2013年9月3日
日本電気株式会社
NECは、データセンター等に設置されるラックに搭載されたICT機器の排熱を効率よく取り除く「多段式高効率冷却技術」を開発しました。本技術をデータセンターに適用することで、データセンターの空調電力を最大50%削減することが可能となります。
「多段式高効率冷却技術」は、NECが従来から開発してきたICT機器内に搭載して効率的な冷却を実現する相変化冷却技術(
注1)を、複数のICT機器を搭載するラックに応用したものです。相変化冷却技術とは、冷媒が液体から気体に変化する際に熱エネルギーが移動する性質を利用して冷却する技術であり、エネルギー変化量が大きく高効率な冷却が可能です。
新技術により、機器から排出される熱を、拡散する前に回収するとともに、直接屋外へ輸送できるため、サーバルーム内の空調負荷を大幅に削減できます。ラック当たり12kWの消費電力の場合、送風電力と冷凍機電力を合計した空調電力を最大50%削減することが可能です。このたび、NECの施設で実験した結果、10台のサーバを搭載したラック背面から発せられる熱量のうち、約50%を屋外へ熱輸送することを実証しました。
本技術をデータセンターに適用すると、空調負荷を増大させずに、ラックへ実装するICT機器を大幅に増やすことが可能になります。これにより、フロア面積はそのままで、データセンターの処理能力を大幅に向上することができ、省スペースなデータセンター運用につながります。
このたび開発した技術の特長は、次のとおりです。
- 受熱部の多段配置により、機器の排熱を漏らさず回収
ラックの最上段から最下段まで、ICT機器が発する排気熱を効率よく吸収して冷媒を気体に変える、多段式の吸熱技術を新規に開発。サーバラック背面に配置した受熱部を多段化することにより、ラックに設置されたそれぞれの機器の排熱量に応じた冷却を実現。
- 多段式に適した冷媒の分配・循環により、低コストと高信頼性を確保
多段化されたラックの各段の吸熱部に、発熱量に応じて冷媒を分配し、効率よく循環させる技術を新規に開発。独自の流路設計により、自然循環のみで各段への適正な冷媒供給を実現し、低コストと高信頼性を確保。
- 低環境負荷の冷媒を採用
オゾン化破壊係数(ODP)が0で、地球温暖化係数(GWP)が従来品(HFC)の1/2以下の環境にやさしい冷媒を採用。高効率な冷却と低環境負荷を両立。
NECは、「環境経営行動計画」(
注2)に基づき、低炭素社会の実現に向けて、製品のエネルギー効率の改善や、業界で初めて40℃の環境でも動作を保証するサーバ等の耐環境機器の製品化・ラインアップの拡充など、業界で先駆けた省エネへの取り組みを進めています。NECは今後も、本技術の実用化に向けた開発を進め、ICT機器やシステムの省電力化、効率的なデータセンター運用の実現を目指します。
なお、このたび開発した冷却技術は、平成20年度から24年度にNECが参画した独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「グリーンネットワーク・システム技術研究開発プロジェクト」の研究成果の一部を活用しています。
【別紙】 データセンタの省エネ冷却技術開発
以上
(注1) 相変化冷却:液体から気体、または気体から液体に変化する、相変化に伴い、大きな熱の移動が生じる現象を利用した冷却技術。アルコールで腕を消毒すると「冷やり」とするのも、アルコールの気化によって、皮膚が熱を奪われたことによる。
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