2013年6月7日
日本電気株式会社
NECニュージーランド
NECは、DNAの抽出から解析までのプロセスを一貫して行うことができる個人識別用ポータブル型DNA解析装置(現在開発中、
注1)の精度と性能について、ニュージーランド環境科学研究所(ESR: Environmental Science & Research Limited)と共同評価を実施し、高評価を得ました。
NECは昨年10月から、日本の科学警察研究所とポータブル型DNA解析装置の共同評価を行っており、今回は海外で初めての評価となります。
ポータブル型DNA解析装置は、通常個々の装置で行うDNA解析のプロセスである(1)細胞の採取、(2)DNAの抽出、(3)DNA量を増やすPCR増幅(
注2)、(4)DNAの大きさを調べる電気泳動、(5)個体差を判別するSTR解析(
注3)をトータルに行えるよう、機能を一体化した装置です。一体化により、各プロセスがスムーズにつながり、また、加温冷却を繰り返し行うPCR増幅作業が大幅に高速化することで、DNA抽出から解析までの作業を短縮、通常2~3日以上かかる全工程を約60分で完了することができます。一体化した装置はおよそスーツケース大まで小型化しており、使用場所を移動しての活用が可能です。
NECとESRは、迅速な犯罪捜査を実現する手段として、事件現場でのDNA鑑定の有効性を検証する目的で、本年5月20日~5月31日に、ESRの提供するDNAサンプルを用いて実用化を視野に入れた評価を行いました。
従来のDNA解析手法による解析結果と、本装置で行った解析結果を比較して評価を行った結果、対象の34サンプル全てについて、十分な精度と再現性(
注4)を有し、データの信頼性があることを実証しました。具体的には、飲みかけのペットボトルの縁から唾液を採取したものや、混合サンプル(2人分の混ざった口腔内粘膜)、血液(液体・乾燥・血痕)で評価を行いました。
またNECとESRは、1サンプルあたり60分未満の高速な分析を実現するとともに、専門家でなくても手軽に装置を扱える容易性、研究所外での評価も行うことで、どこにでも持ち運び可能であることなど、高精度な結果を出せる実用性を確認しました。
ESRは、ニュージーランド政府の科学研究機関の1つであり、ニュージーランド警察の科学捜査を支援する唯一の機関です。
今回の実証にあたり、ESRのForensic Development ManagerのBjorn Sutherland氏から次のエンドースをいただいています。
「結果は大変期待できるものであり、ESRでは今後、ニュージーランドでのポータブル型DNA解析装置の利用を検討するだろう。迅速な解析が期待出来るが、事件の現場で使用する前に、引き続き多くの研究と評価は必要になる。今回はテストの第1段階であり、将来、ポータブル型DNA解析装置が研究所の中で得られるデータと同じ結果になることを保証できるだろう。」
NECは、このたびの評価を基にポータブル型DNA解析装置のさらなる改良を続け、犯罪捜査の迅速化や犯罪の抑止に役立てられるよう、2014年度の商用化を目指します。
さらに、本装置を、犯罪捜査だけではなく医療・ヘルスケア・社会ID(災害現場・親子鑑定・その他身元確認用途)・食品・農業・動物などの検査にも利用範囲を広げ、安全・安心な社会の実現に貢献します。
なお、本装置の開発にあたり、次の企業・組織と共同で研究または開発を行っています。
- 米国Promega社(注5)
解析用試薬を提供。DNA解析市場における主要企業。DNA解析用試薬大手
- 株式会社朝日ラバー (注6)、株式会社岡山(注7)
μTAS技術(注8)による解析チップの開発。
- 富士紡ホールディングス株式会社(注9)
Promega社提供の解析用試薬をパッケージ化。
- 東京大学 生産技術研究所 藤井 輝夫 教授(注10)
μTAS技術(注8)による解析チップの研究・開発。
- 科学警察研究所
ポータブル型DNA解析装置の共同研究(注11)
以上
(注2) PCR : ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction)の略。DNAを増幅するための原理またはそれを用いた手法。
(注3) STR : Short Tandem Repeatの略。細胞核やオルガネラのゲノム上に存在する反復配列で、とくに数塩基の単位配列の繰り返しからなるものである。マイクロサテライト(microsatellite)とも呼ばれる。
(注4) 解析の都度、安定して出力できること。同じものを解析したら、同じ結果が出ること。
(注5) 本社 : Madison, WI, USA 代表:William A. Linton
(注6) 本社 : 埼玉県さいたま市 代表取締役社長 : 横山 林吉
(注7) 本社 : 東京都文京区 代表取締役社長 : 岡山 公哉
(注8) Micro Total Analysis System技術 : 分析に必要な混合・攪拌・洗浄・分離・検出等の操作を数センチ程のチップ上で行う技術。
(注9) 本社 : 東京都中央区 代表取締役社長 : 中野 光雄
(注10) 東京都文京区本郷7丁目3番1号 国立大学法人 東京大学
(注11) 千葉県柏市柏の葉6丁目3番地1号 科学警察研究所
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