NEC、先進AI技術を活用した創薬事業に参入
~がん治療用ワクチンの開発・実用化を推進する新会社を設立~
2016年12月19日
日本電気株式会社
NECは、ヘルスケア事業強化の一環として、NEC独自の先進AI(人工知能)技術を活用し医薬品開発で重要な新薬候補物質を発見するとともに実用化を支援する創薬事業を開始します。
NECは本事業の開始にあたり、NECが発見したがん治療用ペプチド(注1)ワクチンの開発・実用化を推進する新会社「サイトリミック株式会社」(以下、サイトリミック、注2)を設立しました。またNECとサイトリミックは本日、株式会社ファストトラックイニシアティブ(注3)、SMBCベンチャーキャピタル株式会社(注4)、NECキャピタルソリューション株式会社(注5)と、各社を引受先とするサイトリミックの第三者割当増資に合意しました。
NECは、最先端AI技術群「NEC the WISE」(注6)の1つとして、機械学習と実験を組み合わせることにより、短期間かつ低コストで、ワクチン候補となるペプチドを高効率に発見できるNEC独自の「免疫機能予測技術」を有しています。NECは本技術を活用し、2014年からの山口大学・高知大学との共同研究および山口大学における臨床研究を通じて、肝細胞がんや食道がん等の治療に効果が期待でき、かつ日本人の約85%に適合するペプチドを発見しました。
今後サイトリミックは、NECが発見したペプチドを主な有効成分とするワクチンについて、治験用製剤の開発、非臨床・臨床試験、製薬会社との事業化検討などを行い、新たながん治療薬としての実用化を進めます。
NECは、今回の創薬事業など、今後もAIをはじめとする最先端のICTを活用してヘルスケア事業を強化し、社会ソリューション事業を拡大していきます。
背景
近年、生命科学の進展とともに人の免疫メカニズムの解明が進み、免疫を利用した新たながんの治療法が実現されつつあります。
また、免疫機能を利用した治療法の一つとして、「がんを攻撃する免疫」を活性化するがん治療用ペプチドワクチンの研究が進んでいます。
しかし、がん治療用ペプチドワクチンの開発・実用化には、約5,000億通りのアミノ酸配列の中から免疫を活性化するペプチドを発見する必要があるとともに、人それぞれに異なる白血球(HLA)型に対して汎用的に適合するペプチドや、ペプチドの効果を促進する免疫補助剤(以下、アジュバント、注7)を発見し、さらにはこれらを用いた非臨床試験・臨床試験を実施するなど、長い時間と膨大なコストがかかることが課題となっています。
NECは、先進のAI技術により短期間かつ低コストでがん治療用ペプチドワクチンの候補となるペプチドを発見しました。今回設立したサイトリミックを通じて、NECはがん治療用ペプチドワクチンの開発・実用化を支援します。
NECのこれまでの取り組み
NECは、がん治療用ペプチドワクチンに関する研究開発において、下記の発見・実証を行ってきました。
- 2001年6月:
機械学習と実験を組み合わせて新薬候補物質を発見する独自のAI技術「免疫機能予測技術」を開発。少ない実験のみで膨大な化学物質から新薬候補となる物質を高精度・短期間かつ低コストで予測可能。 - 2014年10月:
肝臓がん、食道がんなどの消化器がん、乳がんで発現している2種類のがん抗原(注8)を対象に免疫を活性化するペプチドの探索を行い、合わせて10種類以上のペプチドを発見。また、各ペプチドが、日本人の約85%の人口をカバーする複数のHLA型に汎用的に適合し、かつ実際に免疫を活性化することを確認。 - 2015年4月:
ペプチドワクチンの効果を増強する革新的な新規アジュバントをこれらの様々な組合せの中から、山口大学と共同で発見。 - 2016年1月:
上記ペプチドとアジュバントを用いて、新たな「複合免疫療法」(注9)の臨床研究を行うとともに、初期の安全性・有効性を山口大学で実証。
NECの今回の取り組み
NECは、NECが独自の先進AI技術「免疫機能予測技術」で発見したペプチドや、山口大学との共同研究により発見した革新的アジュバントから構成されるがん治療用ペプチドワクチンの実用化に向け、今回、治験用製剤の開発、非臨床・臨床試験、製薬会社との事業化検討を行うサイトリミックを設立しました。
サイトリミックの概要
名称 : | サイトリミック株式会社(英語名 CYTLIMIC Inc.) |
所在地 : | 東京都品川区 |
設立日 : | 2016年12月16日 |
事業内容 : |
・がんペプチドワクチンの臨床試験 |
株主/ 持株比率(増資後): |
NEC :39.9%、その他出資者 :60.1% |
資本金 (増資後): |
3億6150万円 |
代表者 : | 代表取締役社長 土肥 俊(どい しゅん) |
NECは、独自の先進AI技術と大学や研究機関などが有する最新のがん免疫学の知見により、今後も新しいがん治療用ペプチドワクチンを発見し、がんを克服する社会の実現に貢献します。
NECは今回の取り組みを始め、今後もAI技術のヘルスケア分野への応用を推進し、事業を拡大していきます。
NECグループは、安全・安心・効率・公平という社会価値を創造する「社会ソリューション事業」をグローバルに推進しています。当社は、先進ICTや知見を融合し、人々がより明るく豊かに生きる、効率的で洗練された社会を実現していきます。
以上
- (注1) ペプチド:様々なアミノ酸が数個~数十個程度結合した分子。
- (注2) サイトリミック株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:土肥 俊)
- (注3) 株式会社ファストトラックイニシアティブ(本社:東京都文京区、代表取締役社長 木村廣道)が運用するファストトラックイニシアティブ2号投資事業有限責任組合
- (注4) SMBCベンチャーキャピタル株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長 石橋達史)が運用するSMBCベンチャーキャピタル3号投資事業有限責任組合
- (注5) NECキャピタルソリューション株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長 安中正弘)
- (注6)
「NEC the WISE」(エヌイーシー ザ ワイズ)は、NECの最先端AI技術群の名称です。"The WISE"には「賢者たち」という意味があり、複雑化・高度化する社会課題に対し、人とAIが協調しながら高度な叡智で解決していくという想いを込めています。
・プレスリリース NEC、AI(人工知能)技術ブランド「NEC the WISE」を策定
http://jpn.nec.com/press/201607/20160719_01.html
・NECのAI研究
http://jpn.nec.com/rd/crl/ai/ - (注7) アジュバント: 免疫機能を増強させる目的でペプチドと組み合わせて投与される免疫活性化のための補助剤
- (注8) がん抗原:細胞のがん化に伴って量が増えるがんに関連したタンパク質
- (注9) 複合免疫療法: ペプチドと新規アジュバントを組み合わせた免疫療法
本件に関するお客様からのお問い合わせ先
NECの創薬事業について
NEC 事業イノベーション戦略本部
E-Mail:contact@peptide.jp.nec.com
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