フィールドサービスマネジメント領域でのDXの取り組み

お客様の業務改革を推進するDXオファリング

インフラ、プラント、土木・建築といった資本集約型産業の施工・運用・保全業務の現場では、設備の高経年化、情報の分散・孤立や人手不足などの課題が存在しており、デジタルトランスフォーメーション(DX)による現場業務の効率化・最適化の実現が急務となっています。フィールドサービスマネジメント領域でのDXでは、現場の納得感を得るとともに、DX担当部門や情報システム部門と方向性を合わせ、全体最適となる進め方が重要です。本稿では、これらの進め方におけるNECの取り組みを紹介します。企画・要件策定支援を行い、お客様の施策立案を行うコンサルティング型のDXオファリングや、お客様と共創し取り組んでいる具体例として、プラント業界向けデジタルツイン実現を目指す「デジタルプラント」、ローコード開発によりお客様の内製化支援を目指す「デジタルツインの内製開発支援に向けた取り組み」について紹介します。

1. はじめに

近年、フィールドサービスマネジメント(FSM)(以下、FSM)と呼ばれる資本集約型産業の施工・運用・保全業務の現場では、設備の高経年化、情報の分散・孤立や人手不足などの課題に直面しており、デジタルトランスフォーメーション(DX)(以下、DX)による現場業務の効率化・最適化の実現が急務となっています。

本稿では、これらの課題の解決に向けたDXオファリングや、お客様と共創し取り組んでいる具体例を紹介します。

2. FSMにおける課題

資本集約型産業の施工・運用・保全現場(以下、現場)には、モノ、コト、ヒトという観点で共通の課題が存在しています(図1)。

図1 FSMにおける課題

2.1 モノ:設備の高経年化

インフラやプラントの設備の多くは高経年化が進んでおり、幾度もの改築・更新工事の結果、設計図面がない、または設計図面があったとしても現状と異なる場合があり、設備の状況を正確に把握することが困難なケースが少なくありません。工事計画を策定する際には、必ず現場の再確認(再スケッチ)、及び写真を見ながらのルート検討などが必要であり、計画業務の半分近くを占めることもあります。

2.2 コト:情報の分散・孤立による作業効率・作業品質の低下

広大なインフラやプラント設備には膨大な量の設計情報、施工情報、運用・保全情報などが存在しますが、すべての情報を把握している人は限られるとともに、チーム間で情報共有されていない場合も多くあります。更に、それらの情報は、あらゆるシステムや紙資料に分散して管理されており、必要な時にタイムリーな情報入手が困難な状態です。これは、生産計画や保全計画を検討する下準備のために「情報を探す」ことから始めなければならないことを意味しており、その作業は業務全体の約30%を占めるとも言われています。

また新設の場合でも、設計情報、施工情報、運用・保全情報などは、各業者がばらばらに作成・管理していることが多いですが、効率的に質の高い運用・保全計画を立てるためには、施設のライフサイクル全体を把握し、それらの情報を集め統合管理することが重要です。

2.3 ヒト:人手不足

資本集約型産業の現場では、労働人口の減少、長時間労働の常態化、3Kのイメージ定着といった理由から、慢性的な人手不足が続いています。特に2024年度から改正労働基準法への準拠が求められ、違反者には罰則が適用されることから、ICTの全面的な活用により労働生産性を向上し、魅力ある現場を目指す取り組みが急務となっています。

3. FSMにおけるNECの取り組み

このように、資本集約型産業の現場では共通する課題が少なからず存在しています。NECでは、これらの現場業務における課題に対し、ビジネス課題及び施策検討を行う企画段階から、システムの開発・運用までを一気通貫で支援することで、DXによる現場業務改革の効果を最大化します。

資本集約型産業の特性として、現場部門の納得感が非常に重要であり、DXの進め方として、現場部門や情報システム部門も巻き込んだ共創型(部門横断型)での実行体制や、現場の評価を即座にフィードバックし改善できる開発プロセスが重要になります。NECでは、現場部門も巻き込んだ共創型による企画支援や、アジャイル型での柔軟な開発により、現場の納得感のあるDXを実現します。

第3章1節より、企画・要件策定支援を行いお客様の施策立案を行う、コンサルティング型のDXオファリングとして「Field Service Management要件策定支援サービス」、また、お客様と共創し取り組んでいる具体例として、プラント業界向けデジタルツイン実現を目指す「デジタルプラント」、ローコード開発によりお客様の内製化支援を目指す「デジタルツインの内製開発支援に向けた取り組み」について紹介します。

3.1 Field Service Management要件策定支援サービス

「Field Service Management要件策定支援サービス」は、第2章までのお客様のうち、特に「DX戦略やデジタル化方針を具体的な施策に落とし込むことができない」「DX戦略やデジタル化方針実現に必要なソリューションの定義がうまくいっていない」といった課題を抱えるお客様向けに、現場・管理作業の効率化や最適化を実現するシステムを検討・定義するためのコンサルティング型のDXオファリングです。

当領域の業務理解があるNEC担当者が、業務上の問題についてお客様とともに根本的な原因を洗い出し、施策を整理したうえで、業務/機能概要に落とし込むなど、その後のシステム開発に有効な要件策定を行っていきます。そのため、お客様の掲げる戦略の実現に直結した実行力のあるソリューションを効率的に定義することができます。

「Field Service Management要件策定支援サービス」では、(1)問題抽出から(6)要件検証までの6つのステップ、105営業日でのサービス提供を行います(図2)。

図2 「Field Service Management要件策定支援サービス」実施ステップ

本サービスでは「現場(施工・運用・保全業務)」があるというFSM領域の特徴と実行力を伴うソリューションの要件策定を重視しており、お客様のDX担当部門だけでなく、現場業務を担われているあるいは経験者の方をプロジェクトにアサインいただき、共創型で提供します。

また本サービスでは、アウトプットとして課題一覧、施策一覧、評価一覧、ユーザーストーリー(施策のユースケース相当の資料)、ユーザーストーリーマップ(施策の機能概要相当の資料)、画面スケッチを提供します。そのため、具体的な施策のイメージをお客様が持ちやすく、またそれらの施策の開発を実際にお客様が要望された際にスムーズな移行が可能になります。

3.2 デジタルプラント

デジタルプラントとは、プラントを仮想空間上に3Dで可視化し、そこに現実空間にあるプラントのモノ・コト・ヒトの情報を関連付けて再現したものです。

現状、現場では散在した情報やシステムなどへ容易にアクセスできないことにより、業務の品質や生産性の低下が頻発しています。この問題に対してプラントの操業や設備保全など業務全般にわたり、デジタルプラントに集約・蓄積された情報やシステムが場所を問わずタイムリーにアクセスできることによって解決できる可能性があります。

NECの考えるデジタルプラントはクラウド上に実現しており、利用者はWebブラウザを使用します。仮想空間上のプラントは3Dライダーで計測した点群データで表現し、その設備には図面データや保守履歴管理システムなどあらゆる関連情報を紐付けることができます。

今般、ある化学メーカーのお客様において一部プラントのデジタルプラント化を行いました。メインとなる5階建てプラントとその外周を含めて約280力所の点群データを計測し、専用の処理ソフトウェアによってすべての点群データを合成し軽量化などを行ったうえでクラウド環境に実装しています。なお、このクラウド環境の利用者管理はユーザー・パスワードの他にデバイス制限を行う二要素認証にてセキュリティを強化しています。

お客様は、まずは第1ステップとして仮想空間上の設備と現場図面や操作手順書などが保存されている文書管理システムを一時的に連携させるなど、デジタルプラントを実際に触れる体験を行いました。これにより実業務でどのように活用できるのか、あるいは業務自体を大きく変える可能性があるのか、など現場視点でいくつかのシーンを抽出いただきました。

今後の第2ステップでは、その他の既存システムとの具体的な連携方法、またNECのAI技術であるインバリアント分析による故障予兆検出やRAPID機械学習によるさび・ひび検出との組み合わせなどに加え、デジタルプラント利用による情報アクセスの変革など、現場業務で本当に使えるDXはどうあるべきかの検討をお客様と共創型で進めていきます(図3)。

図3 デジタルプラント業務活用イメージ

3.3 デジタルツインの内製開発支援に向けた取り組み

NECのお客様には、これまで、各部門、各関係会社、各工程でばらばらに管理されていたデータを1つのデータモデルへ統合し、全社視点で業務プロセス最適化を図ることで、第2章で述べた各課題の解決を試みている企業があります。課題の解決は、結果として、全社の利益率を向上させることにつながります。

FSMの分野では、各種図面、検査・点検データ、現場記録写真、作業進捗、安全指標などのデータを統合しますが、近年では、統合化された各種データをデジタルツイン上へマッピングし、組織の壁、及び空間や時間の制約を超えた情報共有やコミュニケーション効率化を図る試みがなされています。例えば、建物の施工時の現場点検記録データを竣工後の維持管理に役立てるといった試みがあります。

また、自社業務プロセスへ最適化されたデジタルツインの内製開発を開始した企業も現れています。既成の製品を導入しても現場が使ってくれないケースが多く、現場の要望に即座に応えるため(従業員へのエンゲージメント向上)、内製化やアジャイル開発手法の導入という判断がなされています。

近年、高度なプログラミングスキルがなくとも、ローコード開発プラットフォーム(LCP:Low-Code Platform)を導入することで、ITベンダーへ開発委託せずとも社内ICTシステムを内製化することが可能となってきました。NECも、実験的な試みとして、FSMに向けたデジタルツインをLCPを活用しながら短期間で試作したところ、デジタルツイン開発に向けた機能ブロックがあらかじめ用意されていれば、高度なプログラミングスキルがなくとも内製開発できることを確認しました。しかし、これを実際に運用するとなると、品質・性能保証やセキュリティ確保が必須となり、高度なITサービスマネジメントのスキルが要求されることも分かりました。例えば、3Dスキャナーで取得した建物の3Dデータをスマートフォン上で描画する場合、点群やポリゴンのデータ処理量が非常に大きいので、スマートフォンのバッテリー消費が激しくなり(本体が異常に熱くなり)、スムーズな描画も行えません。これについては、スマートフォン向けに3Dモデル描画を最適化するため、NECのネットワーク技術(5Gなど)やAI技術、クラウドSI技術との組み合わせで解決していける分野と考えており、お客様との共創を通じ、今後も具体化を進めていきます。

4. むすび

本稿では、インフラ、プラント、土木・建築といった資本集約型産業の施工・運用・保全業務における現場作業の課題解決に向けたDXオファリングや、お客様と共創し取り組んでいる具体例を紹介しました。第3章で紹介したデジタルプラントの取り組み例は、NEC本社ビル内(東京都港区)のショールーム“Future Creation Hub”にて、試作展示しています(2022年3月現在)。本展示などを通じ、FSM領域における新しい現場業務のあり方、マネジメント業務のあり方を提示します。そして、それらをもとに、お客様との共創を通じ、お客様のDXを進めます。

執筆者プロフィール

小武 大雄
デジタルビジネスオファリング事業部
主任
金子 孝一
デジタルビジネスオファリング事業部
主任
川北 実穂
デジタルビジネスオファリング事業部
主任
田村 佐
デジタルビジネスオファリング事業部
主任
瀬川 明大
デジタルビジネスオファリング事業部
主任

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