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Voyage01 女神の計画
月の神秘に迫るその壮大な計画は、月の女神の名を冠して「SELENE(SELenological and ENgineering Explorer:セレーネ)」と名付けられた。
セレーネの主たる目的は月の起源と進化に関する調査。それは月の全容を明らかにするばかりでなく、我々人類にとっての月の利用価値をも明らかにしてくれる。月が持つ元素、鉱物の分布、磁気、さらには水分の有無など、45億年間神秘のヴェールに包まれた女神の素顔が見えてくる歴史的な計画でもある。
NECが開発・製造を担当した月周回衛星は昔話になぞらえて、公募の中から選ばれた「かぐや」という愛称で呼ばれることになった。また、「かぐや」を支える二つの子衛星の「おきな」「おうな」という名もまた同じく昔話から名付けられた。
NECがその中心となり、製造の要となったのには理由がある。日本初となる人工衛星「おおすみ」、静止気象衛星「ひまわり」、我が国初の月周回衛星「ひてん・はごろも」。様々な用途の人工衛星をこれほどまで数多く担当している企業は他にない。NECだからこその経験と実現力が、「かぐや」を推進していくことになる。
月周回衛星「かぐや」は地球を周回する人工衛星とは違う。遠く38万km彼方の月を周回しながら、様々な機器による観測・探査を行い、そのデータを地球に送信することを要求された、アポロ計画以来最大規模となる月探査計画の中核をなすものなのだ。すべての工程をひとつの失敗もなく完了するということは、並大抵なことではない。
SELENE meets NEC
「かぐや」の製造、月に向けての正確な打ち上げ管制、軌道への投入、観測ミッションの遂行、運用などを担当しているNECには、日本の宇宙開発事業と共に歩んだ50年を超える歴史がある。そこで培われてきた数々の知見。宇宙のスペシャリストでなければ、この計画は実現しない。「かぐや」がNECと出会ったのは、なかば必然であったかもしれない。
NEC、宇宙への歩み
1956年、東京大学の依頼に対してロケット用の機器を製造したのがNECの宇宙事業の幕開けであり、日本初となる人工衛星「おおすみ」以来、今では暮らしの中で役に立っている宇宙システムの多くをNECが支えている。更に宇宙システムを活用したソリューションで、人々の安全な生活に貢献していくことも、NECの役割である。
NEC宇宙システム事業部 月周回衛星(SELENE)プロジェクトマネージャー 春日一仁が語る
はじめて宇宙を実感したのは、1963年にケネディ大統領暗殺のニュースが衛星テレビ中継で流れたときです。その5年後、メキシコオリンピックの開会式を生中継で見たのですが、日本の深夜に開会式が行われていて、それを見ながら「世界中で同時に数十億人という人が、この開会式を見ているんだな」と思ったわけです。
その一体感を感じたときに、宇宙技術というのは人類に一体感を感じさせることが出来る技術なんだ、宇宙開発を通して地球がひとつだというイメージをみんなが持てば、争いごとも少なくなるんじゃないかと思い、じゃあ、そんなイメージを伝える人工衛星を作る側になりたいな、と思ったのです。
壮大な「かぐや」のプロジェクトを進めていくには、それなりの苦労や障壁があります。プロジェクトのマニュアルだけでも段ボール10箱分になりました。このプロジェクトに関った人間はNECグループだけで総勢1000名になりますし、NEC以外では科学者の方々だけでも100名はいらっしゃいます。セクションも勤務地もばらばら、研究分野も要求も人それぞれ。そんな大所帯では、プロジェクトマネージャーとしてコミュニケーションを円滑に図り、各々の意見やこだわりを調整することが非常に大事です。まとめ役としての責務には重いものを感じましたが、同じ目的を持ち同じゴールを目指す人材の集合体ですから、最終的にはひとつにまとまることができました。「かぐや」が行うミッションは15ですが、当初は14でした。ミッションが追加になり、それに伴う設計や重量、そして電源など仕様が変更になるという課題が増えました。また、衛星の打ち上げ高度が安全性を高めるために変更になるということもありました。
こうしてみると「かぐや」には数多くのチャレンジがあったわけですが、無事に月の周回軌道に入れることが出来ました。それは高いゴールを目指して困難をのり越えていく、というプロジェクトチームの情熱と実現力があったからだと思っています。
NECは月周回衛星「かぐや」を応援しています。