいです。
森岡: そうですね。AIネイティブな組織を目指すにあたっては、変化に対応する速度も人それぞれです。すぐに変化に慣れる人もいれば、時間をかけてゆっくりと慣れていく人もいると思います。共に成長できる組織づくりの支援を意識していきたいです。
- ※所属・役職名等は取材当時のものです。
