Japan
サイト内の現在位置を表示しています。
(番外コラム)設計標準化へのアプローチ(前編)
-
設計標準化の進め方
-
製品アーキテクチャ別のアプローチ使い分け
-
まとめ
製造業を取り巻く外部環境は厳しさを増しており、その対応のために標準化による効率化や安定性確保がこれまで以上に重要となっていると考えられます。
標準化と聞くと「設計の自由度を制約する」「設計者の創造性を奪う」といった懸念を持たれる場合があります。しかし実際には、標準化の目的は設計者の思考を型にはめることではなく、知識の蓄積・共有を通じて設計の質を底上げすると共に、創造的な活動(各設計担当者に求められる個別の検討等)に集中出来る環境を作ることにあると筆者は考えています。
- 本稿では、設計標準化の定義や必要性を確認しつつ、標準化へのアプローチを
- 「ナレッジ継承」
「手法標準化」 - 「部品・ユニット共通化」
- 「製品コンセプト共通化」
- 「設計思想標準化」
- の5つの観点から整理します。
<執筆者>
NEC マネジメントコンサルティング統括部
ECMグループ マネージャー 中島悠佑
四輪乗用車のボディー設計、車両系建設機械のフレーム設計、機能性樹脂材料の用途開発等を経験した後、現職にて大手製造業のお客様の研究開発領域における業務革新支援(主に改革構想企画)に従事。

2026/3/16
1.設計標準化の定義と必要性
- 設計標準化について具体的に述べる前に、その定義と必要性について考えてみたいと思います。
- (1) 定義
- 日本産業規格(JIS)では、「標準化」を以下のように定義しています。
- 「実在する問題又は起こる可能性がある問題に関して、与えられた状況において最適な秩序を獲得する目的で、共通に、かつ、繰り返して使用するための規定を確立する活動」[1]
- なお、ここでの各語は設計に当てはめると、以下のようになると考えられます。
- ●実在する問題 = 設計ごとのバラつき、コスト高、品質不良、納期遅延など
- ●共通に、かつ、繰り返して使用するための規定 = 標準部品、設計基準書など
- [1] JIS Z 8002:2006
- (2) 必要性
設計標準化は、外部環境の変化により、その必要性が増していると考えられます。具体的には「物価上昇」、「労働力不足」、「製品の複雑化」といった外部環境の変化であり、これらに対応していく必要性があります。
1つ目の「物価上昇」について、近年の原材料費やエネルギーコストの高騰が製造業の収益を圧迫しています。2024年版ものづくり白書においても、多くの企業が価格転嫁を進めているものの、コスト上昇分を完全には吸収しきれていない現状が報告されています[2]。市場競争や顧客との関係性を鑑みると、売価への転嫁には限界があるため、物価上昇局面において確実に利益を確保するには、価格転嫁の努力と並行して、設計標準化によるコスト構造の改革が重要となります。ここで言うコスト低減とは、標準部品の活用による製品原価の低減だけでなく、設計の手戻り削減や流用設計による開発コストの低減も意味しており、これらは企業の利益体質強化に繋がります。
2つ目の「労働力不足」について、生産年齢人口の減少に伴い、製造業における人材不足は深刻さを増しています。同白書によれば、製造業の就業者数は減少傾向にあり、特に若年層の確保が困難な状況において、人手不足は経営上の最大のリスク要因の一つとなっています[3]。限られた人的リソースで成果を出し続けるためには、設計業務の効率化が急務です。設計標準化によって定型的な判断や処理をルール化すると共に、個人の経験則に依存していたノウハウを形式知化することで、特定の熟練者や個人に過度に依存することなく、安定した設計品質とアウトプットを維持できる体制を構築する必要があります。
3つ目の「製品の複雑化」について、顧客要求の多様化や製品の高度化(IoT化、電動化など)に伴い、製品システム全体が極めて複雑になっています。2020年版ものづくり白書でも指摘されている通り、複雑化する製品開発においてエンジニアリングチェーン(設計・開発工程)の高度化・効率化は避けて通れない課題です[4]。すり合わせ主体で製品全体を開発しようとすると、開発工数が増大し、品質確保が難しくなります。それに対処するには、製品全体のアーキテクチャを設計した上で、構成部位を機能単位のモジュール(ユニット)として定義し、標準化していくことが有効です。各モジュールを独立して品質担保が可能なASSYとして標準化することが出来れば、完成品が複雑であったとしても効率的に品質を作り込むことが可能となります。
[2] 経済産業省『2024年版ものづくり白書』19頁, 2024.
[3] 経済産業省『2024年版ものづくり白書』40,41頁, 2024.
[4] 経済産業省『2020年版ものづくり白書』73,74頁, 2020.
2.5つのアプローチ
設計標準化に向けては様々なアプローチが考えられますが、ここでは下図のように概念/実体とモノ/コトの2軸の観点から、5つのアプローチについて考えます。

拡大
- ①製品コンセプト共通化
- 第一に、製品群に共通する「コンセプト」を定義することが重要です。
- 例えば「高出力」「低燃費」「安全」といった基本コンセプトを製品横断で共有することで、それらの製品について一貫した顧客価値を目指して開発を進めることが可能となります。
- 筆者が自動車メーカーに在籍していた際、徹底した軽量化をコンセプトとした一連の製品設計に携わりましたが、明確な共通コンセプトがあり、同じ顧客提供価値を目指して複数製品を開発出来ていた為、効率的に開発業務を進められたことが強く印象に残っています。
- ②設計思想標準化
- 次に、「設計思想」の標準化に触れます。これは、設計者が日々の業務で拠り所とする「考え方」「判断基準」を体系化することであると言えます。
- 具体的には、強度や安全率の考え方、モジュール化の方針、メンテナンス性を考慮した構造判断など、設計者の考え方や判断基準を明文化して組織の共通言語とします。これにより、属人性を排除し、設計品質を一定水準以上に保つことが可能になります。
- ③ナレッジ継承
- ここでのナレッジ継承とは属人的な暗黙知を形式知化し、組織全体で共有する取り組みを指します。
- 例えば、設計レビューで繰り返し指摘される不具合傾向や、熟練者が暗黙的に考慮している設計判断の基準をルール化することが挙げられます。PLMシステムを活用し、設計仕様やCAE解析データを製品構成と関連付けて体系的に蓄積することが、ナレッジ継承の基盤となり得ます。

拡大
- なお、ナレッジの継承を含む技術継承問題に対するAI活用については、下記リンク先にインタビュー記事を用意していますので、詳細はそちらをご参照ください。
- AI活用で日本の製造業に迫り来る「技術継承問題」を克服!
- ④ 手法標準化
- ここでの手法標準化とは設計プロセスの進め方やツールの使い方を統一することを指しています。
- 例えば、3D-CADモデリングの手順を統一することで、関連製品への3Dデータ流用の容易性が向上します。さらに設計レビューの実施方法を標準化することで、部門横断での関係者間の意思疎通もスムーズになります。
- ⑤ 部品・ユニット共通化
- 複数製品に共通の部品やユニットを適用することで、表1に示すとおり調達コスト削減や在庫削減が可能となります。
- 表1 部品・ユニット共通化の効果
-
項目 効果 調達コスト 発注ロット拡大による単価低減 在庫管理 共通在庫による管理効率化 品質 実績ある部品・ユニットの再利用による信頼性向上 開発リードタイム 新規設計の削減によるリードタイム短縮
(番外コラム)設計標準化へのアプローチ
-
設計標準化の進め方
-
製品アーキテクチャ別のアプローチ使い分け
-
まとめ
コンサルティングサービス【製品開発】
最先端のデジタル技術に対する知見と、自社および製造業のお客様のものづくり革新の実践経験をベースに、製品開発プロセスの革新をご支援いたします。
詳細はこちら
