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構造変化に対応するCLO/物流組織へ、「4つのP」視点で取り組み加速
ロジスティクスシェアリングコミュニティ連載コラム 第4回ロジスティクスシェアリングコミュニティ連載コラム 第4回
構造変化に対応するCLO/物流組織へ、「4つのP」視点で取り組み加速
~目的/組織/計画と現場/情報・・・“4つの分断”を乗り越える~
3月11日のNEC「ロジスティクスシェアリングコミュニティ」会合において、事務局から「構造変化に対応するための物流の“4つのP”」の考え方が提示されました。これは組織における①目的、②組織、③計画と現場、④情報――に起こりがちな“4つの分断”を乗り越える手法としてNECが考案した戦略的視点。本会合の「実践ワークショップ」では、この枠組みをツールとして参加各社の現状把握と整理、解決への方向性が議論されました。
物流、サプライチェーン・ロジスティクスの最適化方策を探り続けてきた筆者にとっても、この視点は新鮮で、膝を打ちました。では「物流の4つのP」とは一体どういう考え方なのか? その把握によってどんな効果が期待できるのか? 以下に考察しようと思います。
“4つの分断”を解決する“4つのP”
事務局が提示してくれた“物流の4つのP”の全体イメージをもとに、筆者なりに中身を咀嚼し、つながりを明らかにする補足を少々加え、こんな表にしてみました(図表1)。

拡大する本図から展開し、「4つのP」の考え方が荷主・物流の双方の社内組織間と、企業間の連携にどう生かせるのか、事務局の解説も引きながら筆者なりに解説します。
①目的/Pourpose……目的の分断から連携・共感へ
製造業の荷主なら、物流と製造、開発、購買、営業……といった社内組織の間で、パーパスとそこからブレイクダウンした目的(ビジョン、ミッション、KPI等)が共有されているのか、分断されているのか。
筆者の取材・見聞の限りでは、一部の先進荷主企業を除くと、いまだに物流部門が製造や営業の川下・目下に置かれ、「無理無体な指示を受け、反論もできず従うだけ」という企業も少なからずある模様です。そんな組織では、「共通の目的に向かう共感」をもって、「各組織が肩を組んで前進する」ことは難しい。せいぜい「引っ張られて、いやいや進む」のが関の山。組織の潜在力を発揮することも困難でしょう。
だからこそ、そんな旧時代の組織から脱却しなければなりません。社員・従業員の誰もが「わが社は、世に貢献する、こんな大目的をもっているんだ!」と誇らしく語れるパーパスをもち、全員で共有したうえで、パーパスの実現に直結する具体的目標を各部門・組織がもつことが、ものすごく大切になります。
それなら組織は違えど、「同じ大目的に向かって進んでいるんだ」という共感が醸成され、分断を乗り越えて行けるはずです。
この会合でゲスト講師としてお招きしたキユーピー・前田ロジステイクス本部長(4月からCLO)の発表資料によると、同社ロジ部門の場合、パーパスは「加工食品物流を持続可能に」「物流危機の克服」であり、社内共有の上でここから具体的な目的・目標が導かれていました。危機感がしっかり共有されたのです。
②人/People……分断組織を「人」が縦横につなぎ変革推進
社内組織の分断については前項に同じ。加えて荷主と元請物流事業者、その先の実物流事業者まで、組織間の連携、共通理解ができているのか否か。この企業間調整を担う「人」の存在が、決定的に重要です。
キユーピーさんの場合、この大役を担うリーダーが誰あろう、CLOとなる前田本部長ご自身であるわけです。ロジステイクス本部は経営直結で、CLOが研究・開発/調達・購買/生産/マーケティング/営業・販売/物流という各部門と連携し、「最適な商品構成実現で利益を最大化」という共通目標に向かって進みます。のみならず、社外では調達先・販売先の荷主企業に加え、物流企業とも物流子会社経由で連携など、社内外のステークホルダーとの信頼関係を構築し、組織間の分断を排して連携強化を進めています。
③実践/Practice……計画と現場が分断を越えて腹落ち・実践
経営管理側の計画の意図を現場が咀嚼・理解・共感できず、分断が生じている場合、実践・実行段階で持てる現場力が十分に発揮できません。前項の「つなぐ人」や次項の「プラットフォームでの共通認識」によって、試行錯誤の上で現場が「腹落ち」段階に達して初めて、現場の底力が発揮されることでしょう。
キユーピーさんの場合、社内・社外と連携した実践の段階において、この課題解決の過程がシャープに見られます。積年の課題であった「リードタイム延長・翌々日配送化」は、7年の歳月をかけてようやく社内部門と着荷主の腹落ち・理解を得て、実践にこぎつけています。
他の改革実践例としても、同業種・異業種間での共同配送や、社内組織間の連携によるデザイン・フォー・ロジスティクス(DFL)の実践などが挙げられます。
④基盤/Platform……標準データ共有で情報分断を回避し共通認識
各組織・各社間のデータ共有、データ標準化は、サプライチェーン・ロジスティクスの最適化に不可欠な前提条件です。しかし、そもそも物流データが手書きで、デジタル化されていない……という悲しい倉庫や、データはあってもアプリやフォーマットが違って共有できず、つど再入力……といったトホホな現場もまだ、あるようです。それでは組織間・主体間のコミュニケーションが円滑に進むわけがありません。
では「情報分断」の深い谷を乗り越えるには? やはりデータ規格の標準化・共通化、そして共有化という中央突破策に、果敢に挑戦するしかありません。ここで、共通のプラットフォームに皆が相乗り参加することが、極めて有効な解決策となります。通常はその参加条件が、共通言語となる「標準データ規格の採用」であることが多く、参加企業間の情報分断が乗り越えられるからです。
キユーピーさんの場合、まさに本項目のベストプラクティスを構築中と言えます。それが「業界標準EDIによるASN(事前出荷情報)を活用し、ノー検品化」という最先端の取り組みです。現在もより広範囲に展開中で、加工食品業界の物流・情報改革がさらに進展することを祈らずにはおられません。
……以上より、「物流の4つのP」の考え方が、物流課題解決に向けた現状分析とあるべき方向性の探索に、有効な視点を与えてくれることが分かります。実際にキユーピーさんの実例に当てはめたところ有効に機能し、課題と解決策の強みをうまく表現できたことが、その証左となるでしょう。
“4つのP”と“ビジネス4階層”との共通点
最後にぜひ指摘しておきたいのは、筆者がこの日の前田本部長とのパネルディスカッション冒頭で紹介した、筆者の独自資料「ビジネス遂行4階層でみる物流/ロジ/サプライチェーンと物流統括管理者・CLOの役割」で提示した「4階層」と、「4つのP」との共通点についてです。
この図じたいは本コラム③で別に掲載し解説するので載せませんが、4レイヤーの階層構造だけを抽出し、「4つのP」と対照(青字で記載)させると、こんな具合になります。
若干、牽強付会もあるのですが、各項目の*のようにかなりの一致点が示せます。筆者は「4つのP」のアイデアを今回まで知りませんでしたが、“ビジネス4階層比較表”の第1版を自力で作成し発表した時期はかなり早く、2024年11月のこと。異なるルートから山の頂上に登り至った、ということかも知れません。
こうした共通点から、筆者は「物流4つのP」視点が機能する1つの理由は、この厳正な「ビジネス遂行4階層」に呼応する構造をもつからではないかと感じました。厳正な、というのは、そこには上位の意思決定の戦略的誤りについて、下位の実行レイヤーがどう頑張っても、完全にリカバーすることはできない、というガバナンス構造上の普遍則があるからです。
私がよく使う例えは、次の2つ。
(1)物流ネットワーク最適化戦略に失敗し、拠点配置が実態に不適合
……実行レイヤーで物流部門がどう頑張って運んでも、物流コスト増加は避けられない
(2)大国との戦争開戦、という参謀本部の無謀で致命的な戦略ミス
……実行レイヤーで戦闘機の撃墜王が敵機を何期撃ち落とそうと、大勢を挽回することはできない
このような組織ガバナンスを確立したうえで組織運営とビジネス遂行を進めるなら、パーパスからの大局観で現状と課題を把握し、改革の方途を探り、実行することが可能になるはずです。結果として目指すべきは、業績・企業価値の向上、社会課題の解決、そしてもちろん、物流を持続可能にすること。
同時にその過程で私たちは、筆者が主張し続ける大目標――「物流で働くすべての人の労働環境保全+地球社会の環境保全」を達成しなければなりません。その実現手段として、「物流の4つのP」と「ビジネス遂行4階層」の考え方は、とても有効だと思えるのです。
ロジスティクスシェアリングコミュニティ連載コラム
持続可能なロジスティクスの実現に向け共同輸配送の実現を考えている企業同士でのディスカッションやワークショップを実施する集いの場としてNECが運営するBluStellar Communities「ロジスティクスシェアリングコミュニティ」。
連載コラムでは、コミュニティ内で講演を実施したエルテックラボ代表/物流ジャーナリストである菊田一郎氏がミーティングの様子を踏まえながら物流の最新トレンドについてご紹介いたします。
筆者紹介

エルテックラボ代表/物流ジャーナリスト 菊田一郎
■経歴
物流専門出版社にて編集長、社長、団体理事等を兼務歴任。2020年6月に独立し現在に至る。物流、サプライチェーン・ロジスティクス分野のDX/IoT/ICT/ロボティクス&マテハン活用を軸に、SDGs/ESG対応へのグリーン化、人権尊重のホワイト化を訴える著述・講演、アドバイザリー業務を積極推進中。
ロジスティクスシェアリングコミュニティは、共同輸配送の最新トレンドや業務理解を深めるセッションを通じて、同じ課題意識を持つ企業同士が業種を超えて交流・意見交換できる場です。
持続可能なロジスティクスの実現に向けて、共同輸配送の取り組みを推進したい企業が集まり、ディスカッションやワークショップを通じて共同輸配送への理解を深めるとともに、将来的な協業の可能性を広げることを目的としています。
・共同輸配送を推進中で、課題解決のヒントを得たい方
・これから共同輸配送に取り組む必要がある方
・異業種との連携を通じて、共同輸配送を加速させたい方








