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飲食店の運転資金とは?種類・計算式から調達方法まで徹底解説

飲食店を経営している方の中には、「売上は好調なのに資金繰りが厳しい」「突発的な出費で資金不足に陥ってしまった」など、運転資金の管理に苦労されている方も多いのではないでしょうか。
運転資金は飲食店の日々の営業活動を支える命綱であり、その適切な管理は店舗の存続に直結する重要な要素です。しかし、日々の忙しさに追われるうちに資金管理がおろそかになり、気づいたときには資金ショート寸前になってしまうという事態も珍しくありません。
本記事では、飲食店経営者向けに運転資金の基本概念から、具体的な計算方法、資金不足時の対処法、効果的な調達方法まで総合的に解説します。経常運転資金から季節運転資金まで、飲食業特有の資金管理のポイントもわかりやすく説明しています。
最後まで読むことで、運転資金の適切な管理方法を理解し、安定した飲食店経営を実現するための実践的なノウハウを身につけることができます。資金繰りの悩みを解消し、持続可能な経営体制を構築したい方は、ぜひご一読ください。
また、POSシステムはもちろん、モバイル・セルフオーダーシステム、テイクアウトやデリバリー、ポイント管理、予約システムなど、周辺サービスとの連携を含めた飲食店のDX推進に関するご相談は下記よりお問い合わせください。
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運転資金とは

飲食店を経営する上で欠かせないのが「運転資金」です。これは店舗の日々の営業活動を維持するために必要な資金のことを指します。
食材の仕入れからスタッフの給与支払い、家賃や光熱費まで、事業を円滑に運営するための資金全般がこれに該当します。
適切な運転資金の確保ができないと、黒字経営であっても資金ショートを起こす「黒字倒産」に陥るリスクがあるため、飲食店経営者にとって最重要の管理項目といえるでしょう。
運転資金の内訳
運転資金は大きく「変動費」と「固定費」の2種類に分けられます。
変動費は売上高に連動して増減する費用で、食材や飲料の仕入れ費用、パート・アルバイトの人件費などが該当します。売上が上がれば増え、下がれば減少するのが特徴です。
一方、固定費は売上の増減に関わらず一定額が発生する費用です。店舗の家賃、正社員の給与、設備のリース料、保険料などがこれにあたります。売上がゼロであっても支払い義務が生じるため、資金繰りの安定性を考える上で重要な要素となります。
飲食店経営においては、変動費と固定費のバランスを適切に保つことが経営の安定につながります。固定費の比率が高すぎると、売上減少時に経営が圧迫されやすくなるため、特に創業初期は固定費を抑える工夫が必要でしょう。
飲食店の主な運転資金
飲食店における主な運転資金として、まず挙げられるのが食材や飲料の仕入れ費用です。これは売上原価に直結し、メニュー構成や仕入れ先の選定によって大きく変動します。次に重要なのがスタッフの人件費で、正社員の給与はもちろん、パート・アルバイトの時給や社会保険料などもここに含まれます。
店舗の家賃や光熱費も欠かせない運転資金の一部であり、立地条件や店舗サイズによってコストが変わってきます。また、広告宣伝費や販促費も集客に直結する重要な運転資金といえるでしょう。
これらの費用は「FLRコスト」(Food=食材費、Labor=人件費、Rent=家賃)と呼ばれることもあり、売上に占める割合として食材費30%以内、人件費20~30%、家賃10~20%が一般的な目安とされています。さらに、トータルで70%以下に抑えることで、健全な利益率を確保できるといわれています。
食材費や人件費についてはこちらの記事でも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
飲食店で大切なFLとは?概要から適正化のポイントまで詳しく解説
設備資金との違い
運転資金と混同されがちなのが「設備資金」です。これは事業に必要な機械や設備など、資産価値のあるものを購入するための資金を指します。両者の違いを理解することで、より効果的な資金計画を立てられるようになります。
設備資金は厨房機器や冷蔵庫、テーブル・椅子などの家具、店舗内装工事費、看板製作費など、長期的に使用する資産への投資に充てられます。これらは一度購入すれば数年間は使用できるため、毎月の支出にはなりません。また、会計上は「資産」として計上され、減価償却の対象となります。
対照的に運転資金は日々の事業運営に必要な資金で、繰り返し発生する費用に充てられます。金融機関から融資を受ける際にも、運転資金と設備資金は区別して申請することが一般的です。また、設備資金の使い道を運転資金に流用することは認められていないため、明確に区分して管理する必要があるでしょう。
運転資金の種類

飲食店の経営サイクルや成長段階によって必要となる運転資金は変化します。そのため、運転資金は使用目的やタイミングに応じて次のような種類に分類されます。
- 経常運転資金
- 増加運転資金
- 減少運転資金
- 季節運転資金
- その他運転資金
それぞれの特性を理解し、適切に管理することで、資金繰りの安定化につながるでしょう。ここでは、これらについて詳しく解説していきます。
経常運転資金
経常運転資金とは、飲食店が日常的な営業活動を維持するために恒常的に必要となる資金のことを指します。
具体的には、食材や飲料の仕入れ費用、スタッフの給与、店舗の家賃、水道光熱費などが該当します。これらは店舗運営の基盤となる費用であり、継続的に発生するという特徴があります。
一般的に「運転資金」と言えば、この経常運転資金を指すことが多いでしょう。店舗の規模や業態によって必要額は異なりますが、適切な金額を確保しておかないと日々の営業に支障をきたす恐れがあります。
この経常運転資金を常に把握しておくことで、経営の安定度を測る指標として活用できるでしょう。経常運転資金が不足すると、仕入れができなくなったり、スタッフの給与が支払えなくなったりと、店舗の存続に関わる問題に発展する可能性があります。
増加運転資金
増加運転資金とは、店舗の売上が拡大していく過程で追加的に必要となる資金のことです。
たとえば、客数の増加に伴って食材の仕入れ量を増やしたり、営業時間を延長するためにアルバイトスタッフを増員したりする際に発生します。売上増加は喜ばしいことですが、それに伴って運転資金も増加するという点に注意が必要です。
売上が急成長している店舗ほど増加運転資金の確保には注意するべきでしょう。これは売上の入金と仕入れや人件費の支払いのタイミングにずれが生じるためです。特に掛け取引の場合、売上が立っても実際の入金までに時間がかかるため、その間の仕入れや人件費の支出をカバーする資金が必要となります。
増加運転資金が不足すると利益が出ているにも関わらず、資金繰りが追いつかずに経営破綻して「黒字倒産」になってしまいます。そのため、成長期にある飲食店は特に増加運転資金の確保を意識した資金計画を立てることが重要といえるでしょう。
減少運転資金
減少運転資金とは、売上が減少している際に固定費の支払いなどをカバーするために必要となる資金です。
景気の変動やシーズンオフなど、さまざまな要因で売上が落ち込む局面では、経常的な運転資金だけでは足りなくなることがあります。そうした状況で事業を継続するためのいわば「つなぎ資金」として機能します。
たとえば、これまで月商500万円で推移していた店舗が300万円に落ち込んだ場合、家賃や正社員の給与といった固定費は変わらないため、差額分を補填する資金が必要になります。また、好調だった時期に仕入れた在庫の支払いが残っている場合も、その支払いに充てる資金が求められるでしょう。
減少運転資金は一時的な対応策である点が重要です。長期間にわたって減少運転資金に依存していると、最終的には資金が枯渇して経営破綻につながります。
そのため、売上減少の原因分析と対策立案を並行して進めながら、できるだけ早期に経営の立て直しを図ることが求められます。中長期的には、固定費の見直しや新規顧客獲得など、根本的な経営改善策を講じる必要があるでしょう。
季節運転資金
季節運転資金とは、特定の時期や季節に一時的に必要となる運転資金のことです。
飲食業界では、クリスマスや年末年始などの繁忙期前の仕入れ増加や、夏季・冬季のボーナス支給時期における追加的な人件費などがこれに該当します。これらは毎年決まった時期に発生するため、事前に予測して準備することが可能です。
たとえば、居酒屋であれば12月の忘年会シーズンは売上が大幅に増加しますが、その対応のための食材仕入れや臨時スタッフの確保には先行投資が必要です。また、夏場に売上が伸びるビアガーデンや、冬にホットドリンクの需要が高まるカフェなど、業態によって繁忙期は異なります。
季節運転資金の特徴は、その必要性を予測できる点にあります。過去のデータを分析し、いつ頃にどれくらいの追加資金が必要になるかを把握しておくことで、計画的な資金準備が可能になります。金融機関に季節資金として融資を申し込む際も、過去の実績データがあれば審査がスムーズに進むでしょう。
これらは定期的に発生する費用であるため、年間の資金計画に組み込んでおくことが経営の安定につながります。
その他運転資金
その他運転資金には、前述の分類に当てはまらない特殊な状況で必要となる資金が含まれます。たとえば、取引先との契約条件が変更されたり、臨時のイベントを開催したりする際に発生する一時的な資金需要などがこれに該当します。予測不能な事態に対応するための「予備資金」的な性格を持っています。
このような不定期かつ突発的な資金需要に備えるには、常に一定の現金を手元に置いておくことが重要です。業界の慣行や取引先の状況変化にも敏感になり、事前に情報収集することで、ある程度の予測と対策が可能になります。また、緊急時に活用できる融資枠を金融機関と事前に設定しておくことも、リスク管理の一環として有効でしょう。
予測困難な資金需要に対しても柔軟に対応できる体制を整えておくことが、経営の安定性を高めるカギとなります。
運転資金の計算方法と目安

飲食店の経営において、必要な運転資金を正確に把握することは経営の安定化のために非常に重要です。
具体的な数字で運転資金を捉えることで、資金不足に陥るリスクを未然に防ぐことが可能です。適切な計算方法を用いて自店の必要資金を算出し、それに基づいた資金計画を立てることが重要でしょう。
ここでは、運転資金の計算式と実務的な目安について解説します。
運転資金の基本的な計算式
運転資金を算出する方法は、主に「在高方式」と「回転期間方式」の2種類があります。より一般的な在高方式では、次の計算式を用います。
運転資金 = 売上債権 + 棚卸資産 - 仕入債務
売上債権とは、商品やサービスを提供したものの、まだ代金を回収できていない売掛金などを指します。飲食店であれば、クレジットカード決済の売上金や宴会予約の未入金分がこれに当たります。棚卸資産は、仕入れた食材や酒類などの在庫のことで、まだ販売に至っていない商品価値を表します。
一方、仕入債務は食材や飲料の仕入れ代金で、まだ支払いを済ませていない買掛金などが該当します。これらの要素を計算式に当てはめることで、事業を円滑に運営するために必要な資金がどれくらいかを把握できるでしょう。
たとえば、売上債権が300万円、棚卸資産が200万円、仕入債務が100万円の飲食店の場合、必要な運転資金は「300万円 + 200万円 - 100万円 = 400万円」となります。この金額が運転資金の理論値であり、これを下回ると資金繰りに支障をきたす可能性が高くなります。
運転資金の目安
飲食店に必要な運転資金の目安は一般的に「月商の3~6か月分」とされています。たとえば、月の売上が200万円の店舗であれば、600万円から1,200万円程度の運転資金を確保しておくことが望ましいでしょう。ただし、この数字はあくまで目安であり、業態や立地条件によって大きく異なります。
居酒屋やレストランなど、食材の回転が早く、現金決済が中心の業態では、比較的少ない運転資金でも回していくことが可能です。一方、高級料亭など、季節性が強く、掛け取引の多い業態では、より多くの運転資金が必要となります。
また、開業初期は特に資金繰りが厳しくなる傾向があるため、余裕を持った資金計画が重要です。認知度が低く集客に時間がかかる場合や、開業後の追加工事が発生する可能性も考慮し、当初の計画より多めの運転資金を確保しておくことをおすすめします。
実際の必要額を把握するには、前述の計算式を用いて自店の実情に合わせた数値を算出することが最も確実です。過去の実績データがある場合は、それを基に季節変動も加味した資金計画を立てるとよいでしょう。利益が出始めたら、その一部を運転資金として積み立てていく習慣も、長期的な経営安定につながります。
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運転資金が足りないときの対処法

飲食店経営において、運転資金の不足は経営危機に直結する重大な問題です。
資金繰りが悪化すると、仕入れができない、給与が払えない、家賃の支払いが滞るなど、店舗運営に支障をきたします。しかし、適切な対応策を講じることで危機を乗り越えることは可能です。ここでは、運転資金不足に陥った際の具体的な対処法を紹介します。
早期に手を打つことで、店舗の存続と将来の安定経営につながるため、資金繰りに不安を感じ始めたら、すぐに行動に移しましょう。
キャッシュフローの可視化と管理
運転資金不足に対処する第一歩は、お金の流れを正確に把握することです。
これには「資金繰り表」の作成がおすすめです。資金繰り表とは、日々の入金と出金を記録する表で、これによりお金の流れを可視化できます。表計算ソフトやクラウド会計ソフトを活用すれば、比較的簡単に作成できるでしょう。
資金繰り表を作成する際は、まず過去3か月分のデータを整理します。売上金の入金日、仕入れ代金や給与の支払日など、実際の入出金のタイミングを記録していきます。さらに、クレジットカード売上の入金サイクルも確認しておくとよいでしょう。これらのデータを基に、今後3か月の資金の動きを予測します。
この作業により、いつ・どれくらいの資金が不足するかが明確になり、対策を講じるタイミングが見えてきます。たとえば、「来月20日頃に100万円の資金が足りなくなる」といった具体的な予測ができれば、それに合わせた対策を打ちやすくなるでしょう。
また、資金繰り表は一度作成したら終わりではなく、定期的に更新して常に最新の状況を把握することが重要です。週次や月次で見直しを行い、予測と実績のズレも分析しましょう。キャッシュフローを可視化することで、経営判断の質を高め、危機を未然に防ぐことができます。
入金の早期化と支払いの最適化
資金繰り改善の基本原則は「入金は早く、支払いは遅く」です。この原則に沿って、店舗の資金サイクルを最適化しましょう。
まず、入金の早期化に向けた取り組みとして、キャッシュレス決済サービスの見直しが効果的です。決済会社によって入金サイクルは異なり、最短で翌営業日入金のサービスも存在します。
一方で、支払いの最適化も重要です。仕入先との交渉により、支払い期間の延長が可能か検討してみましょう。長期的な取引関係を重視している仕入先であれば、一時的な対応として応じてくれる可能性があります。
また、クレジットカードでの仕入れ支払いも選択肢の一つです。カード決済であれば、実際の引き落としまで1〜2か月の猶予ができるため、その間の資金繰りが改善されます。ただし、カード会社の手数料に注意が必要です。
これらの施策を組み合わせることで、日々の資金繰りを大幅に改善できるでしょう。
在庫と仕入れの最適化
運転資金不足を解消するもう一つの重要な対策が、在庫と仕入れの最適化です。
飲食店の場合、食材在庫は鮮度の関係から長期保管が難しく、また仕入れ過ぎは廃棄ロスにつながります。そのため、適正在庫の維持は利益率向上と資金効率の両面で重要です。
まず、メニュー構成を見直し、原価率の高いメニューや回転率の悪いメニューを整理することで、仕入れの効率化を図りましょう。次に、POSシステムを活用して売上データを分析し、曜日別・時間帯別の需要予測を立てることが有効です。これにより、必要な食材を必要な分だけ仕入れる「ジャスト・イン・タイム」の発注が可能になります。
また、食材ロスの削減も重要なポイントです。前日の残り食材を活用した日替わりメニューの考案や、食材の保存方法の工夫により、廃棄量を減らすことが可能です。これらの取り組みにより、仕入れコストを抑えつつ、必要な運転資金の総額も削減できるでしょう。
在庫と仕入れの最適化は、短期的な資金繰り改善だけでなく、長期的な収益力向上にもつながる重要な経営戦略といえます。
飲食店における在庫管理のポイントについては、こちらの記事でも詳しく解説していますので、ご一読ください。
飲食店の在庫管理とは?流れから抑えておくべきポイント、方法まで詳しく解説
固定費の見直しと削減
運転資金不足を根本的に解決するためには、固定費の見直しが欠かせません。固定費は、売上の増減に関わらず一定額がかかるため、この削減により資金繰りの安定化を図れます。まずは、現在の固定費の全体像を把握するところから始めましょう。
人件費は固定費の中でも大きな割合を占めます。シフト管理の効率化やマルチタスク化によって、少ない人数で店舗運営できる体制を構築することが重要です。たとえば、繁忙時間帯に人員を集中させたり、閑散時間帯にはセルフサービス方式を取り入れたりするなど、工夫できるところはたくさんあります。
次に注目すべきは家賃です。立地条件にこだわりすぎると家賃負担が重くなるため、少し離れた場所への移転も選択肢として検討する価値があるでしょう。また、契約更新時に家賃交渉を行うことも有効です。経済状況や周辺相場を踏まえて、オーナーと交渉することで家賃の引き下げが実現するケースもあります。
その他、光熱費、通信費、広告宣伝費なども見直しの対象です。LED照明への切り替えや節水設備の導入、不要なサブスクリプションサービスの解約、費用対効果の低い広告の中止など、細かい部分を見直すことで、総額としては大きな削減効果が得られます。
固定費の削減は即効性があり、長期的にも資金繰りを改善する効果が持続するため、定期的な見直しを習慣化することが理想的です。ただし、顧客満足度に直結する要素もあるため、単純なコスト削減だけでなく、サービスの質とのバランスを考慮した判断が求められます。
返済計画の見直し
既存の借入金がある場合、返済計画の見直しも資金繰り改善の重要な手段です。返済額の負担が大きく、日々の運転資金を圧迫している状況であれば、金融機関と交渉してリスケジュール(返済条件の変更)を検討しましょう。
金融機関と交渉する際は、現在の経営状況や資金繰りの実態を正直に伝え、改善計画も併せて提示することが重要です。「単に返済を先延ばししたい」という姿勢ではなく、「経営改善のために一時的な支援が必要」という建設的な提案をすることで、金融機関の理解を得やすくなります。
返済計画の見直しは一時的な対応と捉えがちですが、資金繰りに余裕が生まれることで経営判断の幅が広がり、結果的に店舗の再建につながることもあります。ただし、返済を先延ばしにするだけでは根本的な解決にならないため、併せて売上向上や経費削減といった本質的な経営改善にも取り組む姿勢が大切です。
運転資金の調達方法

飲食店経営において運転資金が不足した場合、さまざまな方法で資金を調達することが可能です。
- 公的金融機関からの融資
- 民間金融機関からの融資
- ビジネスローンの活用
- 補助金・助成金の活用
- その他の資金調達方法
- 親族・知人からの借入
各調達方法にはそれぞれメリット・デメリットがあるため、自店の状況に合わせて最適な選択をすることが重要です。
ここでは、飲食店経営者が活用できる主な運転資金の調達方法を紹介します。
公的金融機関からの融資
公的金融機関からの融資は、低金利かつ長期の返済期間で運転資金を調達できる点が最大のメリットです。特に日本政策金融公庫は、飲食店の開業資金や運転資金の調達先として人気があります。政府系金融機関のため、経済政策に基づくさまざまな融資制度が用意されており、民間銀行より条件が優遇されていることが多いでしょう。
日本政策金融公庫の「小規模事業者向け融資(マル経融資)」は、商工会議所などの推薦を受けることで無担保・無保証人で最大2,000万円の融資を受けられる制度です。また、「新規開業・スタートアップ支援資金」は、創業間もない飲食店でも利用可能な制度で、運転資金としては最大4,800万円まで融資を受けることができます。
参考元:マル経融資(小規模事業者経営改善資金)|日本政策金融公庫
参考元:新規開業・スタートアップ支援資金|日本政策金融公庫
公的融資は審査のハードルがやや高いものの、条件が良いため、まずはこの選択肢を検討することをおすすめします。
民間金融機関からの融資
民間金融機関からの融資は、都市銀行、地方銀行、信用金庫、信用組合などから受けることができます。公的金融機関と比較して審査の柔軟性があり、関係構築ができていれば迅速な対応も期待できるのが特徴です。飲食店の場合、地域に根差した営業を行う信用金庫や信用組合の方が、大手銀行よりも相談しやすい傾向があります。
銀行融資の種類としては、一般的な事業性融資のほか、不動産担保ローンや信用保証協会の保証付き融資などがあります。事業性融資は、飲食店の売上や利益状況に基づいて融資額が決定されます。一方、不動産担保ローンは、店舗や自宅などの不動産を担保に入れることで、より大きな融資額と低金利での借入が可能になります。
融資を受ける際のポイントは、取引銀行との良好な関係構築です。普段から定期的に経営状況を報告し、信頼関係を築いておくことで、いざというときに融資を受けやすくなります。また、複数の金融機関と取引することで、リスク分散と融資条件の比較検討が可能になるため、メインバンク以外にもサブバンクを持つことも検討しましょう。
ビジネスローンの活用
ビジネスローンは、銀行融資よりも審査基準が柔軟で、申込から融資実行までのスピードが速いのが最大の特徴です。ノンバンクや消費者金融会社が提供するビジネスローンは、最短即日での資金調達が可能なケースもあり、緊急の資金需要に対応できます。
飲食店が活用できるビジネスローンには、事業者カードローンや小口事業資金などがあります。事業者カードローンは、審査に通れば一定の限度額内で必要な時に必要な金額だけ借入できる仕組みで、繁閑の差が大きい飲食業に適しています。小口事業資金は、比較的少額から申込可能で、簡易な審査で融資を受けられるのが特徴です。
ビジネスローンのメリットは手続きの簡便さにあります。必要書類は通常、身分証明書や確定申告書、事業計画書程度で済むことが多く、来店不要で郵送やWebで完結する場合もあります。また、創業間もない店舗や決算内容に不安がある場合でも、申込者の個人信用情報が良好であれば融資を受けられる可能性があります。
ただし、これらの利便性と引き換えに金利は銀行融資より高く設定されているのが一般的です。そのため、長期間の借入には向かず、短期的な資金需要や他の融資が下りるまでのつなぎ資金として活用するのが賢明でしょう。返済計画をしっかり立てた上で利用することが重要です。
補助金・助成金の活用
補助金や助成金は返済不要の資金であり、適切に活用すれば飲食店の運転資金として大きな助けとなります。国や自治体、経済団体などが実施しているさまざまな支援制度があり、飲食店向けのものも数多く存在しています。
飲食店が活用できる主な補助金・助成金には、中小企業庁の「小規模事業者持続化補助金」や、自治体独自の飲食店支援制度などがあります。これらは最大で数百万円の支援が受けられるケースもあり、資金繰り改善に大きく寄与します。
参考元:商工会議所地区 小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>
その他、DX化を推進したい中小企業・小規模事業者を支援する「IT導入補助金」は、業務の効率化や生産性向上に役立つITツールの導入費用の一部が補助される補助金となり、2025年時の制度では最大3/4の費用が補助されます。
参考元:トップページ | IT導入補助金2025
補助金・助成金を申請する際のポイントは、募集要項をよく読み、自店の事業内容や目的と合致しているかを確認することです。また、申請書類の作成には専門知識が必要な場合もあるため、商工会議所や中小企業診断士などの専門家に相談するのも一つの方法です。
多くの補助金は「先に支出して後から補助」という仕組みのため、一時的な資金は自己負担で準備する必要がある点に注意しましょう。
補助金についてはこちらの記事でも詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
飲食店が申請できる補助金とは?主な補助金の種類から申請手順、活用方法まで解説
その他の資金調達方法
近年では従来の融資や補助金以外にも、さまざまな資金調達方法が飲食店に活用されています。その代表例がクラウドファンディングとファクタリングです。これらの新しい方法は、従来の金融機関からの融資が難しい場合でも、資金調達の可能性を広げてくれます。
クラウドファンディングは、インターネットを通じて不特定多数の人から少額ずつ資金を集める方法です。飲食店の場合、出資者に対する返礼として食事券やオリジナルメニューの提供などを設定すると成功しやすい傾向があります。また、資金調達と同時に店舗の宣伝効果も期待できるため、新規顧客獲得にもつながるでしょう。
一方、ファクタリングは売掛金を早期に現金化する方法です。飲食店がケータリングやイベント出店などで発生した売掛金を、ファクタリング会社に売却することで、入金を待たずに即座に資金化できます。手数料は発生するものの、審査基準が融資より緩やかで、最短即日での資金調達が可能な点が大きなメリットです。特に、一時的な資金需要がある場合に有効な手段といえるでしょう。
親族・知人からの借入
親族や知人からの借入は、正式な融資手続きなしに資金調達できる方法として、飲食店経営者の間でも利用されています。特に創業時や緊急の資金需要がある場合に、即座に対応できる柔軟性が最大のメリットです。
この方法のメリットは、金融機関のような厳格な審査がなく、柔軟な条件設定が可能な点にあります。たとえば、無利子や低利子での借入、返済期間の柔軟な設定、一時的な返済猶予なども相談しやすいでしょう。また、金融機関からの融資を受けるための信用実績がない創業初期でも利用できる点も大きな利点です。
ただし、親族や知人からの借入には注意点もあります。最も重要なのは、金銭トラブルが人間関係に悪影響を及ぼす可能性があることです。これを避けるためには、借入の際に必ず正式な借用書を作成し、金額、返済期間、返済方法、利息の有無などを明確にしておくべきでしょう。
運転資金を適切に管理して持続可能な飲食店経営を実現しましょう

飲食店経営の成功には、適切な運転資金の管理が不可欠です。
経常運転資金、増加運転資金、季節運転資金など各種資金の特性を理解し、計画的な資金調達と効率的な資金運用を行うことが重要です。資金繰り表の作成によるキャッシュフローの可視化、在庫の最適化、固定費の見直しなど、日々の経営改善を継続的に実施しましょう。
NECが提供するサブスクリプション型POSシステム「NECモバイルPOS」は、売上データのリアルタイム分析、在庫管理の効率化、経費の可視化など、飲食店の運転資金管理に必要な機能を網羅しています。
NECモバイルPOSは、クラウドベースで複数店舗の一元管理も可能であり、季節変動の分析や需要予測にも活用できるため、計画的な運転資金確保をサポートします。
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