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物流共同化は「着荷主」起点の「垂直」連携へ
~日清食品の実践にみる「物流共同化はどこまでできるのか」~
ロジスティクスシェアリングコミュニティ連載コラム 第6回 ロジスティクスシェアリングコミュニティ連載コラム 第6回
物流共同化は「着荷主」起点の「垂直」連携へ
~日清食品の実践にみる「物流共同化はどこまでできるのか」~
NEC「ロジスティクスシェアリングコミュニティ」の2026年度第2回ミーティングは、8月28日にNEC本社で開催。今回はゲスト講師に日清食品株式会社 専務取締役で物流統括管理者(CLO)の深井雅裕氏を招き、コミュニティメンバー各社から過去最大となる23名が参加しました。
本コラムでは、ゲストの深井氏と、当日のホストを務めた筆者による第1部・パネルディスカッションの内容を軸に要点をレポートします。初めに菊田が「物流共同化が求められる背景」を巡って前ぶり解説。続いて深井氏がプレゼンで「物流共同化は水平連携から垂直連携へ」と主張したのに対し、菊田が「ツッコミ質問」を重ね議論を深化。そのやり取りも深井氏コメントに含めて書き込みました。ぜひご一読ください。
第1部・パネルディスカッション/物流共同化はどこまでできるのか?
①なぜ物流共同化が必要か~物流2024年問題と2030年危機(菊田)
政府が「物流2024年問題」のアラームを発出した根拠は、「働き方改革によるドライバーの労働時間減少を背景に、このままでは2024年に輸送力が約14%不足する」とした予測でした。現実には2024年度、供給力不足が散見されたものの、全国的な危機には至りませんでした。その主な理由は、本調査の前提が「2019年の物流量が回復した場合」だったのに対し、2024年度の物流量は2019年度比で-12%だったこと。残る2%は産官の努力でカバーし、計14%の不足を回避できた模様です。
これを受けて政府は「ドライバー不足が加速する2030年には約34%の輸送力不足」とした従来予測も見直し、「7%~25%の不足」と幅のある予測に下方修正。努力次第で不足を7%程度に抑えられる一方、最大では25%の不足も想定されるため、「2030年までに26%の輸送力確保」を新たな政府目標としました。仮に10%不足するだけでも10台に1台が運べない。よって私たちには引き続き「積載効率の向上/荷待ち・荷役時間の削減」という<物流効率化法3大義務>を順守する努力が求められています。
ところが、営業用トラックの平均積載率は今も約38%という低水準で推移。また地球温暖化対策推進法で政府は「2030年に2013年比で排出CO2を46%削減」を国際公約し、うち運輸分野では「2013年比で35%削減」を目標としています。現実には今夏の酷暑は国内でも欧州でも激甚化を続け、先日のネパールの氷塊崩落による土石流・大洪水も、地球温暖化で急激に進む山岳氷床の融解による災害でした。「(化石燃料を)掘って掘って掘りまくれ!」とCO2増加を放置していたら、温暖化は加速の一途に。私たちは戦争や指導者の放言に目をとらわれず、物流脱炭素化にも真剣に取り組まねばなりません。
「物流共同化」は、積載効率=輸送能力の向上にも、脱炭素化による産業社会の持続可能化にも貢献するからこそ、「ロジスティクスシェアリング」を進める必要があるのです。今日は物流共同化を積極展開中の日清食品様をゲストにお迎えしました。深井専務にその経緯と考え方を具体的に伺っていきたく思います。
②物流共同化は「水平連携」から「垂直連携」へ(深井)
これまで当社はさまざまな形の共同物流に取り組んできましたが、取引先との関係性を変えなければ進めにくいことを実感しています。中でも重要なのは、取引関係を超えてお互いが「パートナー」となり、共同保管、共同物流、データ連携を進めること。「取引関係からパートナーへ」の表題にはこの思いを込めました。
当社は従来、季節波動の異なるメーカーとの共同保管・共同輸送や、重量貨物と軽量貨物を組み合わせて積載率を高める取り組みを進めてきました(サントリー、アサヒ飲料、サッポロ、JA全農、伊藤園ほか)。
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それが現在、共同化の重点は「発荷主同士の水平連携」から、「卸など着荷主を起点とする垂直連携」、さらにデータ連携へと移りつつあります(図表1)。
水平連携の問題点は、相手探しや条件調整に時間がかかり、偶然性に左右されやすいこと。工場や倉庫の場所、納品条件、リードタイム、時間指定などが少しでも合わなければ成立しないからです。つまり「水平連携は偶然の一致を待つ設計」であるということです。
一方、着荷主が「ここにまとめて持ってきてほしい」と主導すれば、複数メーカーの荷物を束ねやすく、共同化の可能性が広がります。垂直連携は「需要側が主体的に物流を束ねる設計」になるのです。着荷主を起点とすることで、マッチング候補が多様になり、納品条件の変更が可能、多くの発注データが揃う、などの利点を生かし、共同配送実現へのスピード感と拡張性が生まれます。
2023年に当社がJA様と行った共同化事例では、当社が着荷主となる調達物流の帰り便に、当社の製品を載せるラウンド輸送を始めました。また当社の納品先で着荷主となる三菱食品様とは、在庫情報や需要予測などのデータ共有で効率化を進展中(以上、図表2)。将来的にはVMI(Vendor Managed Inventory/ベンダー管理在庫)やCPFR(Collaborative Planning, Forecasting, and Replenishment/協調的計画・予測・補充)も進め、受発注のない世界を目指して取り組んでいます。

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③調達物流に大きな改善余地、共同化の出発点は「可視化」(深井)
今後を考えると、特に調達物流は大きな改善余地があると思います。メーカーの資材・原材料の調達部門は価格や購買量を見ていても、納品頻度や物流コストまでは十分に把握していないことが多い。当社でも資材調達の流れを可視化したところ、毎日の小口納品や非効率な輸送が多数見つかりました。
三菱食品様とのデータ連携では、従来は営業担当者が販売計画を作り、それを基に生産計画や資材調達を行っていました。しかし営業計画には欠品を避けたい心理やコミットを避けたい心理が反映され、精度に限界があります。そこで、取引先が持つ販売・在庫・需要予測データを活用し、共同で需要を見ながら在庫や業務を最適化する取り組みを開始しました。受注調整業務もデジタル化により大幅に削減されつつあり、最終的には発注・受注業務そのものをなくすことを目指しています。
いざ共同化を始めようと言うときに、出発点になるのは「可視化」です。自社の業務プロセス、プロセスごとのコスト、物の流れを把握していなければ、相手と組んでもメリットは見えません(図表3)。当社でも、資材納品のロット、リードタイム、物流費を可視化したことで、毎日少量ずつ発注していた納品をまとめ、トラック台数や事務作業を削減できる余地が見えました。感覚論ではなく、可視化したデータを同じテーブルに出し、何がムダなのかを関係者で確認することが、共同化の第一歩なのです。
④ゼロサムからプラスサムへ(深井)
今後は、価値を奪い合う「ゼロサムの取引関係」から、価値を共創する「プラスサムのパートナー」関係へと、取引の構造改革を実行すべきと考えます。価格やリベートの奪い合いではなく、費用や利益の構造を共有し、互いに価値を創る方向へと。
価値を共創する手法としては例えば、「費用と便益をアンバンドリングし共有」「需要・在庫・特売計画を事前共通開示」「納品時間・伝票・検品を業界標準に揃える」「削減効果をゲインシェアで分配」などがあり、その基本的姿勢として必要なのは「競争は商品で、物流は共同で」の意識。互いの信頼関係を築き、必要なデータやプロセスを一定程度さらけ出すことも不可欠と思います。それによって「消費者に、社会にどのような価値を提供できるのか?」が問われるべきでしょう。
⑤物流共同化を巡る4つの問い(深井)
*誰が「共同化のハブ」になるべきか?
共同化のハブは、着荷主が主導する形が望ましいと思います。ただ、運送事業者や倉庫事業者もデータを持っているため、発荷主・着荷主・物流事業者が参加するコンソーシアムのような仕組みも有効です。
*取引関係をパートナーに変える契約設計とは?
ゲインシェアのルールづくりが必要で、費用按分/責任分界/KPI連動―売買契約の枠組みで扱えないものを、業界標準としてどう定義するか、などが課題です。なかなか難しいことですが……。
*共同化の成果のモノサシは?
さまざまなKPIが考えられます。成果指標は単なる物流費削減にとどめるのではなく、サプライチェーン全体のコストをどう下げるか、企業価値をどう高めるかの視点が必要。部分最適ではなく、部門や取引関係を越えた全体最適を測る指標を置くことが、CLOの重要な役割だと考えます。
*競争と協調を分ける情報開示のラインは?
物量/在庫/特売計画/原価――何をどこまで開示すれば共同化が動き、どこから先が競争領域として守るべきなのかが課題で、先述の通り開示のガードレールを引き下げる用意も必要と思います。
質疑応答から第2部/グループディスカッションへ
◆会場からの質問①
*物流共同化を進めるほど、トラブル発生時の影響も広がる可能性があると思います。トラブルを小さく抑えるために、どんな備えや考え方が必要でしょうか?
(深井) トラブル対応も共同化の対象で、発荷主・着荷主・物流事業者など関係者が共同で解決策を考えるべきです。最終的なコストは消費者負担につながるため、誰か一者に押しつけるのではなく、パートナーとして対処することが重要と思います。
◆会場からの質問②
*お話を聞き調達物流を改善したいと考えました。着手する場合、まず何から始めるべきでしょうか?
(深井) 最初に行うべきことは、「可視化」です。各工場に納品される資材について、ロット、リードタイム、配送頻度、出発地などの実態を把握する必要があります。当社でも、資材の流れをTier 5まで確認したところ、遠方から運んでいる資材が、実は近隣拠点から調達できることが分かり改善できました。まず現状を見える化することで、改善余地が明確になるのです。
◆会場からの質問③
*サプライチェーン全体で最終的なコストや価格を最適化することが重要だと理解しました。お取り組み中のCPFRについて、どのような条件交渉や形を目指しているのか、可能な範囲で教えてください。
(深井) CPFRの実現には、まだ距離があります。現在は複数のプロジェクトを進めていますが、需要予測の共有だけで成立するものではなく、入口として営業活動や店頭オペレーションの標準化に取り組んでいます。取引条件が定まり、需要計画を共同で立てられるようになれば、サプライチェーン全体の在庫削減や業務効率化につながるはず。道のりは長いものの、達成できれば大きな効果が期待できると思っています。* * *
以上で第1部は終了しました。休憩をはさみ第2部では、以上の議論を踏まえ、次のような物流共同化の論点について6つの小グループに分かれ、参加者同士で議論いただきました。
*日清食品様の共同化の方向性や検討内容で、自社の取り組みと重なる内容、取り組んでみたい内容は?
*現在、共同化(自社•他社)の観点でできていることとできてないことは何か? コスト・積載率. CO2・待機時間などの観点だとどうか?
*他社との物流の共同化で解決したい問題・期待したい効果は何か? また、「どうなったら成功Jと言えるか?
*他社との共同化を進めるとき、どのような連携・調整が必要になりそうか? またそれを進めるには、どのような旗振り役(ハブ)があると解決できそうか?(例:自社/取引先/NECなどの第三者など)
*組む相手を見つけるうえで、どんなルール・費用分担や情報共有の範囲であれば組めそうか。その上で、まず何から始められそうか?
――1時間余の議論を経て、各グループの代表者が結果を要点報告。参加者全員で成果を共有し、パネルディスカッションと合わせて意義深いミーティングとなりました。終了後は希望者で別室に移動し、ネットワーキングに。乾杯のあと、ここでも活発な談義が交わされました。
共同輸配送の最新トレンドや業務理解を深めるセッションを通じて、同じ課題意識を持つ企業同士が業種を超えて交流・意見交換できる場です。持続可能なロジスティクスの実現に向けて、共同輸配送の取り組みを推進したい企業が集まり、ディスカッションやワークショップを通じて共同輸配送への理解を深めるとともに、将来的な協業の可能性を広げることを目的としたコミュニティです。
ロジスティクスシェアリングコミュニティ連載コラム
持続可能なロジスティクスの実現に向け共同輸配送の実現を考えている企業同士でのディスカッションやワークショップを実施する集いの場としてNECが運営するBluStellar Communities「ロジスティクスシェアリングコミュニティ」。
連載コラムでは、コミュニティ内で講演を実施したエルテックラボ代表/物流ジャーナリストである菊田一郎氏がミーティングの様子を踏まえながら物流の最新トレンドについてご紹介いたします。
筆者紹介

エルテックラボ代表/物流ジャーナリスト 菊田一郎
■経歴
物流専門出版社にて編集長、社長、団体理事等を兼務歴任。2020年6月に独立し現在に至る。物流、サプライチェーン・ロジスティクス分野のDX/IoT/ICT/ロボティクス&マテハン活用を軸に、SDGs/ESG対応へのグリーン化、人権尊重のホワイト化を訴える著述・講演、アドバイザリー業務を積極推進中。










