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快適で心地よい顧客体験と効率的な店舗運営を実現するレジレス型店舗

アフターデジタルの時代においても、快適で心地よい顧客体験の提供と省人化による効率的な店舗運営が、店舗の重要な価値となります。NECはさまざまな省人型店舗を企画構築し、自ら運営することで、次世代の店舗の創出に取り組んでいます。2019年より取り組んだNEC本社ビル内のレジレス型店舗の実現と運用は、NECにとっても次世代に向けた挑戦でした。これまで顧客企業向けに開発してきた売上管理、顧客管理をベースに、世界No.1の顔認証技術とセンシング技術を組み合わせることで実現しました。

本稿では、NECが目指す店舗の姿とそのシステムにより得られる新たなデータの利活用について紹介します。

1. はじめに

昨今、人手不足が深刻な社会課題になっていますが、小売業界においても労働力の確保が難しくなり、店舗業務の効率化が喫緊の課題になっています。また、New Normalの到来も含め消費者のニーズや生活スタイルが多様化するなか、実店舗への期待が大きく変化しており、今後、ますます価値ある実店舗へのシフトが求められています。

本稿では、NECのSmart Retail CX(SRCX)のコンセプトで推進する新たな店舗における、「顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)の革新」と「店舗業務の省力化・効率化(オペレーショナルエクセレンス)」について紹介します。

2. 省人型店舗の全体像

店舗の環境や購買する消費者の期待に応じて、実現すべき「顧客体験」と「業務効率化」にはさまざまな形態が考えられます。そのため、快適な購買の実現、店舗運営の効率化など、目的に応じて適切なソリューションを提供する必要があります。

NECはニーズが多様化する社会において、小売企業に対して新しいソリューションを実現し提供することにとどまらず、消費者や小売企業が抱える課題を同じ視点に立ち体感し、そして解決することを目的に、自ら店舗を作り、実際に運営することにしました。そのなかでも、近年は、無人/省人型店舗(図1)の実現を追求してきました。

図1 無人/省人型店舗の分類

2016年より実店舗相当の社内ラボ環境を構築し、さまざまな顧客体験ソリューションの検討を加速しました。

2018年に小型・省人型店舗として株式会社セブン-イレブン・ジャパン様とともに、マイクロマーケット領域向けの「三田国際ビル20F店」(東京都港区)を実現しました1)。冷蔵設備機器やカフェマシンとIoTセンサーを連携し、店舗外からも温度や稼働状況などの設備状態が分かる省力化ソリューションや、顔認証で購入可能なセルフレジによる快適な買い物ソリューションを導入、運用してきました。

また、2019年には夜間の働き手不足の環境でも消費者向けサービスを継続することを目的に、株式会社ローソン様のスマート実験店舗において、QRコードや映像解析技術を用いて人の識別を行う入店管理システムを提供し、深夜省人化店舗を導入検証しました2)。更に、2019年末には、レジレス型店舗をNEC社内売店としてNEC本社ビルに導入しました(図2)。

図2 NECによる次世代店舗の変遷

3. レジレス型店舗が実現する世界観

米国、中国をはじめとした一部の先進的な小売企業では、AIやIoTをはじめとしたデジタルテクノロジーを活用する取り組みがはじまっています。

NECにおいても、社内ラボ環境を立ち上げた当時から注力してきた領域が、高度な顧客体験を実現するレジレス型店舗ソリューションの企画、検証です。人手不足が深刻化するなかでレジ業務スタッフが不要であること、効率を求める消費者にとってレジに並ばないスピーディーな買い物が可能なこと、消費者がどの商品で迷い、その結果どの商品を選択したのかという消費者の購買行動を店舗が把握可能なこと、これらを実現するのがレジレス型店舗です。

瞬く間に世界中に蔓延した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により消費者の購買行動は大きく変化しましたが、そのなかでもキャッシュレスやタッチレスを求める社会機運が高まり、まさにレジレス型店舗が市場の期待を解決する店舗となりました。

NECは、実店舗として自らレジレス型店舗を構築、運営することで、企画時に想定した課題だけでなく、実運用を通じて発見される課題を1つずつ解決し、実店舗として十分に利活用できる店舗であることを立証しました。

4. NECのレジレス型店舗の特徴

NECは、日本初のレジレス型の実店舗(NEC SMART STORE)を2019年12月にNEC本社ビル内(東京都港区)に実現し運用を開始しました(図33)。オープン以来、グループ社員が通常の社内売店として利用し、入店から買い物完了までわずか5秒で完了する便利さを体験しています。

図3 NEC本社の“NEC SMART STORE”

購買フローはシンプルで、(1)顔認証による非接触の入店、(2)商品を選択、(3)退店と同時に自動決済、(4)購買結果を確認(顔認証を利用)の4ステップで、レジに並ぶことなく、手ぶらで、スムーズに、安心なお買い物を実現しています(図4)。

図4 レジレス型店舗の購買フロー

生体認証技術を組み込むことで入店時も決済時も端末に触れる必要がなくなり、欲しいものを手に取り店を出るだけでお買い物が完了するので、New Normal時代の新たなお買い物体験と考えています。

4.1 レジレス型店舗のシステム構成

本店舗は、NECがこれまで顧客企業向けに開発してきた売上管理、顧客管理をベースに、NECの世界No.1の顔認証技術4)とさまざまなセンシング技術を組み合わせることで実現しました。大きく次の6つのシステムで構成されています(図5)。

図5 レジレス型店舗のシステム構成
  • (1)
    店舗基幹システム(商品マスタ、決済連携、売上管理など)
  • (2)
    店舗内の顧客が商品を取る、戻すといった顧客行動や、取得商品を認識するセンシングシステム
  • (3)
    顔認証エンジンと顧客管理システム
  • (4)
    (2)と(3)を連携し、レジレス型店舗サービスを実現するコアとなるチェックアウト基盤システム
  • (5)
    (1)と(4)を連携することで、多様なサービス(マイクロサービス)を簡易に実現し、データ利活用を実現するDigital Store Platform(DSPF)
  • (6)
    IoT、AIなどを活用し、店舗を止めず安定して運用するサポートサービス

NECのレジレス型店舗では、顔認証エンジン(3)により入店者を特定します。入店後は、店舗内の天井に取り付けたセンサー、カメラにより、店内の顧客行動、手伸ばし位置などをセンシングし、商品ゴンドラに取り付けた重量センサーと連携することで、誰が、どこから、どの商品を、取ったか戻したかを検知します(2)。入店時から入店者の行動をセンシングし退店と同時に購買商品リストを決定し(4)、給与天引きシステムと連携し決済します(1)。入店した消費者の情報及び行動、取ったり戻したりされた商品の動きなど、店舗内で発生するさまざまなデータをDSPF(5)に蓄積し、利活用を開始しています。

5. データ利活用による新たな価値の創出

レジレス型店舗は、レジに並ばないという消費者の購買効率化だけでなく、これまでの実店舗においては収集できなかった店舗内での消費者行動を把握することが可能になります。POSの購買結果履歴だけでは取れなかった、どの商品を取ったか(戻したか)の情報、どの棚で何秒悩み結果的にどの商品を選択したかなどの行動、また買わずに退店した消費者の店舗内での行動情報などを得ることが可能になりました。ECサイトで商品を選択するためにどこのサイトを回遊して、お気に入りの商品をカートに入れたり戻したり、最終的にどのように決済をしたかなどと、まさに同じ情報です。

今後は、POSの売上実績データのみに基づく分析から、カメラ映像・AIによる購買前も含む消費者行動データを利用した仮説検証を実施する時代にシフトしていくと考えています。更に、デジタル化が進む世界において、オンラインとオフラインの実店舗を共存させていく「Online Merges with Offline」(OMO)に対応することで、消費者から“選ばれる”小売業を実現できると考えています。

店内での人物行動の取得は購買の利便性向上だけに活用されるものではなく、従業員の品出し/撤去などの売り場作り、商品メーカーとの連携にも効果があります。例えば、店内の商品陳列位置と各陳列在庫数をリアルタイムに把握することで、適切なタイミングで商品の品出し指示や自動棚卸など業務の省力化が可能となります。また、POSの販売結果だけでは得られなかった消費者の購買前の行動情報を組み合わせることで、小売業/商品メーカーとも連携した魅力的な店舗作りに貢献できると考えています。これらの新しく得られる情報・知見を、NECが小売業向けに過去から構築し、蓄積してきた業務システム及びノウハウと連携することで、よりよい店舗作りや消費者が期待するサービスの実現が可能になります。

NEC本社のSMART STOREでの消費者行動は、午前の通勤時は97%の消費者が購買を迷わない目的買い、午後はお菓子やドリンクなどの商品を取ったり戻したりと購買商品を悩む非目的買いが増加します。今後も、消費者行動データを基にした店舗作りの仮説検証の実施に向け、レジレス型店舗ソリューションの強化を行なっていく予定です。

6. むすび

NECは、小売業、消費者の課題解決のため、また消費者から“選ばれる”小売業の実現に向けて、新たなソリューションの開発に取り組んでいきます。本稿で紹介したレジレス型店舗の実現にとどまらず、アフターデジタルの時代に、より斬新なサービスの創出を目指していきます。


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参考文献

執筆者プロフィール

山崎 晋哉
第一リテールソリューション事業部
マネージャー
小関 藍
第一リテールソリューション事業部
志賀 真弓
第一リテールソリューション事業部
主任
仲村 元亨
NECソリューションイノベータ株式会社
沖縄支社第一グループ
部長
石井 健一
第一リテールソリューション事業部
部長
納富 功充
第一リテールソリューション事業部
事業部長代理

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