新発表の「VersaPro タイプVZ（VK15E/ZS-G）」は、最新OSのWindows 8を搭載した12.5型液晶搭載のタブレットPCです。本稿では、商品コンセプトの考え方や、商品化に当たっての技術的な工夫などを紹介します。

1. まえがき

タブレットPCは、タッチパネル技術により「指先操作で情報を素早く見る」「ペン操作で手書きしてコメントを入れる」といった、従来のキーボード操作が主体のPCとは異なる新たな利用方法を提供する新世代PCです。

タブレットPCには、キーボードでの操作と指やペンでの操作を両立させたコンバーチブル型と、キーボードを搭載しないピュアタブレット型が存在します。新発表のNECのタブレットPC「VersaPro タイプVZ（VK15E/ZS-G）」は、大きい12.5型画面でも重量1kgを切る900g台の軽さを実現するために、ピュアタブレット型のスタイルを選択しました。このスタイルで「大画面」「軽い」「快適な操作感」を追求した結果、本機は12.5型の大画面搭載タブレットPCではトップクラスの軽さであり、指でのタッチ操作に加えペン操作でも快適な書き味を実現することができました。

2. 特長と仕様

本機（写真1）は以下の特長を持っています。また主な仕様を表に示します。

表 タブレットPCの主な仕様

3. 大画面の選択と軽さの追求

本機は、タブレットPCとしては大画面の12.5型液晶を搭載しています。これは、従来のモバイルPCの液晶が12型クラスであり、お客様がモバイルPCからタブレットPCに移行された際にも、画面表示がなるべく同等になるように考えて選択したものです。これにより、お客様がモバイルPCで使用されていた基幹システムや業務アプリケーションをそのまま流用しても違和感なく画面表示でき、快適に使用いただくことが可能となりました。

また軽さを追求するために、部材選定時により軽い部材を選定し、次のような工夫を採用しました。

(1) 筺体に薄くて丈夫なマグネシウム合金を採用

1mm未満の薄さのマグネシウム合金を筺体に採用し、軽量化を追求しつつ、手に持っても筺体がへこんだり、たわんだりしない堅牢性を確保しました。

(2) 液晶保護に薄くて丈夫な強化ガラスを採用

一般的なノートPCで採用されている液晶保護ガラスよりも薄い保護ガラスを採用しています。また、ガラス表面はアンチグレアフィルムを貼り付けており、保護ガラスに蛍光灯などの照明が映り込むことを防ぐとともに、指紋を付きにくくする効果も併せ持っています。

(3) 記憶媒体にSSDを採用

従来のモバイルPCで多く利用されているハードディスク（HDD）ではなく、より軽量なSSD（Solid StateDrive）を採用しています。SSDはHDDのような回転部品やヘッドが無いため、HDDよりも振動や衝撃に強く、また使用時の角度をフリーにすることが可能です。このため、本機はさまざまな角度で使用することが可能となりました。

(4) 放熱部品の軽量化

熱源となるCPUやチップセットからの放熱のためのエアフローをシンプルにすることで、余分な放熱部品を使わないように設計し、重量を抑えました。

4. タッチ入力とペン入力の快適さの追求

キーボードを搭載しないピュアタブレット型でも快適に操作できることにこだわり、タッチ入力とペン入力について次のような工夫を盛り込みました。

(1) Windows 8の操作を考慮したフラットサーフェース

Windows 8では、メニュー表示などの際に画面縁から指でタッチしてスライドさせることが基本操作となっています。そのため、画面縁と表示面との段差を無くし、前面をフルフラットにしたデザイン（フラットサーフェース）を採用しました。これによりWindows 8の操作が快適に行えます。

(2) マルチタッチ

最大10本の指先で同時にタッチしても正しく認識される10点マルチタッチ対応のタッチパネルを採用しています。これにより、2本の指で同時にタッチして開いたり閉じたりする動きによる画面の拡大/縮小（ストレッチ/ピンチ）操作など、Windows 8アプリケーションのさまざまなタッチ操作に対応可能です。

(3) 認識率の高い文字認証

Windows 8のデスクトップモードで使用できるMetaMoJi社の手書き文字入力アプリケーション「mazec（マゼック）」を別売にて提供しています。文字認識率に優れ、使うほど学習する予測文字変換機能により、快適な手書き文字入力を実現しました。なお、本アプリケーションは、本機の開発と連動してMetaMoJi社にて評価・開発しています。

(4) ペンの操作感

握りやすい鉛筆サイズの太さのデジタイザーペン（写真2）を採用しています。このペンは先が細いため、細かな手書き入力が可能であり、合わせてWindows 8のデスクトップ表示におけるウインドウ画面の細かなタッチ操作にも適しています。更に、ペンを持った手が画面に接触していてもペン入力ができるため、紙に手を置いて書く様な快適なペン操作が可能です。

(5) ペンの書き味

本機に採用した保護フィルムには、紙にペンで書くときのような適度な抵抗感があります。ペン先が滑りすぎないため、ペンを使って文字や図を描く際にも快適です。

(6) 視差の低減

液晶表面の保護ガラスの厚みにより、ペン先と液晶の表示面との距離が離れ、視差が発生します（図）。この視差を少なくするために、従来のノートPCよりガラス厚の薄い保護ガラスを採用し、ほとんど視差のない、快適なペン入力を実現しています。

(7) ペンの追随性

電磁誘導方式のタッチパネルは、ペン位置を±0.4mmの精度で認識し、毎秒133回の読み取りを実施しています。
これにより、細かく素早いペン操作に対しても滑らかに反応する優れた追随性を実現しました。

5. その他の特長

本機は、「大画面」「軽い」「快適な操作感」に加えて下記の特長もあります。

(1) 長時間バッテリ駆動

最大7時間（JEITAバッテリ駆動時間測定法準拠）のバッテリ駆動に対応しています。移動中はスリープ状態（作業中のメモリの状態を保持したまま、SSDやディスプレイを省電力状態にして消費電力を抑えている状態）にする運用により、1日中外出して使用することも可能です。

(2) 高速処理のデュアルコアCPU

多くのタブレットPCで使用されているインテル^®Atomプロセッサーよりも処理性能に優れたデュアルコアCPUのインテル^®Celeron^®プロセッサーを採用しています。
標準4GBで最大8GBまで搭載可能なメモリとの組み合わせにより、Office（「Word 2013」「Excel 2013」「PowerPoint 2013」「OneNote 2013」など）も快適に利用できる高速処理とバッテリ長時間駆動の両立を実現しました。

(3) 豊富なインタフェース

デスク業務の際に必要なマウスやキーボードなどを接続できるUSBポートは、複数の機器を自由に接続できるよう左右側面に配置しています。またプロジェクターにも接続できるRGBの外部ディスプレイコネクタも標準搭載するなど、企業の既存資産の活用を考慮した豊富なインタフェースを搭載しました。

(4) 多彩な通信機能

無線LAN（IEEE 802.11a/b/g/n）とBluetooth^®を標準搭載し、NTTドコモの高速無線通信Xiを利用できるワイヤレスWANを搭載可能など、豊富な無線通信機能を用意しています。更に従来の有線LAN環境も使用できるように、ギガビットイーサネット（1000BASE-T）対応のLANポートも標準搭載しました。LANポートはツメが上向きになる凸型で配置し、筐体を机などに置いた際のLANケーブルの脱落を防止します。

(5) 前面/背面の両方に搭載したWebカメラ

TV会議や現況報告に活躍するWebカメラを筺体の前面と背面の両方に標準搭載しました。

(6) 指紋認証機能

指を当ててスライドするだけで個人認証が可能な指紋センサを標準搭載しています。BIOSレベルの認証とWindowsのログイン認証を1回の認証操作で同時認証できるシングルサインオン機能にも対応しており、手軽で安全なセキュリティ機能を実現しました。

(7) 動作関知

本体の傾きを感知するジャイロセンサや、本体の動きを感知する加速度センサを内蔵しています。本体を傾けたことを検知し、自動で画面表示を回転させることが可能です。また、画面表示の回転は、自動回転をOFFにしてボタン操作で回転させることも可能としました。

(8) 盗難・紛失時のデータ消去

タブレットPCのデータをインターネット経由で消去できる遠隔データ消去サービスが1年間無償利用可能です。
本サービスでは、長時間認証できなかった場合にあらかじめ指定したデータを自動消去する機能も搭載しています。本サービスにより、万一の盗難・紛失時にも情報漏えいリスクを抑えることができます。

(9) 使いやすさの追求

デジタイザーペンの紛失を防止するストラップを標準添付しています。またタブレットPC本体側面に空いたストラップ用の穴は、右利き左利きのどちらでも対応できるように両サイドに設けました。更に画面回転ボタンを装備し、例えば地図を見るときなど、画面を自動で回転させたくないときに便利です。

6. まとめ

以上、新発表のWindows 8搭載タブレットPC「VersaPro タイプVZ（VK15E/ZS-G）」を紹介しました。

今まさに拡大中のタブレットPC市場において、新しいニーズにいち早く対応できるよう、今後も新しいタブレットPCの商品化を進めていく予定です。

最後に、本機の商品化にご尽力いただいた関係各位に厚く御礼申し上げます。

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