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「第4次産業革命」の実現に不可欠となるビッグデータ活用とサイバーセキュリティ

Cyber3 Conference Tokyo 2016 レポート

デジタル技術を核とした「第4次産業革命」が胎動しつつある。これは急速に発展するビッグデータやAI(人工知能)を活用することで、日本の産業構造を大きく転換しようという取り組みだ。日本政府は第4次産業革命を「成長戦略第2ステージの鍵」と位置付け、産官学の連携により、新たな産業や市場の創出を目指している。こうした取り組みを実現するために、今後どのような対応策が求められるのか。この回答を探るべく開催されたのが「Cyber3 Conference Tokyo 2016」で実施されたパネルディスカッション「ビッグデータ社会を導くAIとセキュリティ(Connect Track4)」だ。当日は国内外の有識者が一堂に会し、活発な議論が行われた。

あらゆる事業分野で急速に活性化する「ビッグデータ」活用

パネリスト
PwCコンサルティング
テクノロジーコンサルティング
データサイエンティスト
シニアマネージャー
勝山 公雄 氏

現在、至るところで「デジタル革命」「デジタル革新」という言葉を耳にするようになった。その中核ともいえるのが「ビッグデータ」、すなわち多様かつ膨大なデータの活用だ。すでに国内外を問わず、多種多様なビッグデータ活用の先進事例が登場している。「例えば通信業における解約防止のマーケティングや製造業におけるサプライチェーンの最適化、機器の予兆保守などはその代表例です。そのほかにもタレントマネジメントなど、さまざまな場面で活用されてきており、その市場規模は2020年には2030億円に上るとも言われています」とPwCコンサルティングの勝山 公雄氏は指摘する。

パネリスト
GEデジタル
インダストリアル・インターネット推進本部
OTサイバーセキュリティ事業
開発部長
チョンチャナ・トリワイ 氏

製造業分野では、米ゼネラル・エレクトリック(GE)社の取り組みがよく知られている。同社では、顧客に供給する火力発電用ガスタービン装置に、物理的変化を感知するセンサーを100以上、視覚的変化を感知するセンサーを300以上実装。これらを使ってガスタービン稼働時の温度状況など、種々のデータを1基、1日当たり500ギガバイトという規模で収集。集められたビッグデータをクラウド上で解析し、装置の問題発生の未然予防に寄与する「予測メンテナンス」を実現している。

「顧客がガスタービンに求める最終的な価値は、『電力の安定供給』にほかなりません。世界中の顧客が利用する装置から収集されるビッグデータを解析し、そこで得られた知見をあらためて世界中の顧客に還元して、安定的な発電を確保できるよう支援しているわけです」とGEデジタルのチョンチャナ・トリワイ氏は説明する。つまりビッグデータの活用によって同社はガスタービンを販売するという「モノ売り」から、電力の安定供給という「コト売り」へとビジネスモデルを大きく変換したわけだ。

パネリスト
オリックス生命保険
常務執行役員兼IT本部長(CIO)
菅沼 重幸 氏

生命保険の分野でも、新しい取り組みが進んでいる。

「現在は、遺伝子解析を廉価に行えるようなサービスが市場に登場したことに加え、活動量や心拍、血圧、血糖値などのバイタルデータを測定・収集できるようなウェアラブルデバイスも普及してきています。こうしたサービスやデバイスから集めたビッグデータにより細分化された健康リスク分析を行い、その結果に基づいて保険料を決定したり、被保険者に早期治療を提言することで、顧客とWin-Winの関係を築くこともできるでしょう」とオリックス生命保険の菅沼重幸氏は紹介する。つまり、ビッグデータ活用が保険のビジネスそのものに大きな変化をもたらす可能性があるわけだ。

ただし、人間一人あたりに想定されるデータ量は、「ゲノムデータで6TB」「振舞いデータで1100TB」と膨大なデータとなる。それを人口60億人に換算した場合は、総データ量は10の24乗という途方もないデータとなる。それを人手で作業するのは物理的に不可能だ。そこで大きなカギを握るテクノロジーとなるのがAI(人工知能)だ。

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