2012年11月9日
日本電気株式会社
NECは、天候変化の影響を受けずに、広大な洋上において人や船舶を高精度に発見したり、大規模農地や人間の立ち入りが困難な森林奥地において植物の種類や生育状況の観測を可能にする、光解析技術を開発しました。
近年、物体が反射する目に見えない波長まで含めた光の組成(分光スペクトル)を解析することで、肉眼では分からない物体の材質や状態を把握し、広大な地上や洋上の情報解析に応用するための技術開発が進められています。この技術は、津波などの災害時における人や船舶の救助、大規模農業、生物多様性保全に必要な地球規模の生態観測、資源調査などへの応用が期待されています。
分光スペクトルは、航空機などに搭載した分光スペクトルカメラ(
注1)で観測しますが、現状では、曇天など晴天以外の天候では正しい情報が得られない、観測対象の近辺に光の組成が既知である基準物体(完全白色板など)を予め配置しなければならないなど、利用場面に制約があります。
このたび開発した技術は、観測した分光スペクトルから、物体の材質や状態を表わす情報(表面反射率)を、天候の影響を受けることなく、安定かつ正確に推定するものです。本技術により、従来は曇天下では難しかった植物の種類を正確に判別したり、海難救助においては人や船舶を高精度に発見することが可能になります。また、観測される分光スペクトルのみから物体の表面反射率が推定できるため、従来のように基準物体を観測対象の近辺に設置する必要がありません。これにより、基準物体の設置が難しい森林の奥地における生態観測や、新たな資源の調査を可能にします。
本技術の特長は以下のとおりです。
- どんな天候下でも観測が可能
晴天から曇天までの天候下における昼光の組成(300nm~4000nmまでの各波長の強度)を近似する方法(昼光モデル)を世界で初めて実現。晴天から曇天までの天候変化の影響を受けずに、従来法と比べ推定誤差を7割削減し、物体の情報を高精度に観測可能。
- 地上のあらゆる場所で観測が可能
開発した昼光モデルと、カラーコンスタンシ計算理論(注2)を組み合わせることで、観測される分光スペクトル情報のみから対象物体の表面反射率を推定することが可能。これにより、従来必要であった基準物体の設置が不要となり、広大な土地の一角や、人間の立ち入りが困難な場所など、地上のあらゆる場所の物体を観測可能。
NECは今後も本技術の研究開発を進め、防災や広域監視などのパブリックセーフティ事業に活用するとともに、農業支援、地球環境・資源の調査など、新事業への応用を目指します。
なおNECは、このたびの成果の一つである天候変化に対応可能な昼光モデルを、11月11日(日)から15日(木)まで、つくば国際会議場(茨城県つくば市)にて開催される、パターン認識技術に関する国際会議「ICPR2012」において、13日に発表を行います。
【別紙】 NEC、天候の影響を受けずに、地上のあらゆる場所で生態観測や資源探索を可能にする光解析技術を開発
~災害救助、大規模農業、生物多様性へ応用~
以上
(注1) 光の波長ごとの強度分布を画像として記録するカメラ。
(注2) 光源の光の組成と物体の表面反射率を数個のパラメータでモデル化し、観測された色情報や分光スペクトルをもとにパラメータを推定し、光源の光の組成と物体の表面反射率を復元する計算理論。
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