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キユーピーの現役CLOに聴く!あるべきCLOの役割と物流共同化
ロジスティクスシェアリングコミュニティ連載コラム 第3回ロジスティクスシェアリングコミュニティ連載コラム 第3回
キユーピーの現役CLOに聴く!あるべきCLOの役割と物流共同化
~加工食品業界の業務改善/サプライチェーン連携で考える物流危機克服のカギ~
3月11日のNEC「ロジスティクスシェアリングコミュニティ」第6回ミーティング・第1部では、表記のタイトルで、キユーピー株式会社のロジスティクス本部長、前田賢司氏をゲストに迎え、筆者とのパネルディスカッションをお送りしました。前田氏はこの4月から正式にCLOとなりますが、以前から社内外との連携を含め、実質的にCLOとして活躍してこられたので「現役CLO」と言っていいでしょう。ディスカッションの内容から重要ポイントを抜き出し、保存版資料とすべく以下にまとめてみます。
再び、物流統括管理者とCLOの違いについて
冒頭、まず菊田から前ぶり解説として、テーマの「あるべきCLOの役割」に直結する「物流統括管理者とCLOの違い」につき、図表1で説明しました。これは第4回会合とコラム①でも紹介した「ビジネス遂行4階層でみるCLO/CSCOの役割」の比較表を、さらに一段ブラッシュアップしたものです。
ご案内の通り、改正物流効率化法(物効法)では特定荷主に対し、本年4月から第2次分が施行され、物流効率化に向けた中長期計画の提出や、物流統括管理者の設置が義務化されます。前にも指摘した通り、政府の関連解説文書などで「物流統括管理者(CLO)」という表記が頻出し、「物流統括管理者=CLO」であるかの理解が産業界に浸透してしいる状況です。
ところが、わが国の国家規格であるJISの規定や、あるべきCLOの役割(図ではJPIC:日本フィジカルインターネットセンターの規定を引用)に照らすと、両者の役割には明らかな相違があります。「良い・悪い」の問題ではなく、単純に「違う」のです。
その違いに筆者がなぜ、強くこだわるのか? …それは、「物流の役割と、指揮系統では上位階層にあるロジスティクス層・サプライチェーン層の役割とが混同されるとしたら、重要な企業戦略機能であるロジスティクス、サプライチェーン・マネジメントの本来の価値と認識が棄損され、結果として我が国産業界の企業競争力を損なう」と懸念するからです。

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そもそも物効法施行の大目的は、「ドライバーの負荷低減を通じた輸送能力の減少抑止」です(具体的目標は積載効率向上/荷待ち・荷役等時間の短縮)。ゆえに施策の推進リーダーとなる物流統括管理者の最終任務は、「ドライバー」「輸送」の物流オペレーションを改善すること。ただしその過程では物流部門内だけでなく、社内の他部門との連携・調整が、さらに社外の荷主・物流双方を含む取引先との連携・調整も不可欠になる。だから物流統括管理者には、物流部門内にしか権限の届かない物流部長ではなく、役員クラスの権限者を任ずることが求められ、その役割規定には、図表の[A]実行=オペレーション層を核としつつ、[B]戦術=ロジスティクス層と、[C]戦略=ストラテジー層の役割の一部も含まれているのです(図の左端の黄色い枠)。
しかし。図で一目瞭然のように、物流統括管理者の役割にはJIS「ロジスティクス」、JPIC「CLOの定義と役割」が定める幅広い役割(図の左端の紅色囲み)のうち、「サプライチェーンの全体最適」「社会的課題の解決」ほかの重要項目(右手の緑とピンクの囲み)が含まれていません。
だから両者の役割は異なる。「物流統括管理者≠CLO」であり、「物流統括管理者<CLO」なのです。
ついに国交省が両者の違いを明示
以上のとても論理的な判断を筆者は、同意してくれる数少ない論客と力を合わせて1年半にわたって主張してきました。が、力及ばず、「物流統括管理者=CLO」の理解は広まり、放置されてきました。
ところが! 先月(26年2月26日)のJPIC主催「フィジカルインターネットシンポジウム」において講演した国土交通省 物流・自動車局 物流政策課長の髙田 龍氏は、「物流統括管理者に期待される役割(イメージ)」として図表2を掲げ、発表を行いました。
ご覧の通り、図の左囲みのAには物流統括管理者の役割を掲げる一方、右のBには、私が図表1で示した、「あるべきCLOの役割」の要点がきっちりと記載されています。そして上段の説明には「物流統括管理者は(Aの)法令上の責務を果たしつつ、それにとどまらず、(Bの)CLOやCSCOの役割をも担っていくことが期待される」とあるのがお分かりでしょう。
つまり「物効法の法令上は、物流統括管理者の責務に、CLOやCSCOの記載の役割は含まれていない」ことを、所管官庁である国土交通省が認めた、ということです。ようやく私の主張、「物効法が設置を求める物流統括管理者は、CLOとイコールではない」が公的に認められたものと、私は理解しています。

拡大する図表2:国交省が「物流統括管理者」と「CLO/CSCO」の違いを明示(国土交通省 物流・自動車局 物流政策課長 髙田 龍氏の発表資料を引用し筆者加工)
それにしても「CLOやCSCOの役割も担っていくことが期待される」というのも微妙な表現で、解釈に迷いが出なければよいのですが。いずれにせよ私自身も、これを機会に「物流統括管理者」にとどまらず、荷主の皆さんにはぜひ、CLOレベルの役職者と組織体制の整備に挑んでほしいと期待している1人です。これほどまでに物流効率化ニーズが社会的に認知され、物流改革が産業界の後押しを得られるタイミングは、おそらく半世紀に一度の超レアなチャンスだと思うからです。
では前回、半世紀前の取り組みとは何だったか、ご存じでしょうか? 1970年前後、高度経済成長による物流供給力不足に対して国が立ち上がり、「標準パレット規格の制定」「一貫パレチゼーション推進施策」他の、歴史的な物流効率化策が敢行されていたのです! 以来約半世紀、物流軽視の「迫害」の年月を経て、物流の大切さが社会の理解を得られる時が来たのです。この機を逃さず、荷主と物流各層がマジ連携し、日本の物流基盤を再構築してほしい、と私は心から念願しています。
3.11東日本大震災での「気づき」から改革へ
さて前ぶり解説が長くなってしまいましたが、ことの重要性にかんがみ、お許しください。後半は「キユーピーの物流改革」についての前田氏の発表から、キモの部分に絞って5点を取り上げ、解説します。
まず図表3です。今回のミーティングは、あの「3.11東日本大震災から丸15年」となるメモリアルデー、2026.3.11に開催されたので、とてもJITな話題になりました。前田氏によると、あの未曽有の大震災で物流経路が途絶し、厳しい物資不足が起こる中、顧客は賞味期限や数量、リードタイムなど従来の厳しい商慣行にとらわれず、物流条件緩和に柔軟に応じてくれたそうです。それによって、後述するLT1→LT2を含め、加工食品の日持ちを活かした効率の良い食品物流が行えたことから、逆に、『今までの過度な鮮度競争・リードタイム競争は行き過ぎだったのでは?』という気づきになった、と言うのです。

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記載の通り、この経験を通してキユーピー社内で「消費者が知らない水準の『日付の鮮度競争やリードタイム競争など』が製・配・販3層、業界内の体力を奪っているのではないか」との問題意識が固まり、その是正に向けた物流改革の取り組み開始につながった……まさに、なるほど、の経緯ですね。
LT2:翌々日配送の取り組み
中でもまず同社が力を入れたのが、いわゆるLT2(リードタイム2日)、翌々日配送化の取り組みでした。従来のLT1、つまり翌日納品ではリードタイムが短かすぎ、倉庫やドライバーの深夜業務、修正の多い見込み発注による弊害など、物流の持続可能性を脅かす条件になっていたのです。この取り組みは前田氏の前任者がチャレンジを開始され、筆者はそのご本人から当時の体験談を詳しく聞いたのですが、当初は内外から散々の反対に直面し、並みの苦労ではなかった模様です。

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それでも図表4の通り、初めは慎重に繁忙期・常温品・1都9県の限定で試行を開始。その範囲を徐々に広げ、ついに全国・3温度帯での「LT2恒久化」にこぎつけたのは、3.11から8年を経た2019年のことでした。
ASNを活用した検品レス化
改正物効法では前述の①積載効率の向上、②荷待ち時間の短縮、③荷役等時間の短縮が3大義務として明記され、キユーピーのような特定荷主にはとりわけ、マスト要件になっています。この課題解決に有効な目玉対策の1つとして同社が注力しているのが、「ASN(事前出荷情報)を活用した検品レス化」の取り組みです(図表5)。

拡大する前田氏によると、これはLT2化と合わせて推進中の施策で、確定データによる発注情報を受荷主に事前送信し、煩雑な検品作業を大幅に圧縮する「検品レス化」を実現するもの。データの粒度別に図のような「松・竹・梅」があり、受荷主側の状況に合わせて運用しています。ファイネットが提供するVAN経由で加工食品業界の標準EDIに乗せることで、「発注から債権債務まで一気通貫」の仕組みにできるとのこと。デジタル化による物流効率化が大きく期待でき、業界に広く普及することを私も楽しみにしています。
物流統括管理者/CLOの役割と施策
最後に前田氏は、キユーピーにおける物流統括管理者/CLOの役割認識と施策例へと話を進めました。その役割について、前田氏は以下のように提示します。これを見ると、同社が物流統括管理者を先述の法令上に限定された役割にとどめず、本格的なCLOとして機能させる考えであることが分かります。
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<物流統括管理者/CLOの役割>
・・・社内外のステークホルダーと持続可能な経営(物流)のために、多様な関係者との良好な信頼関係を構築する
※主な社内ステークホルダーは従業員や経営陣、社外は顧客、取引先、株主、金融機関、地域社会、行政機関、物流事業者などが該当
①持続可能な物流の構築(全体最適の実現)……最適な物流を最適なコストで
②物流DXの展開……2040年のフィジカルインターネット実現に向けて
③社会課題の解決と企業価値の向上
⇒ポイント:企業内連携⇒経営戦略としての物流
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最後の「ポイント」にある通り、その活動は企業内連携にとどまらず、取引先や地域社会など幅広いステークホルダーまで視野に入れた企業経営戦略視点で物流を考えることが大事だと前田氏は強調しました。事実、同社の「2025-2028年度中期経営計画」においては、「価値創造プロセスの進化」を主戦略と位置づけ、経済価値面では「DX推進による創出価値拡大」を目指し、その一手段としてS&OPによるSCM高度化で収益力向上に取り組むとしています。物流改革もこの経営戦略と連携・同期しているのです。
AIを活用したDFL(Design for Logistics)
その具体策の1つとしてぜひ紹介したいのが、「AIを活用したDFL(Design for Logistics)の取組み」です。前田氏によるとDFLとは、「製造プロセス、製品パッケージ、およびパレットへの積み付けの設計段階から、その後の物流工程全体における効率性とコスト抑制を最大化することを目的としたアプローチ。製品が市場に出るまでの全過程、特にサプライチェーンの下流工程(倉庫保管、輸送、荷役作業など)を考慮に入れた設計思想」とのこと。
通常の製品開発・設計はマーケティング部門が主導するのに対し、DFLではSCM系部門が製品コンセプト・設計決定に積極関与。たとえば製品やケース寸法を調整して標準パレットに整合させ、パレット積載効率を最大化する実績を既に上げているそうです。筆者もDFLは源流からの物流効率化施策として極めて有効かつ重要だと従来、主張してきました。これもキユーピーさんの取り組みに倣って、業界全体に波及してほしいところです。
以上のように物流の社内最適化から、サプライチェーン・ロジスティクス全体の最適化を目指すCLOの役割は、社外連携の重要施策である物流共同化にも直結し、前田氏も取り組んだ共同化事例を紹介してくれました。ロジスティクスシェアリングコミュニティはまさに、共同化の基盤となる存在。ここから新たな輪がさらに広がることが期待されます。結果として、ドライバーだけでなく物流で働く人すべての労働環境を改善し、「物流を胸張って誇れる仕事に」できるよう、私も応援を続ける所存です。
ロジスティクスシェアリングコミュニティ連載コラム
持続可能なロジスティクスの実現に向け共同輸配送の実現を考えている企業同士でのディスカッションやワークショップを実施する集いの場としてNECが運営するBluStellar Communities「ロジスティクスシェアリングコミュニティ」。
連載コラムでは、コミュニティ内で講演を実施したエルテックラボ代表/物流ジャーナリストである菊田一郎氏がミーティングの様子を踏まえながら物流の最新トレンドについてご紹介いたします。
筆者紹介

エルテックラボ代表/物流ジャーナリスト 菊田一郎
■経歴
物流専門出版社にて編集長、社長、団体理事等を兼務歴任。2020年6月に独立し現在に至る。物流、サプライチェーン・ロジスティクス分野のDX/IoT/ICT/ロボティクス&マテハン活用を軸に、SDGs/ESG対応へのグリーン化、人権尊重のホワイト化を訴える著述・講演、アドバイザリー業務を積極推進中。
ロジスティクスシェアリングコミュニティは、共同輸配送の最新トレンドや業務理解を深めるセッションを通じて、同じ課題意識を持つ企業同士が業種を超えて交流・意見交換できる場です。
持続可能なロジスティクスの実現に向けて、共同輸配送の取り組みを推進したい企業が集まり、ディスカッションやワークショップを通じて共同輸配送への理解を深めるとともに、将来的な協業の可能性を広げることを目的としています。
・共同輸配送を推進中で、課題解決のヒントを得たい方
・これから共同輸配送に取り組む必要がある方
・異業種との連携を通じて、共同輸配送を加速させたい方








