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人工衛星の神経をつくる現代の名工

宇宙技術エンジニアNEC東芝スペースシステム 飯吉政春

~先端技術の裏にはNEC社員のイノベーションに対する熱い想いがみなぎっている~

写真:NEC東芝スペースシステム 飯吉政春

シリーズ「Nスピリッツ」は時代を切り拓く先端技術や最新システムの開発の裏側にある、NEC社員一人一人の物語である。

第10回の「Nスピリッツ」で紹介するのは人工衛星やロケットの機器に電力や信号を送る「ワイヤーハーネス」の製作に関わるNEC東芝スペースシステムの飯吉政春。一度、軌道に打ち上げてしまったら修理することができないという条件下での確実性を追求して、この道一筋に生きて来た卓越技能者である。
スキー場で有名な新潟県妙高高原出身の飯吉は、学校に届いた求人案内に記載された「宇宙開発事業」と「横浜」という言葉の響きに魅せられて、昭和48年に故郷を後にした。

「実は、寒くて雪深いところでの生活に飽きていたんですよね。でも、来てみたら、何も無いところでした」と、少し苦笑しながら当時を振り返る飯吉が上京してやって来たのは、緑豊かなNECの旧横浜事業場だった。

34年に亘り、飯吉はこの道一筋で宇宙開発機器の組立てに従事してきた。ロケットや人工衛星の組立てといえば、開発のたびに設計・仕様が異なる、いわゆるオーダーメイド。

その中で、ワイヤーハーネスは搭載される各機器を結び、信号や電力を供給するケーブルの束のことで、人間で言えば、血管や神経にあたる。宇宙という過酷な環境下での熱対策や宇宙線対策、そして軽量化といった様々な要求に加えて、ひとたび打ち上げられてしまえば交換や修理することができないワイヤーハーネスには究極の信頼性が求められる。

写真:NEC東芝スペースシステム 飯吉政春

高い精度が要求されるハンダ付けや、図面の上では表し難い組付けの遊びなど、経験と勘が必要とされる手作りの製作作業は、まさに職人技の世界。熟練の先輩が行うやり方を見て覚え、次第にその技量をあげて行く、そんな仕事環境の中で、まじめで実直な飯吉は、こつこつと豊富な知識と技能を積み上げて来た。

「今もって、満点とは言えない」というその職人技への取組み姿勢は、研鑽し巧みの技を磨くための、精進の日々であるという。平成18年度には「卓越した技能者(現代の名工)」として厚生労働大臣表彰受賞した飯吉だが、その技の秘訣を尋ねても、特別なことは何一つ語られるわけではない。彼の口をついて出て来る言葉は「設計者の意図を汲み取って作業を行う」とか、「次の工程の人がやり易いように組み付ける」といった至極当たり前のこと。しかし、その「当たり前なこと」を確実にこなすことができるからこそ、「現代の名工」の誉れに預かることが出来たのであろう。

34年間に亘りロケットや人工衛星の製作に携わってきた中で唯一、それも20年ほど前にたった一度だけ、設計に携わる先輩格の人間から「出来映えが悪い」と言われたことがある、と飯吉は言う。しかし、20年を経て、現代の名工と言われるまでの技量の持ち主になっている自身が振り返っても、今もってその仕上がりが悪かったとは思っていない、と自信に満ち溢れた目を輝かせる。自分の仕事に高い誇りを持ち、技量に磨きを掛ける精進の人だからこそ、言えるセリフである。

基礎をしっかり行うことと、自分のカラーを出し切り、納得の行くまでとことん追い求める心。この二つが信条であり、後進の者にも同じ気持ちで仕事に臨んで欲しい、と言う現代の名工・飯吉。モノ作りの職人として、彼がこれまでに手掛けて来た人工衛星やスペースシャトルに搭載された装置の数は優に40機を越えており、実に日本製の人工衛星の七割を占めるという。今もそのうちの10機程度が現役として天空を駆け巡っている。

NEC東芝スペースシステム
飯吉 政春

平成18年度には「卓越した技能者(現代の名工)」として厚生労働大臣表彰受賞した。

写真:NEC東芝スペースシステム 飯吉政春
  • 「Nスピリッツ第10回 人工衛星の神経をつくる現代の名工」は2007年9月25日に NEC Timesへ記載された記事です。
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