「第4次産業革命」の実現に不可欠となるビッグデータ活用とサイバーセキュリティ

Cyber3 Conference Tokyo 2016 レポート

サイバーセキュリティ対策にも大きな飛躍をもたらすAI技術

パネリスト
サイバーディフェンス研究所
専務理事/上級分析官
名和 利男 氏

このように各産業分野で取り組みが進むビッグデータ活用。これをさらに促進させていくためには、サイバーセキュリティ対策が必要となる。特にIoTの時代では、あらゆるモノがネットワークを介してつながり、サイバー空間はボーダレスに広がる。その中では、自動車や医療、金融をはじめ、人々の日々の生活や社会活動にかかわる重要情報が取り扱われており、それらを安心・安全に取り扱えるデータ環境の整備が不可欠だ。

こうした課題を解決するためにも、AIは威力を発揮する。これまでのセキュリティ対策は、蓄積された脅威情報のデータベースを活用し、攻撃のパターン情報と脅威情報を照合させる方法が一般的だった。これに対しAIを使ったセキュリティ対策では、さまざまな攻撃の内容やパターンを機械学習することで、脅威情報に存在しない未知のマルウェアなどを検知・防御することも可能となる。さらにセキュリティ技術者の作業負荷を減らすことにもつながる。

「現在の対策は、セキュリティホールの検出やそれを防ぐためのパッチ処理などを含め、技術者の“職人技”に大きく依存しているのが実情です。しかしAIを利用すれば、それらを自動化することも可能です」とサイバーディフェンス研究所の名和 利男氏は解説する。年々飛躍的に増大するセキュリティインシデントに対して、ただでさえ不足しているセキュリティ技術者が自ら行っていくことは現実的ではない。AIの活用をはじめとした、大きなパラダイムシフトを図ることが今後、重要なポイントとなってくると言えるだろう。

産業拡大・創出の実現に向け、今、求められることとは?

モデレータ
NEC
サイバーセキュリティ戦略本部
主席技術主幹
則房 雅也

民間でインターネットの商用利用が始まったのは1990年のこと。その後25年以上の時を経て、ビジネスや社会に不可欠なインフラとなり、大変革をもたらした。「その歴史を振り返ってみると、最初の3年以内に大きなモメンタム(推進力)が生み出されていることがわかります」とNECの則房 雅也は指摘する。事実、最初の3年間でインターネット事業者が4000社出現し、キャリアの通信バックボーンはブロードバンド化され、WWW利用ライセンスの無償化がされた。これによって社会の多くの人がインターネットを安価に使える環境が整備されたわけだ。その後も淘汰や統廃合を繰り返しながら、新しい価値を創造してきている。

このことは今後の10年を見通す意味でも、重要な示唆に富む。現在は、インターネットに加えてビッグデータやAI、IoT、そしてサイバーセキュリティなどの技術により、新たな第4次産業革命が胎動しつつある。そうした意味では、これからの3年に爆発的なモメンタムを生み出す努力が、ビジネスの世界においても求められているのかもしれない。ただし、新しい市場や産業の創出を1つの企業の努力だけで行うことは難しい。多くの企業が参加できる枠組みや産官学をまたいだ連携が必要になるだろう。

「ビッグデータを活用していくためのさまざまな標準化や生産者人口が減少する中でのデータ活用人材の育成、日本の強みを生かしたビジネスモデルの構築など、我々が取り組むべき課題は山積しています。NECではこれまでグローバルな取り組みで蓄積してきたノウハウ・経験や独自のデジタル技術をもとに、そうした問題を一つひとつ解消しながら、今後の産業革命に向けたモメンタムを起こす上で積極的な役割を果たしていきます」と最後に語った。

Cyber3 Conference Tokyo 2016
開催日: 2016年11月18日(金)、19日(土)
会 場:六本木アカデミーヒルズ
日本政府、世界経済フォーラム(WEF)、Cyber3 Committeeの協力のもと、日本経済新聞社が主催する国際会議。「Connect」、「Crime」、「Security」の3つの主要トラックで構成され、各国政府の高官、有識者、経営者、研究者が議論を行った。

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