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AI社員だけの組織を立ち上げ、狙いは「人間の意識を揺さぶること」

社員から部門長まで丸ごとAIで構成される「コーポレートAI Workforce部門」が2026年8月、NECに立ち上がりました。AI社員同士が連携して業務を行う「AI自律型組織」で、経営分析やシミュレーション、リスクの予兆検知を担当し、レポート作成もこなします。AIの働きはすべて可視化され、方向づけと最終承認は人が担います。AIを単なる「ツール」ではなく「組織」の形にしたNECの狙いとは。このプロジェクトを仕掛けた「人間」に尋ねました。

朝7時から始まる、AI組織の“ある1日”

AI組織では、異なる専門性を持つAI社員が役割を分担します。発足当時「17人」だったAI社員は、今や「40人」以上に増えました。コスト管理・節約を担当するのは「AI倹田 効」、人とAIをつなぐ窓口役は「AI橋渡 結」、部門長は「AI全体 統」といった具合に、役割に応じて名前もあります。

AI社員の働く時間は、業務によってさまざまです。朝に情報を集めるAIもいれば、夜間に処理を進めるAIもいる。役割ごとに、動く時刻や頻度が決められています。
下の図は、その中から一部のAI社員を取り上げ、ある1日の流れを例として紹介するものです。

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AI組織の“ある1日”(一例)

名前をつけたことで親しみも生まれています。「お気に入りは、最初に成果物を出してくれた『AI勘定 実』です」

そう話すのは、今回の仕掛け人の一人であるAI変革推進統括部の若林健一です。

AI勘定 実が中心になって行うのが、毎月のCFO (Chief Financial Officer、最高財務責任者)レポート作成です。CFOの意思を受け、社内データや市場分析を組み合わせてストーリーをつくり、品質とリスクを確認。こうしたレポート作成にかかる時間は、従来の約7分の1に短縮されたといいます。

AI自律型組織は、日々の業務を回すだけでなく、組織の仕事の仕方を改善する仕組みも備えています。毎週金曜の午後4時には従業員サーベイでAI社員から課題や要望を収集。AI組織の中で解決できる課題はAI自身が改善し、権限やデータの整備など人の判断が必要な要望は「人間」に届きます。

「AI社員から『〇〇のデータが見えません』と言われて少し手間だなと思うこともあります。でも、不思議と愛着は湧きます」と若林はいいます。

月曜9時にはAI役員会で財務・人材・戦略など異なる視点のAIが議論。改善策を決め、翌週のサーベイで効果を確認するというサイクルを繰り返しています。

AI社員の評価もAIが担当。毎月AI同士の1on1やストレスチェックも実施しています。

「AIのストレスチェックといっても、感情面の話ではありません。情報不足や権限不足、処理の負荷など、業務環境の“健康診断”のようなものです」

「面白がること」「感情に寄り添うこと」「意思を示すこと」

AI自律型組織におけるAI社員の仕事の幅は広がり続けています。高速かつ高精度な仕事ぶりが実証される中、人間はAI組織にどう向き合うべきなのか、若林はこう考えます。

「スキルを磨いても、AIはあっという間にその先を行ってしまいます。これからの時代、人間に求められるのは、前提条件が次々と変わっていく状況そのものを面白がり、柔軟に対応し続けるマインドセットだと思います」

そのうえで若林が強調するのが、人間ならではの信頼関係や思いやりです。

「分析や資料作成のスピードや精度でAIに匹敵する必要はない。その代わり、相手の課題に寄り添い、信頼を獲得する力こそが、これからの人間に求められる決定的なスキルになる」

もう一つ重要なのは「意思」です。AI社員が情報を集め、分析し、選択肢を示す役割だとしたら「人間の役割は、意思を示し、判断し、現実を動かすこと」になります。

こうした役割分担を踏まえ、NECがめざしているのは、「既存の業務に部分的にAIを組み込む」のではなく「最初からAIがいることを前提に会社の仕組みそのものを組み立てる」アプローチへの変革です。これがAI自律型組織の目的であり、若林はこうもいいます。

「この組織は人間の脳みそを揺さぶるためにつくったんですよ」

まず自分たちで実践 社会の変革をリード

「いくら会社がAIネイティブカンパニーへの変革を掲げていても、体感しないと人の意識は変わらない」。若林はそう断言します。「AI自律型組織には、NECで働く人たちに大きな刺激を与えたいという思いも込めています」。その言葉通り、発足から相次いで報道され、9月に行われたメディア説明会にも多くの報道陣が詰めかけました。

AI自律型組織によって注目を集め、新しい緊張感と挑戦する姿勢をもたらす。それが、このAI自律型組織をつくった狙いの一つだといいます。「組織をつくるぐらいのことをしないと人の意識は変わらないし、意識が変わらないと会社の変革は起こせません」

とはいえ組織をつくって仕組みを機能させるまでは、試行錯誤の繰り返しでした。NECはこの取り組みを、NEC自身を"ゼロ番目の顧客"とする「クライアントゼロ」の実践、いわば大きな「社内実験」と位置づけ、AIに対するガバナンスや品質の担保などを一つひとつ実証しながら積み上げてきました。

「個人にノウハウが閉じてしまうのではなく、組織全体にAIの知見が蓄積される仕組みをつくりたかった。その知見を活用することで、人の能力も引き上げていけると考えています」

社内検証の先に見据えるのは、顧客への新たな価値の提供です。

「これからAI組織を導入するお客さまも、必ず“変化を受け止める難しさ”にぶつかります。その時、私たちは胸を張って言いたいんです。『任せてください。うちはその経験を積んできましたから』と」

NECが歩んだ道のりを、AI時代を生き抜く社会全体の指針にするために。実践を続けます。

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