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NEC、無線通信機器の通信速度を最大で約2倍に向上させる電磁ノイズ抑制技術を開発~ 独自のメタマテリアル技術でアンテナ感度を向上 ~

2013年1月17日
日本電気株式会社




NECは、高速無線通信を利用するワイヤレス機器において、機器内部のプリント基板に独自の人工材料を形成することで、アンテナの受信感度を最大で約10倍に向上させる電磁ノイズ抑制技術を開発しました。本技術により、ワイヤレス機器の通信性能を向上し、本技術を用いない場合と比較して最大で約2倍の高速通信を実現します。

開発した電磁ノイズ抑制技術は、金属を周期的に並べることで自然界にない性質を引き出す人工材料「メタマテリアル(注1)」の一種で、特定の周波数の電磁波を遮断する「電磁バンドギャップ(EBG:Electromagnetic Bandgap)構造」と呼ばれるものです。

このたび、スパイラル状の金属線からなるオープンスタブ共振器(注2)を採用した、µ(マイクロ)EBG構造を新たに開発し、従来比約1/10(注3)となる世界最小のユニットセルサイズを実現しました。これにより、従来はプリント基板に内蔵することが困難だったEBG構造を基板内に適用することが可能になります。

ワイヤレス通信機器では、基板上のデバイスが発生する電磁波(電磁ノイズ)が基板内を伝播し、空間に放射されることで、アンテナに影響を及ぼして通信性能の低下をもたらします。本技術により、電磁ノイズを基板内で遮断して不要な放射を防ぐことで、本技術を適用しない場合と比較して、アンテナの受信感度を最大で約10倍に向上します。これにより、通信速度を最大で約2倍高速化して、動画の視聴などをより快適に楽しめる高速無線通信を実現します。

このたび開発した技術の特長は以下のとおりです。

  1. 独自のµEBG構造を開発し、世界最小のユニットセルを実現
    ユニットセルに金属線をスパイラル状に加工したオープンスタブ共振器を組み込んだ、独自のμEBG構造を開発。これにより、WiFiで用いられる2.4GHz帯の電磁ノイズを遮断する場合、従来のLC共振器(注4)を組み込んだEBG構造のユニットセルと比較して約1/10となる、2.1×2.1mmの世界最小サイズを実現。これまで困難であった高密度なプリント基板の内部への実装が可能となり、電磁ノイズの放射を抑制。



  2. 電磁ノイズ発生源の周囲へユニットセルを配置し、通信性能を最大化
    電磁ノイズの発生源であるデバイス直下のプリント基板内など、実装スペースが狭く従来のEBG構造では配置が困難だった場所にユニットセルを集中配置。これにより、通信を妨害するGHz帯の電磁ノイズをプリント基板の内部で遮断し低減することで、アンテナの受信感度を最大で約10倍向上し、無線機器の通信速度を最大で約2倍向上。



  3. 様々な周波数帯の電磁ノイズを遮断可能
    通信周波数帯に合わせた複数のオープンスタブ共振器をユニットセルに組み込むことにより、マルチバンドの動作が可能。これにより例えばWiFiの2.4/5GHz帯の電磁ノイズを同時に遮断できるなど、利用周波数の異なる多様な無線通信規格に柔軟に対応可能。


NECとNECアクセステクニカは、このたび開発した技術を活用した製品を、2013年に発売する予定です。

NECでは今後も電磁ノイズ抑制技術の研究開発を進め、無線通信品質を高めたワイヤレス機器の実現を目指していきます。

なお、本研究の一部は、総務省からの委託による「マイクロ波帯、ミリ波帯の利用拡大のための機器雑音抑制技術の研究開発」プロジェクトにおいて実施したものです。


【補足資料】 無線通信機器の通信速度を最大で約2倍に向上させる電磁ノイズ抑制技術を開発



以上


(注1) 人工的な構成要素を周期的に配置することで、自然界には存在しない物性を示す材料。誘電体や導体によって構成されたユニットセルが、電磁波の波長に比べ短い周期で多数配列した構造を持つ。

(注2) 先端が開放された分布定数線路(スタブ)によって形成された共振器。金属線の長さに応じて共振する周波数を変えられるため、従来のLC共振器と比較して面積の低減が可能。

(注3) 一般的なプリント基板材料を用いた従来のEBG構造と比較。

(注4) インダクタンスとキャパシタンスで構成された共振器。EBG構造においては、キャパシタンスを形成する金属板の面積に応じて共振周波数が決まるため、大きな面積が必要となる。


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