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インタビュー

Real Voice NECの知財活動紹介

未来を見据えた選択と集中 ―― NECの商標戦略

2026年3月24日

特許、実用新案、意匠と並ぶ知財の一つである商標。NECでは2024年にDXの価値共創モデルであるヒーローブランド「BluStellar」を立ち上げるほか、生成AIの技術ブランド「cotomi」を打ち出すなど、新たな取り組みを積極的に進めています。これらのねらいは何なのか、また、将来的なビジョンや課題感はどのようなものなのか。NECグループ全体の商標戦略を推進する3名に詳しく話を聞きました。

Talk Member

知的財産&ルールメイキング部門
知的財産ポートフォリオ構築統括部
シニアプロフェッショナル
ブヨー ロマン

法律事務所での調査業務や企業におけるブランドの権利行使(差止要求・訴訟対応)を経験後、2024年6月にNECへ入社。ソフトウェアライセンス関連の渉外業務に取り組む。2025年4月からは、これまでの仕事と兼務するかたちで商標チームへ異動。ライセンス契約の起草、ドメイン名の管理、各種事項に関する助言に従事している。複数国への出願を効率化させるためにハブオフィスを設けるなどのプロジェクトにも取り組む。

写真:ブヨー ロマンさん

知的財産&ルールメイキング部門
知的財産ポートフォリオ構築統括部
プロフェッショナル
若松 美緒

特許事務所での勤務を経て、2005年9月に日本電気特許技術情報センター(2026年4月1日よりNECへ吸収合併予定)へ入社後、複数回にわたるNEC 知財部門との兼務も経ながら、一貫して商標調査~登録、各種審判対応、商標に関する契約・交渉対応、商標に関する社内のルール検討・整備などのNECグループの商標に係る全般を担当。その他知財戦略の策定やブランドチームと連携したブランド戦略策定への助言までを担う。日本知的財産協会(JIPA)商標委員会、電子情報技術産業協会(JEITA)商標専門委員会にも参加。

写真:若松 美緒さん

知的財産&ルールメイキング部門
知的財産ポートフォリオ構築統括部
主任
佐藤 信子

2005年6月より日本電気特許技術情報センター(2026年4月1日よりNECへ吸収合併予定)にてNECグループの商標業務に携わる。複数回にわたるNEC 知財部門との兼務も経て、2025年4月よりNECへ出向。海外商標の調査・出願や権利化、海外商標権利維持(使用宣誓)に対する証拠収集・確認、海外商標に対する異議申し立ての検討・対応、商標に関連する事業部からの問い合わせ対応に至るまで、商標に係る実業務に幅広く取り組んでいる。

写真:佐藤 信子さん

生き物のような商標を大きなブランドにまで育て上げる

商標の重要性は、どのような点にあるのでしょうか?
インタビューの様子

佐藤: 商標の一番大きな役割は、商品やサービスの「出どころ」を示して、お客様が安心して選べるようにすることです。ロゴやブランド名を見て「いつもの会社のものだ」と識別できるようにすることが、商標の基本的な機能になります。また、企業にとっては、長期的に築いてきた信用や評判、ブランド価値を守る仕組みでもあります。第三者に似た名称やロゴを使われて混同が起きると信頼が損なわれかねませんが、商標権によって抑止できますし、必要に応じて対応することもできます。

若松: 私たちの部門が担当しているのは、ブランドの基盤を成すロゴマークなどの商標です。ブランドそのものを担うのは別チームですが、彼らとは密に連携を取りながらブランディング戦略を法的なアプローチから支えています。具体的な業務としては、商標の調査、出願・権利化、契約・交渉、商標権の譲渡・許諾などを行っています。

佐藤: 商標の難しさは「似ているかどうか」の判断で、ケースバイケースになりやすい点です。実際の取引の場面で混同が起きる可能性があるかという実態によるところが大きいです。
また、どの商品・サービス範囲で権利を取るか(指定商品・指定役務)の設計も重要になります。広すぎると実態と乖離し、狭すぎると後に追加出願が必要になるため、事業計画とのすり合わせが欠かせません。たとえ最初の想定はある程度決まっていたとしても、そこから使用領域や使用国が広がっていくこともありますから、どこまでの範囲で権利を取得するかというのは常に頭を悩ませるところです。

若松: 全ての商標について、100数十もある国全てにおいて権利を取得していくのは現実的ではありません。各国で使用も異なりますし、取得時のコストも管理コストも莫大になるからです。だからこそ事業部の皆さんともしっかりとコンタクトをとっていく必要があります。どういう事業計画でどの市場をねらっているかはもちろん、展示会の予定なども全て聞き出していきます。

ロマン: そうですね。どういった商品で、誰のために出すかということを将来性まで想定しながら整理していきます。たとえ現段階ではこのサービスは提供しない、この国では展開しないと考えていたとしても、2年後、 3年後はどうなのか。もし可能性があるのであれば、商標を取得しなかった場合のリスクとのバランスを考えて判断を下していきます。そういう意味でも商標は、未来を考えていく知財です。特許と違って、取得した時点では強い権利ではありませんから、知名度を高めて強くしていくことを考えていかなければなりません。イメージとしては、生き物ですね。生まれたばかりの権利を大きく育てていくことが、商標の面白い点でもあります。

「BluStellar」「cotomi」など、
将来性のある商標にリソースを集中

NECではどのような商標戦略をとっているのでしょうか?
インタビューの様子

佐藤: 近年では技術やサービス名称については商標を取得せず、主に「NEC+一般名称」のかたちを採用しています。その理由としては、「NEC」というマスターブランドの認知・信頼を活かして一貫した企業像を保ちやすいこと、機能・役割が伝わりやすく検索性や商談での説明もしやすいことが挙げられます。一方で、ヒーローブランドとして位置づける場合や商流上の理由がある場合、一般名称での代替が難しい場合などは商標の調査・出願を進めています。
これまでは商品ごとに固有名を多く持つ運用もありましたが、類似商品が増えるなかでお客様にも社内にもわかりにくくなっているという面がありました。また、小さなブランドを数多く持ってもNEC全体の価値向上につながりにくい面もありました。現在は「NEC」を軸に、育てるブランドは絞って強くし、それ以外はわかりやすい商品体系に整理することで、全体最適化のうえ効率的に運用しようとしています。

若松: もちろん、過去の商品名・サービス名も完全になくなるわけではありません。長年お使いいただくなかで名称に信頼や親しみを感じていただいているお客様もたくさんいらっしゃいます。

ロマン: 会社全体として保有商標は減らしながらも、ヒーローブランドの「BluStellar」や生成AI技術ブランドの「cotomi」 のように、会社として推していきたい将来性のある商標に集中していくことが現在の大きな戦略です。多くのBtoC企業ではもっと幅広いポートフォリオを考える必要がありますが、NECはBtoB企業だからこそ、少数の商標に絞ってリソースを集中するというコストパフォーマンスの高い運用が可能です。

若松: ブランドを集約することは、一つひとつのブランド・商標についての使用ルールを丁寧に定められるだけでなく、社内からの運用方法に関する問い合わせにも細やかに対応できるようになります。商標の使用ルールを守って、ブランドを育てるには、このような仕組みをきちんと構築することが重要です。この観点からも、商標を絞ることは非常に大きな意味を持ちます。

「BluStellar」は、大々的に展開していますね。
インタビューの様子

若松: 「BluStellar」は最先端のDX技術によってお客さまの変革を実現する価値創造モデルです。NECグループ全体でこのブランドの訴求力・発信力を高めることで、ブランド価値の向上と、お客さまへより高い付加価値を提供できると考えています。多くの企業がDXブランドを展開するなか、NECもDXを前面に出したサービスを提供していくために本ブランドは立ち上げられました。
「BluStellar」を通じて、幅広いステークホルダーの皆様にNECグループの高度な技術力やサービスを知っていただくことで、企業価値の向上につながることを期待しています。将来的には、「BluStellar」がNEC以上の認知を得て、DXブランドとして独自の強い価値を持つ存在になる――そんな可能性さえ視野に入れています。

「DX といえばBluStellarだよね」「BluStellarだから使いたい」といった声が広がることは、サービスの価値向上だけでなく、NEC全体のブランド価値を高めることにもつながります。こうした商標を広く積極的に活用できる仕組みづくりは、NEC全体のブランド価値を高め、持続的な企業価値向上につながる重要な活動だと考えています。

NECグループ全体の商標戦略を担う醍醐味

NECならではの商標業務の面白さは、どのような点にあると思いますか?

若松: 私が過去に特許事務所で勤めていた頃の業務は、さまざまなお客様から聞いた方針を実現することが中心でした。一方で、NECでは事業部の皆さんのお話を聞きながら、より最適な方法をアドバイスしたり、全社的な方針も意識しながら戦略を示したりすることができます。より上流から関わることができるのが、面白い点ですね。また、NECグループの商標全般の相談や対応が当グループに寄せられるので、全社的な商標に関する問題を把握し、打ち手を検討することができる立場です。実行すると一気に改善へ持っていけるところもやりがいを感じる点です。

インタビューの様子

ロマン: 私も以前は法律事務所で仕事をしていましたが、そこでは類似性調査や先行商標の調査など、テクニカルな業務が中心でした。これに対し、企業では知財の観点からブランドをどう育てていくかというところまで考えることができます。NECに入社してからは、どの国で商標出願するか、グループ内および第三者に対して商標ライセンスをどういう方針で運用するか、不正使用の可能性に対してどのように商標を防衛していくかといった点まで考えられるようになりました。これは、NECが注力すべき商標を絞り込み、一つひとつについて十分な投資をしているからこそできることでもあります。多数の商標を保護・推進しなければならない企業では、このレベルの投資を行うのは現実的に難しいと思います。

佐藤: 私はずっとNECにいるので他との比較は難しいですが、最近「BluStellar」や「cotomi」が大々的に社外で使われている場面を見ると、自分の仕事が事業に直結しているのだと実感できます。

ロマン: 虎ノ門ヒルズや三田駅の地下にも大きい広告がありますが、ああいうのを見ると嬉しいですよね。

インタビューの様子

ブランドの確実な成長は、適切な管理の徹底から

これからの目標を教えてください。

佐藤: 今までは権利を守るための業務を中心に携わってきましたが、今後は商標の使用ガイドラインの制定なども携わることで、商標の適切な活用を守っていくっていうことにも取り組んでいきたいと思っています。
また、海外を含めてNECにはたくさんグループ会社がありますので、グループ会社全体としての管理にも取り組んでいけたらと考えています。グループ一体となったブランドマネジメントに貢献したいです。

若松: そうですね。商標の使用の仕方によってブランド価値は大きく左右され得るので、商標の使用管理は大きなテーマです。商標の使用を統一的に管理することができるようになれば、商標の価値が正しくその商標権、使用態様に蓄積することになり、結果的に商標権自体の価値やブランド価値向上にも寄与することができます。さらには、NECグループの優れた製品・サービス・技術などにブランド力という付加価値をつけることができるはずです。例えば、先ほど「BluStellar」について言及したように、「BluStellar」自体の価値が「NEC」と匹敵するほどに高まって「BluStellarだから使いたい」というところまで育っていけば、それ自体が投資の対象にもなり、会社の価値に貢献し得るはずです。
そのためにも、まずは正しく使用していくことが大切ですから、引き続き商標の使用についてのルールの設定や適切な管理は進めていきたいと考えています。  

ロマン: 「NEC」や「BluStellar」などのブランドは、私たちの会社のイメージそのものです。お客様とわたしたちの間の最初で最後のインターフェイスであり、売上に直結するものですので、丁寧に育てていかなくてはなりません。きちんと管理していくことが極めて重要です。そのためにも、BtoB企業であってもブランディングがどれほど重要であるかということをグループ内に周知しつつ、ガイドラインに沿って運用し、適切に保護していくことが私たちの将来を築くうえで不可欠だと考えています。「ブランドをどうやって上手く育てていくのがよいか、みんなで考えましょう、みんなで支えましょう」 というような心構えをグループ内全体で構築していきたいです。

  • 所属・役職名等は取材当時のものです。
写真:インタビューの様子