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Tech Report

Agentic AIで金融業界の価値創出を加速する、NEC金融部門の生成AIエンジニア

2026年3月2日

NEC金融ソリューション事業部門(以下、NEC金融部門)は、NECグループの中でも生成AIの適用を積極的に推進している部門です。金融業界における生成AI活用への期待は大きく、NEC金融部門ではAgentic AIへのシフトを推進し、社内業務への適用とお客様への価値提供を加速しています。

本記事では、NEC金融部門で生成AIプロジェクトを推進する3名のエンジニアに、金融の現場で生成AIを実装する難しさと、乗り越えるための技術やプロセス、そして仕事のやりがいについてお話を伺いました。

Interviewees

氏名:鳥山 慎一
所属:金融システム統括部
役職:上席プロフェッショナル
2001年NEC入社。ミドルウェア製品の技術サポートを経験。2009年からシステムエンジニアとして金融機関向けシステムの開発を推進。2012年からはビッグデータ・ブロックチェーンなどの技術領域に注力し、現在は生成AIを含む先進技術領域の責任者として、組織マネジメントを担う。

氏名:山本 遼
所属:金融システム統括部
役職:主任
2007年NEC入社。金融機関向けシステムのインフラエンジニアを経験。2014年から他業種のプロジェクトの技術支援やプロダクトの検証を推進。2020年から金融部門内の技術支援やシステム開発における生成AI活用推進に従事。

氏名:嶋 章裕
所属:金融システム統括部
役職:担当
2023年NEC入社。主にAIを中心とする先端技術の調査・検証・開発を経験。現在は生成AIとデジタルヒューマン技術を組み合わせたパートナーAIシステムの開発 ・検証を推進し、アプリケーションの開発、生成AIの活用推進に従事。

エンジニアたちが進めるAIシフトとは

最初に、Agentic AI(エージェンティックAI)とはどのようなものでしょうか?

鳥山
Agentic AIとは、目標達成のために自律的にタスクを設定しアクションするソフトウェアであるAIエージェントを含むAI技術全般のことです。今後は人間が行っていた一部の業務を、AIエージェントが代替していくことが一般的になると予想され、AIエージェントの進化とともに、より複雑な業務もAIエージェントが担うようになっていくことが考えられます。

ありがとうございます。現在、社内の生成AI活用で取り組んでいることについて教えてください。

鳥山
まず、事務作業とシステム開発への適用から進めています。事務作業への適用例を挙げると、ナレッジ蓄積のために特定のメールの内容から情報を抽出し、人手でWebシステムに登録していた作業を、AIエージェントで代替することを試行しています。また、社内の各種審査会の議事録からナレッジをQ&Aの形式で抽出する検証も行っています。

システム開発への適用としては、コード変換、コードチェック、バージョンアップに伴う非互換調査(※1)など大量のテキストを扱う作業の効率化を進めています。

※1 システム移行やバージョンアップの際に、現行システムで利用している機能やプログラムが新しい環境で「使えなくなる(互換性がなくなる)」部分を事前に洗い出す調査


山本
システム開発において、設計後の製造工程やテストフェーズでのコード生成、運用保守フェーズでのツールの自動生成などにも活用しています。これまで人の手で作業していたところや、コストをかけてツールを作成していたところを、生成AIを活用することでコストを抑えつつ、効率的に作成できるため、効果を実感しています。


私は、「NEC Personal Consultant(※2)」という、金融機関向けの新しい顧客チャネルの開発をメインで担当しています。また、NEC金融部門内で生成AI活用に関する組織横断的な活動に取り組んでいます。

※2 生成AIとデジタルヒューマン技術を組み合わせたパートナーAIシステム。
https://jpn.nec.com/ad/onlinetv/personalconsultant.html

社内の生成AI活用について話す鳥山さん

生成AIの業務適用における課題とその解決に向けた取り組み

生成AIを業務や開発に適用する際に「難しさを感じる場面」とその解決のための実践的な工夫や成果について教えてください。

鳥山
LLM(大規模言語モデル)に、専門性の高い知識であるドメインナレッジをどのようにして参照、学習させるのかが難しい点の一つです。また、業務に必要なナレッジがそのまま文章の形で蓄積されていない場合は、より難しさが増します。

そこで私たちは、LLMにドメインナレッジを追加させる方法として、RAG(検索拡張生成)の検索精度向上に取り組んでいます。RAGは、膨大な資料の中から答えにつながりそうな文章を検索し、取得した文章をLLMに参照させたうえで回答を生成する手法です。ここで、重要になるのが「検索の質」です。RAGの検索対象の文章を、意味の単位で分割することや、背景情報を付加することで、正解を含む文章が検索される仕組みを作り込んでいます。

山本さんはいかがでしょうか。

山本
自然言語による指示は曖昧さを伴うため、生成AIに適切に情報を与えられていないことが原因で意図しない回答が生成される場合があります。適切に活用すれば開発スピードを向上させられる一方で、コーディングにおける誤った実装や、保守フェーズのトラブルシューティングにおける不適切な解決策が提示されるなど、出力された回答をそのまま採用すると品質の低下を招く可能性があります。

こうした意図しないコード生成や、誤った解決策の提示に対しては、「情報を正しく生成AIに伝える」ことを徹底しています。コード生成をする際は、前工程の設計フェーズで曖昧さをなくして明文化することや、生成AIが読み取りやすい形式で渡すことが重要です。さらに、「生成AIのアウトプットがそれらしくても腹落ちしないものは採用しない」と決めることも大切です。私たちには説明責任がありますから、何となく出てきたものを使うことはできません。AIの回答を鵜呑みにせず、最終的な妥当性を判断・検証するプロセスが不可欠です。

生成AIの業務適用の課題を語る山本さん

嶋さんはどう捉えていますか。


生成AIはモデルを利用するだけであれば比較的利用のハードルが低く、サービス化の際に差別化が難しいという課題があります。加えて、不確実性の高い生成AIの回答を定量的に評価することが難しい点も課題です。

まず、「差別化」の課題に対しては、技術の表層的理解に留まらず、アルゴリズムや内部構造まで深く踏み込むようにしています。また、デジタルヒューマンや音声技術のような他の技術要素と生成AIを組み合わせることで、独自価値の創出を目指しています。

出力した回答の「評価」の課題については、LLM自身による自己評価機能の導入を進める一方で、多角的なレビュー体制を構築し、専門家からのアドバイスを真摯に反映し続けるサイクルを回すことが、現時点では最も実効性の高いアプローチだと考えています。山本さんもおっしゃっていた通り、現状、人による評価、判断のプロセスは必須だと感じます。

課題への取り組みを説明する嶋さん

すべての開発プロジェクトで生成AIを積極的に活用

生成AI活用を組織内に広げるため、工夫していることについて教えてください。

鳥山
すべての開発プロジェクトにおいて生成AI活用を原則としており、これはプロジェクト審査の重要なポイントの1つになっています。これにより、生成AI活用を当たり前とする文化を醸成することにつながると考えています。

山本
プロジェクトやお客様によって活用できる生成AI技術の種類や方法が異なりますので、各現場に合った活用方法を提案することで、組織内に広げる工夫をしています。現場のSEはそれぞれのミッションに注力しています。単に声をかけるだけでなく、一歩踏み出しやすいように、私たちのチームが先陣を切って、試行環境を用意することや、生成AIに関するドキュメントを整備し、案内することを心がけています。


生成AIの勉強会を実施し、活用事例を展開しています。加えて、実際に試行できる環境として、ユーザーによる機能拡張が可能な生成AIツールの開発や展開なども行っています。すぐお客様に提案できるものではないですが、実際に使ってみて、イメージを深めることで得た知識やノウハウは、必ずお客様への提案につながると考えています。

鳥山
追加しますと、AIの活用を啓蒙する際、まず使ってもらうことは第一歩ですが、その後に「成功体験」を得ていただくことも重要です。「次も使おう」と実感できるところに持っていかないといけません。失敗するとその人は使わなくなり、望ましくない体験を広げてしまうこともありますので、私たちが苦労したところを先に教えて、なるべく成功を実感できるようフォローしています。

生成AI活用の工夫を語る3名

最先端技術に触れながら、自身の成長を実感

生成AIに関わる仕事に携わるうえでの「やりがい」について教えてください。

鳥山
最先端の技術に触れられることです。もともと私は、「IT技術で社会を便利にすること」にやりがいを感じているのですが、最先端の技術である生成AIを使い、その実現に関われることが、さらなるやりがいにつながっています。

山本
注目されている技術に常に触れていたいという気持ちがあります。その技術でお客様に価値提供できることが最高のやりがいになります。


技術や市場動向が加速度的に進化している生成AI分野ですが、NECでその最前線に身を置けること自体にやりがいを感じます。さらに専門知識やスキルがスピーディに反映され、自身の成長を実感できることもモチベーションの源泉になっています。

やりがいを語る鳥山さん

生成AIの先駆者として、金融機関のお客様の変革をサポート

今後生成AI活用において、新たに取り組んでいきたいことや挑戦してみたいことについて教えてください。

鳥山
「クライアントゼロ(※3)」として、まずはNEC金融部門内の業務をAIエージェントに順次置き換え、業務効率化や新たな価値創出を実現することで、お客様への価値提供につなげていきたいと考えています。

※3 NEC自身を「ゼロ番目の顧客」と位置づけ、最先端技術をまず自社内で徹底的に実践・検証し、得られた経験とノウハウをお客様へ提供すること

山本
今後、AIエージェント開発案件が増えていくと思います。まずは自分用のAIエージェント開発などを通して、必要なSI技術を習得、整理・ナレッジ化して、組織内に発信するとともに、お客様に貢献していきたいと考えています。


既存システムと生成AIの連携・統合を強化し、より価値の高い業務自動化やデータ活用につなげていきたいです。また、画像や音声などへのインターフェースの拡充によって、より広範なユーザー層や業務領域への対応力を向上させることにも挑戦したいと考えています。

今後の取り組みについて話す山本さん

金融機関のお客様に向けてメッセージをお願いします。

鳥山
NECはAIとセキュリティを強みとして、多数の金融機関のお客様を支援してまいりました。生成AI分野でも自社でLLM開発を行うなど、先進的に取り組んでおります。今後も金融DXの推進を強力に支援してまいります。

NEC金融部門で描く成長曲線

新卒の方やキャリア採用を検討中の方などに向けて、メッセージをお願いします。

山本
私はさまざまな部署を経て金融部門に戻ってきましたが、NEC金融部門には成長できる環境や文化があり、「エンジニアのスキルが高い」ということを改めて認識しました。こうした環境の中で働けば、必ず成長できると思います。ぜひNEC金融部門で共に挑戦しましょう。


生成AIに取り組むことは価値のあることですが、システムやサービス全体で見れば、あくまでも技術要素の1つです。NECには、クラウドを含むインフラ基盤の構築から、アプリ開発、セキュリティまでさまざまな技術要素全体のプロフェッショナルが揃っています。生成AIだけでなく、システム・サービスを生み出すためのあらゆる技術やノウハウについて、知見を得られる環境です。NEC金融部門に興味を持っていただき、共に成長していけるとうれしいです。

NECで働くことの意味を話す嶋さん

(本記事は2026年2月時点の内容です)

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