装置の完成イメージ
NECは、現在開発中の、DNAの抽出から解析までのプロセスを一貫して行うことのできる個人識別用ポータブル型DNA解析装置の精度について、科学警察研究所と共同評価を実施しました。共同評価は今後、2013年度末まで継続予定です。
ポータブル型DNA解析装置は、装置と消耗品である解析チップ(解析するためのプラスチック板)および試薬パッケージで構成されます。NECはパートナー企業とともに、解析チップおよび試薬パッケージについて、微量の液体を制御する技術を安価に装置に実装することを可能にしました。この解析チップおよび試薬パッケージを装置と組み合わせることで、従来の解析作業で必要であったピペットを用いた解析を不要とし容易な操作性を実現します。
DNA解析のプロセスは、(1)細胞の採取、(2)DNAの抽出、(3) DNA量を増やすPCR増幅(
注1)、(4) DNAの大きさを調べる電気泳動、(5)個体差を判別するSTR解析(
注2)から成り立ちます。本装置は、通常個別の装置で行うこれらのプロセスを一貫して行うことのできるものです。この一体化により、各プロセスが連動し、また、加温冷却を繰り返し行うPCR増幅作業が大幅に高速化することで、DNA抽出プロセスから解析プロセスまでの作業を短縮、今回の評価機で実施する全工程を約60分で完了します。さらに、一体化した装置はおよそスーツケース大まで小型化しており、使用場所を移動しての活用が可能です。
共同評価の第一弾として、NECと科学警察研究所は、10月24日~11月7日に、科学警察研究所の提供するDNAサンプルを用い、実用化を視野に入れた評価を行いました。従来のDNA解析手法による解析結果と本装置で行った解析結果を比較し、評価を行った結果、将来を期待するに十分な精度と再現性を有することを確認しました。
科学警察研究所は、今回の評価結果について、いくつかの課題を指摘しながらも、「これらの課題が改善されれば、迅速なDNA型検査法の確立につながる可能性がある」とコメント、引き続き、警察活動への貢献に資するべく、共同研究を継続していくとしています。
NECは、本装置を犯罪捜査の迅速化や犯罪の抑止に役立たせ、安全・安心な社会の実現に貢献できるよう、このたびの評価を通じてさらなる装置の改良を続け、2014年度の商用化を目指します。
なお、本装置の開発にあたり、次の企業・組織と共同開発を行っています。
- 米国Promega社(注3)
解析用試薬を提供。DNA解析市場における主要企業。DNA解析用試薬大手。
- 株式会社朝日ラバー(注4)、株式会社岡山(注5)
μTAS技術(注6)による解析チップの開発。
- 富士紡ホールディングス株式会社(注7)
Promega社提供の解析用試薬をパッケージ化。
- 国立大学法人東京大学 生産技術研究所 藤井 輝夫 教授
μTAS技術による解析チップの研究・開発。
以上
(注1) PCR :ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction)の略。DNAを増幅するための原理またはそれを用いた手法。
(注2) STR :Short Tandem Repeatの略。細胞核やオルガネラのゲノム上に存在する反復配列で、とくに数塩基の単位配列の繰り返しからなるものである。マイクロサテライト(microsatellite)とも呼ばれる。
(注3) 本社:Madison, WI, USA 代表 : William A. Linton
(注4) 本社:埼玉県さいたま市 代表取締役社長 : 横山 林吉
(注5) 本社:東京都文京区 代表取締役社長 : 岡山 公哉
(注6) Micro Total Analysis System技術 : 分析に必要な混合・攪拌・洗浄・分離・検出等の操作を数センチ程のチップ上で行う技術。
(注7) 本社:東京都中央区 代表取締役社長 : 中野 光雄
本件に関する情報
本件に関するお客様からのお問い合わせ先
私たちNECグループは、
「人と地球にやさしい情報社会をイノベーションで実現する
グローバルリーディングカンパニー」を目指しています。
|