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「最強のClaude集団」が創るAIの未来 AnthropicとNECが協業
2026年7月16日

2026年のAI関連ニュースでは連日、Anthropic社(アンソロピック)が大きな注目を集めています。アメリカに本社を置くAnthropicは先進的なAIモデル「Claude」(クロード)を提供する企業として日本市場にも進出し、4月23日にはNECと戦略的協業を発表。NECは日本企業初のAnthropicのグローバルパートナーとなりました。創業5年目の新興企業Anthropicと、創業127年のNEC。対照的にも見える両社がなぜ、圧倒的なスピードで協業をスタートできたのか。Anthropicの日本法人の東條英俊社長と、戦略的協業をリードするNEC執行役の岩井孝夫の二人のやり取りから見えるのは、協業の必然性と、共通するビジョンです。(敬称略)
“日本企業初”とスピード感 「最初の成功体験」
「会うのは、昨日以来ですね」。こんな会話で始まった対談。日本企業初となるグローバルの戦略的協業は、この2人の奔走で実現しました。
東條英俊・Anthropic Japan社長:実は、NECとのお付き合いは長いです。新卒で入社した会社で扱っていたソフトはNECのパソコンにも組み込まれていました。グーグル・クラウド・ジャパン時代にはNECとのパートナーセールスで随分やりとりさせてもらったことはよく覚えています。

岩井孝夫・NEC執行役Corporate EVP 兼NECソリューションイノベータ社長:私はNECにシステムエンジニア(SE)として入社して金融部門を中心に25年。最近は開発の高度化がミッションの一つです。そこでAnthropicのAIモデル「Claude」が安全の面でも安定の面でも相当優れていると目を付けたのが昨年のこと。
東條:AnthropicはAIの安全性を最優先課題に掲げていますので。
岩井: 「安全・安心」から始まるNECのPurposeと共通するものがあります。もともと、NECはどんな印象でしたか。
東條:NECは金融をはじめとして、止まったら世界が大混乱に陥るような数々の社会インフラを支えていますよね。信頼性、安全性、セキュリティに取り組んできた歴史と実績は、私たちと親和性が高い。一方で、今回はいわゆる「日本の大企業」へのイメージをいい意味で裏切られました。スピード感です。岩井さんがずっとハンドルを握り続けてくれたからですよね。
岩井:SE出身なので、Claude導入や共同開発のインパクトを、自分ごととして社内を説得できた。これは、短期間でできた要因の一つですね。年齢も近いし、東條さん自身がエンタープライズ(企業)のIT業界が長いので、最初からかみ合う感じがしていました。

東條:話し始めてから短期間でまとまりました。このスピード感は私たちのパートナーシップの最初の成功体験だと思っています。
金融・自治体・製造での実績 「だからNEC」
改めて、なぜNECだったのか。なぜAnthropicだったのか。
東條:日本法人の設立は昨年10月で、日本市場の開拓はこれからという段階。企業向けに展開している私たちにとって、日本企業とのパートナーシップは不可欠でした。AIが特に大きなインパクトを出せるのは、金融とパブリックセクター(自治体)だと考えています。もちろんそれ以外もありますが、製造も加えてまずはその領域に深く入りこんでいる企業との連携はいち早くやりたかった。それがNECです。

岩井:繰り返しになりますが、Claudeというのが抜群に良い。
東條:初対面で岩井さんにそう言われて、やっぱりエンジニアだな、と思いました。
岩井:エンタープライズ中心にAIを展開しているのも他と違って見えた点でした。圧倒的な処理能力、高品質、そしてお客さまに「安全・安心」して提供できること。
東條:ClaudeがNECグループ約3万人に展開されるのが協業の柱の一つ。私たちのミッションや安全性を理解いただきながら、3万人がAI高度人材になっていく。これはNECに、日本で最強のClaude集団ができるということになります。
岩井:エンジニアを始めとして、Claudeを使いこなしてどうお客さまの価値を創っていくか。単純に使えるようにするだけじゃなくて、セキュリティ、法規制準拠、品質保証といった要件に対応して、エンタープライズのお客さまに安全・安心にAIを活用した製品・サービスを使ってもらえるようにしなければならない。これができるだけの実装力を、私たちは持っています。NECの推進する価値創造モデル「BluStellar」におけるBluStellar ScenarioにClaudeを組み込んでいくことも含め、いち早くお客さまへの提供を目指しています。

SIerが培ったノウハウ AI時代にこそ「必要」
Claudeのような優れたAIモデルの登場で「SIer(システムインテグレーター)が不要になるのでは」という懸念も広がっています。
東條:それは誤解だと思います。AIを中心とした企業変革を行っていくときには、コンサルも含めたプロの先導は不可欠です。既存のシステムとの連携や統合は必ず発生しますし、セキュリティ対応も社員教育も必須です。それらすべてをAIだけでできるわけはなく、そこにはSIerが今まで培ってきたノウハウを役立ててもらわなくてはなりません。

岩井:AIの世界も誤解がありますよね。脳みそだけあっても身体は動かないのと同じで、LLM(大規模言語モデル)だけでは何もできない。メモリやAIが正しく動く環境を支えるハーネスなど開発しないといけないものはたくさんある。ソフトウェアもインテグレートしないといけない。正しく動いているか評価も監視も必要。データも食べさせ続けなければいけない。そうした深いところまでやるにはSIerが培ってきた知見は必須です。
エンジニアはこれまでも何度も技術進化に対応してきました。AIによる変化にも、自らをアップデートすれば、これまで以上に大きな市場でより高い価値を提供できるはずです。
東條:同感です。SIerについての誤解を解くためにも、NECと一緒にAIによる企業変革の実績を出したい。お客さまの反応も楽しみです。4月の協業発表の反響は大きかった。
岩井:こちらもお客さまからの反響は予想以上だったんですが、敢えてNECグループ内の反応を紹介します。エンジニアからが多いのはもちろんですが、望外だったのは海外です。欧米の拠点のメンバーから続々と好意的な反応が届き、アメリカ出張の際には現地の社員から「エンジニアがとても喜んでいる!」といわれたのはサプライズでした。
日本発グローバルパートナー 「一緒に答えを出せる」
NEC以外の日本企業も続々とAnthropicとの提携を始めています。
東條:NECとの協業が業界全体にいい形で刺激を与えてくれました。その上で、NECとは「いちばん最初に手を携えた」ということが、一番大事なことだと思っています。また、日本におけるグローバルパートナーはNECだけです。実際、アメリカにある本社からの注目度も高くて、幹部から頻繁に問い合わせがあります。「NECとはどうなってるの?」と。
いちばん最初だからこそ、この歩みをどんどん先に進めることができる。6月に発表した金融機関8社との連携もそうです。

岩井: この2カ月で、確かに駒を進めてきました。まず6月からClaudeのNECグループ内への展開が始まりました。この1か月だけでものすごい勢いで利用者が増えています。社内注目が高い例でいえば、Anthropicの協力で開いた社内エンジニア向けウェブセミナーは、過去最高の視聴者数になりました。ちょっとした企業の社員数ぐらいの規模です。
東條:一社単独のウェブセミナー向けでは過去最大級の人数を更新しました。
岩井:社外向けには、東條さんのいう金融機関8社の件です。AIに対する感度が高い金融業界のお客さまと手を携えることをいち早く打ち出せたことは大きい。また7月には、戦略的協業に基づく最初のサービスの提供を始めました。消費者の購買データをもとに商品企画や販促プランなどの作成を完全自動化します。戦略的協業ありきではなく、NECとして、どうお客さまにどう貢献できるかを徹底的に落とし込んでいます。
東條:そういう一手一手を積み重ねて、業界全体に、日本全体にいい形で広げていきたい。
AIが便利になればなるほど、AIに仕事をとられるっていう議論は誤解も含めてこれからも起こっていくと思うんですよ。そういったときに、リスキリングも含めた再配置とか、新しい事業をどう興していくかとか、当事者となる企業だけじゃなくて提供する私たち自身も責任をもっていかないといけない。そうじゃないと価値を出せない。

岩井:そう思います。日本のNECという企業がAnthropicと手を携えて、AIで人をただ削減するような効率化ではない、新しい価値を提供する。日本だけじゃなく世界のお客さまに展開していきたいですよね。
東條: 私はそれ、NECと一緒ならできると考えているんです。AIとの付き合い方も含めて、世の中で起こっている様々な議論に対する答えを、最初に手を携えたNECだからこそ、最初に見いだすことができると思っています。