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リアルタイム監視を実現する動画顔認証技術

近年のテロ事件の急激な増加に伴い、空港やレストラン、ホテルのロビーといった公共施設でのセキュリティをいかに守るかということは、全世界的な課題となっています。顔画像データは、国籍を問わず全世界のパスポートに入っている唯一無二の個人認証手段であり、更に監視カメラにおける人物特定など離れた場所からも認証できるという点で、他の個人認証技術と異なる利点があります。NECでは、2009年より米国国立標準技術研究所(NIST)が主催する顔認証技術評価プログラムに参加し、過去3回トップ評価を獲得し続けています。本稿では、映像監視向け動画顔認証技術について紹介します。

1.はじめに

世界的な犯罪の増加に伴い、顔認証を利用する機会がますます増えてきています。図1に示すように、NECでは1989年に顔認証技術の研究開発を開始し、2002年に顔認証エンジン「NeoFace」を製品化しました。その後、2009年1)、2010年2)、2013年3)に開催された米国国立標準技術研究所(NIST)が主催する顔認証技術ベンチマークテストに参加し、3回連続世界トップ性能の評価を獲得しました。更に、その製品は世界40カ国100システム以上に採用されており、ニューヨークJFK空港や、オーストラリア政府機関、ブラジル主要空港など、世界の主要機関で活用されています4)。2015年には、日本国内でアーティストが行ったコンサートやスポーツイベントなどでも活用されており、既に50公演、延べ30万人以上に利用される5)など、本人確認用として利便性と高い認証精度を兼ね備えたNECの顔認証は、さまざまな状況に利用されるようになってきています(図2)。

図1 NECにおける顔認証技術開発の取り組み図1 NECにおける顔認証技術開発の取り組み

図2 顔認証技術の幅広い用途図2 顔認証技術の幅広い用途

監視向け顔認証については、2012年より「NeoFaceWatch」という製品を販売開始しています6)。図3に監視向け顔認証システムの利用シーンを示します。ある人物がシステムに登録された場合に、ビデオ映像から通路、エレベーター、階段など、さまざまな状況で本人を見つけることができる技術です。これらの技術の応用として、犯罪捜査、迷子検知、認知症患者の徘徊検知などさまざまな用途での利用が考えられます。
本稿では、第2章においてNECが提案している動画顔認証技術について説明し、第3章において米国国立標準技術研究所(NIST)で実施された低解像画像における認証性能の評価結果について述べます。続いて第4章において応用事例を紹介し、最後に本稿をまとめます。

図3 監視向け顔認証における利用シーン図3 監視向け顔認証における利用シーン

2.動画顔認証技術の紹介

動画顔認証における処理の流れを図4に示します。まず、画像中から顔を検出します。次に、顔のなかから目や鼻、口端などの特徴的な点を見つけます。最後に、顔特徴量を抽出し、データベースに登録された特徴量と比較し、しきい値よりも類似度が高い人物が見つかった場合には本人と判定し、結果を表示します。

図4 顔認証における処理の流れ図4 顔認証における処理の流れ

次に、それぞれの技術について特長を説明します(図5)7)。

図5 NECの顔認証技術を支える3つのコアテクノロジー図5 NECの顔認証技術を支える3つのコアテクノロジー

2.1 顔検出技術

顔検出技術については、画像の端から順に矩形領域を探索することにより、顔と合致する矩形領域を抽出します。矩形領域が顔か非顔を識別するために、NEC独自のパターン認識手法である最少分類誤りに基づく一般化学習ベクトル量子化法を用いて、高速で高精度な顔検出機能を実現します。

2.2 特徴点検出技術

特徴点検出技術については、顔矩形領域から瞳中心、鼻翼、口端などの特徴点の位置を探索します。特徴点周辺輝度パターンを用いて最適な位置を探索しつつ、顔形状モデルにより特徴点配置に制約を加えることで、精密に特徴点位置を求めることができます。

2.3 顔照合技術

顔照合技術については、得られた特徴点位置を用いて顔位置を正規化し、登録画像と照合画像の2枚の顔画像を比較することにより、本人か否かを判定します。顔のなかから目鼻の凹凸や傾きなどのさまざまな特徴を抽出した後、これら特徴のなかから、多元特徴識別法により個人を識別するために最適な特徴を選択します。これにより、経年変化の影響を受けにくくなるなど、さまざまな変動に頑強な個人識別が実現できます。

3.低解像度顔画像における性能評価結果

監視向け顔照合を実現するためには、低解像度画像で照合できることが重要です。図6に示すように、人物が監視カメラに近い位置にいる場合、高解像度の顔画像を取得できるため照合が容易になりますが、カメラに近づくと仰角がきつくなり、髪が顔にかかるなど顔の隠蔽が大きくなるため照合が困難になります。更に、実用面でも1台のカメラでカバーできる範囲が小さくなるため、監視用途には不向きになります。一方、人物が監視カメラから比較的離れている場合、仰角は小さくなるため、比較的正面に近い顔が取れることになります。また、1台のカメラで広い範囲を覆うことができるため、監視に有効です。ただし、取得できる顔画像が低解像度になるため、顔照合技術の低解像度対策が重要になります。すなわち、低解像度顔照合技術が実用化できれば、監視向け顔認証の実現に向けて一歩近づいたことになります。

図6 人物がカメラに近い場合と遠い場合の利点と欠点図6 人物がカメラに近い場合と遠い場合の利点と欠点

図7に顔の解像度に対する誤照合率の関係を示します。2011年にNISTによって評価された結果からの引用です8)。横軸は目間距離(両目中心間のピクセル数)、縦軸は誤照合率を示します。NEC以外の参加組織のエンジンは、目間距離が96ピクセルよりも小さい場合には徐々に性能が低下し、低解像度に弱い傾向が見られます。一方、NECの顔認証エンジンは、高解像度で誤照合率が低いだけでなく、目間距離が24ピクセルでもほとんど性能低下せず、低解像度画像に非常に強いことが証明されました。このようにNECの顔認証エンジンは、監視カメラを比較的遠方に置いた場合でも、高精度に認証が可能であり、監視向けに適しています。

図7 目間距離と誤照合率の関係図7 目間距離と誤照合率の関係

4.動画顔認証システムの応用事例

NECの顔認証システムは、現在世界40カ国100システム以上で利用されています。これまでは、パスポートなどの本人確認用途が主でしたが、監視向け用途も徐々に増えつつあります。

4.1 ブラジル主要14空港における顔認証システム

ブラジルの空港においては、世界的なスポーツイベントなどによる出入国者の増加などにより、税関での不正拡大の懸念とともに、より効率的かつ適切な通行者の監視が必要になっています。2015年7月に、ブラジル連邦税務局より、14の主要国際空港において税関で利用される顔認証システムが導入されました(図8)9)。本システムは税関を通過する乗客に対し、過去に不正の摘発を受けた経歴のある人物リストをもとに、顔認証で容疑者を特定します。これにより、空港の税関業務が効率化されるとともに、政府や企業の多様なニーズに柔軟に対応した、公共施設などのセキュリティ確保や顧客リレーション向上などに貢献しています。

図8 ブラジル空港システム図8 ブラジル空港システム

4.2 オーストラリアの政府機関向け生体認証システム

オーストラリア連邦政府機関であるCrimTrac(クリムトラック)に、顔認証技術・指紋認証技術を用いた生体認証システムが導入されました10)。警察などが保有する1,200万件の顔画像のデータベースを、オーストラリア関係当局間で共有し、犯罪捜査や国境警備などに役立てることが可能になります。例えば、防犯カメラで撮影された不審人物の顔画像をCrimTracのデータベースと照合して個人特定を行う、といった運用が想定されています。

4.3 インドのホテルグループLemon Tree Hotels向け動画顔認証ソリューション

2014年にインドのホテルグループLemon Tree Hotelsにより顔認証ソリューションが導入されました11)。本ソリューションは、ニューデリー エアロシティにあるインディラ・ガンディー国際空港近くのホテル「Lemon Tree Premier, Delhi Airport」において、顧客の安全確保やサービス向上のために利用されています。カメラ映像に映った顧客を、警察から提供された犯罪者データベースと顔認証を用いてリアルタイムに照合するとともに、ホテルのVIP宿泊客リストと照合することに利用されています。

5.むすび

本稿では技術面と応用面から監視向け動画顔認証について説明してきました。全世界的にセキュリティ不安が高まりつつある現在、顔認証技術は国家運営に欠かせないセキュリティインフラになりつつあります。

これまで、顔認証技術で培った世界トップレベルの映像認識技術をベースに、大規模・ミッションクリティカルな状況に耐える技術への飛躍、さまざまな場面で適用可能な高い技術を実現することを目標として、顔認証から広がる安全・安心な世界を目指し、研究開発に取り組んでいきます。

参考文献

1) P. Jonathon Phillips:Still Face Challenge Problem Multiple Biometric Grand Challenge Preliminary Results of Version 2,MBGC 3rd Workshop,2009

2) NIST Interagency Report 7709: Report on the Evaluation of 2D Still-Image Face Recognition Algorithms

3) NIST Interagency Report 8009:One-to-Many Face Recognition Report

7) 今岡仁:安全・安心を実現する世界一の顔認証技術,NEC技報 Vol.67 No.1,pp.48-51,2014.11

8) NIST Interagency Report 7830:Performance of Face Recognition Algorithms on Compressed Images

※ なお、MBCG2009、MBE2010、FRVT2012における評価結果は米国政府による特定の製品を推奨するものではございません。Results shown from the MBGC2009, MBE2010 and FRVT2013 (Face Recognition Vendor Test 2013) do not constitute endorsement of any particular product by the U.S. Government.

執筆者プロフィール

今岡 仁 データサイエンス研究所 主席研究員

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