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自治体オープンデータ最前線
~ここまできた!公的データ活用~

写真:東 富彦 氏

株式会社国際社会経済研究所
情報社会研究部
東 富彦 氏

オープンデータとは、政府や自治体、病院、図書館などの公的な機関が保有している様々なデータを一般に広く公開したものを指します。今、これを民間企業や個人が再利用する動きが広がっています。オープンデータの活用は、政府や自治体の透明性を高め、公共サービスのレベルを上げるなど、新しいサービスを生み出して経済を活性化する可能性を秘めています。世界規模で「オープンデータ運動」が始まっていると言っても過言ではありません。

そもそもオープンデータは、政府が保有する予算や財政支出、GIS(地理情報システム)などのデータを公開したのが始まりです。次いで、政府や自治体が民間に助成金を拠出して進められた研究レポートや、その過程で得られたデータも公開される動きが進んでいます。加えて、民間企業が独自の企業活動の中で得たデータについても、社会に有用であり公益に資するデータは、公開される動きが広まっています。一例を挙げれば、ヨーロッパのEMA(European Medicines Agency:欧州医薬品庁)は、製薬会社が新薬を登録する際に得られる臨床試験データは公開すべきと判断し、一部は公開に至っています。

こうして、社会に有益なデータは率先して公開され始め、利用方法を考えながらより良いサービスや社会づくりにつなげていこうという動きが活発になっています。そうした事例をいくつかご紹介しましょう。

今年6月に発表された「オミダイヤー・ネットワーク(Omidyar Network、米国)」の調査によれば、オープンデータによって今後5年の間にG20に名を連ねる国や地域だけで13兆ドルほどの経済効果が見込まれるといいます。これは1カ国あたり年間13兆円にもなる大きなものです。

ライセンスは著作者を明示すれば再利用可能

オープンデータの定義は、大きく分けて4つあります。まず1つ目は、オープンデータは最低限のコストで提供されることが望ましく、基本的に利用は無料であること。2つ目は、仕様が公開されていて、自由に利用できるフォーマットのデータであること。3つ目は、利用者や利用目的が問われることなく、悪用されることを懸念するよりも公開されることの便益を優先すること。4つ目は、再配布や譲渡を制限せず、修正や加工が認められていること、です。

オープンデータの利用の際、最も留意すべき点はライセンス(著作権)です。ライセンスを世界的に管理する「The Open Definition」によると、推奨するオープンライセンスは6種類あります。そのうち日本で最もよく使われているのがクリエイティブ・コモンズが開発したライセンスである「クリエイティブ・コモンズ・アトリビューション」(Creative Commons Attribution)です。クリエイティブ・コモンズは、世界的に著作物の再利用を推進しており、著作者を明示すれば利用目的は問わず、加工や再配布、他のデータなどを付け加えて、新しいデータを作成して再使用することも認めています。

不動産情報に加えて住環境の詳細を提供

では、オープンデータの活用は、企業活動や人々の生活にどのようなメリットを生むのでしょうか。

米国企業「MRIS」(Metropolitan Regional Information Systems)が公開している不動産関連の付加情報サービスについて紹介します。これは、物件の周辺にある、商店や学校の位置や名称といった、ありきたりの情報だけではなく、より踏み込んだ情報を提供しています。それは、住環境や周辺住人のプロフィルなど、家探しの際に本当に知りたい情報です。

例えば「教育」という項目のデータでは、周辺住人の最終学歴や近隣学校の「教師一人当たりの受け持ち生徒数」のほか、実施されたテストの教科ごとのランキングを公開しています。そのほか、周辺での軽犯罪・重要犯罪の発生件数や、住人の世帯収入・家族構成、通勤・通学手段のほか、住環境では騒音や大気・水の品質、紫外線量なども網羅しています。

このサービスは、政府や自治体などのオープンデータを約40カ所から集め、1つの不動産物件にひも付けて、チャートにわかりやすく集計しているからこそ価値があるのです。


また日本では、全国の公共・大学図書館が所蔵する書籍を横断して一括検索できる「カーリル」というサービスも生まれています。

「カーリル」とは、借りたい書籍の貸し出し状況が、地域の図書館ごとに「貸し出し可」「不可」など、ひと目で確認できるウェブサービスです。公共の図書館が所蔵する本の目録データベースは、「WebOPAC」(オンライン蔵書検索)で公開されておりますが、そのデータを利用して、蔵書の状況をウェブサイトでビジュアル的にわかりやすく公開しているものです。

このシステムの特筆すべき点は、「WebOPAC」を利用してサービスをつくり上げることにとどまらず、新たなソフトをつくるためのAPIまで公開して、誰でも無償でソフトを開発できるようにしていることです。その結果、このAPIを活用し、書店の在庫まで一括して検索できる「テイクストック」(Takestock)という付加価値サービスも生まれています。

救急救命でもオープンデータを活用

写真:東 富彦 氏

米国の「iTriage」というスマートフォンのアプリは、急なケガや病気の際に、GPSの位置情報とメニューから選択した症状や部位から、最適な救急医療機関を検索して表示するサービスです。

このアプリでは、公的なデータベースにある病院リストを基に、救急診療の待ち時間や病院の評判などがランキング表示されており、利用者が希望する「条件」で、救急時にも病院の選択ができます。あらかじめ既往症や手術歴、服用薬などを登録しておき、救急救命時にケガや病気の部位や症状などを入力すると、最適な病院が選択されるとともに、搬送中に初期措置に有用な情報が医師に伝達される、というサービスです。

iTriageを作ったのはエンジニアではなく救急救命医です。「一人でも多くの命を救いたい」という思いから、より患者のニーズにあった、質の高い救急救命医療の提供を目指して開発されたものです。このアプリは、全米で1200万件以上ダウンロードされています。

選挙公約を詳細にチェックできるシステムも

米国の「Obameter」はフロリダ州の日刊紙「タンパベイ・タイムズ」が開発した、選挙公約の達成度を有権者などが確認できるシステムです。

オバマ大統領は2回の選挙で、532もの選挙公約を掲げましたが、Obameterは「守られたか」「守られてないか」「妥協したか」をグラフでわかりやすく示しています。各項目をクリックすると公約や法案などの詳細が表示され、発言や投票まで、内容を詳しく確認できるので、有権者はこうした指標を参考に投票に臨むことができます。

写真:東 富彦 氏

また米国には、税金の使途を公開・提供する「Open Gov」というウェブサービスもあります。予算や支出など、地方自治体の財務データをビジュアライズして、市民にわかりやすい形で公開しているため、市民の情報公開請求が減り、費用も削減されたといいます。公開情報は主に市民向けですが、自治体職員も他部門の状況を把握するために利用しているようです。OpenGovは米国のパロアルト市など多くの自治体で採用され、現在、全米の20州・100自治体で導入されています。

次の「BillGuard」は、クレジットカードの不正利用を検知するサービスです。このサービスでは、米消費者金融保護局が公開しているクレジットなどの不正使用に関するクレームを集めたデータベースに加えて、さらにツイッターやフェイスブックなどSNSへ書き込まれた様々な苦情データのテキスト文も解析しています。これにより、100以上ものアルゴリズムでデータを分析して、不正なアクセスをチェックしています。

一方、芸術の分野でもオープンデータ活用が進んでいます。オランダでは、子どもの知育向上に適したツールとして、タブレット端末向けアプリ「Muse」という新しいツールが生まれています。

「Muse」は、ウェブサイト「ヨーロピアーナ」で公開されている著名画家などの著作権フリーの素材を、誰もがリミックスして新しい作品を作り出せる環境を提供しています。アムステルダム国立美術館にある芸術作品のデジタルデータを使い、タブレット上で配置や大きさを自由に組み合わせた、自分だけの作品を作れるソフトで、子どもの創造性を高める効果があります。このように、美術品のほか音楽や文学作品などもオープンデータとして自由に加工できるようになり、新たな発想と作品づくりに貢献することを期待しています。

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