脱炭素と資源循環は現代企業にとって不可欠な取り組みです。これらはグリーントランスフォーメーション（GX）の中核を成し、企業はCO₂排出削減と効率的な資源利用を両立させる環境対策が求められています。この対策が進まない企業は、法的罰則や市場競争力の低下、投資家の支持喪失などのリスクに直面する可能性が高まります。NECが提案する「GXプラットフォーム」は、CO₂排出量などの環境データを統合管理し、最適な施策を提案することで、企業が持続可能な成長を実現できるよう支援します。

1. はじめに

脱炭素と資源循環は、現代企業が取り組むべき不可欠なテーマであり、これらはGX（グリーントランスフォーメーション）の中核を成す要素になります。これはわが国が2050年までにカーボンニュートラルとレジリエントな社会の実現をビジョンと定めたなか、企業はCO₂排出を削減する脱炭素化に取り組む必要が急務であると同時に、限られた資源を効率的に利用し、廃棄物を最小限に抑える資源循環も、持続可能な経済活動において重要となるためです。また、脱炭素と資源循環の取り組みは、相互に補完し合う関係にあります（図1）。例えば、資源循環が進むことで新規資源の採掘や製造に伴うエネルギー消費が削減され、結果としてCO₂排出も減少します。企業がGXを実現するためには、脱炭素と資源循環を一体的に推進し、持続可能な成長を目指すことが求められており、この達成には企業単独だけではなくパートナー企業やサプライヤとの連携も欠かすことができません。これにより、企業は環境負荷を低減するとともに、新たなビジネスチャンスを創出することが可能となります。

そのようななか、NECは、NEC 2030VISIONで定めた “環境負荷を減らし、限りある資源を有効に活かして人と地球が共存する未来を”のビジョンの実現を目指し、GXを包括的に支援するオファリングスイートとして「GXプラットフォーム」を企画しました。

2. 企業を取り巻く状況

欧州ではサステナビリティ情報の開示について法的拘束力を伴った規制が進んでいます。日本国内でも、プライム上場企業を中心に環境情報の開示が進んでおり、今後はスタンダード市場、グロース市場に属する企業にも環境情報の開示要求が広がる見込みです。このように環境目標へのコミットと環境情報開示の管理・見える化の取り組みの重要度が高まっています。具体的には、企業の持続的な成長や生存を脅かす要因となり得るリスクは4つに分類されます（図2）。

3. GXプラットフォームの紹介

3.1 コンセプト

NECが提供するGXプラットフォームは、企業が直面する脱炭素と資源循環の課題に対して、実用的かつ戦略的な解決策を提供します。企業のCO₂排出量などの環境データを連携して統合的に管理し、CO₂排出量や資源利用のデータを詳細に分析することで、的確な状況の把握を行います。また、シミュレーション機能を活用して、最適な改善策を提案し、企業が長期的に競争力を維持できるよう支援します（図3）。データ連携と高度な分析機能を駆使し、企業のGXを加速させることで、環境対応と経済成長の両立を実現します。

3.2 構成要素と提供価値

GXプラットフォームは、CO₂排出量などの環境データを透明かつ一貫して管理・報告することで、企業の環境パフォーマンスを可視化し、投資家や政府に対する開示・報告の信頼性を向上させます。そのため、エンタープライズ企業全般を対象としますが、特にサプライチェーンに向けた提供価値の最大化を企図しています。サプライチェーンは、原材料の調達から製品の製造、流通、最終的な廃棄に至るまでの一連のプロセスを網羅しており、各段階での環境負荷が積み重なっています。GXプラットフォームは、これらのプロセス全体を通じてエネルギー消費やCO₂排出量のデータを可視化し、データの高度な分析とシミュレーションを駆使し、最適なお客様の課題解決への意思決定を支援するものです（図4）。

4. ソリューション例

4.1 環境パフォーマンス管理

NECの環境パフォーマンス管理ソリューション「GreenGlobeX」（図5）は、グローバルに点在する、エネルギー使用量、温室効果ガス排出量、水使用量、排水量、廃棄物などの環境データを一元的に収集し、効率的に分析・管理・可視化することができます。柔軟なマスタ構造を備えており企業活動や環境動向の変化への追従、使い慣れた帳票の活用を可能とする入力インタフェースを備え、NECにおいても先進的な環境活動を長年支えてきた実績があります。企業の経営層部門・IR部門・環境管理部門・設備管理部門において導入効果が証明されています。これによって、お客様とサプライチェーン全体のCO₂排出量の見える化が実現されることになり、製造業を含めた幅広いお客様に利用いただいています。

4.2 製品カーボンフットプリント

現状の環境マネジメントでは、開示義務対応と企業価値向上を目的として、企業の全事業活動ごとのCO₂排出量を一括で集計し、企業活動全体を可視化しています。今後は、更にサプライチェーンを含めた製品・サービス単位での可視化を、製品管理、生産管理、調達管理の各システムとの連携を見据えながら実現する予定です。詳しくは、本特集「ABG（Activity Based GHG Emission）マネジメント実現にむけて」を参照ください。

4.3 分析・シミュレーション

収集した環境データをNECの解析技術を駆使して分析し、企業の脱炭素施策の検討に役立てる高度な分析・シミュレーション機能を開発予定です。例えば、異なるエネルギー源への切り替えや、生産プロセスの最適化など、さまざまな施策がどの程度CO₂排出を削減するかをシミュレーションし、最も効果的な施策を提案します。更に、継続的に蓄積したデータを学習し、市場動向や企業ニーズに応じて最新の施策を提案し続けることで、持続可能な成長を支援します。詳しくは、本特集「エージェントベースシミュレーションによるグローバルサプライチェーンの持続可能性向上」を参照ください。

4.4 デジタルMRV（Monitoring, Reporting, Verification）

CO₂の削減量や吸収量のデータを測定・報告し、第三者による検証を行うプロセスをデジタル化するサービスを開発中です。データ収集から報告、検証までのプロセス効率化、 IoTやブロックチェーン技術の活用による透明性と信頼性の向上が期待されます。J-クレジット制度への適用計画を検討しています。

4.5 マテリアルズ・インフォマティクス

NECのAI技術を活用し、アルミニウムのリサイクル工程における不純物除去率を高める取り組みを、パートナー様との共同実証を通してサービス化の予定です。また、アルミニウムのリサイクル工程の各種データ収集を一元管理することによるリサイクルアルミニウムのトレーサビリティ、メーカー間のトラストなデータ連携についても計画しています。詳しくは、本特集「ICT活用による高度なアルミニウム循環経済構築」を参照ください。

4.6 GXコンサルティングサービス

NECグループの営業部門と連携したGX専門のコンサルティング組織が、お客様が抱えるさまざまなGX関連の課題、相談や要望に応じて、課題解決を目指す伴走型の支援サービスを提供しています。詳しくは、本特集「企業のカーボンニュートラル実現を支援するGXコンサルティング」を参照ください。

5. まとめ

GXプラットフォームは、企業が喫緊で直面する脱炭素と資源循環の課題に対して、革新的なソリューションを提供するオファリングスイートとして、持続可能な未来への変革をともに推進します。収集したデータを活用して最適な施策を提案することによってGXプラットフォームも進化し続けます。この相互成長を通じて、NECは環境と経済の両立を目指し、持続可能な社会の実現に向けた力強いパートナーシップを築きます。

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