2013年4月10日
日本電気株式会社
NECは、高い信頼性が求められる通信事業者のコアネットワーク向けに、将来SDN(Software-Defined Networking)(
注1)を実現するために必要な、OpenFlow(
注2)技術に対応した高品質なスイッチを開発しました。
また、本スイッチを用いて、独立行政法人 情報通信研究機構(NICT)と共同で、広域実験用ネットワークで映像伝送実験を行い、0.02秒と短時間で障害復旧可能な高信頼な運用が可能なことを確認しました。
SDNは、ネットワークをソフトウェアでプログラム可能とする概念で、ネットワークの設定変更や機能追加が柔軟かつ低コストにできるなど、将来の重要なネットワーク概念として期待されています。現在、データセンタやプライベートネットワークなどではSDNの普及が進みつつありますが、通信業者のコアネットワークでは高度な信頼性が要求されるため、これまで、SDNに対応したスイッチは実現されていませんでした。
また、現在、通信事業者のコアネットワークでは、放送、金融、データセンタ間など高品質な通信のために、データ転送技術MPLS-TP(Multi-Protocol Label Switching Transport Profile,
注3)が利用されています。
今回開発したスイッチは、MPLS-TPに対応しつつ、SDNを実現する技術の一つであるOpenFlowに対応するものです。
本スイッチを、通信事業者のコアネットワークで利用した場合、障害発生時の障害箇所の迅速な回避や経路変更、などが可能となります。また、ネットワークでのSDN化により、通信事業者はサービス機能追加などが容易になり、顧客であるサービス事業者の要求に応じて柔軟かつ迅速に対応できるようになります。これらにより、サービス事業者が付加価値の高いネットワークを提供し、一般ユーザにとっては、高機能なサービスや低価格サービスのような選択肢が増えるなどのメリットがあります。
今回、実証実験としては、NICTの広域実験用ネットワークであるJGN-X(
注4)を経由して、沖縄県名護市から東京までプロ野球オープン戦の高精細な映像データ(4K)の伝送を行いました。
本実験では、MPLS-TPによる通信と、OpenFlowを用いた経路変更を連動し、通信事業者向けの高品質なネットワークでの映像伝送、および、回線切断の試験を行いました。
回線切断・復旧については、通信障害の検出から復旧までの時間が、MPLS-TP通信時0.02秒程度と、高信頼な通信の目安となる0.05秒よりも十分に短時間での復旧を実現し、現状の通信事業者のサービス品質に耐えうる高信頼な運用が行えることを確認しました。
このたび開発したOpenFlow対応スイッチの特長は、次のとおりです。
- 高速な障害検出、通信回復を実現
通信事業者のコアネットワークで用いられる高信頼なMPLS-TPの通信を、OpenFlowにより柔軟に制御可能。MPLS-TPによる高品質な通信とOpenFlowによる柔軟な経路制御などの通信を、任意に組み合わせ使い分けることが可能。
- 柔軟な通信設定が可能
本スイッチは、データ転送技術として、通常のネットワークで利用するTCP/IP通信を識別し,MPLS-TP通信への転送を制御することが可能。また、MPLS-TP通信では通信の信頼性,優先度を高度に設定できる。これにより、コンテンツやサービスなど、求められる信頼性の違いに応じ優先度をつけたネットワーク構築を実現。
このたびの成果の一部は、2011年度よりNECが参画している、NICTの委託研究「高機能光電子融合型パケットルータ基盤技術の研究開発」によるものです。
NECは、今回の成果を、4月10日(水)から12日(金)まで、東京ビックサイトで開催される「Fiber Optics Expo 2013」において出展する予定です。
【参考資料】 通信事業者のコアネットワーク向け OpenFlow 対応スイッチを開発
以上
(注1,2) SDN、OpenFlowについて
SDN(Software-Defined Networking)は、ソフトウェアによってネットワークの構成や機能をプログラミングできるようにするコンセプト。
OpenFlowは、ネットワーク制御機能をスイッチから分離し、コントローラに集約することで、ネットワークを集中制御できる次世代ネットワーク技術で、SDNを実現する技術の一つ。NECはOpenFlowの非営利標準化団体であるOpen Networking Foundation (ONF)の設立メンバ。
(注3) MPLS-TPについて
Multi-Protocol Label Switching-Transport Profileの略。ラベルによりパケット転送を行う技術であるMPLSを、通信事業者が運用するキャリアネットワークで適用できるように信頼性機能を拡張したパケット伝送技術に関する標準規格。
(注4) JGN-Xについて
独立行政法人情報通信研究機構(NICT)が2011年4月から運用する新世代ネットワーク技術の実現とその展開のための新たなテストベッド環境。今回は「JGN-X」上に構築された、ネットワークの研究者、学生、開発者、運用者などを対象とした、OpenFlow テストベッド「RISE」を利用した。
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