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New Normal時代のロジスティクス
「Intelligent Logistics」で止まらない物流を支える

労働力不足の進行やサプライチェーンの複雑化により、物流リソースを効率的に活用し最適なロジスティクスを構築することが求められています。一方、Under COVID-19の環境下において、物流現場における労働環境の安全性確保、サプライチェーンの分断・急激な需給変動への対応といった新たな課題が発生しており、「効率化」と「事業継続」を両立したロジスティクスへの進化が必要となっています。

本稿では、New Normal時代におけるロジスティクスの課題とあり方、そして取るべき対策のユースケースを紹介します。

1. はじめに

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)(以下、COVID-19)の感染拡大により人の移動に制限が課されるなかにおいても、“モノ”の移動を司るロジスティクスは引き続き必要となり、社会・生活を支えるインフラとして継続した稼働が求められています。

本稿では、New Normal時代におけるロジスティクスの課題とあり方、そして取るべき対策のユースケースを紹介します1)

2. 従来のロジスティクスの課題とUnder COVID-19における変化

2.1 従来のロジスティクスの課題

ロジスティクスの領域においては労働力人口の減少による人手不足が深刻化しており、その解決手段として自動化・省力化が求められていました。また、多品種少量化や生産の海外比率向上に伴いグローバルサプライチェーンの最適化による過剰在庫・輸送コストの削減が課題となっていました。多くの企業のロジスティクスの共通課題は「効率化」であったと言えます。

2.2 Under COVID-19における新たなリスクの顕在化

COVID-19の拡大はロジスティクスに大きな影響・変化を与えました。

1点目は、「物流現場の安全な労働環境の確保」が重要なテーマとなったことです。物流において現場作業は欠かせず、多くの作業者が必要となります。Under COVID-19の環境下では、出社制限によるリモート環境での対応や密集環境をつくらず業務を継続するニーズが発生しました。多数の人が密集するモデルへの過度な依存は、リスクとなっています。

2点目は、「サプライチェーンの分断・急激な需給変動への対応」です。現在のサプライチェーンは、部品の調達先が国境を越えて広域かつ多段階の構造となっており、特に生産拠点が集中する電機・電子部品産業や自動車産業を中心に、一部の部材が調達困難になることでサプライチェーン全体が影響を受け途絶するリスクが顕在化しました。平時においては、生産・物流拠点・輸送ルートの集中化は効率化の有効な手段となりますが、有事においては、それが脆弱さにつながるということが明確になりました。今後、事業継続をより重視した変革が起きると想定されます。

2.3 New Normal時代のロジスティクスのあり方

Under COVID-19の環境を経て、今後のロジスティクスにおいては「効率化」に加えて、「事業継続」が重視されることになります。

これまで主に「効率化」の手段として行われてきたICTの活用においても「事業継続」の視点を加えて、インシデントを迅速に検知し柔軟に対処できる、止まらない物流インフラを構築し、サプライチェーンの強靭化を図っていく必要があります(図1)。

図1 COVID-19前後におけるロジスティクスの変化

次章以降では、ICTの活用により、どのように「物流現場の安全な労働環境の確保」「サプライチェーンの分断・急激な需給変動への対応」という2つの課題に対処し、止まらない物流を実現していくかについて、ユースケースを紹介します。

3. 物流現場の安全な労働環境の確保を実現

3.1 通関業務のデジタル化とリモートワークを推進

COVID-19の影響により通関業務の在宅勤務の要件が緩和され、通関業者全体の約3割が申請する2)などし、急速に在宅勤務の利用が増加しました。今後必要となる仕組みとしては、現物が必要となる紙書類をデジタル化し、リモートからセキュアに利用でき業務を遂行できる環境の整備です。

NECの「通関業務効率化ソリューション」は、自動学習機能を備えた文字認識技術(AI-OCR)と業務効率化ソフトウェア(RPA)を活用することにより、紙書類のデジタル化から業務の標準・効率化までを実現します。従来の文字認識技術では、事前に書式を定義する必要があることが利用のハードルとなっていました。AI-OCRでは、多種多様な帳票の書式を蓄積学習することで帳票の自動読取りが可能になり、データ入力プロセスを大幅に効率化します。また、リモートからセキュアに利用できる環境を用意することで働く場所を問うことなく勤務を可能とし、通関業務のリモートワークを推進します。

株式会社住友倉庫様は本ソリューションの導入により、紙やPDFのインボイスをデータ化する工程に適用し、AI-OCRによって大幅な所要時間の削減を達成しました。ある荷主の業務においては、月間約260時間から約160時間へ、およそ4割減を達成しています。

3.2 顔認証によるスマートな本人確認

物流現場ではドライバーや物流センターの作業者など不特定多数のプレイヤーの接触が発生するため、感染リスクの増加へとつながります。そのため、いかに接触機会を減少させるかがポイントになります。

その1つが、安全確保のために行われる本人確認業務です。運行管理者による原則「対面」での確認が求められている点呼業務などがその例です。業務によっては一定の条件をもとにリモート対応が認められているケースもありますが、その場合でもなりすましなどの防止のため確実な本人確認は必要となります。

本人確認のための有効なツールとして、NECの顔認証クラウドサービスを活用することができます。スマートフォンやタブレット端末のカメラで撮影した画像と事前に登録した顔画像の照合を行うことで、点呼時や作業時の本人確認を行います。これまでタッチ入力やICカードで行っていた本人確認を、機器に触れることなく非接触でスムーズに実現することができます。顔認証クラウドサービスは、世界No.1の認証精度を有する顔認証技術3)と、なりすまし防止技術を活用しており、本人以外による不正利用のリスクを低減します。

3.3 物流センターのデジタル化

昨今の労働力不足及び直近の環境を踏まえて、誰が・いつ・何を・どのように作業しているかを把握しておく必要性が高まっています。

その対策として、物流現場における作業情報・要員管理のデジタル化を推進することが考えられます。スマートデバイスやセンサーなどを活用し作業情報を収集。作業者への指示はスマートデバイスなどのアプリケーションを通じて行うことで、リモート環境であっても適切な現場コントロールを実現します。

これにより物流管理者は現場の環境を把握し、状況に応じたリアルタイムな作業の変更や、勤務状況や作業実績に応じた要員手配を行うことが可能となります。

現場の状況がデジタル化されることで、収集された作業状況・実績データをもとに、最適な作業計画作成・要員配置をAIが支援するなど、更なる高度化を図ることも期待できます。

4. サプライチェーンの分断・需給変動へ対応

4.1 サプライチェーン可視化

COVID-19の影響により、一部部材の供給停止がサプライチェーン全体の断絶へとつながるリスクが顕在化しました。中国の武漢におけるワイヤーハーネスの工場稼働停止が自動車サプライチェーン全体への影響へと波及したのがその例です。今後のサプライチェーンにおいては、インシデントを迅速に検知し対処できる仕組みが重要となります。

NECの「サプライチェーン可視化ソリューション」では、オーダー情報と輸送ステータスを紐付けることで輸送中の在庫情報をリアルタイムに把握することが可能です。複数の企業間での情報をセキュアに共有し、各社において異なる管理番号を紐付けて一元管理することで、輸送遅延などのインシデントを迅速に把握できるようになります。
 
従来は電話やメールなどでの個別確認が必要であった社内や納入先からの問い合わせ工数を削減できる他、生産計画との連携による過剰在庫の削減などの効果が期待できます。ダイキン工業株式会社様をはじめとした製造業を中心に導入が進んでいます。

4.2 在庫・物流リソースの最適な需給調整

過剰な在庫の発生は、輸送リソースの不足をより深刻化させることになります。例えば、食品業界においては、年間での食品廃棄ロスは612万トンと言われており、トラック換算では1日当たり大型車(10トン)1,680台4)になります。需要の変動により、輸送リソースが非効率な活用をされている状況となっています。川下の需要を高精度に予測し、川上の在庫・物流リソースの調整へとつなげる仕組みが必要です。

その解決のため、NECは高精度な需要予測・調整を行うソリューションを提供しています。在庫の必要量の予測から最適な車両・作業者・保管スペースといった物流リソースの手配へとつなげます。その中心となるのがNECの独自AI技術である「異種混合学習」です。「異種混合学習」はホワイトボックス型のAIであり、その予測根拠となる計算式などを確認することができます。なぜその予測となるのかを把握することができるため、現場の運用に受け入れやすいのが特徴となっています。

実際の適用例として、統計などのオープンデータと過去の実績を組み合わせて分析し、荷量の高精度な予測に加えて、熟練者でないと判別が困難な予測に影響する要因を導出した事例があります。現在は、「食品・消費財」「半導体」のサプライチェーンへの展開を行っています。

4.3 積載率の把握と物流共同化

トラック積載率は年々低下し近年では約40%となっています。ドライバー不足が深刻化するなか、輸配送のリソースが十分に活用されていないのは大きな損失となっています。COVID-19の影響により、日用雑貨・消費財などの業界において急激な需要の増加が発生し輸配送のリソースがひっ迫する一方、一部の業界においては生産拠点の稼働停止により余剰が発生するなどギャップが顕著になっています。

その解決のための手段の1つが「積載率可視化ソリューション」です。独自の3D空間認識技術を活用することにより空間の占有率を算出し、トラックの積載率や空きスペースを可視化します。これにより積載率の低い輸送ルートを把握し車両台数を調整することが可能になります。

この積載率のデータと、契約条件やオーダー情報など他データを組み合わせることで、複数の企業間での物流のリソースの共同化・最適化の実現へとつながる可能性があります。

5. おわりに

本稿では、New Normal時代におけるロジスティクスの課題とユースケースについて紹介しました。Under COVID-19における社会環境の激変を経て、従来の「効率化」のみではなく、安全な労働環境の確保とサプライチェーン最適化を通じて「事業継続」を重視したロジスティクスへと転換をしていく必要があります。

NECは「2030年のロジスティクス」(図2)において、サプライチェーンの情報が1つにつながることで、地理的な制約なく流通が促進され、都市と地方の物流格差が解消される社会像を提示しています。その中心を担うのが、物流情報の基盤となるロジスティクスプラットフォームです(図3)。サプライチェーン全体のモノの流れの情報を素早く把握し、物流リソースの最適な配置を実現することで、需給変動に柔軟に対応する強靭でダイナミックなサプライチェーンを実現します。NECは、本稿で紹介したソリューションや技術を組み合わせ業界・業種を超えたプラットフォームを提供することで、産業の持続可能な発展と、誰もが公平にモノ・サービスを享受できる豊かな社会の実現に貢献します。

図2 2030年のロジスティクスの姿
図3 ロジスティクスプラットフォーム

参考文献

執筆者プロフィール

梅田 陽介
交通・物流ソリューション事業部
主任
武藤 裕美
交通・物流ソリューション事業部
部長

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