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「部門長もAI」 NECでAI変革を先駆ける 小玉浩CAXO
2026年10月29日

部門長「AI全体 統(AI ZENTAI OSAMU)」──NECに新設された「コーポレートAI・Workforce部門」の部門長、その正体は、AIです。今夏、NECに誕生した部門長から社員まで全員がAIという国内大手企業初のAI自律型組織に、世間から熱い視線が寄せられています。この取り組みに象徴されるのが、NECグループ自身をゼロ番目のクライアントとする「クライアントゼロ」の実践です。NECのCAXO(Chief AI Transformation Officer)小玉浩が社内に生まれた変化、社外を見据えた変革を語ります。
「こんなこともやってみたい」 AI組織に社員からの期待
2026年8月に本格運用が始まったAI自律型組織には部門長・マネージャー・社員といった階層があり、業務に合わせた役割があります。安全性や業務への適性審査や研修を経て配属され、評価や1on1も人間の社員と同じように行われています。
「NECが人の組織で何年もかけて磨いてきた仕組みを、AIにも適用しているんです。マネージャーとして機能すると思っていたAIエージェントのパフォーマンスが低くて、社員に役割を変更したこともありますね」
その上で「こうした判断を下すのは、あくまでも『人』」、と小玉は強調します。「最後に人が決断しなければ、スピードも価値も生み出せません」

社外の注目はもちろん、社内の関心も高まっています。AI社員のアウトプットを見た人間の社員が、試してみたいアイデアを次々と持ち寄るようになりました。
「こんなことをやってみたい、と手を挙げる人がたくさん出てきて、今は嬉しい悲鳴があがっています」と手ごたえを語る小玉。社内から出てきたアイデアを新部門の中にも組み込もうとしており、AI社員も数百単位まで増やす予定だといいます。
「お客さまが会いたくなるネタ」 クライアントゼロでつくる
AI自律型組織は、グループ約10万人の従業員を擁するNECグループの「クライアントゼロ」の取り組みの一つ。「クライアントゼロ」は2021年、企業変革を推進するトランスフォーメーションオフィスの初代責任者に就いた小玉が旗を振ってきました。
「結果を出せていない会社の支援なんて、お客さまは受けたくないですよね。だから、まず自分たちでやる。うまくいったことも、いかなかったことも全部、ゼロ番目のクライアントとして検証し、生きたナレッジをお客さまや社会に循環させよう、と」

現在、社内では「7つの変革テーマ」のもと、AIを活用した約50の変革プロジェクトが動いています。顧客のキーパーソンを模したAIによる提案書のレビューや、膨大な社内規定を集約する取り組みなどです。
「経営層が聞きたいと思えるネタがなければ、お客さまは会ってくれません。クライアントゼロは、そのネタとして力を発揮しています。社長からCIOまで真っ先に興味を示してきます」
2025年度、小玉が対話した企業の役員クラスは100人超。クライアントゼロを活かした営業支援は1500件近くにのぼります。

クライアントゼロの代表的な取り組みのひとつが、財務や受注・売上データ、ITやセキュリティ状況など経営データを可視化する「経営コックピット」。プロセスを見える化し、アクションにつなげる仕組み作りなどが寄与し、GP(粗利率)は5.5%上昇。2026年には外販をスタートしました。
小玉が重視したのは、システムよりも、データとの向き合い方を変えること。「データが見えるようになると、どうしても過去を振り返って断罪する議論になりがちです。でも、ファクトはファクト。過去を踏まえて、未来に向けてどんなアクションを取るべきかを考える。そこが大事なんです」
データも優先順位をつけて整備を進めました。「完璧なデータが揃うまで待っていたら、いつまでも変革に着手できません。まずは5割ぐらいのデータで始めてみると、足りないものが見えてくる。5割でも相当な効果がありますね」
AIを使えば、世界中のIQを自分の力にできる
「クライアントゼロ」を率いる小玉の信念のルーツは、新入社員時代にさかのぼります。
1982年に日本電気ソフトウェアに入社した小玉が最初に担当したのは、セブン-イレブンのシステムでした。同社は当時からデータドリブン経営を実践し、「基本の徹底と変化への対応」、そして「仮説検証」を大切にしていました。 「売上が上がっても、そこに仮説がなければ評価されない。逆に下がっても、こういう仮説を立てて実行したらこうなった、だから次はこうすればもっと良くなる、と言えればいい」。こう叩き込まれたといいます。
「私の仕事のベースは今も、新入社員の時に学んだ基本の徹底と仮説検証、そして変化への対応です。トランスフォーメーションに必要なのも、結局はこの3つなんです」
AIがもたらす時代の変化にも、小玉は自ら対応し、変革を続けます。「海外企業の方々と話す機会が増えていますが、実は英語はあまり得意ではありません。それが今は、私のアバターが、私の声や動きを再現しながら、明瞭な英語で話してくれる。言葉の壁を越えられるんです」。小玉はこう続けます。「ひとりのIQはたかが知れていますが、AIを使えば、世界中のIQを自分の力にできますから」
では、その力で私たちは何をするのか。「大事なのは問いを立てること」と小玉は力をこめます。「身近な仕事の課題でも、社会の困りごとでもいい。問いを立てることは、誰にでもできるんです」

問いを立て、すぐに形にする。その実践の場として開催したのが、NECのコーポレートIT部門 約1000人を対象にしたAIエージェントづくりの研修です。条件は「2時間で、誰にも相談せず、自分が立てた問いを解くAIエージェントを一からつくること」。
「これまで何カ月もかけて要件を定義していたことが、2時間でここまでできる。そのスピード感を、身をもって知ってほしかった」と小玉は話します。
「大事なのは、一人ひとりが自分ごととして課題の本質を深く理解し、その理解に基づく問いを立てること。そしてAIを使って素早く形にし、小さくても確かな成果を出す、いわゆる『QuickWin』で動かす。その一つひとつを会社のIQにしていけば、NECグループが持つ力との相乗効果で、お客さまに、社会に届ける大きな価値に変えていくことができます」
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