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2026年3月13日

標準化・ルールメイキングの最前線で活躍する永沼美保主席プロフェッショナルを紹介します

国際標準化活動は、官民が協力して技術や産業競争力を高めるための重要な取り組みです。政府は標準化戦略を策定し、日本が強みを持つ分野での標準化を加速させようとしています。
一方で、日本では標準化人材の高齢化が進み、若年層の参画率が極めて低い状況となっており、次世代人材育成が喫緊の課題です。
最前線で活躍する永沼主席プロフェッショナルに、国際標準化活動や人材育成について、現在行われている取り組みや今後の展望について聞きました。

プロフィール

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コーポレート
主席プロフェッショナル
永沼 美保

日本電気株式会社(NEC) CDO office所属。外資系ITベンダー、セキュリティベンダーを経て2015年NEC入社。セキュリティ、トラスト、AI等を中心にグローバルルール形成、規制対応、国際標準化活動を推進。国際電気通信連合 標準化局アドバイザリーグループ(ITU-T TSAG)副議長、経済協力開発機構 経済産業諮問会(Business on OECD)デジタル政策委員会共同議長。政府の「新たな国際標準戦略」の策定に参画するなど内閣府、総務省、経済産業省等との連携を通じた活動を行っている。

仕掛けることならではの楽しさがある

どのような経緯で標準化に携わることになったのですか?

国際標準化は2000年頃から本格的に活動しています。ISO/IEC JTC1(*1)に参画し情報セキュリティやITサービス、ITガバナンスの標準化などを行っていました。他の標準化機関でもそれらを議論するため、ITU(*2)にも参画するようになりました。さらにJTC1とITUをつなぐような役割や、アジアや欧州の地域標準化機関での活動も行ってきました。

業務では、コンサルティングツールとして標準化のスキームを活用や、政府や国内外の関係組織との渉外において標準化の設計などを行ってきました。現職ではデジタル領域でのルールメイキングに取り組んでいます。国際機関や政府の委員会メンバーとして広い視点から全体の戦略やルールメイキングに関わり、現在はAIを中心に活動しています。

標準化の魅力は何ですか?

標準化の魅力は、新しい市場を自ら創り出し、その形成過程に関われることです。
私はこれまで、情報セキュリティやクラウドといった新しい市場が立ち上がる様子を目の当たりにしてきました。英国がISMS(*3)の標準化を推進して市場を形成したり、米国ITベンダーがクラウド市場を牽引しながら標準化をおさえたりする場面もありました。最近では、量子分野でも標準化をめぐるグローバルな駆け引きが活発化しています。

現在、日本発の取り組みとして、サイバーディフェンス/セキュリティセンター(CyberDefense/Security Centre: CDC(*4))の標準化を打ち出しています。これは、企業や組織のサイバーセキュリティリスクを総合的に管理・防御する専門組織に関するものです。国際標準化では仲間づくりが重要ですが、意外な国が関心を示すなど、全く予想もしなかったことが起こります。こうした予測不可能な展開の中で、自ら市場を動かしていけるところに、“仕掛ける楽しさ”を感じます。

現在、どのように標準化やルールメイキングにかかわっていらっしゃいますか?

デジタルの領域では、技術領域と規制領域が混在し、国際的な安全保障リスクにも留意する必要があります。国内外の様々な角度でのそれら動きを把握、連携して進めています。

実務経験を重ねるとともに多くの先輩から学ぶ機会を得られる

人材育成のための取り組み、経験談をお聞かせください

現地での経験が必要です。現地での「空気を読む」能力や交渉力、作文力を身につけるには、ベテラン社員と一緒にOJDの形で実務経験を積むことが効果的であると考えます。若手に向けては政府の助成制度等の活用も考えられます。実際に国際会合に参加した若手の反応はとてもポジティブです。
また、私がキャリアを開始した頃もそうでしたが、ロールモデルを見つけることが困難と聞くことがあります。私自身は、国際会議での経験を通じて、多くの参加者を観察して老若男女、国籍を問わず多様なロールモデルを多く見ることで視野が広がったと思っています。

日本の標準化活動の強みはどこにあるとお考えですか?

産業界が入っていることだと思います。産官学のバランスを取ることが可能です。ルールメイキングにはある程度体力が必要で、日本は民間企業が標準化・ルールメイキングを支えており、安定性もあります。若手が活躍している国もありますが、産官学のバランスが偏っていたり、人の出入りが激しく継続性に乏しかったりする実情も見えます。

若手人材が少ないのは、標準化やルールメイキングをやりたいという若手が声を上げ難い風潮なのか、楽しさを伝えきれていないからなのでしょうか?

両方あると思います。ぜひ、声を上げていただきたいです。国際会議に参加された若手の方たちが、様々なことを吸収して次世代のリーダーへと成長していく姿も見ています。標準化やルールメイキングは短期的な成果が得られにくいため企業内で脚光を浴びにくい活動ではありますが、ビジネスツールとして活用できることをぜひお伝えしたいです。


  • *1
    ISO/IEC JTC1: 国際標準化機構(ISO)と国際電気標準会議(IEC)の第一合同技術委員会。情報技術分野の標準化を行う。
  • *2
    ITU: 国際電気通信連合(International Telecommunication Union)国際連合の専門機関の1つ。ITU-Tは電気通信の標準化部門。
  • *3
    情報セキュリティマネジメントシステム
  • *4
    CDC: 企業や組織のサイバーセキュリティリスクを総合的に管理・防御する専門組織。ITU-T X.1060「サイバーディフェンス/セキュリティセンターの構築・運用のためのフレームワーク」で定義
  • 所属・役職名等は取材当時のものです。