2014年11月20日
日本電気株式会社
NECは、スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末のみでネットワークを構築し、端末経由でライブ映像の配信ができる通信技術(注1)を世界で初めて開発しました。
本技術により、トンネル、地下、建設中の高層ビルなどの工事現場や、大規模災害時など、3G/LTEおよび無線LANアクセスポイントなど既存の通信インフラが利用できない環境でも、現場で撮影した映像を管理者へリアルタイムに配信できるようになります。 また、スタジアムなど多くの人が一斉に集まりネットワークが混雑する環境でも、通信事業者が提供する3GやLTEのネットワークに負荷をかけずに、試合やイベントの様子などの映像を観客の数万台以上のモバイル端末に広く配信できます。
NECは社会ソリューション事業に注力する中、先進の通信技術の研究開発を進めています。新技術は、災害や通信混雑時にもネットワークインフラを構築できるもので、NECは、今後も安全・安心な社会のインフラとなるネットワークの開発・実用化を目指していきます。 |
背景
昨今、通常の通信が利用できない災害時や、通信環境の構築が難しい建設、工事、採掘の現場、および通信需要が瞬間的に増加するコンサートやスポーツイベントの会場など、において、現場の情報を迅速に伝える通信手段の確保が求められています。これを実現する技術として、既存の通信インフラを経由しない、無線LANの端末間通信の活用が期待されています。
しかし、無線LANを利用する場合には、端末が別の端末に接近して接続する際に接続時間がかかったり、複数の端末が同一周波数を共有することで高速化に限界があるなど、テキストや写真など小さなサイズで遅延が許容されるデータしか扱うことができませんでした。
今回開発した通信技術は、移動する端末同士で即座にネットワークを構築し、かつ、端末間通信を高速化したことで、多数の端末間でリアルタイムな映像配信を可能したものです。
新技術の特長
- 端末の移動に追従し、安定したネットワークを構成
端末間の通信方式として、暗号強度が強く高速通信が可能なWi-Fi Direct(注2)を利用し、通常は端末間で接続のたびに必要となる暗号鍵を一時的にためておく(キャッシュする)方式を採用(注3)。これにより、無線LAN(Wi-Fi)を利用する端末が密集し電波干渉が激しい環境において、端末が移動し接続が一時的に切断された場合でも、1秒程度で別の端末に再接続してネットワークを維持。また、Wi-Fi Directのグループ間で数台の端末を短周期に入れ替えて情報をリレーすることで、多数のグループ間の通信が可能となり、ネットワークの大規模化を実現。これらにより、高速で大規模な端末間通信を実現。
- リレー転送方式で、高画質な映像配信を実現
通信を行う端末数や同一の周波数チャネルを利用している端末数が過度に多い場合でも、周波数の競合により通信不能となることを抑制する技術を開発。大規模に映像配信する場合には、複数の周波数チャネルを切り替えながら、送受信する端末間で相互に配信タイミングをずらすことでパケットの衝突を抑制、例えば、5つの端末間で通信を行う環境においても、伝送速度1Mbps以上の映像配信が可能。
- 冗長化による途切れにくい転送制御を実現
映像を中継する途中の端末からのデータ転送が途切れても、同一の映像を保有する別の端末から映像データの転送を自動継続できる、配信元切り替え技術を開発。中継端末を適当に配置するだけで冗長化できるので、映像配信の確実性が向上。
なお、このたび開発した技術の一部は、2012年度から2013年度にNECが参画した、総務省の委託研究「大規模災害時に被災地の通信能力を緊急増強する技術の研究開発(災害時避難所等における局所的同報配信技術の研究開発)」の一環として進めてきた研究成果が含まれています。
なおNECは、今回の成果を、NECグループが開催する「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2014」(会期:11/20(木)~21(金)、会場:東京国際フォーラム(東京都千代田区))にて、展示します。
「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2014」について
http://jpn.nec.com/uf-iexpo/index.html NECグループは、「2015中期経営計画」のもと、安全・安心・効率・公平という社会価値を提供する「社会ソリューション事業」をグローバルに推進しています。当社は、先進のICT技術や知見を融合し、人々がより明るく豊かに生きる、効率的で洗練された社会を実現していきます。
【別紙】 (補足資料)モバイル端末のみで大規模なライブ映像配信が可能な通信技術を開発
以上
(注1) インターネットなどのインフラを利用できなくとも、端末に備わった通信機能を使って複数の端末が一時的にネットワークを構築する通信技術
(注2) Wi-Fi Allianceが策定した、無線LANアクセスポイントが無い環境でも、Wi-Fiデバイス同士が直接接続して通信するための規格。一つのグループで最大6台程度の端末が通信可能
(注3) 本技術はAndroid OSで動作可能ですが、ミドルウェアの独自拡張が必要なので現状では専用端末での提供となります
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