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「怒涛」の物流関連法改正、荷主企業と物流企業に求められる対応は?

ロジスティクスシェアリングコミュニティ連載コラム 第1回
ロジスティクスシェアリングコミュニティ連載コラムとは

持続可能なロジスティクスの実現に向け共同輸配送の実現を考えている企業同士でのディスカッションやワークショップを実施する集いの場としてNECが運営するBluStellar Communities「ロジスティクスシェアリングコミュニティ」。
連載コラムでは、コミュニティ内で講演を実施したエルテックラボ代表/物流ジャーナリストである菊田一郎氏がミーティングの様子を踏まえながら物流の最新トレンドについてご紹介いたします。

第1回は、2025年12月2日(火)に開催されたミーティングでの物流4法について、菊田氏とNEC共同輸配送プラットフォーム事業責任者梅田によるパネルディスカッションの内容となります。

ロジスティクスシェアリングコミュニティ連載コラム 第1回
「怒涛」の物流関連法改正、荷主企業と物流企業に求められる対応は?
~物効法「物流統括管理者」の役割を考える~

 ここでは去る12月2日に開催されたNECBluStellar Communities ロジスティクスシェアリングコミュニティ」ミーティングにおいて、筆者が企画実施したパネルディスカッションの議論を振り返りつつ、筆者のメッセージを改めて整理・強化し、ご紹介しようと思います。

改正・施行が進む物流関連4法

 このパネルディスカッションは、『2026年へ、「怒涛」の物流関連法改正にどう対応するか』をテーマに、NEC共同輸配送プラットフォーム事業リーダーの梅田陽介さんと私との対談形式で進めました。対象の関連法とは、①改正物流効率化法(物効法)、②改正トラック法、③改正下請法(取適法)、④トラック新法の4つ。これらがすべて、今年・2025年から数年にわたり次々に、文字通り「怒涛」のように施行されて行くのです。物流に係る荷主企業・物流企業には、様々な事業の前提条件を書き替えるくらいの対応が必須になります。初めに私から、この4法をざっと概観しました(図表1)

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図表1:2025年から順次施行される物流関連法 ((株)ハコベル作成資料より引用)

 梅田さん(NEC 共同輸配送プラットフォーム事業責任者)から「ここまで立て続けに法律が改正されるというのは、どんな背景があるのか?」と質問があったので、菊田からはこんな解説をしました。

1990年代の旧物流2法による規制緩和=物流供給力拡大と、同時に惹起したバブル経済崩壊=物流需要停滞が相互に逆作用して供給超過状態になり、以後30余年、運賃低下=ドライバーの低賃金・長時間労働が定着してしまった。このままでは働き方改革法による労働時間制限由来の<物流2024年問題>でドライバー不足がさらに嵩じ、<運べなくなる物流危機>を招く、との危機感が官民で共有された。数年で議論が進展し、真逆の規制強化策への転換を決め、関連法の改正に至ったもの。

2024年は言われたほどの危機的状況なしに乗り越えられ、今後も何とかなると思っている企業が多いかも知れない。しかし、昂進する生産年齢人口の縮減や低賃金・長時間労働の持続を背景に、ドライバー数は今後も減り続ける。政府予測で「輸送能力の34.1%/ドライバーが21万人不足するかも」という2030年危機>を、甘く見てはいけない。法令順守へ本気の改革が必要。

  また、「改正物効法で挙げられた①積載率の向上、②荷待時間の短縮、③荷役等時間を達成するためには、どんな取り組みが求められるのか?」については、

  1. 積載率向上…積み合わせ・共同輸送、帰り荷確保、リードタイム延長・計画的発注 ほか
  2. 荷待ち時間……バース予約システム(利用率向上が不可欠)、バース増設、荷捌きエリア拡充 ほか
  3. 荷役等時間……パレット化、SNSでノー検品化、入出庫・入出荷設備の拡充、倉庫側で荷役を実施

などが挙げられます。

規制強化で荷主、物流企業への影響は?

 続いて4つの法律それぞれについてポイントを挙げ説明しました。「取引規制の強化で荷主と物流会社の関係はどう変化していきそうか?」の問いに対し、筆者は「荷主が運送事業者を下請けだと見下し、仕事と条件を強要していた旧時代の発想から、対等なパートナーとしてきっちり話し合い、きっちり支払う契約関係への発想転換が不可欠」と強調。「適正原価を反映した運賃が、実運送事業者・ドライバーにきっちり届く仕組みとすることで、ドライバーを維持できる給与を払える産業構造に転換すること」が大目標だからです。またトラック新法の「5年ごとの事業許可更新」には、旧物流2法の野放図な競争政策を逆転させ、規制緩和で肥大した運送事業者数を絞り込む政策意図があることを指摘しました。

 取適法の説明では、適用対象となる中小受託事業者の適用基準に「従業員基準」が追加されたことに触れました。「特定運送委託」等の場合では「資本金1000万円以下」に加えて、「かつ、常時使用する従業員数が300人以下」の条件が新規追加されたもの。従来は資本金条件だけだったため、意図的に資本金だけ1000万円以下にして規制を逃れる、という姑息な回避策が可能だったのを防ぐことが目的です。

物効法で特定荷主に義務化、「物流統括管理者」の役割

 ディスカッション後半では、上記4法のうち物効法について、特定荷主と特定連鎖化事業者に設置が義務付けられた「物流統括管理者」の役割に焦点を絞り、深掘りしました。まず筆者から本法と省政令において、その役割が以下のように規定されていることを解説しました(要約、太字は筆者)。

    • 物流統括管理者を選任しないと百万円以下の罰金が、選任の届出を怠ると20万円以下の過料あり。
「物流統括管理者」の要件と具体的業務

前項の概括に続き、規定された要件と具体的な業務内容についての記述を紹介しました(同前)。

<物流統括管理者の要件>

    • 事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある者
      (重要な経営判断を行う役員等の経営幹部から選任される必要あり)

<物流統括管理者の業務内容…以下の業務の統括管理>

  1. 中長期計画の作成
  2. トラックドライバーの負荷低減と輸送される物資のトラックへの過度の集中を是正するための事業運営方針の作成と事業管理体制の整備
  3. その他トラックドライバーの運送・荷役等の効率化のために必要な業務

    (1)定期報告の作成
    (2)貨物運送の委託・受渡しの状況に関する国からの報告徴収に対する当該報告の作成
    (3)事業運営上の重要な決定に参画する立場から、リードタイムの確保、発注・発送量の適正化等のための社内の関係部門(開発・調達・生産・販売・在庫・物流等)間の連携体制の構築
    (4)トラックドライバーの運送・荷役等の効率化のための設備投資、デジタル化、物流標準化に向けた事業計画の作成、実施及び評価
    (5)トラックドライバーの運送・荷役等の効率化に関する職員の意識向上に向けた社内研修等の実施(6)物資の保管・輸送の最適化に向けた物流効率化のため、調達先及び納品先等の物流統括管理者や 物流事業者等の関係者との連携・調整

上で太字にした部分がとくに重要で、中でも私が強調したいのは下の2点です。

*社内の関係部門(開発・調達・生産・販売・在庫・物流等)間の連携……従来、物流部門は多くの荷主の社内で風下に置かれ、営業や生産の指示を受けて受動的に動く存在だったかも知れません。しかし現今の物流危機を回避するためには、物流部門がそれらと対等に渡り合い、社内の全体最適視点で物流の意思決定をする組織に脱皮しなければなりません。在庫管理の最適化などが代表例でしょう。

*調達先及び納品先等の物流統括管理者や物流事業者等の関係者との連携・調整……社内のみならず、サプライチェーン上流の調達先、下流の納品先、物流側まで含む社外企業間連携、取引条件の調整等までメスを入れないと、「積載効率向上・荷待ち・荷役時間削減」の3大義務の本質的な解決はおぼつかない。物流統括管理者は、「水平・垂直連携、共同物流の推進リーダー」となることが期待されているのです。

 これを受け梅田さんから「すごくレベルの高い人材が求められている感じだが、どんな人が選任されそうなのか?」と質問が。筆者は「これらすべての知見・経験を1人で兼ね備える人は多くない。倫理観・使命感に溢れたリーダーが、それぞれ専門知見を持つ人材を集め、チームで機能させればよい」と答えました。

物流統括管理者と「CLO」の違い

 物効法と関連文書でこのように規定された物流統括管理者ですが、その中には「物流統括管理者(CLO)」という表記が散見されます。しかし筆者の見立てでは、わが国の国家規格であるJISの規定に照らすと、現規定での物流統括管理者をCLOと等置することは、難しいように思います。それを明らかにするため、筆者は「物流(実行)、ロジスティクス(戦術)、サプライチェーン(戦略)、社会課題(パーパス)」というビジネス遂行4階層で管理者の役割を識別する筆者オリジナルの比較表(図表2)を紹介しました。あらゆる組織でガバナンスのストラクチャを構築する際に基盤となる考え方なので、ぜひ学んで参考にしてください。

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図表2:ビジネス遂行4階層(実行/戦術/戦略/パーパス)でみる管理者の役割 (筆者作成)

※注/実行・戦術・戦略3層は各層の中にもフラクタル構造で内在。
ゆえに「物流戦略」「ロジスティクス戦略」等も持たれる。

 前項にある物流統括管理者の役割は、「トラックドライバーの負荷低減」という現場オペレーション層の目的を明示しているものの、社内・企業間連携まで視野を広げ、「実行」レイヤーだけでなく「戦術」「戦略」レイヤーにも及んでいることが分かります。
 ところが、国家規格であるJIS Z 0111「物流用語」をみると、「ロジスティクス」の規定において、パーパス層に及ぶ「環境保全及び安全対策をはじめ社会課題への対応」の役割が明記されています。この重要項目が、物流統括管理者の役割規定には欠落しているのです。「ロジスティクスの重要任務を持たない最高ロジスティクス責任者」は、概念として成立しない。また右端は日本フィジカルインターネットセンター(JPIC)が提唱する「CLOの定義と役割」の内容で、地球社会にまでさらに視点を広げた規定がなされています。
 民間組織の提案はさておくとしても、国家規格と法律規定は整合化させるのがベストでしょう。法律に細かな規定まで盛り込む必要はないとしても、政省令でカバーすれば混乱が防げると思うのですが……。

物流企業側に求められる対応は?

 ディスカッションでは最後に、荷主企業の物流統括管理者設置に際して、物流企業側に求められる対応は何かを論じました。事例としてアサヒグループの物流子会社・アサヒロジ社の「CLOを支える社内コンサルタントになる」との興味深い対応を紹介。続いて前記のJPIC「物流企業側も、荷主のCLOのカウンターパートとなる管理者を設置すべき」と提唱するLPDLogistics Producer)」につき解説しました。
 図表3のように、各層荷主の相互間の物流を担う事業者が、両荷主のCLOと対峙し、連携支援・調整役を担う存在になれば、物流機能の位置づけ・重要性はより高く認識されるはず。もちろんそのためには、物流企業側がそれだけの人材を整えねばなりません。物流側もこれをチャンスととらえて腹をくくり、言われるままに運び・保管するだけの存在から、荷主の物流、サプライチェーン・ロジスティクス最適化まで考え、提案できる業態に脱皮したいもの。その時、日本の物流は一層高度化し、発展するに違いありません。

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図表3:JPICが考えるLPDLogistics Producer)の位置づけ
()日本フィジカルインターネットセンター作成資料より引用)

 私自身も物流専門ジャーナリストとして、「サプライチェーン・ロジスティクスの全体最適視点で、産業社会と物流の持続可能化・高度化を支援」「働く人と地球環境を大切にする倫理観・使命感溢れたリーダー育成」のパーパスを掲げています。それは物効法がイメージする物流革新の方向性と概ね合致しており、今後も本法の周知解説に努めていこうと考えています。

筆者紹介

エルテックラボ代表/物流ジャーナリスト 菊田一郎

■経歴
物流専門出版社にて編集長、社長、団体理事等を兼務歴任。2020年6月に独立し現在に至る。物流、サプライチェーン・ロジスティクス分野のDX/IoT/ICT/ロボティクス&マテハン活用を軸に、SDGs/ESG対応へのグリーン化、人権尊重のホワイト化を訴える著述・講演、アドバイザリー業務を積極推進中。


ロジスティクスシェアリングコミュニティは、共同輸配送の最新トレンドや業務理解を深めるセッションを通じて、同じ課題意識を持つ企業同士が業種を超えて交流・意見交換できる場です。

持続可能なロジスティクスの実現に向けて、共同輸配送の取り組みを推進したい企業が集まり、ディスカッションやワークショップを通じて共同輸配送への理解を深めるとともに、将来的な協業の可能性を広げることを目的としています。

 -こんな方におすすめです-
・共同輸配送を推進中で、課題解決のヒントを得たい方
・これから共同輸配送に取り組む必要がある方
・異業種との連携を通じて、共同輸配送を加速させたい方

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