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物流の「計画化」は実現可能か、不可能か
~飲料メーカーと語る“突発対応からの転換”~

ロジスティクスシェアリングコミュニティ連載コラム 第5回
ロジスティクスシェアリングコミュニティ連載コラム 第5回
物流の「計画化」は実現可能か、不可能か
~飲料メーカーと語る“突発対応からの転換”~

 NEC「ロジスティクスシェアリングコミュニティ」が、去る6月26日、NEC本社で開催され、コミュニティメンバー企業から20余名が参加しました。今回のテーマは、『物流の「計画化」は実現可能か、不可能か~飲料メーカーと語る“突発対応からの転換”』。

従来の物流はとくに、急な依頼に対する「突発ニーズへの対応力」が求められていました。しかし昨今の物流危機に対応するには、見込情報を早めに開示することで計画自体を共有し、取り組む必要があるのではないかーーそんな問題意識を反映して組まれた、時宜を得た企画だったと思います。

1部ではコミュニティメンバー企業であるサッポロビール株式会社から、サプライチェーンマネジメント部部長の吉邑大輔氏を迎え、事務局のNEC梅田がモデレータとなってパネルディスカッションを行いました。吉邑氏は1996年の入社以来、一貫してサプライチェーン部門で経営戦略・物流企画・需給・調達等を担当。2022年からサプライチェーンマネジメント部部長としてAI需要予測導入を皮切りに、サプライチェーンの業務変革を推進中です。

吉邑氏プレゼン/物流の「計画化」は実現可能か、不可能か


①事業の概要
 サッポログループは今年で創業150年。ビール事業を基盤として総合酒類、食品飲料、外食へと事業領域を拡大してきました。2025年度の売上収益は5,069億円、事業利益は250億円。20267月にサッポロビールを中心とした事業持株会社体制へ移行し、グループ各社の強みを結集した一体経営=One SAPPORO経営により、企業価値の最大化を目指しています。
 同社の管理商品は約500SKU(ビール・カクテル類)あり、フレッシュな商品を安定的に届けるため、自社工場生産を中心に24週程度の在庫水準でオペレーションしています。


②「生産計画モデル」から考える
 ロジスティクス管理は従来から「実行管理」が中心ですが、2024年問題・労働力不足等の外部環境を踏まえると、今後はロジスティクスの「計画管理」が重要になってくるはずです。では、どう物流を計画すべきなのか? 

 吉邑氏は「生産計画モデルから物流計画を考える」アプローチを採りました。生産計画とは、「何を・いつ・どれだけ・どのように作るか」を決める計画で、企業が効率よく製品を作り、ムダや欠品を防ぐための重要な管理活動です。その目的は、①需要に合わせて供給する=売れる分だけ作る、②在庫を適切に保つ=多すぎ・少なすぎを防ぐ、③コストを抑える=人・設備・材料のムダ削減、④納期を守る=お客様に約束通り届ける――こと。生産計画には以下のような3つのレベルがあります。

 *大日程計画(長期)……月単位・年単位の計画生産能力や設備投資の検討

 *中日程計画(中期)……週単位の計画人員や資材の手配

 *小日程計画(短期)……日単位・時間単位の計画実際の作業指示レベル


③物流の「計画化」とは?

 では、物流は具体的にどう計画すればよいのか? 以上を踏まえ、吉邑氏は3つのレベルで生産計画に対応する物流計画内容を書き出しました(図表1)

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図表1:生産計画に対応した物流計画を考える

物流計画に実際に必要な項目としては、たとえば①入荷台数、②出荷台数、③流通加工の作業計画、④在庫計画、⑤人員計画、⑥作業時間計画、⑦イベント集会・勉強会等の予定、⑧機器メンテナンス……などがあります。日次計画ではこれらを時間単位で配していくことになります。


④外部環境と物流現場の現状

 2030年に輸送能力が大幅に不足する可能性がある「物流危機」を回避するためにも、物流計画の必要性が浮上しています。ところが現実の物流現場では……

 *日々の眼前の受注対応に追われ、中長期の最適リソース計画を考える余裕も、材料もない

 *中長期的な荷量の把握が困難で、最適なリソース計画(人員・車両・倉庫)につなげられない 

……というのが実態かも知れません。

 物流部門にとって重要な「車両が何台程度必要になるのか?」「ピッキング数がどの程度増えるのか?」といった荷量予測データが出せず、「経験・勘・度胸=KKD」による物量予測で計画する。乖離すれば「突発的対応」でこなす――そんな旧時代のままの現場もまだあることでしょう。


⑤物流計画の現状とありたい姿

 吉邑氏はSCM部部長として、サプライチェーンプランニングシステム(SCP)で工場DC別の需要予測(=得意先への配送予測)・補充計画・生産計画を策定してきました。しかし「物流部門への同期・連携が弱く、データの精度や粒度にも問題がある」のが悩みでした。

 この現状を脱却し、≪「荷主の予測・計画情報を物流部門へ内示する」ことで、現状のKKD物量予測から、「データによる物流計画化への移行」を進め、物流持続性を高める≫ことを「ありたい姿」として描きました。ロジスティクスの計画管理によって、「委託先協力会社を含めて働き方やトラック確保改善につなげられないか」と考えたのです。目指すのは「物流情報の内示・統合可視化」で、荷主の需給計画から、物流計画化に必要な情報を連携し、将来計画を統合的に可視化。これによりムダ・ムラ・ムリを排除しよう、という発想です(図表2)

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図表2:現状(AI-IS)とありたい姿(TO-BE)

⑥ありたい姿に向けた取り組み状況
 サッポロビールでは、製造計画・補充計画用に需要予測を行っています。この需要予測データを物流計画へ活用するため、2025年から日別・方面別予測精度向上に向けた取り組みを開始しています。

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 AS-IS需要予測は拠点別・週別を重視(日別は単純なロジックで按分)

            *日別のブレが大きくピッキング数量予測に使えない。

            *拠点単位のため粒度が荒く配送予測に使えない

 TO-BE日別按分ロジックを見直し、日別・方面別予測の精度を上げる

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  その実行に向け現在、以下のステップで取り組みを進捗中です。

  ①機械学習を使い、週別予測の日別按分ロジックの精度向上を検証

  ②予測結果を拠点間転送配車実務で検証

  ③日別・方面別予測のロジック検討、精度検証(……現時点でここまで進捗)

  ④上の予測結果を物流業務全体で検証

 最後に、以上のような「物流の計画化」は、「持続可能な物流網の構築(レジリエンス)」の推進施策としても有効であることを指摘し、吉邑氏はプレゼンを終了しました。

 なお吉邑氏はここまで、一般のセミナーによくある、先行企業が「上から目線で教えを垂れる」スタンスと全く異なり、仲間同士の「横から目線」で、「こんな悩みがあるんです。貴社ではどうですか?」と語りかけるスタイルを貫かれ、筆者は感銘しました。それが参加各社メンバーの共感を集め、質疑応答やグループディスカッションを盛り上げたのだと思います。

グループディスカッション

 続いて第2部ではメンバーが5つのグループに分かれ、グループディスカッションを実施しました。サッポロビールの「物流計画化」講演内容をもとに、参加者がジブンゴトとして 「物流の計画化とは?」「それは実現可能か?」「自社においてはどうか?」 「どんな情報があればよいのか」等について、議論しました。

 設定された5つの項目について集まった代表的な意見を、要約して以下にまとめておきます。

 

◆サッポロビールの計画化の方向性や検討内容は適用可能性がありそうか?

 *得意先物流、調達物流に応用可能性あり。販促に振り回されるので上流の予測が大事。

 *物流側の立場では供給力を維持するためにも、荷主と連携して計画化に取り組んでいく必要あり。

 *予測精度を高めるよりも、平準化の方が重要ではないか。

 *直前オーダーが大半を占めるので、計画は参考値としての活用になっている。

 *自社の国内倉庫では適用可能性ありそう。日別の計画はあるが、中長期の月次計画は不安定さが残る。

 

◆現在、計画化の観点でできていることと、できていないことは?

<できていること>

 *価格改定前も最大想定の予測をして準備、営業との情報連携で荷量の最大値は設定できている

 *販売計画は営業の意気込み値になっているが、SCM部が調整している。

 *荷主からの物流業務受託の情報連携はできているが、業務委託の情報連携には課題も。

<できていないこと>

 *合併を繰り返した経緯でシステムがバラバラ。統一WMSもなくロケ管理は頭の中で実施。

 *販促の精度+予測のすり合わせ。日次予測ができておらず週次予測になっている。

 *AI利用を模索。荷主とのコミュニケーション含め、経験・勘・度胸に頼らず動ける形にしたい。

 *荷主/生産部門から長中期販売計画を受け取っているが、金額だけで物量がないので使えない。

 

◆他社との情報連携において、どんなデータをどう活用できると仕事が楽になるか?

 *販促情報・売上予測情報/車の台数確保のため確定した最終荷量データが早めにほしい。

 *荷量情報に加え、着車条件等の情報も共同輸配送の検討に活用したい。

 *正確な物量情報にするためサイズ・重量を含んだ商品マスタ情報が必要。

 *川上から川下まで可視化し、数値化するシステム。

                            

 議論が盛り上がったためディスカッションは予定時間を10分ほど超過し、終了しました。講師と希望者は別会場に移動し、ネットワーキングに。筆者も参加して懇親の場で楽しく会話を重ね、情報交換が行われました。次回のコミュニティ会合は、8月末の開催を予定しています。


共同輸配送の最新トレンドや業務理解を深めるセッションを通じて、同じ課題意識を持つ企業同士が業種を超えて交流・意見交換できる場です。持続可能なロジスティクスの実現に向けて、共同輸配送の取り組みを推進したい企業が集まり、ディスカッションやワークショップを通じて共同輸配送への理解を深めるとともに、将来的な協業の可能性を広げることを目的としたコミュニティです。

ロジスティクスシェアリングコミュニティ連載コラム

持続可能なロジスティクスの実現に向け共同輸配送の実現を考えている企業同士でのディスカッションやワークショップを実施する集いの場としてNECが運営するBluStellar Communities「ロジスティクスシェアリングコミュニティ」。
連載コラムでは、コミュニティ内で講演を実施したエルテックラボ代表/物流ジャーナリストである菊田一郎氏がミーティングの様子を踏まえながら物流の最新トレンドについてご紹介いたします。

筆者紹介

エルテックラボ代表/物流ジャーナリスト 菊田一郎

■経歴
物流専門出版社にて編集長、社長、団体理事等を兼務歴任。2020年6月に独立し現在に至る。物流、サプライチェーン・ロジスティクス分野のDX/IoT/ICT/ロボティクス&マテハン活用を軸に、SDGs/ESG対応へのグリーン化、人権尊重のホワイト化を訴える著述・講演、アドバイザリー業務を積極推進中。

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