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Tech Report

「守る運用」から「攻めを支える運用」へ
~金融機関の事業成長を支えるNECの運用高度化プロジェクト~

2026年10月19日

社会インフラである金融システムに求められるのは、安定稼働だけではありません。“絶対に止めてはならない(ミッションクリティカル)”という使命を果たしながら、急速に変化するビジネスに対応し、お客様が望む新たな事業やサービスの創出を力強く支えていくことが求められています。

その鍵を握るのが、システムを支える「運用」のあり方です。従来の「手順通りに人手で守り続ける運用」から、クラウドやAIを活用して仕組みそのものを進化させ続ける「運用高度化」へ。NEC金融部門はいま、その転換に挑んでいます。

本稿では、「NEC金融ソリューション事業部門」(以下、NEC金融部門)のマネジメント層から若手までの4名にインタビュー。NEC金融部門が目指す「運用高度化」についてお話を伺います。

Interviewees

氏名:近藤 克起
所属:金融システム統括部
役職:エグゼクティブマネージャー
キャリアの初期から仮想化のプロジェクトに参画し、2009年ごろ、当時としては先進的なプライベートクラウドを担当。データセンター運用を整備する業務にも携わり、その後の基盤高度化の礎となっている。担当領域は、ホストコンピュータから共通基盤、業務基盤、運用、セキュリティ、OA(社内の業務用IT環境)まで幅広く、いずれの領域でも設計から構築までを手がけてきた。現在は大手金融機関グループ向けの基盤領域全般を統括する役割を担う。

氏名:長崎 弘明
所属:金融システム統括部
役職:エグゼクティブマネージャー
入社以来一貫して金融部門のSEとして活動し、現場では証券業の基幹システムの基盤領域を長く担当。最初に主担当として担ったのが運用領域であり、運用を出発点に基盤領域全般へスキルの幅を広げてきた。現在は証券・銀行・ノンバンク(クレジットやリースなど、銀行以外の金融会社)領域を統括する役割を担う。

氏名:櫻井 敬大
所属:金融システム統括部
役職:主任
入社以来一貫して銀行システムの提案や開発に従事。銀行システムの中でも勘定系(預金や取引を管理する銀行の中核システム)のシステムを中心にプロジェクトリーダーを経験。現在はシステム運用のあり方を刷新・高度化するため、SaaS(インターネット経由で利用するサービス型のソフトウェア)中心のツールを導入するプロジェクトに参画。その中でもITSM(システム運用の進め方を標準化・管理する仕組み)領域のチームリーダーを務める。

氏名:前田 一輝
所属:金融システム統括部
役職:担当
昨年度から金融部門に異動し、大手金融機関グループの運用高度化プロジェクトに参画。異動前は製品部門に所属し、自社製品や仕入れ製品の販促業務に従事。運用高度化プロジェクト内において、可視化チームのリーダーを務める。

金融システムを安定的に運用しながら、変化にもすばやく対応し、金融機関の事業成長をサポートする「運用」へ

はじめに、「運用高度化」とはどのような取り組みなのか、また、「運用高度化」の必要性が高まってきた背景について教えてください。

近藤
まず、金融システムを構築する一般的な流れを説明しましょう。“何が課題なのか”“その課題をどう解決するのか”“そのためにどんなシステムを作るのか”をお客様と検討する「上流工程」、上流工程で決めたことに基づいてシステムを作る「開発」、開発したシステムを安定的に動かしていく「運用」という流れです。

この中の「運用」のフェーズでは、“絶対に止めてはならない(ミッションクリティカル)”という使命のもと、開発したシステムを変えることなく、手順通りに人手で守り続けることに重きが置かれていました。しかし、技術もビジネスも短いサイクルで変化する時代となり、お客様である金融機関の事業も大きく変わっています。こうしたなか、金融システムの「運用」については、仕組みも含めて最新化、自動化することが求められるようになってきました。これが「運用高度化」が必要とされるようになった背景です。

私たちの「運用高度化プロジェクト」は、これまでの「運用」の概念にとどまらず、安定的な運用を守りながら変化にすばやく対応し、お客様の事業成功を継続的に支えていく取り組みです。

運用高度化が求められてきた背景について語る近藤さん

「運用高度化」のプロジェクトはお客様にどのような価値を提供するものなのでしょうか?

近藤
私たちは運用の高度化を進め、サービスや技術の進化に速やかに対応できるプラットフォームを構築し、安定的な運用を継続的に回していくという価値を提供します。

長崎
人的資源の活用についての価値も提供します。多くの現場では、さまざまな運用システムの管理でお客様の運用担当の方が煩雑な作業に追われ、本来注力すべき業務に時間を割けないという悩みがあります。運用高度化により、そうした作業の時間を減らし、より前向きで創造的な業務に時間を使うことを可能にします。

櫻井
長崎さんのお話に加えますと、運用高度化により、グローバルスタンダードのツールを用いた「誰もが携われる標準的なプロセス」へとシフトすることで、属人的でプレッシャーのかかる運用から脱却でき、お客様のチーム全体の心理的負荷を下げることが可能になります。特定の担当者に負担が偏らず、チーム全体で運用を支えられる体制になるため、安心して働き続けられる環境づくりにもつながると考えています。

運用高度化は人的資源活用につながると語る長崎さん

幅広い技術領域すべてをカバーできるNECの「総合力」

NECの「運用高度化」の取り組みならではの強みはどんなことでしょうか?

近藤
私たちは長年にわたり数多くの金融機関のシステムを担ってきた実績があり、金融システムへの深い理解には自信があります。

例えば、私たちはある大手金融機関のお客様に対して、上流工程から加わらせていただき、フルスタック(インフラから運用まで、技術領域を一貫して担うこと)で「運用高度化」を提供しています。また、長く培ってきた技術に加え、AIなど新しい技術も積極的に取り入れています。私たちには開発もできる強みがありますので、お客様固有の課題に対して「AIエージェント(自律的に判断・対処するAI)」を作り込み、運用に組み入れていく取り組みも進めています。

これらを可能にしているのは、NECにはオペレーション、グローバルスタンダードのツール、AI、それぞれのプロフェッショナル人材が揃っていることです。ひとことで言えば「総合力」が他社との大きな違いと自負しています。

お客様の現場に合った運用高度化を進めるために大切にしていることを教えてください。

長崎
お客様に「運用高度化による新しい運用」へ移行する価値、つまり、かけた費用に見合う効果を実感いただけるようにすることを大切にしています。例えば提案の場では、運用は「守り」だけではなく、経営的にはお客様の事業成長を支える「攻め」でもあるという視点も組み入れています。

櫻井
お客様の経営層の方には、自社の運用やシステムのあり方を、世界標準(グローバルスタンダード)に沿った形へ近づけたいと考えている方が多い印象があります。私は、お客様の現場の声を大切にしつつ、経営層のねらいや目指す姿を「グランドデザイン」(全体構想)として、提案に落とし込んでいくようにしています。

お客様の目指す姿を全体構想として描くと語る櫻井さん

AIを活用し、「人手による運用ゼロ」の未来に向けて取り組む

AIのお話が出ましたが、AI活用についての取り組みを教えてください。

近藤
理想とする最終目標は、人の手を介さない運用である「NoOps」(ノーオプス)の実現です。NoOpsとは「No Operations(運用作業をなくす)」を略した言葉で、人が手作業で運用を支えるのではなく、仕組みそのものが自動的に安定稼働を保ち続ける状態を指します。障害の検知から原因の特定、復旧までを、人の作業を介さずに完結させることを目指す考え方です。例えば、障害が発生した際、AIがログから即時に原因を特定し、自律的に一次対処(被害の拡大を止めるまでの初動対応)までを完了するような世界観です。私たちは単にトレンドとしてAIを追うのではなく、確実に実運用に組み込める現実的な仕組みづくりに挑んでいます。ただ、NoOpsはあくまで目指す姿であり、現段階では信頼性の担保を最優先し、重要な判断には必ず人が関与する形をとっています。

長崎
AIの精度がまだ100%ではない現段階において、何よりも重要なのは「信頼性の担保」です。金融システムでは一つのミスが大きな二次障害を引き起こすため、最終的な判断には人が責任を持つ必要があります。しかしAIエージェントは日々進化しています。例えば、「ログを分析するAI」「対策案を示すAI」「安全性を検証するAI」というように、異なる複数のAIエージェントを立ち上げて対話させ、互いの結論を検証し合う(クロスチェック)仕組みの実装など、ミスの許されない金融システムでも安心して使える仕組みを日々検証しています。

今後、「運用高度化」の分野でどんな取り組みをしていきたいですか?

近藤
今後は、これまで別々だった「開発」と「運用」というフェーズがつながり、一つのサイクルとして回り続けるようになっていくでしょう。運用で見つけた問題を、AIなどを活用してそのまま改善につなげていけるようにします。お客様には、私たちにそのサイクルをお任せいただき、本来の業務やビジネスにより注力していただきたいと思っています。

困難が生じたときはこうして乗り越えてきた

インタビューの合間、自由に話が飛び交う

特に難しかった場面や判断に悩んだ場面と、それにどう向き合い、乗り越えたのかを教えてください。

近藤
かつて自社製品にこだわりすぎたことで、他社とのコンペで敗退した苦い経験があります。その経験から、まずは自社製品を第一に検討しつつも、それにとらわれず、お客様が求める価値を実現するのに最も適した製品であれば、他社製品であっても選んでいく。そう考えを切り替えました。そのために、新しいパートナーやベンダーに声をかけ、お客様のご要望にお応えできる体制に組み直しました。

長崎
採用する製品の仕様上の制約から、お客様のご要望に100%お応えするのが難しいと分かり、お客様との合意形成に悩んだ経験があります。個別に作り込めば期待には応えられるのですが、そうすると製品の標準から外れ、今後のバージョンアップの足かせになってしまうというジレンマがありました。そこで製品の開発部門と積極的に連携し、性能そのものの向上を図り、個別の作り込みに頼らずに目標を達成し、無事リリースにつなげたことが印象に残っています。

櫻井
お客様と「運用高度化」をどう描き、どのような仕様にしていくかを検討する際、「誰がそれを担うのか」という役割分担の調整が難航したことがありました。そこで、各チームのリーダーが一堂に会し、費用やスケジュールにとらわれず、どうあるべきかをフラットに話し合う場を週に一度設けるようにしました。それにより建設的な議論ができるようになり、課題の解決につながりました。

前田
私は昨年度に金融部門に異動してきたのですが、当時は金融業界についての知識が不足しており、プロジェクトのスピードについていくのに苦労しました。しかし、社内には知見を持った先輩や上司が多く、快くご相談に乗っていただき、乗り越えることができました。

「先輩や上司に快く相談に応じてもらえた」と話す前田さん

NEC金融部門の「チームづくり」のリアル

チームをマネジメントする立場での「チームづくり」について心がけていることを聞かせてください。


近藤
先ほどお話しした新しい体制に組み直した結果、異なる経歴を持つメンバーなど多様な価値観を持つ人材が集まるチームになりました。これまでの「あうんの呼吸」は通用しません。全員の目的と進む方向を合わせることを大事にしています。リモートを活用してタイムリーに物事を進める一方で、大事なタイミングでは、対面で、顔をしっかり見て会話をすることを大切にしています。

長崎
私は最終的な意思決定を行う立場です。だからこそ、メンバーからの報告時には、経緯や背景の説明に、余計な準備の手間や時間をかけさせたくないと考えています。日頃からメンバー間のメールやチャットの動きを把握しておき、報告の場では「今何が起きていて、どう対処すべきか」という本質的な意思決定だけに時間を集中できるようにしています。

「顔を見て話すことを大事にしている」と語る近藤さん

メンバーに余計な準備の手間をかけさせたくないと語る長崎さん

現場で活躍するお二人はどう感じますか?

櫻井
とにかく風通しが良い環境だと感じています。マネジメント層の方々が、私たちの提案を信頼して任せてくださり、失敗を恐れずに挑戦できる大きな機会を常に与えてくださっています。

前田
長崎さんが話したことは、現場で働く一人として強く実感しています。私たちのチームでは、問題が発生して相談に行くと、上司の皆さんがいつも驚くほど迅速に意思決定し、明確な方針を示してくださいます。日頃からアンテナを張って私たちの状況を把握し、広い視野で情報を集めているからこそ、このスピード感があるのだと改めて分かりました。

「風通しが良い」と笑顔で語る櫻井さん

「相談すれば、すぐに方針を示してもらえる」と話す前田さん

NEC金融部門を目指す方へのメッセージ

最後に、新卒学生の方やキャリア採用への応募を検討しているみなさんに向けて、メッセージをお願いします。

近藤
私たちは、お客様の「何が課題なのか」「どうあるべきなのか」という上流の「グランドデザイン」から主体的にプロジェクトに加わり、ビジネスの本質を考え抜く環境を提供しています。こうした環境は、ビジネスパーソンとして、エンジニアとして飛躍的に成長したい方にとって、またとない場になるはずです。

櫻井
私も今回、SaaSという最新領域を扱うのは初めてでしたが、仕組みを理解した上で最適な形に実装するこの経験は、エンジニアとしての技術力を高めてくれたと実感しています。さらに、上流工程を経験できたことで、単なる技術導入にとどまらず、お客様のねらいを形にする力が身についたと感じます。未経験の領域でも、任せてもらえる環境がここにはあります。新しい技術に挑戦したい方には、きっと面白い場所だと思います。

(本記事は2026年10月時点の内容です)