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今あるべきCLO/物流組織の役割と物流共同化
ロジスティクスシェアリングコミュニティ連載コラム 第2回今あるべきCLO/物流組織の役割と物流共同化
~企業連携と物流網マネジメントで考える物流危機克服のカギ~
去る1月28日、NEC BluStellar Communities「ロジスティクスシェアリングコミュニティ」の会合が開催されました。今回は、「物流改革」に向けて共に戦う筆者の「戦友」の1人である、元サンスターの物流担当役員(人呼んで“元祖CLO”!)・荒木協和氏をゲストに迎え、対談形式でパネルディスカッションを行いました。その議論を振り返って要点採録するとともに、今回も筆者のメッセージを整理・強化してお届けしようと思います。
失われた30余年の物流環境変化
初めに議論の出発点として、モデレータを務める菊田が図表1の解説を行いました。これは我が国の人口動態と将来推計のグラフに、この数十年の経済環境と物流政策の変化状況を組み合わせた、筆者独自のオリジナル図説です。人口動態は2021の前回国勢調査までが実数、それ以降は推計とは言え、20年(30年、40年…)後の20歳(30歳、40歳…)の人口は、今の出生数からほぼ確実に推定できるし、それ以後の趨勢もかなりの確度で推測できるため、「この世で唯一、確実な未来予測」と言われています。

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中でも中核労働力となる生産年齢人口の推移に着目すると、その歴史的ピークは1995年の「8,716万人」(おそらく2度とない)。もっとも働く人口が多かったこの時期に、何という皮肉か、バブル経済が崩壊し、一気に求人需要が減退。「就職氷河期世代」が生まれ、今や年長者ははや50代半ばに。当初から非正規労働を続け保険料を納めていない人たちの年金をどうするのか、大問題になると言われています。
さてもう1つの歴史的皮肉が、バブル崩壊の直前に旧・物流2法が施行されたこと。バブル期に不足した物流供給力を補うため参入規制が超緩和され、10年余の間に運送事業者は約40,000者から約63,000者へと急拡大。政策目的を達成したその時期が、なんとバブル崩壊で物流需要が急速に冷え込む時期に重なってしまい、一転して真逆の供給超過に。運送市場はレッドオーシャン化し、運賃のたたき合いで運賃とドライバーの給与が長期的に下落し、労働時間は増加していきました。つまり「失われた30年」の期間に、運送業界の「暗黒の30年」が招来され、今度は働き方改革法案適用とかち合ったことで、ドライバー不足由来の「物流2024年危機」の原因となったわけです(さらに奥深い真因として筆者は、「物流軽視・蔑視の歴史的・社会的認識」を挙げていますが、ここでは深掘りしません)。
この物流危機に対処するため、今度は規制緩和と真逆の規制強化策として新・物流2法、トラック新法、取適法、と関連法が矢継ぎ早に改正・施行されつつあるのが、現在地点なのです。人口ピークを挟む半世紀の間に、前後でこれほど極端な市場変化・政策変化が起こっていたことが、図で一目瞭然かと思います。
そしてもう1つ、この図から判読すべき重要ポイントは、「今後しばらく、わが国産業界の超・人手不足時代は続く」ということ。総人口が減れば物流需要も減少するので、いつかは均衡点に達するはずですが、2040年前後までは生産年齢人口の減少スピードが速く、需要に追い付けないのです。長期的事業計画は、この趨勢をしっかり踏まえて考慮されることを、筆者は強くお勧めしています。
旧時代の物流責任者の役割
さて、上にみた「暗黒の旧時代」における物流責任者の役割について、まさにその渦中に物流責任者を務めていた荒木講師が、生々しい実態を明かしてくれました(図表2)。ご覧の通りで、「運送事業者に対する値引き要請とサービスの押しつけが、荷主の物流責任者の仕事だった」と荒木講師は語りました。今般の改正法では、「長時間の荷待ち」「契約のない付帯業務」「運賃・料金の不当な据え置き」などが、荷主の不適切行為として国土交通省から例示されています。

拡大する図表2:旧時代における物流責任者の役割(荒木)
物流危機克服への処方箋①新時代のCLOの使命
以上を踏まえ、物流危機克服への処方箋を探ることが今回のディスカッションのテーマ。まず「①新時代のCLOの使命」を巡り、荒木講師が改正物流法で特定荷主等に「物流統括管理者」の選任が義務付けられたことを紹介しつつ、「それは特定荷主だけでなく、すべての荷主企業に必要な役割」と強調。国が規制の順守状況をチェックするため設けた「トラック・物流Gメン」の活動状況にも言及しました。
次に菊田が新法で規定された物流統括管理者の役割を復習したあと、荒木講師がそれらの役割について、先の図表2の3項目に対置させて、多くの点で「社会的使命」と「社内の使命」にトレードオフが発生することを指摘(図表3)。その解決にこそ物流統括管理者の重要使命があることが示されました。

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このトレードオフ問題について荒木講師は、次のように社会責任と社内責任を改めて対置し、分かりやすく示してくれました。
(1)社会責任➡物流関連従事者(特にドライバー)に対する労働環境の改善
- 労働時間削減に向けた時間把握と是正
- 適正運賃及び作業費/待機費を運賃とは別に支払う構造
- 物流委託内容や実態が法規制に適合していることの把握
- CO2等の実態把握と削減
- 以上の事項に対する改善計画作成と予実管理
(2)社内責任➡社内に対し経営層(CLO)として果たす責任の遂行
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物流における実態の把握と説明責任
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物流ABC(アクティビティべーストコスティング)によるコスト構造の把握と改善
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サプライチェーントータルでの費用適正化(在庫・間接費)
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現状に適合し全体最適な商取引の変更
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社内外労務管理の改善及び費用の適正化
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財務諸表上における対策結果の証明
- 行政報告内容の社内承認
物流危機克服への処方箋②標準化と平準化
次の論点に取り上げたのが、「標準化と平準化」です。初めに菊田が、<物流業務効率化の最大のカギは「標準化」と「平準化」>という持論を紹介。うち、物流の標準化には「モノと情報とプロセス」の3つの観点があるとし、次のように説明しました。
<物流の標準化>
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モノ/梱包とパレット等物流機材のサイズ標準化・モジュール化
……欧州のユニットロード寸法モジュール体系「モジュールシュカ」と、日本で検討されているスマートボックス規格案を例示 -
情報/データ、プロトコル等の情報・通信規格の標準化
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プロセス/入出荷・入出庫、検品等の作業プロセスの標準化
<物流の平準化>
ここで荒木講師は、日雑メーカーの「出荷波動の現実と平準化」の実例から、連休や四半期の締め日に波動の山ができていたことをグラフで図示。その上で「出荷量がマックス日の半分の出荷を、1日ずらすだけで平準化される」という事実をクリアに示しました。
もう一つの事例として、荒木氏が実際に取り組んだ「平準化輸送の実証実験結果」も紹介。年末の波動の山で現場が混乱していたのを、大みそかの休日に臨時出荷を行ったことで、見事にピークを解消できたことを説明しました。
さらに荒木講師は、荷下ろし作業を行うドライバーと、荷受け側のパート作業者しか知らない「納品現場実態」の例を挙げて問題提起。「荷積みの際、ドライバーは積載効率を上げるために用意された品種別のパレット貨物を崩し、ばらしてトラック荷台に積み合わせる。納品時には逆に、これを品種別に積み直す作業が発生しており、荷役時間を長引かせている」と指摘。その改善策としては、ボックスパレットにパレット貨物を入れ、トラック荷台に2段積みにして積載効率を高める方法などがあることも紹介しました。
荒木講師は、「こうした現場の実態を、ほとんどの管理者は知らないことが大きな問題。物流統括管理者やCLOがこれらをどこまで把握できるかが課題になる」と指摘しました。
納品作業効率化のもう1つの方策として、ASN(事前出荷情報)の活用にも言及されました。納品時に欠品が生じたとき、従来の方法では別に他拠点から補充配送して補うしかありませんでした。しかし、業界標準EDIの採用で、確定出荷情報によるASN送信ができるようになる。現在、日雑業界ではノー検品化も視野に入れたASN導入の取り組みが進んでいるそうです。
荷主社内・荷主相互の連携、荷主と物流の連携強化が効率化のカギ
以上の議論を経て、「荷主社内の連携/荷主相互の連携/荷主と物流の連携」を強化することが、物流全体の効率化へのカギであるとの結論が導き出されます。そのうち「荷主社内の連携」に関し、荒木講師は図表4を示します。解決すべき物流課題の中で、「多くは物流以外の部門が管掌している案件。物流部門だけでできることは少ない」として、社内各部門間の連携強化の必要性を強調しました。

拡大する営業、生産、マーケティングなど社内各部門との連携に加えて、物流統括管理者/CLOには顧客・調達先ほか他の荷主や物流企業との連携も求められます。そうしたCLOのあるべき立ち位置について、荒木講師が示したのが図表5です。社内では各部門に指示を出せるよう、CLOには社長の直下で財務・人事などの部門と並列する立ち位置(図の左側)が望ましい。加えて顧客や社外各社とも連携し(図の右側)、サプライチェーン全体の最適化をリードするのが、CLOのあるべき役割だということです。
菊田は最後に以上の結論の補足として、「その過程で、荷主各社と物流企業が物流プラットフォーム上で連携し、幹線輸送などの共同化を進めることが期待される。その意味でもNECのロジスティクス・シェアリングコミュニティに対する期待は大きい」とコメントし、ディスカッションを締めくくりました。これらの取り組みが、物流と産業社会の持続可能化に資するとともに、働く人と地球の環境保全に貢献することを、筆者は強く期待しています。

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パネルディスカッションの終了後は、「第2部:CLO実践編~物流網マネジメント~」と題するワークショップ」に移り、グループミーティングで「自社における物流データ管理の現状」を共有したうえ、「物流網の改善」について議論しました。
具体的には、モデル企業の物流データを使って改善方策をディスカッション。議論でまとめた改善提案を各グループ代表が発表し、最後には菊田・荒木両講師から講評を加えて、会合は終了。この日は講師と希望者が第3部・ネットワーキングに参加し、楽しい交流のひと時を過ごして散会しました。
ロジスティクスシェアリングコミュニティ連載コラムとは
持続可能なロジスティクスの実現に向け共同輸配送の実現を考えている企業同士でのディスカッションやワークショップを実施する集いの場としてNECが運営するBluStellar Communities「ロジスティクスシェアリングコミュニティ」。
連載コラムでは、コミュニティ内で講演を実施したエルテックラボ代表/物流ジャーナリストである菊田一郎氏がミーティングの様子を踏まえながら物流の最新トレンドについてご紹介いたします。
第2回は、2026年1月28日(水)に開催されたミーティングでの元サンスターの物流担当役員荒木協和氏をゲストに迎え、対談形式でパネルディスカッションの内容となります。
筆者紹介

エルテックラボ代表/物流ジャーナリスト 菊田一郎
■経歴
物流専門出版社にて編集長、社長、団体理事等を兼務歴任。2020年6月に独立し現在に至る。物流、サプライチェーン・ロジスティクス分野のDX/IoT/ICT/ロボティクス&マテハン活用を軸に、SDGs/ESG対応へのグリーン化、人権尊重のホワイト化を訴える著述・講演、アドバイザリー業務を積極推進中。
ロジスティクスシェアリングコミュニティは、共同輸配送の最新トレンドや業務理解を深めるセッションを通じて、同じ課題意識を持つ企業同士が業種を超えて交流・意見交換できる場です。
持続可能なロジスティクスの実現に向けて、共同輸配送の取り組みを推進したい企業が集まり、ディスカッションやワークショップを通じて共同輸配送への理解を深めるとともに、将来的な協業の可能性を広げることを目的としています。
・共同輸配送を推進中で、課題解決のヒントを得たい方
・これから共同輸配送に取り組む必要がある方
・異業種との連携を通じて、共同輸配送を加速させたい方






