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「NECには話し合う文化がある」新CHRO・長田志織が語るAI時代の人と組織の変革
2026年7月30日

キャリア採用やM&Aの拡大を通じて、NECグループには今、多様な経験や価値観を持つ仲間が集まっています。一人ひとりの個性をNECの成長を支える力へと変えていくために、CHROが担う役割はこれまで以上に重要になっています。2026年4月、NECの社外取締役を経てNEC 執行役 Corporate EVP 兼 CHRO(Chief Human Resources Officer)に就任した長田志織に、AI時代を見据えた人と組織の変革への思いを尋ねました。
"人事畑"出身じゃない。だからこそ見えた、日本企業の課題
NECと長田の初めての接点は、3年前にさかのぼります。当時、ヤンマーホールディングスの取締役CSO(Chief Strategy Officer)だった長田は、NECの森田隆之CEOとともに、イギリス大使公邸で開かれたイベントにパネリストとして登壇しました。
「その時、ダイバーシティについての自分の考えを森田さんにぶつけました。もしかしたら『なんか面白いやつだな』と思われたのかもしれません」
NECに対する発見もありました。「その時、NECが『多様性』や『社員エンゲージメント』の向上に、強い情熱をもって取り組んでいることを知ったんです」。この後、NECの社外取締役を引き受けたのも、こうした印象があったからだといいます。
長田自身が「多様性」に満ちたキャリアを歩んできました。
就職氷河期の真っ只中に選んだ最初のキャリアは、経営コンサルタント。その後、東ハトで企業再建に携わり、さらに2社で投資ファンド業務を経験。海外勤務を志したヤンマーでは、オランダ現地法人代表と、本社での戦略担当取締役(CSO)を務めました。

いわゆる"人事畑"の出身ではないものの、「人と組織」の課題を広い視野で捉える土台を培ってきた長田は、日本企業に共通する構造的な課題を指摘します。
「日本企業がこの50年で築き上げてきた人事制度は、これまでのモデルを"維持"することを前提としたものでした。そのため、AIのような急激なパラダイムシフトに対しては、どうしても対応しにくい面があります」
人事領域の変革を「長く愛着をもって住んできた家を、住みながら少しずつ壊し、新しい設計図で建て替えていくような途方もない作業」と例え、「自分たちがつくってきたものを変えることを、もともと中にいた人たちだけで行うのは簡単ではない。異なる会社や文化を経験しているからこそ、できることはあると思っています」。
AIと人の協働を、NECの強みにしていく
就任から3カ月。住み慣れた家の建て替え、つまり人事領域の変革を成し遂げるために、長田が心掛けているのは「『口にしたことは、きちんと実行する』ということです」。
「いくら経営層が『スピード感をもって動こう』『チャレンジしよう』と旗を振っても、迅速に意思決定できなかったり、挑戦した人が正当に評価されなかったりすれば、人はついてきません。ただ理想を掲げるのではなく、やるべきことを絞る。やると決めたことは、制度や評価、日々の行動に変化が反映されるまでやり切る。それが重要だと思っています」

5月に発表した2030中期経営計画(中計)の実現にも、人事領域の変革は欠かせません。「AIネイティブカンパニー」を掲げるNECとして人事領域で重視しているのが「AIと人との協働」です。
「AIを一部の特別な人だけのものにするのではなく、一人ひとりが自分の仕事の中で使いこなし、学び続けていってほしい。変化の波の先頭に立ち、乗りこなすことが重要なんです。人事領域でもAIを活用したオペレーションを確立し、そこで得た知見をお客さまに提供していきます」
学びについて「『知的な筋トレ』を続け、学び続ける筋肉をつければ、どんな変化にも対応できる基礎体力が身につきます」と例える長田。NECグループでは、AI人材育成プログラムを順次充実させ、経験が浅くてもAI専門人材に挑戦できる社員の挑戦を支援しています。
エンゲージメント向上の鍵は、信頼と本音の対話
2030中計では、AIと並んでエンゲージメントスコアの向上も重要テーマです。NECは、中長期的にはグローバル上位25%水準の達成を目指しています。
「日本企業のエンゲージメントスコアの平均は欧米と比べて低く、国内事業の比重が大きい私たちにとって、グローバル上位25%は、かなり挑戦的な目標だと思っています」

とはいえ「スコアを上げるためだけの小手先の施策は人の心に響かない」といいます。
「私が目指すのは、現場が経営層に率直な"異論"をぶつけられるカルチャーです。そのためには、経営層が『口にしたことは実行』し、社員の信頼を高めていく必要があります。経営層の発言と現場の実情にずれを感じたら、ぜひ声を上げてほしい。そうすれば、より早く気づき、より早く変わることができる。エンゲージメントは、結果としてついてくるはずです」
現場が経営層に率直な異論をぶつけられるカルチャーの土壌は、NECにすでにあると長田は感じています。就任以降、実感しているNECの「話し合う文化」です。
「これまでのキャリアでは、自分で立案してメンバーに共有することが多く、時に一人で抱え込んでいたこともありました。NECには、就任したばかりの私と一緒に考え、決め、実行を分担してくれる仲間がいる。一人だけで頑張らなくてもいいんだ、と素直にうれしくなりました。経営層を含む社員がワークショップを開き、会社やチームの未来を真剣に話し合う姿勢も、NECの大きな魅力だと感じています」

話し合いには異論を認め合う姿勢も不可欠です。「ルールや雰囲気に慣れてしまうと、自分がやりたいことや挑戦したい気持ちを、知らず知らず制限してしまいがちですよね」。そのうえで、長田は、ノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイさんの言葉を続けます。
「マララさんは『私の翼を折らずに羽ばたかせてくれた父に感謝します』と話をしていました。翼を広げれば、どこかにぶつかるかもしれないけれど、ぶつかってみなければ、その先に何が起こるかは分かりませんよね。多少の衝突を恐れず、ぜひ、さまざまなことに挑戦したい。そしてNECグループでの挑戦を応援したいと思います」