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Tech Report
人生100年時代のウェルビーイング
~デジタルヘルス×金融の取り組み~
本記事の執筆者
氏名:下村 純一
所属:金融システム統括部 金融デジタルイノベーション技術開発グループ
役職:プロフェッショナル
1996年NEC入社。金融機関向けの基盤、アプリケーション開発に従事。2018年から金融デジタルイノベーション技術開発グループで先端技術調査、及びインシュアテック、ヘルスケア、高齢化に関する社会課題領域のAIや生体認証技術を活用したデジタルサービスの企画・開発を推進。
人生100年時代のウェルビーイング
人生100年時代を迎える日本の超高齢化社会において、ウェルビーイング(Well-being)の概念がますます注目されています。厚生労働省では、ウェルビーイングを「個人の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味する概念」と位置づけています(1)。
医療技術の進歩や生活環境の改善により平均寿命が延びる一方で、医療費や介護費の増大、認知症の増加、孤立した高齢者の生活支援など、人生100年時代を健康に安心して暮らしていくための課題は多岐にわたります。また、健康で安心した暮らしにつながる文化的な生活を送るためには資金が必要であり、その増加や維持、管理も重要です。高齢化が進む日本では、長期にわたる心身の維持・予防が必要であり、そのためには、適切な金融資産の形成と管理も必要となります。
そのため、今後はウェルビーイングの視点を取り入れた健康と資産管理の両面を支援する新しいソリューションが必要になると考えています。現在、NECはヘルスケア/ライフサイエンス事業を強化しております。また、新たなヘルスケアの取り組みとして、これまで培った顔認証技術を活用したソリューション開発や、NEC独自のAI技術を用いたデータ活用の研究開発を進めています。
NECはウェルビーイングの領域において、各業界との共創活動を通じて、より高い付加価値を創造することを目指しています。ヘルスケア・医療業界だけでなく、金融、製造、自動車などの各業界や自治体と協力することで、幅広い世代のニーズに応じた新たなウェルビーイングサービスの提供が可能になると考えています。
本記事では、ウェルビーイング領域への活用も進めているNECのヘルスケアソリューションや、金融機関との共創も視野に入れた新たなソリューション開発・研究開発の取り組みについてご紹介いたします。
NECのヘルスケアソリューションと、新たな取り組み
現在、NECはヘルスケア/ライフサイエンス事業を強化しており、「メディカルケア」と「ライフサイエンス」、「ライフスタイルサポート」の3つの事業領域にわけソリューションを提供しています[1]。
ウェルビーイングが関連する一人ひとりの日常生活に寄り添うがテーマのライフスタイルサポート領域では、血中タンパク質測定×データ解析・シミュレーション技術を駆使し、現在の体の状態と将来の疾病リスクを可視化するフォーネスビジュアス[2]や、歩行センサーで歩行分析データを解析する歩行センシング・ウェルネスソリューション[3]を提供しています。
フォーネスビジュアスにより、将来の疾病リスクを知り、心や体、経済的な負担がかかる前に対策を始めることができ、歩行センシング・ウェルネスソリューションにより、歩くだけで歩き方の特徴や脚・足の状態を見える化し健康管理に活用することができます。
また、NECでは各世代のニーズに合わせて、日常生活の中でウェルビーイングをサポートするための新たな取り組みを始めています。これまでに培った顔認証技術を活かし、利用者の負担が少ないバイタル状態の推定ソリューション[4]や、様々な健康データおよび利用者の外見や動作を解析するNEC独自のAI技術を用いて、脳卒中や心疾患、フレイル、認知症など多種多様な疾病の潜在的なリスクを推定する研究開発[5]を進めています。
顔認証技術を活かしたバイタル状態の推定ソリューションは、身近にあるスマートフォンのカメラを利用し、利用者の顔映像からバイタルや精神状態の変化を分析します。
現在進めている研究開発では、定期的なフォーネスビジュアス検査や日常の歩行センシング、バイタルデータの収集に加え、ライフログなど多様なデータを活用しています。このデータを使い、日常生活からリアルタイムで将来の健康状態や、将来必要となる生活費、医療/介護費といった支出を把握する研究を行っています。
NECが提供するソリューションや新たな取り組みを利用することで、生活者の日常生活において、歩行状態やバイタルデータを負担なく収集し、リアルタイムで将来の健康状態や、生活に必要となるお金の状況を把握することが可能になります。日常生活から健康を意識した行動変容を促し、ウェルビーイングの維持・向上を支援できると考えています。プライバシー保護とデータセキュリティ
ソリューションを提供するためには、利用者のデータを使用するため、プライバシー保護とデータセキュリティが極めて重要となります。NECは以前より、秘密計算や連合学習、匿名化、分散型IDといった、プライバシーと営業秘密の保護とデータ活用の両立を目指した技術の研究開発を進めています[6]。
こうしたセキュリティ対策により、利用者は安心してサービスを利用でき、信頼感が高まります。また、データ管理の透明性を確保し、ユーザーに適切な説明と同意を得ることも重要です。
特に、分散型アイデンティティ(DID)や検証可能な資格情報(VC)の導入は、ユーザー自身がデータの所有権と管理権を持つことで、どのデータが誰と共有されるかを制御する環境を作り出します。これにより、利用者が自分のデータがどのように扱われるかを理解し、同意することで、安心してデータを提供できる環境が整います。
まとめ
既にサービスを開始しているフォーネスビジュアスは、金融機関との共創を始めています。例えば、大和証券株式会社様では、同社のラップ口座を契約され、一定の条件を満たすお客様を対象に、フォーネスビジュアスを特典として付与する取り組みを開始されています [7][8]。歩行センシングインソール技術についても金融機関とのサービス化に向けた検討がはじまっています。
今後、NECのヘルスケアソリューション、研究技術、そして様々なデータを活用し、将来の健康状態や経済的安定を支援するために、ヘルスケアと金融を融合したサービス開発に取り組みたいと考えています。
これからの時代、ヘルスケアと金融の融合を進め高度なセキュリティ、プライバシーの保護を強化することで、人々が豊かで安心な生活を送れる一助になると考えています。技術の進化により、一人ひとりに最適化されたサービスが提供され、人々のウェルビーイングがさらに向上することが期待されます。
NECは、この好循環を促進し、社会全体の幸福度を高めるための持続的な取り組みを続けていきます。技術革新を通じて、健康で安心して生活できる社会の実現を目指しています。参考文献
(1) 厚生労働省:雇用政策研究会報告書 概要
https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000467968.pdf
関連リンク
[1] ヘルスケア・ライフサイエンス(Healthcare and Life Sciences): デジタルトランスフォーメーション | NEC
[2] フォーネスビジュアス|病気になる前にわかる(NECグループ発)
[3] NEC歩行センシングインソール A-RROWG: 歩行センシング・ウェルネスソリューション
[4] NECの「Face & Facial Parts Monitoring System」がCES 2024 Innovation Awardsを受賞
[5] 弘前大学とNEC、共同研究講座「ヘルスケアAIシステム学講座」を開設
[6] NEC、プライバシーテック協会に第1期賛助会員として加盟
[7] 大和証券グループとNECグループが連携し、ダイワのラップ口座契約者に将来の疾病リスク予測検査を提供
[8] 資産・健康寿命を延ばして「人生100年時代」を豊かにしたい ~大和証券グループとNECが新しいサービスを共創するまで~