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Dive into Inclusion & Diversity Vol.4 『インクルーシブ・リーダーシップで一人ひとりの個性が輝くチームを創ろう!』

イベントレポート

開催日時:2022年4月19日&5月26日12:05-13:15
開催方式:オンライン開催

インクルージョン&ダイバーシティに関する知見のアップデートを目的に、数か月に1度のペースで開催している社内オンラインセミナー「Dive into Inclusion & Diversity」。今回は、NEC社会起業塾の卒塾生でもある株式会社An-Nahal(アンナハル)CEOの品川優さんをゲストに迎え、『インクルーシブ・リーダーシップで一人ひとりの個性が輝くチームを創ろう!』をテーマに開催しました。

多様なバックグラウンドや価値観を持つメンバーで構成されるチームは、イノベーションを生み出しやすく、大きな事業成長が期待できます。しかしながら、多様なメンバーが存在するだけでは組織のパフォーマンスを高めることは難しく、そこには “インクルーシブ・リーダーシップ” を実践する人材が必要不可欠です。

今回のセミナーでは、Juliet Bourke氏著書 “Which two heads are better than one?”で紹介されているインクルーシブリーダーシップの要素をベースに、インクルーシブ・リーダーシップを発揮するための6つの特性と具体的なアクションについて、品川さんから前編・後編の2回に分けてお話いただきました。本記事では、それらの要点をダイジェストで紹介します。

インクルーシブ・リーダーとは?

インクルーシブ・リーダーは、組織として多様性を受け入れ、他者の個性を尊重しながら、それをビジネスの成果につなげられる人材を指す。多様性だけでなく、それを生かす“インクルージョン”を兼ね備えたチームは、収益性が高まり、イノベーションを生み出し、意思決定のスピードが向上することが各種データからも明らかになっている。

特性①:「コミットメント」インクルージョン推進に向けて明言し行動する

「コミットメント」は、インクルーシブ・リーダーに求められるものの中で最も大切なもの。「多様性、インクルージョンを自身の優先課題とする」と宣言することが全ての始まり。その上で、現状が理想的な状態かを自身や周囲に投げかけ、周囲に対しても説明責任を果たしていく。宣言するだけでなく、アクションプランを明文化し、評価できるようにする。行動の一貫性=言動の一致が重要。

特性②:「謙虚と勇気」自己開示し、周囲にフィードバックを求め改善する余地を作る

自身の能力に対して「謙虚」であることが大切。間違いがあれば、間違っていたことを“明言”した上で、より良い方向に変えていく。リーダー自らがそうした姿勢を見せることで、チームメンバーは「自分も意見を言ってみよう」「自身にも貢献できる余地がありそう」という気持ちになれる。
自身が行動変容を起こした上で、チームメンバーに改善をリクエストする勇気を持つ。その際、自身がその要求をクリアできているかどうかが問われるが、クリアできていない場合は、その事実を隠さず共有する。できていないことや弱みを含めて相手に開示することをVulnerability(バルネラビリティ)という。リーダー自らがそうした行動をとることで、チームメンバーも、心の中にある不安や弱みを相談しやすくなる。

特性③:「バイアスの認識」バイアスがあることを前提とし、意思決定・評価に影響されない仕組みをつくる

個人には盲点があり、システムには欠陥があることを認める(=バイアスは、経験や思想の積み重ね。学習の結果でもあり、決して無くなることはない)。それを認識した上で、いかに自身の意思決定や評価にバイアスを反映させず、不平等を促さないかを考える。
加えて、システムやしくみを使って“公平さ”を担保することが重要。チームメンバーの評価、仕事のアサインメント、面接といった1つひとつの行動の中で、改善できることがないか考え、見直していく。

自身の発言・行動の判断に迷った時は「判断基準をまわりに説明できるか」をまず考えてみてほしい。加えて、バイアスに気づく方法としては以下のようなものがある。

  • 周囲からのフィードバックを得る
  • 「事実」に基づいているのか、それとも「思い込み」なのかを見極める
  • 相手に確認する など

特性④:「好奇心」聴くこと、他者から学ぶことを楽しむ

好奇心を効果的に発揮するためには、自分の心を開いて、相手の世界や価値観を理解しようとする姿勢や、不確定要素や先の不安に対して、耐性があることが求められる。
このような状態でいるためには、まず心身ともに安定していることが大事。その上でこれを実践するための⼤切なポイントとして以下が挙げられる。

  • アクティブリスニング:特に⾃分と違う考えや⽴場、背景を持つ⼈の⾔葉に⽿を傾ける
  • 質問⼒:相⼿の⽴場になって考えてみる。敬意を払う
  • エンパシ―(共感): 好奇⼼を持って質問をする
  • 柔軟性:変化は避けられないと理解し、順応していく

特性⑤:「文化的知性」誰でも学ぶことができる。ただし一般化してバイアスにしないことが大事

異なる文化に配慮して“必要に応じて”適応していくことが重要。全ての文化に適応することは不可能なので、今、目の前のチームの状況において、何をすべきか瞬時の決断力も求められる。そして、文化の違いによって個人を評価するのではなく、行動や知識、適応能力という個人のパフォーマンスに着目することが大事。

異文化理解に繋がる行動として以下のアクションを紹介したい。

  • 自分の認識が間違っていないか確認する(何か違う意見はないか相手に投げかける)
  • 日本式、NEC流を押し付けすぎない(新しいメンバーがそれぞれのバックグラウンドを生かせるような余地を残しておく)
  • 他の文化を学ぼうという姿勢を持ち続ける(相手から学び協業したいというスタンスを明確に伝える)

特性⑥:「コラボレーション」多様なチームを作るだけでなく、多様な視点を意思決定に反映させる

常にリーダーが介在するのではなく、一定の範囲内で、メンバー個人にも意思決定権や裁量を与えることがコラボレーションを生む為の前提となる。メンバー個人が背負いきれないようなターゲットを与えるのではなく、最終的にリーダーがサポート出来る範囲内で、メンバーに責任を持ってもらい経験を積んでもらう。あわせて、メンバー全員が議論に参加できているのかを確認できる仕組み/プロセスや、安心安全が担保され発言しやすい環境作りが必要。コラボレーションの成功か否かの判断基準は、多様性が意思決定に反映されているかどうかということ。

コラボレーションにおけるリーダーの役割は、以下の6つ。

  • 環境整備:誰もが意見を言え、決定を下す過程にその意見が反映されるようなプロセスの設計
  • 集合バイアスの排除:同調圧力や意見の偏りなどが起こらないような工夫
  • 心理的安全性:チーム内での対立や人間関係の悪化にならないよう、自由な意見が言えるよう心理的安全性の確保
  • 教育:トレーニングや対話を通じて仲間や部下への教育
  • 尊敬:チーム全員がお互いにリスペクトしあえる関係作り
  • メンバーの理解:チームメンバー個人の特性、直接的要因(教育・環境・価値観)と間接的要因(性別・民族)そして性格やコミュニケーションスタイルへの理解

Q&Aセッション

インクルーシブ・リーダーを目指す社員から沢山の質問が寄せられ、ゲストの品川さんは「今日から実践できるTips」を伝授くださいました。ここでは、その一部を抜粋してお届けします。

Q:自身のチームには、さまざまなバックグラウンドを持つ多様なメンバーがいる。新規事業のアイデアや業務の進め方などについて、彼らがもっと活発に発言できる環境を作りたい。アドバイスをいただければ。

品川さん:まずは「チームルールの明文化」から始めてみては。チームとしてフォローするほうが生産性高くできることと、自分流でOKなことを切り分けて明確にすることが大切。例えば「社内のグループチャットについては、読んだら必ずリアクションだけはする」、「正しい日本語よりも、時間をかけずにまずは書くことを推奨する」など。ルールを明確に伝え、ここまでは自分流、ここからはチームのやりかたに合わせる、と一人ひとりが明確に判断できるようになれば理想的。明文化しつつ、議論の余地を残しておけば、チーム内でのディスカッションも活発になり、良いルールが生まれてくるはず。

Q:私のチームには多様な技術者がおり、日本語のサポートが必要な外国人社員もいる。他のメンバーが日本語のサポートを負担に感じたり、不公平感を感じたりしないようにしたい。良い取り組みがあれば教えてほしい。

品川さん:自分自身も試行錯誤中だが、私の場合は「その外国人社員の方にしか出来ないことは何だろう?」と常に観察し、考えた上で、周囲・本人に「なぜチームに加わってもらっているのか」を明確に伝えるようにしている。「この人は、こういう理由でチームにとって必要な人材だから、サポートが必要」と周囲に納得してもらえるコミュニケーションが大切。それと同時に、外国人社員の方に、自身の得意分野や海外の市場動向などについての「勉強会」などを開いてもらうのも一つのアイデア。“その人だからできる貢献”を見える化できると良い。リーダーは、チームメンバーが「互いに上手くやっていこう」という気持ちになる“きっかけ”作りをぜひ心掛けて。あとは、一人ひとりをよく見て、負担に感じていそうな人がいたら、リーダー自らが丁寧に対話をすることも忘れずに。

Q: 今回学んだ要素を生かして、インクルーシブ・リーダーシップを、自分自身が実践できているかを振り返る為に有効な手段はあるか?(今回も学んだ6つの要素を、自分では、意識して取り組んでいるつもりでも、部下やチームメンバーから見ると、不十分かもしれない。何かお勧めの手法があったらお聞きしたい)

品川さん:まずは、チームメンバーや周囲の方に積極的にフィードバックをもらうこと。「自分は、意識してやっているけど、どうかな?」と、率直に聞いてみる。その際、「姿勢を示すだけでなく行動が大事」とお伝えしたように、チームの仕組みの変化に着目することも大切。フィードバックをもらうには相手が必要だが、振り返りは自分でもできるので、自己内省の機会をどうやって作るのかもポイントになってくる。私は、モーニングページという、とにかくメモを書いて自分の頭の中を整理するということを毎朝30分やっている。色々な経験を持つメンターと定期的にメンタリングの機会を持つようにするなど、振り返りのパートナーを作ることもお勧め。皆さんができそうなことからぜひ始めてみてほしい。

Q:これまでお会いした方の中で、もっともインクルーシブ・リーダーシップを大切にしている方は?

品川さん:私が2019年にフェローとして参加したJapanese Women’s Leadership Initiative (JWLI)の創設者であるフィッシュ・東光・厚子さん。米ボストンで、社会課題に取り組む日本人の女性リーダー育成に取り組んでいる方。信条は、インクルーシブ、ポジティブ、オープン。それについて、様々なシーンで何度も話をされている。相手の意見がいいなと思ったら、いつでも自身の考えを変えるオープンさがある。私のフィードバックに対し「優さんのアイデアは、とてもいいわね」と、ご自身の意見をすぐに変更されたことも。言動に一貫性があり、話しやすい雰囲気でありながらも強い決断力もあり、ロールモデルにさせていただいている。

参加者からの声

イベント後のアンケートでは「グループ⽬標の中にダイバーシティ推進を掲げ、⾃分⾃⾝も多様性の尊重を最優先にすることを宣⾔した」 「 (リーダーとして)ミーティングの際に“私の⾔うことが全て正解とは限らないので、何か思うことがあれば⾔って欲しい”と伝えるようになった」など、本イベントで得た学びを活かし、アクションを起こしたという声も多数あがってきました。一人ひとりの個性が輝くインクルーシブな組織づくりに向けて、実践的に一歩を踏み出す機会となりました。

登壇者プロフィール

2019年、企業のダイバーシティ&インクルージョン推進を人材・組織開発の面から支援する株式会社An-Nahalを設立。グローバル人材育成における制度研修の設計、新規事業開発、世界銀行や国際機関との教育関連プロジェクト、またNPOにて難民申請者の就労支援にも携わる。世界経済フォーラム(ダボス会議)任命のGlobal Shaperとして気候変動、ジェンダー、多文化共生、教育などのプロジェクトに取り組む。

  • ボストン拠点のフィッシュファミリー財団 Japanese Women’s Leadership Initiative(JWLI)2019年フェロー
  • 2020年度NEC社会起業塾生
    2021年神奈川県スタートアップアクセラレーションプログラム(KSAP)採択
  • 2021年日本財団主催ソーシャルチェンジメーカーズ第5期採択

品川 優  氏 株式会社An-Nahal CEO
品川 優 
株式会社An-Nahal CEO